製品 :: PRODUCT
iPhone
Apple が2007年に発売したスマートフォンシリーズ。初代発売以降、毎年あるいは隔年で更新を重ね、スマートフォン市場全体の標準仕様(マルチタッチ、アプリストア、Retina ディスプレイ、生体認証、5G、USB-C など)を順次主導してきた製品系譜。
製品情報
- 発表
- 2007
- 状態
- 販売中
- 関連事象
- 20
- 名称
- ENiPhoneJAiPhone
iPhone
iPhone は、 Apple が2007年6月に米国で発売した、 静電容量式マルチタッチ液晶を主操作系とするスマートフォンの製品系列である。 Steve Jobs が「iPod、 電話、 インターネット通信デバイスの 3つを 1台にまとめた」と発表し、 翌2008年の App Store と組み合わさることで、 携帯電話・PDA・MP3 プレーヤを統合した新カテゴリ「スマートフォン」を商業的に確立した。 2024年時点で累計出荷は 23億台超、 2025年単年で約 2億4,000万台を出荷し、 Apple 売上の約半分を占める同社の中核製品である。
歴史 / History
iPhone のプロジェクトは2004年に「Project Purple」のコード名で始まった。 当初は iPod を電話機能つきに拡張する案と、 タブレット研究(後の iPad)からマルチタッチを継承する案が並走し、 後者が採用された。 静電容量式タッチパネル、 Mac OS X を基盤としたモバイル OS(後の iPhone OS / iOS)、 PC との同期に iTunes を使う運用、 ハードウェアと OS の完全な垂直統合 ── これらは当時の Symbian や BlackBerry 端末と非連続な設計であり、 携帯通信事業者主導から端末メーカ主導へと市場の力学を逆転させた。
2008年7月の App Store はサードパーティ開発者によるアプリ供給を解放し、 30% 手数料のプラットフォーム経済モデルを定着させた。 2010年の iPhone 4 で「Retina ディスプレイ」、 2011年の 4S で Siri、 2013年の 5s で Touch ID、 2017年の X で Face ID とノッチ採用、 2020年の 12 で 5G・MagSafe、 2022年の 14 Pro で Dynamic Island、 2023年の 15 で USB-C、 2024年の 16 で Apple Intelligence ── と毎世代で業界標準仕様を主導してきた。 2025年の iPhone 17 シリーズは Apple Intelligence の本格運用と A19 Pro SoC、 過去最高の販売速度を記録した。
主要モデル / Major Models
| 世代 | 発売年 | 主な革新 |
|---|---|---|
| 初代 iPhone | 2007 | マルチタッチ、 iPhone OS、 仮想キーボード、 タッチに最適化したブラウザ |
| iPhone 3G | 2008 | 3G 通信、 App Store、 GPS |
| iPhone 3GS | 2009 | 動画撮影、 性能向上 |
| iPhone 4 | 2010 | Retina ディスプレイ、 FaceTime、 ステンレスフレーム |
| iPhone 4S | 2011 | Siri、 デュアルコア A5、 iCloud |
| iPhone 5 | 2012 | Lightning、 4インチ Retina、 LTE |
| iPhone 5s | 2013 | Touch ID、 64bit A7(モバイルで初) |
| iPhone 6 / 6 Plus | 2014 | 大画面化、 NFC + Apple Pay |
| iPhone 6s | 2015 | 3D Touch、 Live Photos |
| iPhone SE 初代 | 2016 | 4インチ廉価版 |
| iPhone 7 | 2016 | 3.5mm ヘッドホンジャック廃止、 IP67 |
| iPhone X | 2017 | OLED、 Face ID、 ノッチ、 ホームボタン廃止 |
| iPhone XS / XR | 2018 | A12 Bionic(7nm)、 デュアル SIM |
| iPhone 11 | 2019 | 超広角、 ナイトモード |
| iPhone 12 | 2020 | 5G、 MagSafe、 平面エッジ復活 |
| iPhone 13 | 2021 | ProMotion 120Hz(Pro)、 シネマティックモード |
| iPhone 14 Pro | 2022 | Dynamic Island、 衛星緊急通信 |
| iPhone 15 | 2023 | USB-C、 チタンフレーム(Pro) |
| iPhone 16 | 2024 | Apple Intelligence、 Camera Control、 A18 |
| iPhone 17 / 17 Pro | 2025 | A19 Pro、 改良 Apple Intelligence、 過去最強の立ち上がり |
技術的革新 / Technical Innovations
- 静電容量式マルチタッチ: 物理キーボード前提のスマートフォン設計を 12ヶ月で過去のものにした。
- App Store プラットフォーム経済: 2008年〜現在で 4,000億ドル超を開発者に支払い、 同時に 30% 手数料の独占性を巡って世界各地で訴訟・規制の論点となる。
- Apple Silicon の前駆: A4(2010年、 自社設計の本格化)から A19 Pro(2025年、 3nm 級)まで、 ARM-v8 系の最先端 SoC を 15年以上自社設計し続けている。
- 生体認証: Touch ID(2013年)、 Face ID(2017年)は決済・本人確認の業界標準仕様に。
- 写真・動画: Computational Photography(Smart HDR、 Deep Fusion、 Night Mode、 Cinematic Mode)はモバイル撮影の主役を「光学」から「計算」に移した。
- 5G、 衛星通信、 USB-C: 通信規格・接続規格の世代交代を消費者市場の主流に押し上げた。
- Apple Intelligence(2024〜): オンデバイス LLM、 Private Cloud Compute、 ChatGPT 連携 によるシステム規模の生成 AI 統合。
市場と影響 / Market and Impact
- 累計出荷台数 (2024年末): 23億台超、 そのうちアクティブ端末は 13億台規模
- 単年出荷 (2025年): 約 2.47億台、 前年比 +6.1%
- 平均販売価格 (ASP, 2025年): 約 1,000〜1,050ドル
- iPhone 単独売上 (FY2025): 約 2,000億ドル超、 Apple 全社売上の約 52%
- iPhone 17 Q4 2025 売上: 852億ドル(前年同期比 +23%)
- 中国市場: 2024〜2025年は Huawei・Xiaomi の再台頭で苦戦、 2025年後半に再加速
iPhone は単一製品としてアプリ・決済・広告・コンテンツ流通・モバイル広告計測などのエコシステムを集積した。 これにより Google の Android、 Microsoft の Windows Phone、 RIM の BlackBerry、 Symbian、 Palm OS など競合プラットフォームの興亡の枠組みそのものを書き換えた。
批判 / Criticism
App Store 手数料・反ステアリング・サイドローディング禁止については、 2020年〜のEpic Games 訴訟、 2024年の EU Digital Markets Act 適用、 2024年3月の米司法省提訴(スマートフォン市場での独占維持)、 と継続的に争点となる。 Apple は EU 域内に限定で代替マーケットプレイス・サードパーティ決済を解禁したが、 「Core Technology Fee」など別形態の課金構造を導入し、 規制対応の最低限化と表現される対応が続く。
修理権(Right to Repair)でも、 サードパーティ部品の機能制限(Parts Pairing)が米仏で問題化。 2023〜2024年に Apple は限定的に自社修理プログラム(Self Service Repair)を展開し、 2024年から iOS 17.4 以降で中古純正部品の制限を緩和した。 セキュリティ面では、 Pegasus など商用スパイウェアによる iPhone への攻撃が継続的に検出されており、 2022年からは Lockdown Mode を提供。 児童性的虐待コンテンツ(CSAM)スキャン計画は2021年に発表後、 プライバシー懸念で撤回された。
サプライチェーンでは、 中国 Foxconn 鄭州工場の長時間労働・2022年秋の COVID 関連抗議、 インド・ベトナムへの生産分散、 コバルト・スズ・タンタル・タングステンの「紛争鉱物」調達がいずれも継続課題である。 環境面では2030年カーボン・ニュートラルを公約、 2023年の Apple Watch Series 9 で「カーボンニュートラル」を初宣言したが、 サプライチェーン全体での実現はなお道半ばと評価される。
関連する出来事
- 2007年6月29日初代 iPhone 発売2007年1月の Macworld で Steve Jobs が発表した iPhone は、半年後の6月29日に米国で発売された。物理キーボードを排し、静電容量式マルチタッチと OS X 派生のソフトウェアを電話に据えたこの機械は、後に「スマートフォン」と呼ばれる製品カテゴリ全体の文法を書き換えることになる。
- 2008年7月10日App Store 開設iPhone OS 2.0 と同時に開設された App Store は、約500本のアプリケーションとともに公開された。Apple が公式に承認する流通網を介して開発者がソフトウェアを配信し、収益を 7:3 で分け合う仕組みは、その後の十数年にわたるモバイル経済の根幹を作った。初代 iPhone 発表時に Steve Jobs が示したのは「Web アプリだけで充分」というものだったが、わずか一年半後には、その方針は静かに撤回されたことになる。
- 2008年7月11日iPhone 3G 発売初代から1年で発表された2世代目。3G 通信に対応し、価格を 8GB 199ドルに下げて市場拡大を狙った。前日に開設された App Store とともに、iPhone を「電話+アプリの動くコンピュータ」というカテゴリへと押し上げた。同日に世界22カ国で同時発売され、iPhone は米国市場専用機械ではなくなった。
- 2009年6月19日iPhone 3GS 発売「S」は Speed の頭文字。CPU・GPU・メモリの強化により、初代から二倍以上の性能を得た。動画撮影、音声制御、コンパス、デジタル磁石、ボイスメモが加わり、iPhone OS 3.0 ではコピー&ペースト、MMS、横画面キーボードといった基本機能がようやく実装された。一年で完成度を上げる「S 世代」の文法が、ここから定着していく。
- 2010年6月24日iPhone 4 発売 ── Retina ディスプレイと「Antennagate」326ppi の高解像度パネルを「Retina ディスプレイ」と名付け、人間の視力では個々のピクセルを判別できないとうたった。デザインは前面・背面ガラス、側面ステンレスへと一変し、現在まで続く iPhone の造形言語の原型となった。一方、その側面ステンレス枠がアンテナを兼ねていたため、握り方によって信号が落ちる「Antennagate」騒動を引き起こし、Apple 史上最も派手な PR 失敗の一つとなった。
- 2011年10月14日iPhone 4S と Siri ── ジョブズ最後の発表デュアルコア A5、800万画素カメラ、そして音声アシスタント Siri。発表会の翌日、10月5日に Steve Jobs が他界し、iPhone 4S は事実上、彼の遺品となった。Siri は買収した SRI 発のスタートアップ技術をベースとし、自然言語によるスマートフォン操作という発想を主流に押し出した。
- 2012年9月21日iPhone 5 ── 縦長画面、LTE、Lightningアスペクト比を 3:2 から 16:9 へ変更し、画面サイズを 4 インチへ拡大。本体はアルミ筐体で薄型化、初の LTE 対応となった。最大の物議は、9年間続いた 30 ピンの Dock コネクタを廃し、リバーシブルな 8 ピンの Lightning に置き換えたこと。サードパーティ製アクセサリ市場の互換性を一度に破壊する決断だった。
- 2013年9月20日iPhone 5s ── Touch ID と 64bit プロセッサ A7ホームボタンに指紋センサ Touch ID を内蔵し、生体認証によるロック解除と購入承認を一般化した。同時に世界初の 64bit スマートフォンプロセッサ A7 を搭載 ── 業界の予想より2年早い移行で、Qualcomm を含む競合各社を不意打ちにした。Touch ID は決済システム Apple Pay(2014年)の基盤にもなる。
- 2014年9月19日iPhone 6 / 6 Plus ── 大画面への転向4.7 インチと 5.5 インチの二機種展開で、Apple は遂に「ファブレット」市場へ参入した。Samsung Galaxy Note が切り拓いてきた領域に4年遅れで応じた格好になる。発売最初の週末に1000万台を売り、それまでの iPhone 売上記録を更新。同時に Apple Pay を発表し、NFC とトークン化技術によるモバイル決済を本格展開させた。
- 2015年9月25日iPhone 6s と 3D Touch圧力を感知するディスプレイ「3D Touch」を搭載。プレスの深さで挙動を変える新しい入力次元を試みたが、開発者・ユーザー双方からの定着には恵まれず、2018年の iPhone XR を皮切りに段階的に廃止される。Apple が出して引っ込めた数少ない UI 機能の一つ。
- 2016年3月31日初代 iPhone SE 発売4インチ筐体を維持したまま中身を iPhone 6s 相当にした小型機。大画面化の流れに馴染めない既存ユーザーと、新興市場向けの低価格機を狙った戦略製品で、それまで存在しなかった「廉価かつ最新世代」というポジションを Apple のラインナップに恒常的に組み込んだ。
- 2016年9月16日iPhone 7 ── 3.5mm ヘッドフォンジャック廃止Apple は、1世紀近く電子機器の標準だった 3.5mm のヘッドフォンジャックを iPhone から取り除いた。当時 Phil Schiller が用いた「Courage(勇気)」という言葉は、Apple の傲慢さの象徴として揶揄されたが、結果としてワイヤレスイヤホンを家電カテゴリの主流に押し上げ、同時発売の AirPods は数年で Apple 最大の周辺機器事業となった。
- 2017年11月3日iPhone X ── ホームボタン廃止と Face ID初代発表から十周年の節目に、Apple は iPhone 設計の二大要素 ── 物理ホームボタンと指紋認証 ── を同時に廃止した。代わりに、画面上端の「ノッチ」に深度センサと赤外線投光器を埋め込み、顔認証 Face ID で生体認証を継続。OLED の縁無しディスプレイと組み合わせ、iPhone の造形を再びゼロから書き直した世代となった。
- 2018年9月iPhone XS / XR ── ノッチ世代の量産化iPhone X が提示した新しい筐体言語(ノッチ・Face ID・縁無し)を、価格帯を分けた XS / XS Max(OLED 上位機)と XR(LCD・カラフルな低価格機)の三機種展開で量産化した世代。一年前の「実験的高級機」を、Apple のラインナップ全体に拡張した区切りだった。
- 2019年9月20日iPhone 11 ── 二眼カメラとナイトモード標準モデルの iPhone 11 と Pro / Pro Max 二機種で、背面に複数レンズを搭載した「カメラの塊」としての iPhone を確立。低照度撮影を一気に底上げする「ナイトモード」が導入され、夜景はもはや一眼レフの専売特許ではなくなった。
- 2020年10月23日iPhone 12 ── 5G と MagSafe の復活5G 対応の初代 iPhone であり、iPhone 4 を思わせる平面側面のデザインへ回帰した世代。背面に磁石を配し、MacBook で消えていた「MagSafe」の名を、ワイヤレス充電とアクセサリ取り付けの規格として復活させた。コロナ禍中の発表となり、通例より一ヶ月遅れの10月発売。
- 2021年9月24日iPhone 13 ── ノッチ縮小と ProMotioniPhone X 以来の TrueDepth ノッチを 20% 縮小。Pro モデルは可変リフレッシュレート ProMotion ディスプレイ(10〜120Hz)を初搭載し、スクロールやアニメーションの滑らかさが感覚的にも明らかに変わった。電池寿命の改善も大きく、地味だが堅実な世代として評価される。
- 2022年9月16日iPhone 14 Pro と Dynamic IslandiPhone X から5年続いた「ノッチ」を、Pro モデルでは丸いパンチ穴二つに置き換え、その黒い領域を OS が動的に拡張・縮小する「Dynamic Island」というインタラクティブな UI 要素に転化させた。ハードウェアの制約(フロントカメラ・センサの配置)を、欠点として隠さず、UI として積極的に演出した。Always-On ディスプレイも同時に導入された。
- 2023年9月22日iPhone 15 ── USB-C 移行11年続いた Lightning 端子を廃し、USB-C を採用。Apple 自身の選択というよりは、EU の共通充電器規則(2022年成立、2024年末発効)への対応として迫られた変更であり、規制によって端子規格が決まった象徴的な転換でもあった。Pro モデルは USB 3 のデータ転送速度(最大10Gbps)に対応。
- 2024年9月20日iPhone 16 と Apple IntelligenceApple が独自に展開する生成AIスイート「Apple Intelligence」を全面に押し出した世代。要約・書き換え・画像生成・Siri 強化を、可能な限りオンデバイスで実行する設計が特徴で、必要な場合のみ Apple 専用のサーバ(Private Cloud Compute)に処理を委ねる。AIの主導権を OpenAI や Google に渡さないための、ハードウェアと OS の共設計だった。