T1#consumer#launch#standard#japan

コンパクトディスク ── レコードを置き換えた直径12cmの銀盤

ミラノの国立科学技術博物館に展示されたソニーの CD プレーヤー CDP-101。黒い横長の本体の前面にトレイと表示窓がある
出典Alessandro Nassiri, Museo Nazionale della Scienza e della Tecnologia Leonardo da Vinci (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 4.0 · Commons で見る ↗

メタデータ

日付
年代
1980s
Tier
T1
出典数
08
関連項目
01
Tags
#consumer#launch#standard#japan

コンパクトディスク(CD)は、1982年10月1日に日本で発売された。この日、ソニーが CD プレーヤーの1号機 CDP-101 を16万8000円で売り出し、CBS・ソニーが CD ソフト50タイトルを発売した。ソニーの社史によると、CD ソフトの生産第1号はビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街』である。規格はオランダのフィリップスとソニーが共同でまとめたもので、フィリップスは1982年末の日本での発売に続いて、1983年に欧州で CD を投入したとしている。

項目内容
共同開発の開始1979年8月(ソニー・フィリップス)
共通規格の確定1980年6月
発表1982年8月31日(ソニー、CBS・ソニー、フィリップス、ポリグラムの4社)
発売1982年10月1日(日本)
1号機ソニー CDP-101、16万8000円
ディスク直径12cm、最大演奏時間74分42秒
音声サンプリング周波数44.1kHz、16ビット
符号誤り訂正 CIRC、変調 EFM
規格書通称「レッドブック」。IEC 60908 としても公開

※ 日付・価格・ディスク寸法はソニーの社史、符号方式と規格書はフィリップスの技術者 Hans B. Peek の記述による。

フィリップスの「ALP」と、ソニーの PCM

CD は、別々に育った2つの技術の合流だった。Peek によると、フィリップスは光で読み取るビデオディスク(VLP)を1972年に報道陣へ公開しており、1974年初めにその技術を音楽に使う「ALP(Audio Long Play)」のプロジェクトを立ち上げた。デジタル化と誤り訂正を組み込んだ直径11.5cm のディスクの試作機は、1979年3月8日に公開されている。

一方のソニーは、ソニーの社史によれば、NHK 技術研究所から移った中島平太郎のもとで音のデジタル化(PCM)を進めていた。1977年9月にはビデオテープレコーダーと組み合わせてデジタル録音・再生をする PCM プロセッサー「PCM-1」を48万円で商品化し、光ディスクに直接デジタル音声を記録する研究にも取りかかっていた。

社史によると、1978年6月にアイントホーフェンのフィリップス本社を訪ねた大賀典雄(当時副社長)は、「この直径11.5cmのディスクに1時間の音楽が入ります」という説明とともに ALP を見せられ、共同開発の打診を受けた。両社は1960年代にコンパクトカセットの規格化で協力した間柄で、ポリグラムと CBS・ソニーというレコード会社をそれぞれ抱えていた。

16ビット、12cm、74分42秒

共同開発は1979年8月末に始まった。Peek によると、第1回の会議は8月27・28日にアイントホーフェンで開かれ、東京と交互に6回を重ねて、最後の会議は1980年6月17・18日の東京だった。誤り訂正には CIRC(クロスインターリーブ・リードソロモン符号)、変調には EFM(8-14変調)が採られ、両社はこの2つで特許を出願している。

社史が伝える論点は数字の争いだった。量子化ビット数は、フィリップスの14ビットに対してソニーの土井利忠が16ビットを譲らなかった。ディスクは、フィリップスが記録時間60分・直径11.5cm を主張し、ソニーは75分・12cm を求めた。大賀が「オペラの幕が途中で切れてはだめだ。ベートーベンの『第九』も入らなくては」と述べ、クラシックの演奏時間を調べると75分あれば95%以上の曲が入ることが分かった。12cm では上着のポケットに入らないというフィリップスの反論には、日米欧の上着のポケットを調べて14cm を下回るものはないと返した。最大演奏時間は74分42秒、直径は12cm、サンプリング周波数は44.1kHz、16ビットに決まった。

Peek は同じ経緯を、直径の変更は大賀の個人的な希望によるもので、大賀の好きな74分の『第九』の演奏が入るようにした、とフィリップス側の J. Sinjou の話として書いている。中心の穴の大きさは、Sinjou がオランダの10セント硬貨を机に置いて決まったという。

両社がまとめた方式は「コンパクトディスク・デジタルオーディオシステム」と名付けられた。Peek によると、規格の全体は「レッドブック」と呼ばれる文書にあり、国際電気標準会議(IEC)の規格 IEC 60908 としても公開されている。

業界の統一と、発売までの1年

ソニーの社史によると、デジタルオーディオディスクの規格は、国内外29社でつくる「DAD 懇談会」で議論されていた。1980年6月、懇談会ではソニー・フィリップスの光学式、テレフンケンの機械式、日本ビクターの静電式の3方式の評価が始まり、1981年4月には光学式と日本ビクターの方式の2つに絞られた。ソニーが CD を発売するころには、ほとんどの会社が CD 方式の採用を表明し、事実上の世界統一規格になっていたと社史は書く。

発売日は大賀が「1982年10月」と指示した。光学ピックアップ、半導体レーザー、500個の IC で処理していた信号を3個にまとめる LSI など、部品はまだそろっていなかった。ディスクの側では、CBS・ソニーが静岡県の工場に CD ソフトの生産設備をつくり、1982年4月にラインを動かした。最後まで残った反りの問題は、自動車のバンパーなどに使われていたポリカーボネートで解決し、プレス生産が軌道に乗ったのは発売半月前の9月半ばだった。

1982年10月1日

1982年8月31日、ソニー、CBS・ソニー、フィリップス、ポリグラムの4社が東京・大手町の経団連会館で発表会を開き、秋の国内発売を明らかにした。10月1日、ソニーは CDP-101 を発売した。型番は2進法の「0101」から取ったもので、名付けたオーディオ事業部長の出井伸之は、中級機を表すことの多い「5」の意味を込めたという。

同じ日、CBS・ソニーから CD ソフト50タイトルが出た。クラシックだけでなくポップスやロック、歌謡曲までそろえ、年末までに100タイトル余りが発売された。ソニーの社史は、ここで「生産第1号」としてビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街』を挙げている。

なお、フィリップスのメディアライブラリーは日本での発売を1982年末、欧州での投入を1983年としている。日付の書き方は会社によって異なるが、日本が最初の市場だった点は両社の記述で一致する。

5万円を切ったプレーヤーと、LP の逆転

16万8000円の CDP-101 はしばらくよく売れたが、購入者は音質にこだわるクラシックやジャズのファンが中心で、市場はその後1年ほど伸び悩んだと社史は書く。流れを変えたのは、1984年11月に4万9800円で出たポータブル CD プレーヤー「D-50」だった。盛田昭夫が「5万円を切る価格でいこう」と方針を出し、発売時は原価率200%の赤字だったが、1年半で黒字に転じたという。この系統の小型プレーヤーは、ウォークマン のように歩きながら聴けるという位置付けから「ディスクマン」と名付けられた。

日本レコード協会(RIAJ)の統計で国内の生産数量を見ると、CD は1986年に4512万枚となり、25・30cm の LP(33回転)の4275万枚を上回った。ソニーの社史も、1号機の誕生からわずか4年で音楽メディアの多数派に転じたと書いている。

ピークと、その後

RIAJ の統計で、8cm と12cm を合わせた CD の国内生産数量は1997年と1998年がともに約4億5700万枚だった。生産金額は1998年が約5,879億円で最も多い。2025年は約1億269万枚・約1,445億円で、1998年と比べると数量で約22%、金額で約25%にあたる。

米国では、レコード業界団体 RIAA の2006年版統計(1996〜2006年)で、CD の出荷は2000年の9億4250万枚、小売換算132億1450万ドルが最大だった。その後は年ごとに減り、2006年には6億1490万枚になっている。RIAA の2024年版報告によると、2024年の CD 出荷は3300万枚で、アナログ盤アルバムの4400万枚を3年続けて下回った。CD の売上は5億4100万ドルだった。

減少の時期は、MP3 による音楽ファイルの普及、Napster のファイル共有、iTunes のダウンロード販売、そして Spotify などのストリーミングが広がった時期と重なる。ただし上の統計は数量と金額を示すだけで、原因の内訳までは示していない。

音楽の器から、光ディスクの家系へ

CD は音楽用にとどまらなかった。ソニーの社史は、データ用の CD-ROM が1985年に、映像用のビデオ CD が1993年に規格化されたと記している。Peek も、CD のあとに CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD、Blu-ray と光ディスクの系譜が続いたとまとめている。同じ直径12cm のディスクは DVD と Blu-ray に引き継がれた。録音できる小型ディスクとしてソニーが10年後に出したのが ミニディスク である。

機器全体の流れは 半導体・ハードウェアの年表 を参照。

よくある質問

CD はいつ発売されたのですか。
ソニーの社史によると、ソニーは1982年10月1日に日本で CD プレーヤーの1号機 CDP-101 を発売し、同じ日に CBS・ソニーから CD ソフト50タイトルが発売されました。フィリップスは、欧州での発売を1983年としています。
最初の CD は何ですか。
ソニーの社史は、1982年10月1日に CBS・ソニーが発売した50タイトルのうち、CD ソフトの生産第1号をビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街』としています。
CD の直径はなぜ12cmなのですか。
ソニーの社史によると、フィリップスは当初、直径11.5cmで60分を提案しました。ソニーは大賀典雄の「ベートーベンの第九も入らなくては」という考えから75分を求め、それには12cmが必要だったため、最大演奏時間は74分42秒、直径は12cmに決まりました。
CD の売り上げが最も多かったのはいつですか。
日本レコード協会の統計では、国内の CD 生産金額は1998年の約5,879億円が最多で、生産数量は1997年と1998年がともに約4億5700万枚でした。米国では RIAA の統計で2000年の出荷が9億4250万枚でした。

出典

  1. 一次資料第8章 「レコードに代わるものはこれだ」<コンパクトディスク> — ソニーグループ「Sony History」(archived Oct 11, 2021)

    1978年6月の大賀のフィリップス訪問、1979年8月の共同開発開始、14ビット対16ビット、11.5cm対12cm と74分42秒、44.1kHz、DAD懇談会への提案と1981年4月の評価終了、1982年10月の発売目標

    取得日: 2026-10-25

  2. 一次資料第9章 石もて追われる大賀 — ソニーグループ「Sony History」(archived Nov 17, 2025)

    1982年4月の CD ソフト生産ライン稼働、ポリカーボネートの採用、8月31日の4社発表会、10月1日の CDP-101 発売と16万8000円、型番の由来、50タイトルと生産第1号『ニューヨーク52番街』、年末までの100タイトル余り、1984年11月の D-50(4万9800円)

    取得日: 2026-10-25

  3. 一次資料第10章 スタジオ録音もデジタルに <ミニディスク> — ソニーグループ「Sony History」(archived Nov 17, 2025)

    1986年に国内生産枚数で LP を逆転、1992年に3億枚、CD-ROM(1985年規格化)とビデオ CD(1993年規格化)

    取得日: 2026-10-25

  4. 一次資料The Emergence of the Compact Disc — Hans B. Peek, IEEE Communications Magazine, January 2010 (hosted by Philips)

    開発に加わったフィリップスの技術者による記述。1979年3月8日の試作機公開、1979年8月27・28日から1980年6月17・18日までの6回の会議、CIRC と EFM、44.1kHz・16ビット・12cm、レッドブックと IEC 60908

    取得日: 2026-10-25

  5. 一次資料Compact Disc, 1982-1983 — Philips Media library

    フィリップスは1982年末の日本発売に続き、1983年に欧州で CD を投入

    取得日: 2026-10-25

  6. 一次資料音楽ソフト種類別生産実績推移 — 一般社団法人 日本レコード協会

    CD(8cm・12cm)と25・30cm 33回転盤の年別生産数量・金額。本文の合計値は8cm と12cm の欄を足したもの

    取得日: 2026-10-25

  7. 一次資料2006 Year-End Shipment Statistics — RIAA (archived Jun 25, 2007)

    米国の CD 出荷数量と小売換算金額(1996〜2006年)。2000年が9億4250万枚・132億1450万ドル

    取得日: 2026-10-25

  8. 一次資料RIAA 2024 Year-End Revenue Report

    2024年のアナログ盤アルバム4400万枚対 CD 3300万枚、CD の売上5億4100万ドル

    取得日: 2026-10-25

最終更新:

共有