詳述 · 20件の出来事
iPhone の歴史
2000年代
Apple Inc. (Wikimedia Commons) · Public Domain (PD-textlogo; trademark of Apple Inc.) · Commons ↗ App Store は2008年7月10日に開き、翌11日に iPhone OS 2.0 の配信と iPhone 3G の発売が続いた。開店時の品揃えは Apple 発表で500本超、うち125本以上が無償。Apple が運営する単一の流通網に開発者を集約し、収益を 7:3 で分ける仕組みは、その後の十数年にわたるモバイル経済の根幹を作った。2007年6月の WWDC で Steve Jobs が「sweet solution」と呼んだ Web アプリ方針は、9か月後の SDK 発表(2008年3月6日)で反転していた。

Dan Taylor (Flickr, via Wikimedia Commons) · CC BY 2.0 · Commons ↗ 初代の発売から1年、2008年6月9日に発表され7月11日に発売された2世代目。3G 通信と GPS に対応し、米国の店頭価格を 8GB 199ドル(AT&T との新規2年契約が条件)まで下げて市場を広げた。前日に開いた App Store とともに、iPhone を「電話+アプリの動くコンピュータ」というカテゴリへ押し上げた機種でもある。7月11日に日本を含む21カ国で一斉発売(フランスのみ7月17日)。日本ではソフトバンクモバイルが扱い、これが iPhone の国内デビューとなった ── 初代は日本で売られていない。

gillyberlin (Flickr, via Wikimedia Commons) · CC BY 2.0 · Commons ↗ 2009年6月8日の WWDC で Phil Schiller が発表し、6月19日に米国ほかで発売。日本での発売は一週間後の6月26日、ソフトバンクモバイルからである。「S は speed の S」と Schiller は説明し、速度は前世代の iPhone 3G のおよそ2倍と述べた(初代比ではない)。動画撮影、音声制御、デジタルコンパス、ボイスメモが加わり、同時公開の iPhone OS 3.0 ではコピー&ペースト、MMS、横画面キーボードといった基本機能がようやく実装された。米国価格は16GB 199ドル/32GB 299ドル(AT&T との新規2年契約が条件)、旧 iPhone 3G は8GB 99ドルへ。一年で完成度を上げる「S 世代」の文法が、ここから定着していく。
2010年代

Justin14 (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 3.0 · Commons ↗ 2010年6月7日の WWDC で発表、6月24日に米・英・仏・独・日の5カ国で同時発売(日本はソフトバンクモバイル)。326ppi の高解像度パネルを「Retina ディスプレイ」と名付け、通常の距離では人間の目が個々のピクセルを判別できない、と Apple は主張した。デザインは前面・背面ガラス、側面ステンレスへ一変する。一方、その側面ステンレス枠がアンテナを兼ねていたため、握り方によって信号が落ちる「Antennagate」騒動を引き起こし、7月16日の記者会見で全購入者への無償ケース配布に至った。Apple 史上最も派手な PR 失敗の一つである。

Magnus D (Flickr, via Wikimedia Commons) · CC BY 2.0 · Commons ↗ 10月4日に発表、10月14日に米国・オーストラリア・カナダ・フランス・ドイツ・日本・英国で同時発売。日本は第一陣で、ソフトバンクモバイルに加えて KDDI(au)が初めて iPhone を扱い、ソフトバンクの国内独占が終わった世代でもある。デュアルコア A5、800万画素カメラ、そして音声アシスタント Siri を搭載した。発表の翌日10月5日に Steve Jobs が他界し、iPhone 4S は事実上、彼の最後の製品となった。Siri は DARPA の CALO 計画から SRI International がスピンアウトさせた Siri Inc.(2010年4月に Apple が買収)の技術を基とし、この世代では 4S 専用・ベータ扱いで、対応言語は英語・フランス語・ドイツ語のみだった。日本語対応は翌2012年3月の iOS 5.1 まで待つことになる。音声アシスタント自体は先行例があり、4S の意義は「最初」ではなく、自然言語によるスマートフォン操作を主流に押し出した点にある。

unten44 (Flickr, via Wikimedia Commons) · CC BY 2.0 · Commons ↗ 9月12日に発表、9月21日に米国・オーストラリア・カナダ・フランス・ドイツ・香港・日本・シンガポール・英国で同時発売(日本は第一陣)。画面を 4 インチへ拡大して縦横比を 3:2 から 16:9 相当へ変え、アルミ筐体で薄型軽量化し、iPhone として初めて LTE に対応した。最大の物議は、2003年の第3世代 iPod 以来9年続いた 30 ピン Dock コネクタを廃し、裏表のないリバーシブルな 8 ピンの Lightning に置き換えたこと。膨大なサードパーティ製アクセサリの互換性を一度に断ち切る決断で、Apple は変換アダプタを別売した。米国価格は2年契約付きで 16GB が 199 ドル、32GB が 299 ドル、64GB が 399 ドル。

Raimond Spekking · CC BY-SA 4.0 · Commons ↗ ホームボタンに指紋センサ Touch ID を内蔵し、生体認証によるロック解除と購入承認を一般化した。同時に世界初の 64bit スマートフォンプロセッサ A7 を搭載 ── 業界のロードマップを一年以上先回りした移行で、Qualcomm を含む競合各社を不意打ちにした。Touch ID は決済システム Apple Pay(2014年)の基盤にもなる。

Kazuhisa OTSUBO (Flickr, via Wikimedia Commons) · CC BY 2.0 · Commons ↗ 9月9日に発表、9月19日に米国・オーストラリア・カナダ・フランス・ドイツ・香港・日本・プエルトリコ・シンガポール・英国で発売(日本は第一陣、中国は含まれない)。4.7 インチと 5.5 インチの二機種展開で、Apple は 2011年10月の Samsung Galaxy Note が切り拓いた「ファブレット」市場に3年遅れで応じた。Apple は9月22日、発売から3日間で1000万台超を販売したと発表した(Apple 自身の公表値で、内訳や地域別の数字は開示されていない)。同じ9月9日の発表会で Apple Pay も披露され、iPhone として初めて NFC を搭載したが、Apple Pay 自体の開始は米国で10月20日、日本での提供は2016年10月25日まで下る。

freestocks.org (Flickr, via Wikimedia Commons) · CC0 · Commons ↗ 9月9日に発表、9月25日に米国・オーストラリア・カナダ・中国・フランス・ドイツ・香港・日本・ニュージーランド・プエルトリコ・シンガポール・英国で発売(日本は第一陣。前年の iPhone 6 では発売日に間に合わなかった中国も、この世代では第一陣に戻っている)。押す強さを感知するディスプレイ「3D Touch」を搭載し、Peek and Pop や Quick Actions といった、圧力を新たな入力の次元として使う操作系を導入した。しかし開発者にもユーザーにも定着せず、2018年の iPhone XR が圧力センサ層を省いて Haptic Touch(長押し)に置き換え、2019年の iPhone 11 世代で全機種から姿を消した。Apple が世に出したあと引っ込めた、数少ない UI 機能の一つである。
3月21日に発表、3月31日に米国・オーストラリア・カナダ・中国・フランス・ドイツ・香港・日本・ニュージーランド・シンガポール・英国などで発売(日本は第一陣)。iPhone 5s の 4 インチ筐体をほぼそのまま受け継ぎ、中身を当時最新の A9 / M9 と 1200万画素カメラに入れ替えた小型機。ただし 6s と同等ではなく、3D Touch は非搭載、前面カメラは120万画素、Touch ID も 5s 世代のセンサのままだった。16GB と 64GB の2構成で米国価格は399ドルから。大画面化についてこられない既存ユーザーと、低価格帯を求める新興市場の双方を狙った戦略製品で、「廉価だが世代は最新」という枠を Apple のラインナップに恒常的に組み込んだ。

Maurizio Pesce (Flickr, via Wikimedia Commons) · CC BY 2.0 · Commons ↗ 9月7日に発表、9月16日に日本を含む25以上の国・地域で発売(32 / 128 / 256GB、米国価格は649ドルから)。Apple は 3.5mm のヘッドフォンジャックを iPhone から取り除いた。3.5mm は1950年代のトランジスタラジオ用に生まれ、Walkman 以降の携帯音楽機器の事実上の標準となった端子である(その祖先である 6.35mm 端子は1870年代の電話交換台に遡る)。発表会で Phil Schiller はこの決断を「Courage(勇気)」の一語に集約してみせ、Apple の傲慢さの象徴として広く揶揄された。ジャックを持たない携帯電話は iPhone 7 が最初ではないが、影響力は桁違いで、ワイヤレスイヤホンを家電カテゴリの主流に押し上げた。同じ発表会で披露された AirPods は同時発売ではなく、Apple は当初「10月下旬」としたのち出荷が遅れ、注文開始は12月13日となった。日本向けモデルには FeliCa が搭載され、Suica や iD / QuicPay に対応した最初の iPhone となっている。

Fastily · CC BY-SA 4.0 · Commons ↗ iPhone X が提示した新しい筐体言語(ノッチ・Face ID・縁無し)を、価格帯を分けた XS / XS Max(OLED 上位機)と XR(LCD・カラフルな低価格機)の三機種展開で量産化した世代。一年前の「実験的高級機」を、Apple のラインナップ全体に拡張した区切りだった。

Ralph Emmerich (Bungert55) · CC BY-SA 4.0 · Commons ↗ 標準モデルの iPhone 11 と Pro / Pro Max 二機種で、背面に複数レンズを搭載した「カメラの塊」としての iPhone を確立。低照度撮影を一気に底上げする「ナイトモード」が導入され、夜景はもはや一眼レフの専売特許ではなくなった。
2020年代

KKPCW · CC BY-SA 4.0 · Commons ↗ 5G 対応の初代 iPhone であり、iPhone 4 を思わせる平面側面のデザインへ回帰した世代。背面に磁石を配し、MacBook で消えていた「MagSafe」の名を、ワイヤレス充電とアクセサリ取り付けの規格として復活させた。コロナ禍中の発表となり、通例より一ヶ月遅れの10月発売。

Tatsuo Yamashita (Flickr, via Wikimedia Commons) · CC BY 2.0 · Commons ↗ 9月14日に発表、9月24日に日本を含む30以上の国・地域で発売。iPhone X 以来ほぼ手つかずだった TrueDepth カメラのノッチを、Apple の説明で「面積比 20% 小型化」した。Pro の2機種には可変リフレッシュレートの ProMotion ディスプレイ(10〜120Hz)を初めて搭載し、スクロールやアニメーションの体感が明確に変わった ── 標準の 13 / 13 mini は 60Hz のままである。電池持ちも Apple の公称で iPhone 13 が 12 比で最大2時間半、13 mini が 12 mini 比で最大1時間半の増加とされた。派手さはないが底上げの効いた世代である。

Dick Thomas Johnson (Flickr, via Wikimedia Commons) · CC BY 2.0 · Commons ↗ 9月7日に発表、9月16日に日本を含む45の国・地域で発売(iPhone 14 Plus のみ10月7日)。iPhone X から5年続いたノッチが、Pro の2機種に限って丸いパンチ穴二つに置き換わり、その黒い領域を OS が動的に伸縮させる対話的な UI 要素 ── Dynamic Island ── に転化した。フロントカメラとセンサの配置というハードウェアの制約を、隠すべき欠点ではなく機能として前面に出した設計である。同世代で初採用となった常時表示(Always-On)ディスプレイも Pro 限定で、標準の iPhone 14 / 14 Plus は従来のノッチと 60Hz のまま据え置かれた。標準モデルに Dynamic Island が下りてくるのは翌2023年の iPhone 15 世代である。

Kyu3a (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 4.0 · Commons ↗ 9月9日に発表、9月20日に日本を含む各国で発売。Apple 独自の生成AIスイート「Apple Intelligence」を前面に据えた世代だが、発売時点では未搭載だった ── 最初の機能群は10月28日の iOS 18.1 でベータとして届き、しかも当初は端末と Siri の言語が米国英語である必要があった。日本語対応は2025年3月31日の iOS 18.4 まで待つことになる。対象も iPhone 16 の4機種に加えて前年の iPhone 15 Pro / Pro Max が含まれており、16 専用の機能ではない。要約・書き換え・画像生成・Siri 強化を可能な限りオンデバイスで処理し、必要な場合のみ Apple 専用サーバ(Private Cloud Compute)へ委ねる設計で、AI の主導権を外部に渡さないためのハードウェアと OS の共設計と位置づけられた。もっとも Apple は同年12月の iOS 18.2 で OpenAI の ChatGPT を Siri から呼び出せるようにしており、自前主義は徹底されていない。目玉だったパーソナルコンテキスト対応の新 Siri は2025年3月に延期が公表され、この世代のうちには出荷されなかった。

