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CD-ROM ── 音楽用の銀盤をコンピュータの配布媒体にした規格

トレイを開いた4倍速の CD-ROM ドライブ
出典Douglas Muth from Philadelphia, PA, USA (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 2.0 · Commons で見る ↗

メタデータ

日付
年代
1980s
Tier
T1
出典数
10
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02
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CD-ROM は、音楽用のコンパクトディスクと同じ直径12cm のディスクに、コンピュータのデータを記録する読み出し専用の形式である。ディスクの仕様は、フィリップスとソニーがライセンシーだけに配った「Yellow Book」で定められた。ソニーの社史は CD-ROM の規格化を 1985年 としている。プレス工場で大量に安く複製できる数百 MB の媒体は、ソフトと資料の配り方を変え、1990年代の「マルチメディア PC」の前提になった。

年月出来事
1983年フィリップスとソニーがディスクの規格を作る(英語版 Wikipedia)
1985年ソニーの社史がいう CD-ROM の規格化の年。7月にフィリップスがドライブ CM 100 を出す(英語版 Wikipedia)
1985年10月米国の企業がファイル構造の共同検討を始める
1986年3月Microsoft がシアトルで第1回 CD-ROM 会議を開く
1986年5月ファイル構造の「High Sierra」案がまとまる
1986年9月17日Microsoft が MS-DOS から CD-ROM ドライブを使う拡張を発表
1986年12月ファイル構造が ECMA-119 になる(のちの ISO 9660)
1987年9月8日Microsoft が初の CD-ROM アプリケーション Bookshelf を出す
1988年7月ディスクの仕様が ECMA-130 として公開の規格になる
1989年2月28日富士通が CD-ROM ドライブを標準で載せた FM TOWNS を発表
2008年1月Apple の MacBook Air が光学ドライブを外付けにする

いつできたのか ── 1983年、1985年、1986年

CD-ROM の「始まりの年」は、資料によって違う。英語版 Wikipedia は、フィリップスとソニーが規格を作ったのを1983年、発表を1984年とし、1985年に日本で開かれた最初の COMDEX でデンオンとソニーが披露したと書く。初めて一般に売られたドライブは、1985年7月のフィリップスの CM 100 だという(これらは Wikipedia による)。ソニーの社史は、CD の派生として「CD-ROM」(1985年規格化)を挙げる。一方、Microsoft の社史の1986年の項は、その年の世界の出来事として "Sony introduces the CD-ROM" と書いている。規格の策定、発表、製品の出荷が数年にまたがっており、どの段階を数えるかで年が変わる。

公開の規格になったのは後である。ECMA-130 の前書きによると、ディスクの仕様を定めた「Yellow Book」はフィリップスとソニーがライセンシーだけに配った文書で、1987年春に ECMA がその内容を公開の規格にするよう依頼された。こうして1988年7月に ECMA-130 の第1版ができ、国際規格 ISO/IEC 10149 にもなった。

ディスクの中身 ── 2,048バイトのセクタ

音楽 CD との違いは、誤りへの備えの厚さにある。ECMA-130 は、データを「セクタ」という単位で記録し、2つのモードを定める。

項目ECMA-130 の定め
モード11セクタに2,048バイトのデータ。誤り検出符号(EDC)と誤り訂正符号(ECC)に、CD 共通の CIRC を重ねて守る
モード21セクタに2,336バイトのデータ。CIRC だけで守る
読み出しの速さ毎秒75セクタ
音楽トラック同じディスクに、音楽 CD と同じ形式のトラックを混ぜてもよい

モード1で毎秒75セクタを読むと、毎秒153,600バイトになる。The Digital Antiquarian(Jimmy Maher)は、1986年当時の CD ドライブの読み出しを毎秒153.6K とし、これが動画などを扱ううえでの制約になったと書く。容量は、英語版 Wikipedia の計算では74分のディスクで約650MiB になる。The Digital Antiquarian は、40MB のハードディスクが広すぎるほどとされた1986年に、650MB という数字がどれほど途方もなかったかを強調している。

