T1#standard#open-source#security
MCP ── AI とツールをつなぐ共通規格が業界標準になるまで
メタデータ
- 日付
- 年代
- 2020s
- Tier
- T1
- 参照年表
- AIの歴史 · オープンソースの歴史
- 出典数
- 10
- 関連項目
- 10
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MCP(Model Context Protocol)は、AI アプリケーションを外部のツールやデータソースにつなぐためのオープンな規格である。Anthropic が2024年11月25日に公開し、仕様と SDK、Claude Desktop アプリでのローカルサーバ対応、すぐ使える接続用サーバ群の3つを同時に出した。用語としての定義と技術的な骨格は 用語集の MCP にある。このページが扱うのは、1社の規格がなぜ1年あまりで競合他社まで含めた業界の共通基盤になったのか、そしてそれが何を変えたのかである。
「MCP とは何か」に一言で答えるなら、AI にとっての共通の差し込み口である。Anthropic の発表は、新しいデータ源を1つ足すたびに個別の実装が必要になり、つながったシステムを広げにくいという問題を出発点に挙げた。MCP では、データやツールの側が「MCP サーバ」を用意すれば、対応するどの AI アプリケーションからも同じ手順でつなげる。
2024年11月25日の公開
公開時、Anthropic は Google Drive、Slack、GitHub、Git、Postgres、Puppeteer 向けのサーバを用意した。早期導入企業として決済の Block と営業データの Apollo を挙げ、開発ツールの Zed、Replit、Codeium、Sourcegraph も対応を進めているとした。発表文には Block の CTO、Dhanji Prasanna の「Open technologies like the Model Context Protocol are the bridges that connect AI to real-world applications」という言葉が載っている。
仕様の上では、MCP のメッセージは JSON-RPC 2.0 に従い、サーバはリソース(データ)・プロンプト・ツール(実行できる操作)を提供する。2025年6月18日版の仕様は、HTTP 経由の接続向けに認可の枠組みも定めている。
競合が採用した1年
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2024年11月25日 | Anthropic が MCP を公開。Claude Desktop が対応 |
| 2025年3月26日 | OpenAI の Sam Altman が全製品での対応を表明。Agents SDK で即日対応 |
| 2025年4月9日 | Google DeepMind の Demis Hassabis が Gemini のモデルと SDK での対応を表明 |
| 2025年5月19日 | Microsoft が Build で Windows 11 の MCP 対応を早期プレビューとして発表 |
| 2025年12月9日 | Linux Foundation 傘下の Agentic AI Foundation に寄贈 |
| 2026年7月28日 | 現行の仕様版。ハンドシェイクを前提にした2025-11-25以前の版から設計を改めた |
転機は、最大の競合である OpenAI の採用だった。TechCrunch によると、Sam Altman は2025年3月26日に「People love MCP and we are excited to add support across our products」と書き、Agents SDK で即日使えるようにし、ChatGPT のデスクトップアプリと Responses API にも広げるとした。2週間後には Demis Hassabis が「MCP is a good protocol and it's rapidly becoming an open standard for the AI agentic era」と書き、Google の Gemini でも対応すると表明した。Microsoft は OS の層で取り込み、Windows 11 で MCP をエージェント間通信の基礎にすると発表した。
Agentic AI Foundation への寄贈
2025年12月9日、Anthropic は MCP を Linux Foundation 傘下に新設された Agentic AI Foundation(AAIF)に寄贈した。AAIF の共同設立者は Anthropic、Block、OpenAI で、Block のエージェント基盤 goose と、OpenAI が提供した、コーディングエージェントにプロジェクトごとの指示を渡す形式 AGENTS.md も、創設時のプロジェクトとして加わった。プラチナ会員には AWS、Anthropic、Block、Bloomberg、Cloudflare、Google、Microsoft、OpenAI の8社が名を連ねた。
寄贈時点の規模について、Anthropic は公開されている MCP サーバが1万を超え、Python と TypeScript の SDK の月間ダウンロードが9700万を超えたとしている。採用製品として ChatGPT、Cursor、Gemini、Microsoft Copilot、Visual Studio Code を挙げた。いずれも Anthropic 側の数字である。
