詳述 · 11件の出来事
OSの歴史
1960年代
Multics 計画から離脱した Ken Thompson が、AT&T Bell 研究所で空いていた PDP-7 上に簡略なタイムシェアリング OS を作り始めた。当初は1人のための実験だったが、Dennis Ritchie が加わり、1970年に「UNICS(後の UNIX)」と命名。C 言語(1972年)への書き換えで移植性を獲得し、その後の50年を支配する OS 系譜の起源となった。Linux、macOS、Android、iOS の祖である。
1970年代
Gary Kildall が Intel 8080 向けに開発したディスクオペレーティングシステム。1970年代後半に Digital Research 社によって商業展開され、8ビットマイコン市場の事実上の標準 OS となった。IBM PC(1981年)の OS 選定で IBM が最初に交渉に向かった相手で、契約不成立だった結果として Microsoft の MS-DOS が PC 互換機の世界標準となる、という歴史の分岐点をなす製品である。
1980年代
Microsoft が Seattle Computer Products から購入した 86-DOS(旧称 QDOS)に手を加え、IBM PC 用に PC DOS 1.0 として OEM 供給。同時に他の互換機メーカーには MS-DOS の名で販売する権利を Microsoft が保有し続けた。Bill Gates のこのライセンス戦略が、後の十数年にわたる PC OS 市場の独占を生んだ。
Apple が Macintosh を発表。Xerox PARC で発明されたグラフィカルユーザインタフェース(ウィンドウ・アイコン・マウス)を、2495 ドルという大衆向け価格帯で一般消費者に届けた。前年の Lisa が商業的に失敗した経験から、シンプルさと拡張性のバランスを大胆に「シンプル側」へ寄せた製品。1984年の Super Bowl で放映された Ridley Scott 監督の CM は、テレビ広告史にも刻まれた。
MS-DOS 上で動作する Microsoft 初のグラフィカル環境。重なり合うウィンドウではなくタイル配置、限られた色数、専用アプリの少なさ ── 評価は厳しかったが、十年後の Windows 95 まで一貫して続く Microsoft の GUI 投資の出発点となった。Macintosh からの遅れは1年10ヶ月。
1990年代
重なり合うウィンドウ、Program Manager、仮想メモリ管理、VGA フルカラー対応。1980年代後半に IBM と共同開発していた OS/2 とは別路線として、Windows 3.0 は MS-DOS 上の GUI として独立に商業展開され、6ヶ月で200万本を売った。Microsoft が IBM との合弁から離脱して独自路線を確立する転機となる。
Helsinki 大学の学生 Linus Torvalds が comp.os.minix に「I'm doing a (free) operating system (just a hobby, won't be big and professional like gnu)」と投稿。最初のソースは 10,000 行ほどで、Minix の影響を受けつつ、独自のカーネルとして書かれていた。1992年には GPL の下で公開され、世界中の開発者からの貢献を受けて成長 ── 2026年現在、世界のサーバ・スマートフォン・スーパーコンピュータの大部分を駆動する OS の核となっている。
32 bit プリエンプティブマルチタスキング、長いファイル名、プラグアンドプレイ、そしてスタートメニューとタスクバーという UI 配置 ── 多くの人にとって「PC とはこういうものだ」という観念が、この製品で固まった世代。Rolling Stones の Start Me Up を BGM とした巨額の広告キャンペーンと、深夜の販売開始に並んだ行列は、PC が家電となった文化的な瞬間として記憶される。発売初週で700万本を売った。
2000年代
1985年に Apple を追われた Steve Jobs が NeXT で開発した NeXTSTEP(Mach マイクロカーネル + BSD UNIX)を、1996年の Apple による NeXT 買収を経て Mac OS の基盤に据え直した世代。1984年の Classic Mac OS から決別し、UNIX 系の堅牢性とプロセス分離を Mac にもたらした。後の Aqua UI、iOS、macOS の出発点。
Google が2005年に買収していた Android Inc. の OS を、HTC Dream(米国では T-Mobile G1 として販売)に搭載した最初の出荷端末。Linux カーネル、Java(後に Android Runtime)の VM、独自 UI スタック ── オープンソースの OS をスマートフォンに供給するという Google の戦略は、iOS とは正反対の市場アプローチであり、その後の十数年で世界のスマートフォン台数の70%以上を占めるエコシステムへと成長した。
2007年1月の Macworld で Steve Jobs が発表した iPhone は、半年後の6月29日に米国で発売された。物理キーボードを排し、静電容量式マルチタッチと OS X 派生のソフトウェアを電話に据えたこの機械は、後に「スマートフォン」と呼ばれる製品カテゴリ全体の文法を書き換えることになる。