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IBM

1911年に CTR(Computing-Tabulating-Recording Company)として設立。1920年代から事務機器の世界的供給者となり、戦後はメインフレーム計算機(System/360、1964年)の事実上の標準を作り上げた。1981年の IBM PC が、後の Wintel エコシステムと PC 互換機産業全体の出発点となる。深い学習の AlphaGo 以前の節目「Deep Blue」(1997年)や、自然言語処理の Watson(2011年)でも知られる。

IBMのロゴ
出典Paul Rand / IBM · Public domain (PD-textlogo / PD-shape; trademark) · Commons で見る

組織情報

設立
1911
状態
稼働中
存続
115 年
関連事象
03
名称
ENInternational Business Machines (IBM)JAIBM

IBM

International Business Machines Corporation(IBM)は、 1911年に Computing-Tabulating-Recording Company(CTR)として設立され、 1924年に現社名に改称された米国の情報技術企業である。 メインフレーム、 ミドルウェア、 ITサービス、 ハイブリッドクラウド(Red Hat)、 人工知能(watsonx)、 量子コンピューティングを軸に、 110年以上にわたり企業 IT の中枢を占めてきた。 ニューヨーク州アーモンクに本社を置く。

沿革 / History

ホレリスのパンチカード集計機を出自にもつ CTR は、 1924年に Thomas J. Watson Sr. によって IBM へ改称され、 米国国勢調査や社会保障制度の機械処理を請け負って事務機器の世界的供給者となる。 1952年の IBM 701 で電子計算機事業に参入し、 1964年の System/360 でメインフレーム計算機の事実上の標準を確立。 OS、 周辺機器、 アプリケーションを互換アーキテクチャでまとめあげるという発想は、 後の PC 互換機やオープン標準にも引き継がれる発明だった。

1969年には反トラスト訴訟への対応もあってハードウェアとソフトウェアを分離販売する「アンバンドル」を実施、 これがソフトウェア産業独立の起点となる。 1981年の IBM PC は、 オープンアーキテクチャと外部 OS(Microsoft の MS-DOS)の採用が裏目に出て、 結果として Wintel エコシステムの源流を作りつつ自社の PC 主導権を失う原因にもなった。 1990年代前半は赤字に転落、 1993年に Lou Gerstner が CEO となりサービス事業(Global Services)への大転換を遂げる。 2000年代以降は PC 事業を Lenovo(2005年)、 サーバ事業を Lenovo(2014年)に売却、 2019年に Red Hat を 340億ドルで買収してハイブリッドクラウドに軸足を移した。 2020年に Arvind Krishna が CEO に就任し、 2021年の Kyndryl(マネージドインフラ部門)分社化、 2023〜2025年の watsonx 展開、 量子ロードマップの加速で「メインフレーム + ハイブリッドクラウド + AI + 量子」の四本柱体制を整えた。

主要製品・事業 / Products and Services

部門内容代表製品・サービス
SoftwareRed Hat、 自動化、 データ・AI、 トランザクション処理OpenShift、 watsonx、 Db2、 IBM Z 用ソフトウェア
Consultingデジタル変革、 戦略、 テクノロジー実装IBM Consulting(旧 Global Business Services)
Infrastructureメインフレーム、 ストレージ、 セキュリティIBM z16、 LinuxONE、 IBM Storage
Quantum超伝導量子ビットの量子計算機・クラウドIBM Quantum System Two、 Heron / Condor プロセッサ

watsonx は 2023年に発表された AI 基盤プラットフォームで、 watsonx.ai、 watsonx.data、 watsonx.governance の三本立てで企業向け生成 AI を提供する。 2025年時点で IBM の生成 AI 関連受注残は累計 95億ドルを超えた。 Red Hat OpenShift は ARR 15億ドル規模に達し、 ハイブリッドクラウド戦略の中核となっている。

重要事件 / Key Events

  • 1969年: 反トラスト訴訟への対応もあり ハードとソフトを分離販売(アンバンドル)。 1982年に司法省が訴訟を取り下げ。
  • 1981年: IBM PC 発売。 オープンアーキテクチャが互換機メーカーの参入を許し、 同時に Intel と Microsoft を巨大化させる。
  • 1997年: Deep Blue が世界チェスチャンピオン Garry Kasparov に勝利。
  • 2005年: PC 事業を Lenovo に売却(17.5億ドル)。
  • 2011年: Watson が米クイズ番組 Jeopardy! で Ken Jennings らを破る。
  • 2014年: x86 サーバ事業を Lenovo に売却(21億ドル)。
  • 2019年7月: Red Hat 買収完了、 340億ドル。 IBM 史上最大の買収。
  • 2021年11月: マネージドインフラ部門を Kyndryl として分社化。
  • 2023年: watsonx 発表、 企業向け生成 AI に本格参入。
  • 2024年: IBM Quantum System Two 稼働開始、 Heron R2 プロセッサ(156量子ビット)と組合せ。 大型 LLM 「Granite 3」 をオープンウェイトで公開。
  • 2025年: 量子ロードマップで Loon・Kookaburra など複数チップ並列のモジュラー設計を提示。 watsonx Code Assistant for Z で COBOL → Java 変換を商用化。

業績指標 / Key Metrics

  • 売上 (2024年通年): 約 626億ドル / 営業利益率: 約 16%
  • ソフトウェア部門の伸長: 2025年 Q3 は前年同期比 +9%(Automation +15%、 Red Hat +13%)
  • 量子: 2017年以降の量子事業累計売上は 10億ドルを突破
  • 従業員数 (2024年末): 約 27万人
  • 累計特許登録数: 米国で年間1万件以上を29年連続首位(2022年に Samsung に首位を譲る)。

影響と批判 / Influence and Criticism

IBM が PC 産業を生み、 そして PC 産業に主導権を奪われたことは、 1990年代の経営学で繰り返し参照される事例となった。 同時に IBM は1990年代初頭、 81億ドルの赤字(1993年)で「死にゆく恐竜」と評されながら、 サービス業への大転換で蘇生した稀有なケースでもある。 PC 開発時に外部委託したオペレーティングシステム(MS-DOS)の権利を Microsoft に握られたことは、 1980年代後半に IBM が OS/2 で巻き返しを図ったが失敗、 1995年の Windows 95 で決着がついた。

批判の側では、 1933年〜1940年代にナチス・ドイツ政府の人口統計・ホロコースト関連処理に IBM 子会社 Dehomag のパンチカード機が使われたという指摘が、 ジャーナリスト Edwin Black の著作(2001年)以降繰り返し議論されてきた。 IBM は当時の連絡記録の一部を公表したものの、 法的・倫理的責任を明確に認めるには至っていない。 近年は2020年6月の George Floyd 事件をうけて Arvind Krishna が顔認識技術の汎用販売から撤退すると米下院議長宛て書簡で表明し、 大手 IT として最初に踏み込んだ。

AI 倫理ではバイアス・透明性の枠組み(AI Fairness 360)を 2018年に公開、 EU AI Act への対応で先行する大企業の一つとなった。 一方で IBM は2020〜2022年に北米中心に大規模なレイオフを断続的に実施し、 雇用慣行を巡る訴訟(特に年齢差別)が複数提起されている。 また2024年には地政学リスク管理として中国国内の R&D 部門を大幅縮小、 1,000人規模の人員整理を実施したとされる。

関連する出来事

  1. 1957年4月FORTRAN 公開John Backus 率いる IBM のチームが約3年の開発を経て、最初の本格的な高水準プログラミング言語 FORTRAN(FORmula TRANslator)の最初のコンパイラを IBM 704 向けに完成・出荷した。アセンブリ言語を直接書く時代から、数式を数式の形で書ける時代への移行点で、その後のすべての高水準言語の祖となる。
  2. 1981年8月12日MS-DOS 1.0 ── IBM PC とともにMicrosoft が Seattle Computer Products から購入した 86-DOS(旧称 QDOS)に手を加え、IBM PC 用に PC DOS 1.0 として OEM 供給。同時に他の互換機メーカーには MS-DOS の名で販売する権利を Microsoft が保有し続けた。Bill Gates のこのライセンス戦略が、後の十数年にわたる PC OS 市場の独占を生んだ。
  3. 1997年5月11日Deep Blue が Garry Kasparov を破るIBM のチェス専用機 Deep Blue が、当時のチェス世界王者 Garry Kasparov との6番勝負(リターンマッチ)に 3.5-2.5 で勝利した。前年(1996年)の対戦では Kasparov が勝っていたが、IBM はその後の1年でハードウェアと評価関数を大幅強化した。チェスのトップレベルにおいて、機械が人間に勝った最初の決着であり、AI 報道の文脈では象徴的な節目とされる(実態はゲーム木探索+特化評価関数で、現代的な学習は含まない)。

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