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ChatGPT 公開
メタデータ
- 日付
- 年代
- 2020s
- Tier
- T1
- 参照年表
- IT全史 ── 計算機が世界を編み変える · AIの歴史 · AIと社会の歴史
- 出典数
- 22
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2022年11月30日、OpenAI のブログに記事が掲載された。掲載時のタイトルは「ChatGPT: Optimizing Language Models for Dialogue」(現在は「Introducing ChatGPT」に改題されている)。記事自身が「リサーチプレビュー(research preview)」と名乗り、「プレビュー中の利用は無料」と書き添えた、控えめな公開だった。
2ヶ月後には、これほど速い立ち上がりの消費者向けアプリは思い出せない、とアナリストが書くことになる。
速さ
- 公開後5日: 100万ユーザ(Sam Altman が2022年12月5日に公表)
- 公開後2ヶ月: 推定1億の月間アクティブユーザ
後者は OpenAI の公表値ではない。 UBS が Similar Web のトラフィックデータをもとに算出した推計で、2023年2月1日に Reuters が報じたものである。同じ記事によれば、1月の ChatGPT の1日あたりユニーク訪問者数は約1300万人で、12月の倍以上。UBS のアナリストはノートにこう書いている ──「インターネット業界を20年見てきたが、消費者向けインターネットアプリでこれほど速い立ち上がりは思い出せない」。
比較として同じ記事が引いた数字(Sensor Tower のデータ)は、TikTok がグローバル展開から1億ユーザを足すまで約9ヶ月、Instagram が2年半。ChatGPT は2ヶ月だった。
| 約2年半 | ||
| TikTok(グローバル展開から) | 約9ヶ月 | |
| ChatGPT | 約2ヶ月* |
この「最速」は長くは続かなかった。2023年7月、Meta の Threads が公開5日で1億登録に到達している。ChatGPT の記録は、2023年前半の時点での最速だったと限定して読むのが正しい。
決め手は技術ではなくインターフェース
技術的には、ChatGPT は既存の言語モデルを対話用にファインチューニングしたものだった。公開時の記事は「ChatGPT は2022年初頭に学習を終えた GPT-3.5 系列のモデルからファインチューニングされている」と明記している。手法は Reinforcement Learning from Human Feedback(RLHF)── 人間のトレーナーが複数の応答を品質順に並べ、そこから作った報酬モデルで Proximal Policy Optimization をかける ── で、InstructGPT と同じものを、データ収集の手順だけ変えて適用した。
しかし、決定的だったのは技術ではなかった。決定的だったのはインターフェースだった。
それまでの GPT-3(2020年)は API として提供されており、開発者は順番待ちに登録し、コードを書き、パラメータを調整する、という階段を登る必要があった。ChatGPT はその階段を取り払った。
- URL を開く
- 質問を文字で打ち込む
- 答えが返ってくる
ただし、無条件ではなかった。公開当初はメールアドレスと電話番号による認証を伴う OpenAI アカウントの作成が必須で、登録なしで使えるようになったのは1年半近く後の2024年4月である。それでも、API を叩くのに比べれば段差は無いに等しかった。
各社の方針転換
公開から1ヶ月以内に、ChatGPT の登場を受けて Google の経営陣が「コードレッド」を宣言したと New York Times が報じた(2022年12月21日)。同紙が入手したメモと音声記録によれば、CEO の Sundar Pichai は AI 戦略を定める一連の会議に加わり、ChatGPT がもたらす脅威に応じるため「社内の多数のグループの作業をひっくり返した」。
Microsoft は、すでに OpenAI に対して10億ドル規模の投資(2019年)と独占的なクラウド契約を結んでいた。2023年1月23日、両社はパートナーシップの第3段階として「複数年・数十億ドル規模(multiyear, multibillion dollar)の投資」を発表する。金額は開示されていない。 よく引かれる100億ドルという数字は Semafor の報道によるもので、Microsoft も OpenAI も確認していない(Microsoft の2023年の出資を参照)。
2月7日、Microsoft は検索に対話機能を組み込んだ「新しい Bing」を公開した。公開時の説明は「ChatGPT より強力で、検索用に調整された次世代の OpenAI 大規模言語モデル」であり、これが GPT-4 の初期版だったことを Microsoft が認めたのは、GPT-4 が発表された2023年3月14日である。Google は2月6日に Bard を発表したが、実際に一般が触れられるようになったのは3月21日、米英に限った段階的な公開としてだった。