1社が作った規格を中立の財団に移したことで、競合各社は自社の主要製品をライバルの管理する規格に依存させずに済むようになった。Linux Foundation の Jim Zemlin は発表で、オープンなガバナンスだけがもたらす透明性と安定性に触れている。
道具を増やすことの危うさ
MCP が広がるほど、エージェントに多くの道具と権限を渡すこと自体の危険も見えてきた。2025年5月26日、セキュリティ企業 Invariant Labs は、公開リポジトリの Issue に仕込んだ指示によって、GitHub の MCP サーバにつないだエージェントをだまし、利用者の非公開リポジトリの内容を公開側のプルリクエストに書き出させる手法を公表した。同社は、これは GitHub の MCP サーバのコードの欠陥ではなく、エージェントの仕組みの側で対処すべき問題だとしている。
開発者の Simon Willison は2025年6月、私的なデータへのアクセス、信頼できない内容への接触、外部への送信能力の3つがそろうと危険だとして、これを「lethal trifecta」と呼び、さまざまな出所のツールを組み合わせやすい MCP はこの3つを知らないうちにそろえてしまいやすいと指摘した。Microsoft も Windows での採用発表で、画面上の文書などに埋め込まれた指示による乗っ取り(クロスプロンプトインジェクション)、ツールの汚染、認証情報の漏洩を脅威として挙げ、署名の義務化や利用者による承認を対策に掲げた。
何が変わったのか
MCP の普及で、AI の価値は「モデルがどれだけ賢いか」に加えて「どれだけのツールやデータにつながっているか」で測られるようになった。社内システムを持つ企業は、1つの MCP サーバを用意すれば複数の AI 製品から使える。逆に言えば、AI が触れる範囲を管理する責任も利用者側に移った。
この規格を使う代表的な道具は Claude Code と OpenAI Codex で、MCP を経由した悪用の実例は GTG-1002 のページにある。AI エージェントという考え方の始まりは Auto-GPT を、同じ時代の流れは AI の年表 と オープンソースの年表 を参照。
よくある質問
- MCP とは何ですか。
- Model Context Protocol の略で、AI アプリケーションを外部のツールやデータソースにつなぐためのオープンな規格です。Anthropic が2024年11月25日に公開しました。データ源ごとに個別の連携を作る代わりに、共通の約束事で接続できるようにします。
- MCP はどの会社が採用しているのですか。
- 2025年3月に OpenAI が Agents SDK で対応し、4月に Google DeepMind が Gemini での対応を表明、5月に Microsoft が Windows 11 での採用を発表しました。Anthropic によれば、2025年12月時点で ChatGPT、Cursor、Gemini、Microsoft Copilot、Visual Studio Code などが採用しています。
- MCP は今どこが管理しているのですか。
- 2025年12月9日に、Linux Foundation 傘下に設立された Agentic AI Foundation(AAIF)へ Anthropic が寄贈しました。AAIF の共同設立者は Anthropic、Block、OpenAI で、Google、Microsoft、AWS、Cloudflare、Bloomberg も支援しています。
- MCP に安全上の問題はありますか。
- 規格そのものより、エージェントに多くの道具と権限を渡す使い方に危険があると指摘されています。2025年5月に Invariant Labs は、公開リポジトリの Issue に仕込んだ指示で、GitHub の MCP サーバにつないだエージェントに非公開リポジトリの内容を漏らさせる手法を公表しました。Microsoft も、ツールの汚染や認証情報の漏洩を脅威として挙げています。
出典
一次資料Introducing the Model Context Protocol — Anthropic, Nov 25, 2024
公開の発表。データ源ごとに個別実装が要る問題、仕様と SDK・Claude Desktop のローカルサーバ対応・サーバのリポジトリの3点、Google Drive・Slack・GitHub・Git・Postgres・Puppeteer のサーバ、Block と Apollo、Zed・Replit・Codeium・Sourcegraph
一次資料Specification overview (2025-06-18) — Model Context Protocol
JSON-RPC 2.0、構成要素(基本プロトコル、ライフサイクル、認可、サーバ機能、クライアント機能)
一次資料Versioning — Model Context Protocol
現行版は2026-07-28。2025-11-25以前はハンドシェイク型
Windows 11 での MCP 採用の早期プレビュー、クロスプロンプトインジェクション・ツール汚染・認証情報の漏洩
AAIF への寄贈、公開サーバ1万超、SDK 月間9700万ダウンロード超、ChatGPT・Cursor・Gemini・Microsoft Copilot・VS Code が採用
創設プロジェクトは MCP・goose・AGENTS.md、プラチナ会員8社
最終更新: