詳述 · 30件の出来事
AIの歴史
1950年代

null0 (Wikimedia Commons, via Flickr) · CC BY-SA 2.0 · Commons ↗ 1955年8月31日付の助成申請書で John McCarthy・Marvin Minsky・Nathaniel Rochester・Claude Shannon の4名が「artificial intelligence」という語を掲げ、翌1956年夏、ニューハンプシャー州ダートマス大学で研究集会が開かれた。「2ヶ月・10人」は申請書の計画であって実際の名簿ではなく、参加者は入れ替わり制、日々のセッションは3〜8人程度だった。具体的な技術的成果よりも、この分野の独立した呼称と研究者ネットワークを生んだことが歴史的意義となる。

John C. Hay, Albert E. Murray — Mark I Perceptron Operators' Manual, Cornell Aeronautical Laboratory (Wikimedia Commons) · Public domain · Commons ↗ 1958年7月、US Office of Naval Research が Cornell Aeronautical Laboratory の Frank Rosenblatt によるパーセプトロンを記者発表した。入力に重みをかけて閾値で判定し、誤るたびに重みを更新する学習機構である。実演は IBM 704 上のシミュレーションで、左右に印を付けたカードを50回ほどの試行で区別できるようになるというものだった。理論は同年の Psychological Review 誌 65巻6号 386–408頁に載っている。400個(20×20)の光電素子を感覚層に持つ専用機 Mark I Perceptron は、これとは別に同研究所で組まれた電気機械式のハードウェアである。ニューラルネットワークという系譜の出発点で、後の MLP・畳み込みネットワーク・深層学習に至る基本骨格となる。
よくある質問
- 1958年のパーセプトロンの実演では何が動いていたのですか。
- 記者発表の実演は IBM 704 上のシミュレーションで、左右に印を付けたカードを50回ほどの試行で区別できるようになるというものでした。400個の光電素子を持つ専用機 Mark I Perceptron は、これとは別に同研究所で組まれた電気機械式のハードウェアです。
- Frank Rosenblatt はどこの所属だったのですか。
- Cornell 航空研究所(Cornell Aeronautical Laboratory)の研究者です。発表を行ったのは米海軍研究局で、理論は同じ年の Psychological Review 誌 65巻6号 386–408頁に載っています。
1960年代

Joseph Weizenbaum (via elizagen.org), Wikimedia Commons · CC0 · Commons ↗ MIT の Joseph Weizenbaum が MAD-SLIP で書き、1966年1月の Communications of the ACM で発表した自然言語対話プログラム。ELIZA は処理系の名で、応答を決めるのは差し替え可能な「スクリプト」であり、最も有名なスクリプト DOCTOR がロジャース派の心理療法士を模した。入力からキーワードを拾い、分解規則と再構成規則で言い換えて返すだけの仕組みである。Weizenbaum は論文で、理解しているという印象は話し手自身が相手に知識や推論能力を投影した結果だと説明したうえ、のちに『Computer Power and Human Reason』(1976)でこの現象への警告を書いた。
よくある質問
- ELIZA を作ったのは誰か
- MIT の Joseph Weizenbaum です。MAD-SLIP で書き、1966年1月の Communications of the ACM に発表しました。
- ELIZA と DOCTOR は何が違うのか
- ELIZA は処理系の名前で、実際の応答を決めるのは差し替え可能な「スクリプト」です。DOCTOR はそのスクリプトのひとつで、ロジャース派の心理療法士を模したものでした。
- ELIZA は言葉を理解していたのか
- していません。入力からキーワードを拾い、分解規則と再構成規則で言い換えて返すだけの仕組みです。Weizenbaum は論文で、理解されているという印象は話し手自身が相手に知識や推論能力を投影した結果だと説明しました。
1970年代

University of Edinburgh, School of Informatics, Freddy II Project · CC BY 4.0 · Commons ↗ 英国科学研究評議会(Science Research Council) の依頼で James Lighthill がまとめた AI 研究の評価報告(1972年7月付、1973年公表)は、「この分野のどの部分においても、これまでの発見は当時約束された大きな成果を生み出していない」と結論づけた。英国では SRC の AI 助成がほぼ打ち切られ、Edinburgh・Essex・Sussex を残して研究体制が解体される。米国側の縮小はこれとは別系統の出来事で、米国学術研究会議(NRC)の ALPAC 報告(1966年)が機械翻訳への助成を止め、Mansfield 修正条項(1969年)が DARPA に軍事目的へ直結する研究を義務づけ、1974年には DARPA が音声理解研究(SUR)計画を打ち切った。英米それぞれの理由で資金が細ったこの十年が「第一次 AI 冬」と呼ばれ、Newell や Minsky が示した楽観的なスケジュールへの最初の本格的な反論となった。
よくある質問
- Lighthill 報告はいつ出たのか
- 英国科学研究評議会(SRC)の依頼で1972年7月付にまとめられ、公表は1973年です。「1974年」は第一次 AI 冬の始まりとして数えられる年であって、報告そのものの年ではありません。
- 米国の AI 冬も Lighthill 報告のせいなのか
- 違います。米国側は別系統の出来事で、ALPAC 報告(1966年)が機械翻訳への助成を止め、Mansfield 修正条項(1969年)が DARPA に軍事目的へ直結する研究を義務づけ、1974年に DARPA が音声理解研究(SUR)計画を打ち切りました。
1980年代

Jason Riedy (Wikimedia Commons) · CC BY 2.0 · Commons ↗ Stanford の MYCIN(細菌感染症の診断)や DEC の XCON(VAX 構成の自動化)が示した、特定領域の専門知識を「if-then」ルールで明示的にコード化するアプローチが、1980年代前半に産業界へ広がる。日本では通産省が「第五世代コンピュータ」計画を主導(1982-1992)。1985年には企業の AI 関連支出が年間10億ドルを超えたが、ルールベース系の保守困難さと汎化能力の欠如により、1987年の Lisp マシン市場崩壊を境に急速に失速する(第二次 AI 冬)。
よくある質問
- エキスパートシステムの隆盛はなぜ終わったのか
- ルールベース系の保守困難さと汎化能力の欠如です。1987年に Lisp マシン市場が崩壊したのを境に急速に失速し、第二次 AI 冬が続きました。
1990年代

Christina Xu (Wikimedia Commons, via Flickr) · CC BY 2.0 · Commons ↗ 1997年5月3日から11日にかけてニューヨークで行われたリターンマッチ6番勝負で、IBM のチェス専用機 Deep Blue が現役世界王者 Garry Kasparov を 3.5-2.5 で下した。1996年2月フィラデルフィアの初戦マッチは Kasparov の 4-2 勝ち(第1局は Deep Blue が取り、現役世界王者が通常持ち時間で計算機に負けた最初の1局となった)。IBM は1年で終盤データベースと評価関数を強化し、グランドマスターを顧問に加えた。標準的な持ち時間のマッチで計算機が現役世界王者を破ったのはこれが最初である。実態はゲーム木探索+特化評価関数で、現代的な学習は含まない。
よくある質問
- Deep Blue が Kasparov に勝ったのはいつか
- 1997年5月11日、ニューヨークで行われた6番勝負の最終局です。マッチの結果は3.5対2.5でした。標準的な持ち時間のマッチで計算機が現役世界王者を破ったのはこれが最初です。
- 1996年の対戦はどうだったのか
- 1996年2月のフィラデルフィアでの初戦マッチは Kasparov の4対2勝ちです。ただし第1局は Deep Blue が取り、現役世界王者が通常の持ち時間で計算機に負けた最初の1局になりました。
2010年代
- EVT.007T2iPhone 4S と Siri ── ジョブズ最後の発表iPhone の歴史携帯電話・スマートフォンの歴史

Daniel Voigt Godoy (Wikimedia Commons) · CC BY 4.0 · Commons ↗ Toronto 大学の Alex Krizhevsky・Ilya Sutskever・Geoffrey Hinton が「SuperVision」名義で投稿し、画像認識ベンチマーク ILSVRC 2012 の分類タスクでトップ5エラー率 15.3% を記録した(供給データのみの投稿は 16.4%)。同チーム以外で最良だったのは東京大学 ISI の従来手法で 26.2%。約6000万パラメータの畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を NVIDIA GTX 580(3GB)2枚で5〜6日学習させたこのアーキテクチャは、のちに筆頭著者の名から「AlexNet」と呼ばれるようになる。これ以降、コンピュータビジョンの主流は手作業の特徴量設計から深層学習へ移った。

Immigrant laborer (Wikimedia Commons) · CC0 1.0 (public domain dedication) · Commons ↗ DeepMind の AlphaGo が、囲碁世界トップ棋士のひとり李世乭(イ・セドル)との5番勝負(2016年3月9〜15日、ソウル)を 4-1 で制した。組合せ爆発のため「あと10年は機械に解けない」とされてきた囲碁の壁を、モンテカルロ木探索+深層強化学習の組合せで突破した出来事。第2局の37手目、AlphaGo は「人間が打つ確率は1万分の1」と自ら見積もった五線の肩ツキを放ち、棋士コミュニティを驚かせた。李世乭が唯一勝った第4局では、逆に78手目の割り込みが「神の一手」と呼ばれる ── こちらも1万分の1の、人間の側からの返答だった。
よくある質問
- AlphaGo と李世乭の対局はいつ行われ、どちらが勝ったのか
- 2016年3月9日から15日にかけてソウルで5番勝負が行われ、AlphaGo が4勝1敗で勝ちました。李世乭が勝ったのは第4局だけです。
- 第2局の37手目はなぜ有名なのか
- 五線への肩ツキで、AlphaGo 自身が「人間が打つ確率は1万分の1」と見積もった手だったからです。第4局では李世乭が同じく1万分の1の78手目を返し、こちらは「神の一手」と呼ばれました。

Yuening Jia (Wikimedia Commons), DOI:10.1088/1742-6596/1314/1/012186 · CC BY-SA 3.0 · Commons ↗ Google Brain と Google Research の Ashish Vaswani ら8名が、Self-Attention のみで構築される系列変換アーキテクチャ Transformer を提案。arXiv 投稿は6月12日、査読を経て同年12月の NIPS 2017 で発表された。それまで自然言語処理の主役だった RNN・LSTM を、並列化可能で学習効率の高い構造で置き換えた。被引用数は2026年時点で25万件を超え、21世紀に発表された論文のうち最も引用された10本に数えられる。現代の大規模言語モデル(BERT、GPT 系、Claude、Gemini)はすべてこのアーキテクチャの拡張である。
よくある質問
- Attention Is All You Need はいつ発表されたのですか。
- arXiv への投稿が2017年6月12日、査読を経ての発表は同年12月の NIPS 2017 です。著者は Google Brain と Google Research の Ashish Vaswani ら8名でした。

Daniel Voigt Godoy (Wikimedia Commons) · CC BY 4.0 · Commons ↗ Google AI の Jacob Devlin らが、Transformer エンコーダを双方向にマスクド言語モデルとして事前学習する手法 BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)を arXiv に投稿(arXiv:1810.04805)。11タスクで最高記録を更新し、BERT-Large は公式 GLUE リーダーボードで 80.5 を記録した。翌年 NAACL 2019 で発表され Best Long Paper を受賞。「事前学習+ファインチューニング」という現代 LLM のパラダイムを確立した。GPT 系(左→右の自己回帰)とともに、Transformer 系言語モデルの二大潮流を成す。
2020年代
OpenAI (Wikimedia Commons) · Public domain (below threshold of originality) · Commons ↗ OpenAI の1750億パラメータの言語モデル。論文「Language Models are Few-Shot Learners」は2020年5月28日に arXiv へ投稿され、6月11日にはこのモデル群を動かす API が順番待ち制のプライベートベータとして公開された。GPT-2(15億パラメータ)の100倍を超える規模で、重みを更新せずプロンプト内の数例だけで翻訳・要約・質問応答・コード生成をこなす「Few-shot」能力を示した。論文は NeurIPS 2020 の Best Paper Award 3本のうち1本に選ばれ、研究コミュニティの議論を大規模言語モデルのスケーリングへ集中させた。
OpenAI (Wikimedia Commons) · Public domain (below threshold of originality) · Commons ↗ OpenAI が ChatGPT を無償のリサーチプレビューとして公開。2022年初頭に学習を終えた GPT-3.5 系列のモデルを RLHF で対話用にファインチューニングし、ブラウザだけで使える形にした。公開5日後に100万ユーザ(Sam Altman による)、2ヶ月後には推定1億の月間アクティブユーザ ── 後者は UBS が Similar Web のデータから算出し Reuters が2023年2月1日に報じた推計であって、OpenAI の公表値ではない。当時としては消費者向けアプリ史上最速の立ち上がりで(2023年7月に Threads が5日で1億登録に達して更新された)、生成AI を専門研究の文脈から一般の家庭・学校・職場へ一夜にして移した。Google・Meta・Anthropic・Microsoft の方針転換を引き起こす起点となる。

Hstoops / Microsoft (Wikimedia Commons) · Public domain (below threshold of originality; trademark applies) · Commons ↗ Microsoft が Bing 検索にチャット機能を統合した「New Bing」を待機リスト付きの限定プレビューとして発表。 搭載モデルは当日「ChatGPT より強力な次世代 OpenAI 大規模言語モデル」とだけ説明され、 GPT-4 だと明かされたのは3月14日だった。 5週間後の3月16日には Microsoft 365 Copilot も発表され、 検索・生産性ソフトウェアの主戦場に LLM が一気に持ち込まれた。 ChatGPT 公開から2ヶ月あまりの発表で、 業界全体が「LLM をどう自社製品に統合するか」へと方針転換する号砲となった。 Google は前日の2月6日に Bard を発表していたが、 その告知動画の事実誤認が翌8日に表面化する。

Bubeck, S. et al., "Sparks of Artificial General Intelligence" (arXiv:2303.12712), Microsoft Research — via Wikimedia Commons · CC BY 4.0 · Commons ↗ OpenAI が GPT-4 を発表。テキストと画像を入力に取り、テキストを返すマルチモーダルモデルだが、発表時点の画像入力はリサーチプレビュー扱いで、一般提供は2023年9月まで待つことになった。技術レポートは模擬 Uniform Bar Exam で 298/400、受験者の上位10%程度と報告した。ただしこの90パーセンタイルという数値は後に過大と指摘され、7月実施回の受験者と比べると69パーセンタイル未満、合格者に限れば約48パーセンタイル、論述部分では約15パーセンタイルと再推定されている(Martínez, Artificial Intelligence and Law, 2024)。AP 試験の成績も一様ではなく、生物・環境科学・マクロ経済などは5点満点、一方で AP English Language(2点、14–44パーセンタイル)と AP English Literature(2点、8–22パーセンタイル)は落第相当だった。パラメータ数・ハードウェア・学習計算量・データセット構成は「競争環境と大規模モデルの安全上の含意」を理由に一切開示されず、GPT-3 までの「公開して研究する」姿勢から商業的に閉じた研究機関への転身を象徴する世代となった。GPT-4 は2025年4月30日に ChatGPT から退役し GPT-4o に置き換えられたが、API では提供が続いた。
- EVT.022T2iPhone 16 と Apple IntelligenceiPhone の歴史携帯電話・スマートフォンの歴史