ファイルの置き方を決める ── High Sierra から ISO 9660 へ

ディスクの物理的な形式が決まっても、その上にどうファイルを並べるかは別の問題だった。ECMA-130 の前書きによると、1985年10月に米国の企業とソフト会社が専門家を招いて検討を始め、ECMA の技術委員会や日本の専門家も加わって、1986年5月に「High Sierra Group」案がまとまった。ECMA はこれを整理して1986年12月に ECMA-119 とし、ISO 9660 として採用された。

Microsoft はこの形式に乗った。同社の社史によると、1986年9月17日、MS-DOS 3.1 か 3.2 が動き CD-ROM ドライブを持つコンピュータが、High Sierra 形式のディスクを読めるようにする拡張を発表し、ドライブメーカーに直接ライセンスした。1987年には MS-DOS CD-ROM Extensions 1.0 を出荷している。

Microsoft の後押しと、最初のアプリケーション

The Digital Antiquarian によると、1986年3月の第1週、シアトルで開かれた第1回の Microsoft CD-ROM Conference には、主催者が見込んだ500〜600人を大きく超える1,000人以上が押し寄せた。Microsoft の社史は、1987年9月8日に同社初の CD-ROM アプリケーション Bookshelf を出したと記す。よく使われる参考図書10点を1枚に収めたものだった。2年後には、Office の Macintosh 版を CD-ROM でも出している(初代 Microsoft Office)。

マルチメディア PC と、日本の FM TOWNS

ドライブがパソコンの標準装備になるまでには時間がかかった。PC Watch は、富士通が 1989年2月28日 に発表した FM TOWNS を、CD-ROM ドライブを標準搭載した世界初の PC としている。

米国では、Multimedia PC Marketing Council がマルチメディア PC の仕様を定め、そのロゴの付いた機械とソフトの互換を保証しようとした。仕様 1.0 は、386SX、2MB の RAM、30MB のハードディスクに加えて、次の CD-ROM ドライブを必須にした。

項目マルチメディア PC 仕様 1.0 の要件
読み出しの速さ持続して毎秒150kB
平均シーク時間1秒以下
CPU の負荷毎秒150kB を読む間、CPU の帯域の40%以下
形式モード1に対応(モード2は任意)
ドライバ拡張オーディオ API を備えた MSCDEX 2.2
音声音楽 CD(Red Book)の出力と前面の音量つまみ

ゲーム機も CD-ROM を使い始め、PlayStation はソフトの媒体にこれを選んだ。

衰退 ── DVD とネットワーク、そして外付けへ

CD-ROM は、同じ直径で何倍ものデータを収める DVD に置き換えられていった。ソフトがネットワークで配られるようになると、光学ドライブそのものが本体から外れ始める。Apple は2008年1月15日、MacBook Air の光学ドライブを99ドルの外付け品にし、iTunes Store での映画のレンタル、Time Capsule への無線バックアップ、ほかの PC や Mac のドライブを使ったソフトのインストールがあるので、多くの利用者には光学ドライブは要らなくなると説明した。

位置づけ

CD-ROM の発明は、新しいディスクではなく、すでに音楽のために作られていた工場と規格を、データのために借りたことにある。ディスクの仕様はフィリップスとソニーが握ったまま広がり、ファイルの置き方は米国の企業を中心とする検討から決まり、普及の旗振りは Microsoft が担った。のちに書き込める CD-R、さらに DVD と Blu-ray へと光ディスクの系譜が続く。記録媒体の流れは フロッピーディスク、Zip ドライブ、半導体・ハードウェアの年表、企業については ソニー と Microsoft を参照。

よくある質問

CD-ROM はいつできたのですか。
ソニーの社史は、データ用の CD-ROM が1985年に規格化されたとしています。英語版 Wikipedia は、フィリップスとソニーが規格を作ったのを1983年、発表を1984年、初めて一般に売られたドライブであるフィリップスの CM 100 を1985年7月としています。公開の規格としては1988年7月の ECMA-130 があります。
CD-ROM の容量はどれくらいですか。
ECMA-130 では、モード1の1セクタに2,048バイトのデータが入り、毎秒75セクタが読まれます。英語版 Wikipedia の計算では、74分のディスクで約650MiB になります。
Yellow Book とは何ですか。
CD-ROM のディスクの仕様を定めた文書の通称です。ECMA-130 の前書きによると、フィリップスとソニーがライセンシーだけに配っていたもので、1987年春に ECMA がこれを公開の規格にするよう依頼され、ECMA-130 と ISO/IEC 10149 になりました。
CD-ROM ドライブを最初から載せたパソコンは何ですか。
PC Watch は、富士通が1989年2月28日に発表した FM TOWNS を、CD-ROM ドライブを標準搭載した世界初の PC としています。

出典

  1. 一次資料ECMA-130: Data interchange on read-only 120 mm optical data disks (CD-ROM), 2nd edition, June 1996 — Ecma International

    前書きの経緯(High Sierra 案、ECMA-119 と ISO 9660、Yellow Book、ISO/IEC 10149)、モード1・モード2のデータ量、毎秒75セクタ

    取得日: 2026-10-25

  2. 一次資料ECMA-130 — Ecma International (standard page)

    第1版は1988年7月

    取得日: 2026-10-25

  3. 一次資料Sony History 第10章 スタジオ録音もデジタルに — ソニー(Wayback Machine 保存版)

    CD のファミリーとして、音声・映像・文字用の CD-ROM を1985年規格化と記す

    取得日: 2026-10-25

  4. 一次資料The History of Microsoft — 1986 (Microsoft Learn)

    1986年9月17日の MS-DOS の CD-ROM 拡張の発表と High Sierra 形式。年表の「世界の出来事」に Sony introduces the CD-ROM

    取得日: 2026-10-25

  5. 一次資料The History of Microsoft — 1987 (Microsoft Learn)

    1987年9月8日、初の CD-ROM アプリケーション Bookshelf(参考図書10点)。MS-DOS CD-ROM Extensions 1.0 の出荷

    取得日: 2026-10-25

  6. 一次資料Multimedia PC Specification 1.0 — Multimedia PC Marketing Council (archived copy)

    CD-ROM ドライブの要件(持続150kB/秒、平均シーク1秒以下、CPU 負荷40%以下、MSCDEX 2.2)、386SX・RAM 2MB・HDD 30MB

    取得日: 2026-10-25

  7. 二次資料A Slow-Motion Revolution — Jimmy Maher, The Digital Antiquarian, Sep 30, 2016

    1986年3月の第1回 Microsoft CD-ROM Conference(予想500〜600人に対し1,000人超)、650MB の衝撃、毎秒153.6K の読み出し

    取得日: 2026-10-25

  8. 二次資料FM TOWNS誕生から35周年。初のCD-ROM標準搭載パソコンを振り返る — 大河原克行, PC Watch, 2024年

    富士通が1989年2月28日に、CD-ROM ドライブを標準搭載した世界初の PC として FM TOWNS を発表したとする

    取得日: 2026-10-25

  9. 一次資料Apple Introduces MacBook Air—The World's Thinnest Notebook — Apple Newsroom, Jan 15, 2008

    外付けの MacBook Air SuperDrive(99ドル)と、多くの利用者には光学ドライブが要らなくなるという Apple の説明

    取得日: 2026-10-25

  10. 三次資料CD-ROM — Wikipedia

    1983年の規格作成、1984年の発表、1985年の日本の COMDEX での披露、フィリップス CM 100(1985年7月)、74分ディスクの容量計算

    取得日: 2026-10-25

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