Anthropic(2020年末に OpenAI を離れた Dario・Daniela Amodei らが2021年に創設)は2023年3月14日、API の早期アクセスとして Claude と Claude Instant を公開した ── GPT-4 発表と同じ日である。Meta は2月24日に LLaMA を発表したが、重みの配布は申請制で、学術研究者などに個別審査で許可する形をとった。
2022年12月から2023年6月までの半年で、AI 業界の競争構造は、それまでの「研究→徐々に商用化」から「公開→改良→公開→改良」という連続的なリリースサイクルへと切り替わった。
一般人の生活へ
学校では、提出されたレポートが ChatGPT の生成かどうかをめぐる議論が即座に始まった。ニューヨーク市公立学校は2023年1月、学校支給の端末とネットワーク上での ChatGPT 使用を制限した。この措置は同年5月、教育長の David Banks によって撤回されている。コーディングインタビュー、法律文書、医療文書、コピーライティング ── あらゆる「テキストを生成する仕事」に、即座に影響が及んだ。
2023年以降の ChatGPT ── モデルと節目
リサーチプレビューは10週間で有料サービスになった。 下の表は OpenAI 自身が発表した節目である。 ChatGPT の中身のモデルは当初は年に1〜2回、 2025年からは年に何度も入れ替わった。
| 日付 | 節目(OpenAI の発表による) |
|---|---|
| 2022年11月30日 | GPT-3.5 系列のモデルで、 無償のリサーチプレビューとして公開 |
| 2023年2月1日 | 月額20ドルの ChatGPT Plus を試験的に開始 |
| 2023年3月14日 | GPT-4 を Plus 加入者に提供 |
| 2024年4月1日 | 登録なしで使えるように(段階的に展開) |
| 2024年5月13日 | テキスト・音声・画像をまたいで推論する GPT-4o を無料プランでも提供 |
| 2024年9月12日 | 推論モデル「o」系列の最初の o1-preview を Plus・Team 向けに |
| 2025年8月7日 | GPT-5 を無料ユーザを含む全ユーザに展開。 思考(thinking)を内蔵 |
| 2026年1月16日 | 月額8ドルの ChatGPT Go を米国で開始。 米国の無料・Go プランで広告のテストを予告 |
| 2026年4月23日 | GPT-5.5 |
| 2026年9月 | GPT-6 Astra を有料プラン向けに。 9月22日に GPT-6 Sol・Luna が続く |
| 2026年10月7日 | GPT-6 を ChatGPT の全ユーザに |
OpenAI 自身が示す利用者数も、 これに合わせて伸びた。 2024年4月に週1億人超、 2025年9月に週間アクティブ7億、 2026年10月には「毎週 ChatGPT を使う12億人超」と同社は書いている。 いずれも週単位の数字で、 2023年初めの UBS による月間推計とは別の指標であり、 しかも同社自身の数字である。
2026年1月の広告の決定は、 ここまでの距離を示している。 OpenAI は広告が回答を左右しないこと、 有料プランには広告を出さないことを約束した ── それでも、 無償のリサーチプレビューとして始まったサービスは、 その無料プランを一部広告で支える段階に入った。
これは、いずれ起きることだったかもしれない。だが、始まったのが2022年11月30日だったことは動かない。
よくある質問
- ChatGPT はいつ公開されたのか
- 2022年11月30日です。無償のリサーチプレビューとして公開されました。
- 5日で100万ユーザというのは本当か
- Sam Altman が公開5日後に述べた数字です。2ヶ月後に UBS のアナリストはこれ以上速い立ち上がりは思い出せないと書きましたが、2023年7月には Meta の Threads が5日で1億登録に達しています。
- 「2ヶ月で1億ユーザ」は OpenAI の発表か
- 違います。UBS が Similar Web のデータから算出した月間アクティブユーザの推計で、Reuters が2023年2月1日に報じたものです。OpenAI が公表した数値ではありません。
- ChatGPT のモデルはどう変わってきたのか
- 公開時は GPT-3.5 系列で、2023年3月に GPT-4(Plus 向け)、2024年5月に GPT-4o、同年9月に推論モデル o1-preview、2025年8月に GPT-5、2026年9月に GPT-6 Astra(有料プラン向け)が加わり、10月7日に GPT-6 が全ユーザに広がりました。いずれも OpenAI の発表によります。
出典
一次資料ChatGPT: Optimizing Language Models for Dialogue — OpenAI, Nov 30, 2022
現題は「Introducing ChatGPT」
最終更新: