概観 · 72件の出来事
IT全史 ── 計算機が世界を編み変える
1940年代
この十年で、 計算機は「配線し直す装置」から「記憶の中身を書き換える装置」へ向かい始めた。 弾道計算のための ENIAC は問題ごとにケーブルとスイッチで組み替えたが、 同じ頃に回覧された EDVAC の草稿は命令と数値を一つの記憶に置く構成を論理の言葉で描き、 マンチェスターの実験機がそれを書き換え可能な電子記憶で走らせた。 Bell 研究所は、 真空管に代わる固体の増幅素子と、 情報を bit で量る理論を世に出している。 ENIAC の発明者とされた二人は、 次の十年に計算機を売り物にする。
1950年代
1950年代、 計算機は研究所の外で働き始め、 その上に人の記法に近い層が積まれた。 官庁が商用機を受け取り、 Hopper は同じ機械で副ルーチンを綴じる仕組みを動かし、 IBM は数式から速い機械語を出すコンパイラを届けた。 ディスクは記録をテープを巻かずに引けるものにした。 bit を定義した Shannon が名を連ねた申請書は「artificial intelligence」の呼称を生み、 トランジスタは回路ごと一片の半導体へ作り込まれる。 言語と集積回路が次の十年の土台になる。
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1960年代
1960年代、 計算機は一台ごとの道具から、 共有され受け継がれるものへ変わった。 ALGOL 60 は構文を形式的な記法で定め、 Simula はクラスと継承を一つの言語に揃えた。 IBM は機種をまたぐ互換性を売り物にし、 ダートマスでは BASIC と時分割が同時に産声を上げた。 Engelbart は人が画面越しに機械や遠くの同僚と協働する姿を実演する。 1969年、 UNIX の作業が始まり、 ARPANET が最初の2文字を運んだ。 OS と網の二本の系譜はここから現在へ続く。
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1970年代
1970年代、 大型機と研究網で育った考え方が、 一人が机で使える大きさへ縮んだ。 C で書き直された UNIX は、 別の機械へ持ち運べる OS になった。 PARC はマウス付きの Alto を Ethernet でつなぎ、 売らずに日常の業務で使った。 Altair 向け BASIC を売る会社が生まれ、 BASIC を ROM に積んだ Apple II は趣味人から会社の机へ広がる。 鍵の一方を公開できる暗号もこの時期に示された。 Apple が PARC で見たものは、 やがて Macintosh の形をとる。
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1980年代
1980年代の PC は、 一社の製品ではなく規格として広がった。 IBM は既製部品で組んで資料を公開し、 OS を他社に売る権利を Microsoft に残したため、 互換機と MS-DOS が市場を形づくる。 Macintosh は PARC 由来の画面操作を消費者の価格帯へ下ろした。 回線では ARPANET が TCP/IP へ一斉に移り、 NSF の学術網は営利の通信を利用規定で締め出していた。 1989年、 CERN でハイパーテキストが提案される。 この三つが出会うのは次の十年だ。
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1990年代
1990年代、 研究者のものだった回線と文書が一般に開かれた。 画像を本文に流し込む Mosaic が Web を人々の視界に入れ、 1995年には NSFNET の基幹網が止まる。 同じ年の Windows 95 は、 発売の深夜に行列を生んだ。 Web が膨らむと、 リンク構造でページの重みを測る Google が検索に割り込む。 学生の趣味だった Linux は GPL のもとで世界中の手を借りて育った。 Deep Blue を勝たせたのは探索と、 ほぼ人手で調整した評価関数だった ── 学習の番は2010年代に来る。
2000年代
2000年代の三つの出来事は、 計算の置き場所と、 人がそれに触れる経路を組み替えた。 Amazon は自社の販売用に組んだ設備を、 前払いなしの従量課金で外部に貸し始める。 iPhone は物理キーボードを捨て、 指で触れる画面を電話の中心に据えた。 翌年の Android は、 Linux カーネルを核にした OS を各社の端末へ配るという逆の道を選ぶ。 OS X 由来の iPhone にも Android にも、 UNIX の系譜が流れている。 次の十年、 Microsoft もクラウドへ軸足を移す。
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2010年代
2010年代、 計算機に学ばせる手法が成果を出し始めた。 2012年の画像認識コンテストでは NVIDIA の GPU 2枚で学習した畳み込みネットワークが従来手法を大差で退け、 2016年には深層強化学習を組み込んだ AlphaGo が李世乭を破った。 探索と人手の評価関数で勝った Deep Blue からの転換である。 Microsoft は Nadella のもとでクラウドへ重心を移し、 OpenAI への大型投資を始める。 AlexNet の著者の一人と GPU の作り手は、 次の十年に再び表舞台に立つ。
2020年代
2020年代、 生成 AI は誰もが触れる道具になると同時に、 国家の案件になった。 ChatGPT 公開後の数年で、 米国の AI 大統領令は署名・撤回・方針の反転を経て、 EU は包括的な規制を採択する。 AlexNet を学習させた GPU の作り手は時価総額で首位に立ち、 停止した原子炉は Microsoft との契約で再稼働へ向かい、 米政府は Intel の株主になった。 中国製のオープン重みモデル、 名指しのモデルへのアクセス停止、 TikTok の合弁化 ── 技術と地政学はもう分けて語れない。
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