人物 :: PERSON

デミス・ハサビス

1976年ロンドン生まれ。ゲーム開発者からロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)の認知神経科学博士へ転じ、2010年に Shane Legg・Mustafa Suleyman と DeepMind を創業。2014年に Google が買収し、AlphaGo(2016年)と AlphaFold を生んだ。2024年3月に「人工知能への貢献」でナイト爵、同年10月9日には David Baker・John Jumper とノーベル化学賞を共同受賞。2026年8月5日に Google DeepMind の CEO を退き、同社 Chair 兼 Alphabet の Chief Scientist となった。

2025年のデミス・ハサビスのポートレート
出典Christopher Michel (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 4.0 · Commons で見る

プロフィール

生年
1976
存命
存命
在世
1976–
関連事象
02
名称
ENDemis HassabisJAデミス・ハサビス

デミス・ハサビス(Demis Hassabis、 1976年7月27日 ── )は DeepMind の共同創業者であり、 AlphaGo(2016年) と AlphaFold を生んだ研究所を、 2010年の設立から2026年8月まで率いた。 2024年10月9日、 AlphaFold2 によるタンパク質構造予測で John Jumper とノーベル化学賞を分け合っている。 経歴のかたちが珍しい ── ゲーム開発者、 認知神経科学者、 起業家、 そして受賞者という順序で、 どの段階も次の段階の道具になっている。

経歴 ── チェス、 ゲーム、 神経科学

ロンドン生まれ。 チェスの早熟で知られ、 プログラミングにも早くから手を出した。 本人が CEO を務める Isomorphic Labs の公式経歴は、 17歳で受賞作 Theme Park を「設計しプログラムした」と記す。 その後 Cambridge 大学を卒業し、 自分のゲーム会社を経て、 ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)で認知神経科学の博士号を取得した。

この順序が重要である。 娯楽としてのゲーム AI と、 学問としての認知神経科学を順に通った人物が、 「知能とは何か」を工学の問題として立て直した ── DeepMind の設立趣旨が神経科学に寄っているのは偶然ではない。

DeepMind の設立(2010年)

英国 Companies House の登記によれば、 DeepMind Technologies Limited(登記番号 07386350)は2010年9月23日に設立され、 同年11月15日まで FRIARS 2022 LIMITED という別名だった。 既製の法人枠を買って改名する、 英国では珍しくない立ち上げ方である。 共同創業者は Shane Legg と Mustafa Suleyman。 2014年に Google が買収し、 2023年4月に Google Brain と統合して Google DeepMind となった。

研究所そのものの歩み ── DQN、 AlphaGo、 AlphaZero、 AlphaFold、 Gemini ── は DeepMind の項に譲る。 ここではハサビス個人の位置だけを追う。

ナイト爵(2024年3月)

英国の叙勲は年次の栄誉リストとは別枠でも出る。 ハサビスのナイト爵は New Year Honours ではなく、 2024年4月19日付 London Gazette に掲載された Knights Bachelor の告示による。 記載は「Demis HASSABIS, C.B.E., F.R.S., FREng., CEO and Co-Founder, DeepMind. For services to Artificial Intelligence.」で、 発効日は2024年3月28日と付記されている。 2018年には「科学技術への貢献」で CBE を受けており、 王立協会(F.R.S.)と王立工学アカデミー(FREng)のフェローでもある。

ノーベル化学賞(2024年10月9日)

同じ週に物理学賞と化学賞の両方が AI 研究に渡ったことは 2024年の項で扱った。 ハサビスに関わるのは化学賞のほうであり、 物理学賞(10月8日発表、 Hopfield と Hinton)とは別の賞・別の日である。

化学賞は10月9日に発表され、 賞金の半分が David Baker に「計算によるタンパク質設計」で、 残り半分が Google DeepMind の Demis Hassabis と John Jumper に「タンパク質構造予測」で贈られた。 ハサビスの受賞持ち分は4分の1、 受賞時の所属はロンドンの Google DeepMind である。 ノーベル財団の記録は「2020年に Demis Hassabis と John Jumper は AlphaFold2 と呼ばれる AI モデルを提示した」と、 業績を単一のモデルに帰している。

Isomorphic Labs と、 2026年の役割変更

2021年、 ハサビスは AlphaFold の系譜を創薬に向ける会社 Isomorphic Labs を DeepMind から分離し、 その創業者兼 CEO を兼務してきた。

2026年8月5日、 Sundar Pichai と連名で公開された社内メッセージにより、 ハサビスは Google DeepMind の日常的な運営から退いた。 新しい肩書きは Google DeepMind の Chair 兼 Alphabet の Chief Scientist で、 Isomorphic Labs の指揮は続ける。 後任は同社 CTO 兼 Google の Chief AI Architect である Koray Kavukcuoglu で、 CEO ではなく SVP of Google DeepMind として Gemini のモデル開発、 フロンティア研究、 Gemini アプリと開発者向けチームを統括する。 ハサビス自身の説明はこうである ── 「私は生涯を通じて AGI に向けて働いてきた。 いま、 多くの皆と同じように、 それが手の届くところに来ていると感じる」「いまが、 GDM の日常的な運営責任を引き継いでもらい、 大局に集中する時間と余地を持つべき時だと判断した」。

影響

ハサビスの寄与は、 特定のアルゴリズムというより問題の選び方にある。 囲碁もタンパク質折り畳みも、 探索空間が巨大で、 正解の検証が容易で、 人間の直感が長く優位を保ってきた領域だった。 そこに深層強化学習を当てて勝つ ── この選題の型が「AI for Science」というジャンルそのものを作った。

同時に、 その成果はすべて営利企業のなかで生まれている。 公開の範囲と時期をめぐる論争、 買収時に報じられた倫理委員会の約束の行方、 軍事利用方針の変更 ── いずれも DeepMind の項に記した通り、 研究所の外形と切り離せない。 ノーベル賞受賞者が同時に Alphabet の Chief Scientist であるという現在の配置は、 その緊張を一人の肩書きに畳み込んだ形になっている。

関連する出来事

  1. AlphaGo が李世乭に勝利
  2. AI 研究にノーベル賞 ── 物理学・化学を同時受賞

最終更新:

共有