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フロッピーディスク ── IBM の8インチから日本の行政手続きまで半世紀

メタデータ
- 日付
- 年代
- 1970s
- Tier
- T1
- 参照年表
- 半導体・ハードウェアの歴史
- 出典数
- 07
- 関連項目
- 01
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フロッピーディスクは、磁性体を塗った柔らかい円盤を、封筒のようなジャケットに入れたまま装置に差し込んで読み書きする記録媒体である。最初の製品は IBM が1971年に出荷した8インチの読み取り専用装置 23FD(開発名 Minnow)で、容量は80KB だった。その後、ディスクは5.25インチ、3.5インチへと小さくなり、パソコンのソフトとデータを運ぶ標準の手段になった。日本では、行政手続きの法令にフロッピーディスクを指定する規定が2024年まで残っていた。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1967年 | IBM のサンノゼで開発が始まる |
| 1971年 | IBM が8インチの 23FD を出荷 |
| 1976年 | Shugart Associates が5.25インチを導入 |
| 1980年 | ソニーが3.5インチのマイクロフロッピーディスクを発表 |
| 1987年 | IBM が PS/2 で3.5インチを採用 |
| 2009年 | ソニーが3.5インチドライブの生産を終える |
| 2011年3月 | ソニーが国内でのディスク販売を終える |
| 2024年6月 | 日本の法令でフロッピーディスクを指定する1,034件の見直しが終わる |
メインフレームのための「Minnow」
Computer History Museum(CHM)によると、1967年、IBM サンノゼのプロダクトマネージャーだった Alan Shugart が、David L. Noble に、IBM 3330 の制御装置へマイクロコードを読み込ませる安価な仕組みの開発を任せた。IBM 自身の解説では、チームは磁気テープも検討したうえで、磁性体を塗った柔らかい Mylar の円盤を装置のスロットに差し込む方式に切り替えた。汚れやすい円盤は、ほこりを拭う素材を内張りした薄い封筒に収めた。
ドライブの主発明者は Warren L. Dalziel、保護ジャケットを設計したのは Ralph Flores と Herbert Thompson である。国立科学博物館の技術の系統化調査報告によると、IBM は1970年に 23FD を発表し、翌1971年に市場に導入した。CHM はその容量を80KB、パンチカードおよそ3,000枚分としている。IBM は1971年に販売を始め、1972年にドライブとディスクの米国特許を得た。IBM の解説は、Dalziel の「I had no idea how important it would become and how widespread」という回想を載せている。
同じ報告によると、IBM は読み書きできる8インチを続けて出し、1972年に250KB(33FD)、1976年に560KB(43FD)、1977年に1.2MB(53FD)へ容量を上げた。新しいドライブが古いディスクも読み書きできる下位互換は、その後の5.25インチと3.5インチにも受け継がれる条件になった。
5.25インチとパソコン
Shugart は IBM を離れて Memorex に移り、1973年に Shugart Associates を創業した。CHM によると、Gary Kildall はこの会社の8インチドライブ SA800 を使って CP/M を開発している。8インチはワープロやパソコンには大きく高価すぎたため、Shugart Associates は1976年に5.25インチのディスクとドライブを導入した。
フロッピーディスクはパソコンを変えた。Apple II の外部記憶は当初カセットテープだったが、1978年には Disk II が出荷された。IBM PC はフロッピードライブ2台を載せた構成でも売られた。IBM は、ソフト会社がプログラムをディスクに入れて通信販売や店頭で売れるようになり、独立したソフトウェア産業が生まれたと位置づけている。
ソニーの3.5インチ
国立科学博物館の報告は、ソニーが1980年に3.5インチのマイクロフロッピーディスク(MFD) とドライブを発表したとしている。報告の筆者の嘉本秀年はソニーでこのドライブの企画と開発に携わった人物である。報告によると、ソニーはそれまでフロッピーの開発経験がなかったが、1年で製品を仕上げた。硬いプラスチックのケースに収めたディスクは扱いやすさを評価され、1982年に HP の 9121D/S、1984年に Apple の Macintosh、1987年に IBM の PS/2 に採用されて世界標準になった。報告はこれを、データストレージの分野で日本メーカーの提案が初めて世界標準になった例と位置づけている。
| サイズ | 導入 | 主な容量 |
|---|---|---|
| 8インチ | 1971年(IBM) | 80KB から1977年に1.2MB |
| 5.25インチ | 1976年(Shugart Associates) | IBM は1984年に PC 向けの1.2MB 高密度ディスクを導入 |
| 3.5インチ | 1980年発表(ソニー) | 未フォーマット容量で437.5KB から、1983年に1MB、1985年に2MB |
※ 3.5インチの容量は国立科学博物館の報告、5.25インチの1.2MB は IBM の解説による。
