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ARM アーキテクチャ 初プロセッサ

Acorn ARM Evaluation System の基板中央、ソケットに載った ARM1 プロセッサ。セラミックパッケージに VLSI のロゴと日付コード 8525 が見える
出典Peter Howkins · CC BY-SA 3.0 · Commons で見る ↗

メタデータ

日付
年代
1980s
Tier
T1
出典数
11
関連項目
03
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ARM アーキテクチャ の歴史は、1985年4月26日に英国ケンブリッジの Acorn Computers へ届いた1枚のチップから始まる。Sophie Wilson が命令セットを、Steve Furber がマイクロアーキテクチャを設計した ARM1 である。名前は当時 Acorn RISC Machine の略だった。Furber の回想では、チップは朝に届き、テスト基板の配線の問題をいくつか直したあと、午後には BBC BASIC が動いていた。今日スマートフォンからデータセンターまで使われる Arm の命令セットは、この32ビット RISC プロセッサの直系である。

なぜ Acorn は自分で CPU を作ったのか

Acorn は英国の教育用パソコン BBC Micro の開発元で、BBC Micro は 6502 を2MHz で動かしていた。次の機種に載せるプロセッサを探したが、市販品はどれも満足できなかった。Furber の CHM オーラルヒストリーによれば、共同創業者の Hermann Hauser が Berkeley RISC と Stanford MIPS を説明した論文を持ち込み、縮小命令セットでプロセッサを単純にするという考え方が、自分たちの問題に答えているように見えたという。

決め手になったのは1983年10月の出張である。Wilson と Furber は、6502 の後継(65C816)を設計していたアリゾナ州フェニックスのチームを訪ねた。2人が見たのは、郊外の平屋で、地元の学生まで手伝いながら CPU を設計している小さなチームだった。Furber はこの訪問を、ARM の開発を正式な計画に格上げしていく大きな節目の一つに挙げている。

ARM1 の誕生

項目ARM1(1985年)
設計Sophie Wilson(命令セット)、Steve Furber(マイクロアーキテクチャ)
製造VLSI Technology
プロセス3ミクロン
トランジスタ数約2万5000
データ幅32ビット
パイプライン3段
初シリコン1985年4月26日
消費電力目標の1W を大きく下回る0.1W 未満(Furber)

設計の手法は手作りに近かった。Furber は命令セットをもとに BBC BASIC で参照モデルを書き、それを部品ごとの仕様に分けて設計を進めた。開発環境全体で約850行の BBC BASIC だったという。設計の最終確認は1985年1月、VLSI Technology のミュンヘン事務所で行われた。本格的に取りかかってから動くシリコンを手にするまで、約18か月である。

チームが恐れていたのは、RISC の考え方は広く知られていたので、大企業が先に商用プロセッサを出して自分たちを踏みつぶすことだった。ところが1985年4月に動くシリコンを手にしても、まだ誰もそうしていなかった。

低消費電力は偶然か

ARM が携帯機器に向いた理由として語られる低消費電力について、設計者2人の説明は少し違う。

Furber によれば、目標は安いプラスチックパッケージに収めることで、それには消費電力をおよそ1W 以下にする必要があった。当時の設計ツールでは電力を正確に予測できなかったので、余裕を大きく取って設計した結果、0.1W 未満に収まった。彼は、低消費電力はある程度は思いがけない幸運だったが、偶然の産物ではなかったと説明している。

Wilson の語る逸話はもっと劇的である。The Register の記事によれば、最初のチップを評価基板に載せたとき、電源と直列につないだ電流計の針はゼロを指していた。基板の故障で電源線に電流が流れておらず、プロセッサは論理回路からの漏れ電流だけで動いていたのだという。Wilson は、今日 ARM が最も評価される低消費電力は「complete accident」だったと語っている。

評価システム、そして Archimedes

ARM1 は製品用のチップにはならなかった。Acorn は1986年7月7日付のプレスリリースで、前年8月に初めて公表した ARM の評価システムの提供を発表している。BBC Micro・Master シリーズにつなぐ版と IBM PC 互換機につなぐ版があり、前者は税抜き4,500ポンドだった。リリースは ARM を低消費電力の CMOS で作られた単一チップの32ビット RISC と紹介し、8MHz で平均4 MIPS、基本命令は44個だと書いている。想定用途の例には、通信、マイクロコンピュータ、エキスパートシステム、レーザープリンタの制御器などが並ぶ。製造と販売は VLSI Technology が担った。

家庭や学校に届いたのは、第2世代の ARM2 を積んだ Acorn Archimedes で、最初の機種は1987年6月に発売された。Furber によれば、Archimedes の中核は ARM2 と、メモリ・映像・入出力を受け持つ3つのチップ(MEMC、VIDC、IOC)の4チップ構成である。ARM はもともと単体のチップではなく、この4つの組み合わせとして構想されていた。

会社としての Arm

年出来事
1990年11月Acorn・Apple・VLSI Technology の合弁で Advanced RISC Machines Ltd. を設立。創業メンバーは設計者12人
1991年Robin Saxby が初代会長兼 CEO に就任し、設計をライセンスする事業モデルを導入
1993年Apple Newton が ARM アーキテクチャで発売
1998年4月17日ARM Holdings がロンドン証券取引所と NASDAQ に上場
2016年9月5日ソフトバンクによる買収が完了
2023年9月14日米 Nasdaq で ARM の銘柄コードで取引開始(1株51ドル)

チップを自分で作らず、設計を他社にライセンスするという Saxby の方式によって、ARM は多くの会社のチップに入るようになった。Arm は2026年5月の決算発表で、累計出荷は3,500億個を超えたとしている。日本との関わりでは、2016年にソフトバンクが買収し、2023年の Nasdaq 上場ではソフトバンクグループの完全子会社が売出人になった。

Apple が Mac を自社設計の ARM ベースのチップに移したのは2020年の M1 からである。x86 との違いは用語集の ARM と x86 に、命令セットを開放した別の流れは RISC-V にある。同時代の機械は ハードウェアの年表 を参照。

よくある質問

最初の ARM プロセッサはいつ動いたのですか。
ARM1 のチップは1985年4月26日の朝に Acorn に届きました。Steve Furber によれば、テスト基板の問題をいくつか直したあと、その日の午後には BBC BASIC が動いていました。
最初に ARM を積んだ家庭用計算機は何ですか。
1987年6月に発売された Acorn Archimedes で、載っていたのは ARM1 ではなく後継の ARM2 です。ARM1 は1986年7月から BBC Micro や IBM PC 互換機につなぐ評価システムとして提供されました。
ARM は何の略ですか。
当時は Acorn RISC Machine の略でした。設計チームが Acorn・Apple・VLSI Technology の合弁 Advanced RISC Machines Ltd. として独立したのは1990年11月です。
ARM の低消費電力は偶然だったのですか。
設計者の説明は分かれます。Steve Furber は、安いプラスチックパッケージのために1W 以下を目標に余裕を取って設計した結果、0.1W 未満になったと述べ、偶然ではないとしています。Sophie Wilson は、最初の評価基板で電源が来ていないのに漏れ電流だけで動いていた逸話を挙げ、偶然だったと語っています。

出典

  1. 一次資料Oral History of Steve Furber, interviewed by John Fairbairn — Computer History Museum, 2012 (CHM Ref: 102746196)

    Berkeley RISC と Stanford MIPS の論文、1983年10月のフェニックス訪問、BBC BASIC の参照モデル、1985年1月のミュンヘン、4月26日の到着と午後の BBC BASIC、1W 目標と0.1W 未満、Archimedes の4チップ構成

    取得日: 2026-10-05

  2. 一次資料Acorn Computers announce the availability of an evaluation system for their single chip, 32-bit reduced instruction set computer - the ARM — Acorn press release, Jul 7, 1986 (Chris's Acorns archive)

    評価システムの提供、前年8月の初公表、4,500ポンド、8MHz・平均4 MIPS・基本命令44個、VLSI Technology との製造契約

    取得日: 2026-10-05

  3. 一次資料A Brief History of Arm: Part 1 — Arm Community Blog, Apr 21, 2015

    取得日: 2026-10-05

  4. 一次資料The official history of Arm — Arm Newsroom

    1990年11月の設立と12人の創業メンバー、1991年の Saxby、1998年4月17日の上場、2016年9月5日のソフトバンクによる買収

    取得日: 2026-10-05

  5. 二次資料Bidmead, C. (2012). ARM creators Sophie Wilson and Steve Furber — The Register, May 3, 2012

    電流計がゼロを指した逸話と、Wilson の complete accident という発言、約2万5000トランジスタ

    取得日: 2026-10-05

  6. 二次資料Acorn Archimedes 305 — Centre for Computing History

    取得日: 2026-10-05

  7. 三次資料ARM architecture family — Wikipedia

    取得日: 2026-10-05

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