2022年11月30日T1
ChatGPT 公開
OpenAI が ChatGPT を一般公開。GPT-3.5 を対話用にチューニングし、無償で誰でもブラウザから使える形にしたサービスで、公開後5日で100万ユーザ、2ヶ月で1億ユーザに到達した(消費者向けインターネットサービスの最速記録)。生成AIという概念を専門研究の文脈から一般の家庭・学校・職場へ一夜にして移行させ、Google・Meta・Anthropic・Microsoft の方針転換を引き起こす起点となった。
メタデータ
- 日付
- 2022年11月30日
- 年代
- 2020s
- Tier
- T1
- 参照年表
- IT全史 ── 計算機が世界を編み変える · AIの歴史
- 出典数
- 02
- 関連項目
- 01
ChatGPT 公開
2022年11月30日、OpenAI のブログに短い記事が掲載された。タイトルは「Introducing ChatGPT」。本文は1000語ほど。社内では「リサーチプレビュー(research preview)」と位置づけられた、控えめな公開だった。
数日後には、それが消費者向けインターネット史上、最も早く広まったサービスとなる。
速さ
- 公開後5日: 100万ユーザ
- 公開後2ヶ月: 1億ユーザ
比較対象として、よく引かれる数字がある。Instagram は1億ユーザに到達するのに約2年半。TikTok は約9ヶ月。Facebook は約4年半。ChatGPT は2ヶ月だった。
これは、新しいサービスというより、新しいインフラが現れたときの広がり方だった。
なぜそうなったか
技術的には、ChatGPT は GPT-3.5 と呼ばれた既存の言語モデルを、対話用にファインチューニングしたものだった。Reinforcement Learning from Human Feedback(RLHF)── 人間の評価者が「望ましい返答」を選び、そのフィードバックで挙動を整えるという手法 ── が、当時としては丁寧に適用されていた。
しかし、決定的だったのは技術ではなかった。決定的だったのはインターフェースだった。
それまでの GPT-3(2020年)は API として提供されており、開発者は登録・コードを書く・パラメータを調整する、という階段を登る必要があった。ChatGPT はその階段を取り払った。
- URL を開く
- 質問を文字で打ち込む
- 答えが返ってくる
それだけ。アカウント登録すら、最初は不要だった(後に追加)。
各社の方針転換
公開から1ヶ月以内に、Google 社内で「コードレッド」が宣言されたと報じられた(New York Times、2022年12月)。CEO の Sundar Pichai は、それまでの「AI は慎重に出す」という方針を覆し、急ピッチで Bard(後の Gemini)の開発と公開を指示した。
Microsoft は、すでに OpenAI に対して10億ドル超の投資(2019年)と独占的なクラウド契約を結んでいた。2023年1月、追加で100億ドルの投資を発表。2月には Bing 検索に GPT-4 を統合した「New Bing」を公開し、ほぼ同時期に Google も Bard を投入した。
Anthropic(2021年に OpenAI を離脱した Dario Amodei らが創設)は、Claude を急ピッチで公開(2023年3月)。Meta は LLaMA を研究者向けに公開(2023年2月)。
2022年12月から2023年6月までの半年で、AI 業界の競争構造は、それまでの「研究→徐々に商用化」から「公開→改良→公開→改良」という連続的なリリースサイクルへと完全に切り替わった。
一般人の生活へ
学校では、提出されたレポートが ChatGPT の生成かどうかをめぐる議論が即座に始まった。ニューヨーク市公立学校は、公開から1ヶ月後の2023年1月にネットワーク上での ChatGPT 使用を禁止した(その後、撤回)。コーディングインタビュー、法律文書、医療文書、コピーライティング ── あらゆる「テキストを生成する仕事」に、即座に影響が及んだ。
これは、いずれ起きることだったかもしれない。だが、それが2022年11月30日に始まったということは、確かに歴史上の一つの日付として記録される。