最も普及した容量の1.44MB について、英語版ウィキペディアは、21社の協議でソニーの設計を改良した3.5インチが決まり、1.44MB のドライブが最初に出荷されたのは1986年だとしている。
年50億枚から、保存アイコンへ
IBM によると、フロッピーディスクはピークの1990年代半ばに年50億枚以上売れた。国立科学博物館の報告は、1971年から、ソニーが3.5インチドライブの生産を打ち切った2009年までの約40年間に、ドライブ19.7億台、ディスク492.4億枚が出荷されたと推計している。そのうち3.5インチはドライブ17.1億台(86.8%)、ディスク355.0億枚(72.1%)を占めた。
ソフトが大きくなると、フロッピーは不便になった。IBM の解説では、Windows 95 のディスケット版は13枚組で、1枚ずつ入れ替えてインストールしなければならなかった。1998年の iMac はフロッピードライブを載せずに出た。IBM はフロッピー事業から手を引き、他社も続いて、2000年代半ばにはフロッピーはパンチカードと同じ道をたどったと IBM は書いている。いまも多くのソフトの「保存」ボタンに、フロッピーの形のアイコンが残っている。
Computerworld の2010年4月の報道によると、ソニーは国内でのフロッピーディスクの販売を2011年3月までに終えると決めた。前年の国内市場は約1,200万枚で、そのうち7割がソニーだった。残る利用者の多くは、教育や研究の現場で古い機器を使い続ける人たちだったという。
日本の法令からの撤去、2024年
フロッピーディスクの名前は、日本の法令の中に長く残った。デジタル庁は関係省庁と連携して「アナログ規制」の見直しを進めており、河野太郎デジタル大臣は2024年6月14日の記者会見で、フロッピーディスクに関する規制が1,034件あり、1件を残してすべての見直しが完了したと述べた。残っていたのは環境省所管の使用済自動車再資源化法の第27条関係の1件である。
同じ会見で河野大臣は、この件が英国の BBC の報道もあって国際的な話題になったと述べた。7月2日の会見では、残る1件が6月28日に完了していたと後刻回答している。同じ時点の見直し全体は、法令に基づく規制6,364件のうち4,332件、約7割の完了だった。
IBM の8インチが出てから53年で、フロッピーディスクは日本の行政手続きからも外れた。映像用に後から来た光ディスクは DVD、機器全体は 半導体・ハードウェアの年表 にある。
よくある質問
- フロッピーディスクはいつ、誰が作ったのですか。
- IBM のサンノゼで1967年に開発が始まりました。当時プロダクトマネージャーだった Alan Shugart が David L. Noble にその開発を任せ、ドライブの主発明者は Warren L. Dalziel です。最初の製品である8インチの 23FD は1971年に出荷されました。
- 3.5インチのフロッピーディスクはどこが作ったのですか。
- ソニーです。国立科学博物館の調査報告によると、ソニーは1980年に3.5インチのマイクロフロッピーディスクとドライブを発表しました。1982年に HP、1984年に Apple の Macintosh、1987年に IBM の PS/2 が採用し、世界標準になりました。
- フロッピーディスクの容量はどれくらいでしたか。
- 最初の8インチ 23FD は80KB で、パンチカード約3,000枚分でした。IBM の8インチは1977年に1.2MB まで増えました。最も普及した3.5インチの高密度ディスクは1.44MB です。
- 日本の行政でフロッピーディスクはいつ廃止されたのですか。
- 法令上フロッピーディスクを指定する規定は1,034件あり、河野太郎デジタル大臣は2024年6月14日に、1件を残して見直しが終わったと述べました。残る環境省の1件も、デジタル庁によると6月28日に完了しています。
出典
二次資料1971: Floppy disk loads mainframe computer data — The Storage Engine, Computer History Museum
1967年に Shugart が Noble に開発を任せた経緯、23FD「Minnow」の1971年出荷、80KB、Dalziel・Flores・Thompson、Shugart Associates の1973年設立と1976年の5.25インチ、CP/M と SA800
一次資料Floppy disk storage — IBM Heritage
Project Minnow、1971年の販売開始と1972年の特許、ピーク時の年50億枚超、Windows 95 のディスケット13枚、Dalziel の発言
二次資料フロッピーディスクとドライブの技術とビジネス発展の系統化調査 — 嘉本秀年、国立科学博物館 技術の系統化調査報告
IBM の1970年発表・1971年導入、8インチの容量の推移、Shugart の1976年の5.25インチ、ソニーの1980年の3.5インチ発表と採用、1971〜2009年の出荷推計。著者は元ソニーで3.5インチ MFDD の企画・開発に携わった
二次資料Sony to halt floppy disk sales in 2011 — Martyn Williams, Computerworld, Apr 26, 2010
2011年3月までに販売を終了、前年の国内市場約1,200万枚のうちソニーが7割
一次資料河野大臣記者会見(令和6年6月14日) — デジタル庁
フロッピーディスクに関する規制1,034件のうち1件を残して見直し完了、残る1件は使用済自動車再資源化法第27条関係
一次資料河野大臣記者会見(令和6年7月2日) — デジタル庁
残る1件が6月28日に完了していたとの後刻の回答
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