詳述 · 14件の出来事
インターネットとWebの歴史
1960年代
UCLA の Charles Kline が、SRI のホストに最初のメッセージ「LOGIN」を送ろうとしたが、二文字目で接続が切れ、伝わったのは「LO」だけだった。米国国防総省 ARPA(後の DARPA)の出資で構築されたパケット交換ネットワーク ARPANET の、初の本格的な動作で、現在のインターネットの始祖となる出来事。当初の接続は UCLA、SRI、UC Santa Barbara、ユタ大学の四拠点だった。
1970年代
BBN の Ray Tomlinson が、複数ホスト間でメッセージを送る仕組みを ARPANET 上に実装。ローカルユーザ名とホスト名を区切る記号として、当時のキーボードで使われていなかった「@」を選んだ。これが現在のメールアドレス形式の起源となる。
1980年代
ARPANET が、それまでの NCP(Network Control Program)から、Vint Cerf と Bob Kahn が1974年に設計した TCP/IP プロトコルスイートへと一斉に切り替えられた日。「フラグ・デー」と呼ばれるこの強制移行は、現在のインターネットを支える基幹プロトコルの確立点で、複数のネットワークを相互接続する「インターネットワーク」という発想がここで本格運用に入った。
USC ISI の Paul Mockapetris が、ホスト名と IP アドレスを変換する分散型データベース DNS を設計。それまで HOSTS.TXT ファイル一枚で管理されていたインターネット上の名前空間を、階層的・委任可能な構造へと書き直した(RFC 882・883、後に1034・1035)。com、org、net、edu などのトップレベルドメインがここで定義された。
CERN(欧州原子核研究機構)のコンピュータエンジニア Tim Berners-Lee が、研究所内の文書共有問題を解決するためのハイパーテキスト情報管理システム「Information Management: A Proposal」を上司の Mike Sendall に提出した。Sendall は提案書の余白に「Vague, but exciting...」と書き残した。1991年に実装が公開され、世界初の Web サーバ・ブラウザ・HTTP・HTML がここから始まる。
1990年代
イリノイ大学 NCSA の Marc Andreessen と Eric Bina が開発した、文字と画像をひとつの頁に統合して表示する初の主要 Web ブラウザ。Windows、Mac、UNIX 向けに無償配布され、それまで研究者だけのものだった Web を、一気に一般ユーザの視界に持ち込んだ。Andreessen は翌年 Netscape を共同創業し、商業 Web の時代が始まる。
Mosaic を作った Marc Andreessen と Jim Clark が共同創業した Netscape Communications が、商用 Web ブラウザ Navigator 1.0 を公開。1995年8月の IPO は初日に株価が3倍となり、ドットコムバブルの本格的な開始点として記録される。Microsoft の Internet Explorer との「ブラウザ戦争」を経て1998年に AOL に買収されるが、オープンソース化された Netscape のコードが後の Mozilla / Firefox の起源となる。
Netscape の Brendan Eich が、ブラウザ内で動く軽量スクリプト言語を10日で設計した。当初の名前は Mocha、次に LiveScript、最終的に Java の知名度に便乗する形で JavaScript と命名された。皮肉にも、Java とは設計思想がほぼ無関係。長く「玩具」扱いされたが、2009年の V8 エンジン、Node.js による server-side 進出、React/Vue/Angular による UI フレームワーク発展を経て、世界で最も広く書かれる言語の一つになった。
Stanford 大学院の Larry Page と Sergey Brin が、PageRank アルゴリズム(リンク構造から重要度を推定する手法)を基盤に設立した検索エンジン会社。当時の主要検索エンジン(Yahoo!、AltaVista、Excite)が「人手分類」と「キーワード一致」に依存していたのに対して、Google は完全にアルゴリズム的なランキングと、シンプル極まりない一画面のインターフェースで差別化した。半年以内に主要検索エンジンとなる。
2000年代
Jimmy Wales と Larry Sanger が、それまで進めていた専門家審査制の百科事典 Nupedia の補助プロジェクトとして、誰でも編集できる Wiki ベースの百科事典 Wikipedia を公開。「集合知(wisdom of crowds)」というインターネットの社会的な可能性を最も大規模かつ持続的に実証したプロジェクトで、2026年現在300言語以上、6000万本以上の記事を擁する。
Mark Zuckerberg がハーバード大学の寮で立ち上げた「thefacebook.com」。当初は同大学の学生限定だったが、2006年に一般公開、2008年に MySpace を抜き、2012年には10億ユーザを超えた。Instagram(買収2012年)、WhatsApp(買収2014年)、Oculus(買収2014年)と続く Meta グループの中核となる。2010年代後半以降は、データ取扱いと選挙介入をめぐる継続的な政治的批判の対象でもある。
PayPal の元従業員 Chad Hurley、Steve Chen、Jawed Karim が、誰でも動画をアップロードして共有できるサービスを設立。Flash Video の普及と、初期の Adobe Flash プラグインの圧倒的なシェアが、ブラウザ内動画再生を初めて摩擦なく実現させた。2006年に Google が16.5億ドルで買収。2010年代を通じて、地上波テレビと競合する規模の配信プラットフォームに成長した。
Jack Dorsey らが、140 文字制限のショートメッセージサービスとして Twitter を公開。SMS との互換性を起点に、リアルタイムの情報拡散・公共討論・抗議運動・市場操作の場として、2010年代の主要なプラットフォームのひとつとなった。2022年に Elon Musk が440億ドルで買収し X と改名。
iPhone OS 2.0 と同時に開設された App Store は、約500本のアプリケーションとともに公開された。Apple が公式に承認する流通網を介して開発者がソフトウェアを配信し、収益を 7:3 で分け合う仕組みは、その後の十数年にわたるモバイル経済の根幹を作った。初代 iPhone 発表時に Steve Jobs が示したのは「Web アプリだけで充分」というものだったが、わずか一年半後には、その方針は静かに撤回されたことになる。