T1#energy

Apple M1 ── Mac が自社設計の ARM チップへ

Mac mini(2020, M1)のロジックボード上の Apple M1 チップの接写。中央の金属蓋の刻印は APL1102、右側に2つのメモリダイが同じパッケージに載る
出典Sonic8400 · CC BY-SA 4.0 · Commons で見る ↗

メタデータ

日付
年代
2020s
Tier
T1
出典数
17
関連項目
04
Tags
#energy

Apple が M1 チップを発表したのは2020年11月10日(米国時間。日本時間では11日未明)である。同じ日に、M1 を載せた最初の Mac 3機種 ── MacBook Air、13インチ MacBook Pro、Mac mini ── の注文受付が始まり、店頭販売と出荷は11月17日(火)に始まった。日本も同じ11月17日の発売で、第一陣に入っている。

米国価格は MacBook Air が999ドル、13インチ MacBook Pro が1,299ドル、Mac mini が699ドルから。日本では税別で MacBook Air 104,800円、MacBook Pro 134,800円、Mac mini 72,800円からだった。どれも外観は前のモデルとほぼ同じで、変わったのは中のチップである。

M1 はいつ・どう決まったか

日付出来事
2006年1月10日Apple が最初の Intel 搭載 Mac(iMac、MacBook Pro)を発表
2020年6月22日WWDC で Mac の Apple シリコンへの移行を発表。最初の機種は年内、完了は約2年後とした
2020年8月4日Intel の第10世代 Core を載せた27インチ iMac を発表
2020年11月10日M1 と、M1 搭載の MacBook Air・13インチ MacBook Pro・Mac mini を発表、注文受付開始
2020年11月17日3機種の店頭販売・出荷開始(日本を含む)
2023年6月5日Apple シリコンの Mac Pro を発表。Apple は Mac の移行が完了したと表明(発売は6月13日)

6月の発表で Apple は、Intel 版 Mac のための新しい macOS を今後何年も出し続けるとし、さらに「has exciting new Intel-based Macs in development」── 開発中の新しい Intel 版 Mac がある ── と書いていた。実際、8月には Intel 版の27インチ iMac が出ている。11月の M1 は Intel の終わりの日ではなく、終わりの始まりだった。Apple が見込んだ約2年に対し、完了の宣言は約3年後の Mac Pro になった。

M1 の中身

M1 は Apple がはじめて Mac 専用に設計したチップで、CPU・GPU・ニューラルエンジンなどを1つの SoC(システム・オン・チップ)にまとめている。

項目M1(Apple の発表)
製造プロセス5nm。Apple は 5nm で作られた初のパーソナルコンピュータ用チップと称した
トランジスタ数160億
CPU8コア(高性能4、高効率4)
GPU最大8コア、2.6テラフロップス
ニューラルエンジン16コア、毎秒11兆回の演算
メモリ高帯域・低遅延のメモリを1つのプールにまとめた「unified memory architecture」

Apple は M1 の CPU コアを低消費電力のシリコンで世界最速、GPU をパーソナルコンピュータの内蔵グラフィックスで世界最速と称した。いずれも Apple 自身の測定による主張である。製造したのは TSMC とされるが、Apple のプレスリリースは製造元を書いていない。

Apple の説明では、この統合メモリによって SoC の中のすべての部分が、複数のメモリのプールのあいだでデータをコピーせずに同じデータを扱える。M1 の Mac のメモリは 8GB か 16GB だった。

最大3.5倍という数字をどう読むか

Apple は M1 について、従来世代の Mac と比べて CPU が最大3.5倍、GPU が最大6倍、機械学習が最大15倍速く、電池の持ちは最大2倍と書いた。ただし、これは3機種の中で最も差が大きい組み合わせを集めた数字である。機種ごとの Apple の主張は次のとおりで、比較の相手はそれぞれの前のモデルだった。

機種CPUGPUその他
MacBook Air最大3.5倍最大5倍ファンなしで無音。ビデオ再生最大18時間
13インチ MacBook Pro最大2.8倍──機械学習最大11倍。ビデオ再生最大20時間
Mac mini最大3倍最大6倍機械学習最大15倍

どれも Apple の測定で、独立した検証値ではない。

Intel のアプリはどう動いたか

アーキテクチャを替えれば、既存のアプリはそのままでは動かない。Apple はこれを二つの方法で埋めた。Intel 向けのアプリを変換して動かす Rosetta 2 と、1つのアプリに Intel 用と Apple シリコン用の両方のコードを入れる Universal 2 である。加えて、M1 の Mac では iPhone と iPad のアプリがそのまま動くようになった。M1 の3機種は macOS Big Sur を載せて出荷された。

Apple にとって CPU の乗り換えは初めてではない。2005年6月に発表し2006年に始めた PowerPC から Intel への移行でも、PowerPC 向けのアプリを Intel の Mac で動かす最初の Rosetta を使っている。Rosetta 2 の名はそこから来ている(ARM と x86 の違い も参照)。

2020年、ARM をめぐるほかの動き

M1 は、ARM のチップがスマートフォンの外へ広がっていった時期に出た。

  • AWS Graviton2: Amazon は2020年5月11日、64bit の Arm Neoverse コアを使う自社設計チップ Graviton2 の EC2 インスタンスを一般提供した。AWS は、x86 の現行インスタンスより最大40%価格性能比がよいとした
  • Surface Pro X: Microsoft は2019年に、Qualcomm の技術を基にした自社チップ SQ1 で ARM 版 Windows を動かす Surface Pro X を出していた
  • NVIDIA による Arm 買収計画: 2020年9月13日、NVIDIA は Arm を400億ドルで買収すると発表した。各国の規制当局の懸念を受け、2022年2月7日に断念している

ARM アーキテクチャ は1985年に生まれ、長くスマートフォンや組み込み機器のものだった。2019年から2020年にかけて、クラウドのサーバー、Windows のノート、そして Mac と、x86 が占めてきた場所に ARM が相次いで入っていった。

その後

M1 は翌2021年に iMac や iPad Pro にも使われ、同年10月には上位の M1 Pro と M1 Max が出た。Mac の全機種が Apple シリコンになったのは、2023年6月の Mac Pro である。

企業については Apple と Intel、ほかのハードウェアの節目は ハードウェアの年表 を参照。

よくある質問

Apple M1 チップはいつ発表・発売されましたか。
M1 の発表は2020年11月10日(日本時間11日)で、同日に M1 搭載の MacBook Air・13インチ MacBook Pro・Mac mini の注文受付が始まりました。店頭販売と出荷は11月17日からで、日本も同じ日に発売されています。
M1 Mac の発売時の価格はいくらでしたか。
米国では MacBook Air が999ドル、13インチ MacBook Pro が1,299ドル、Mac mini が699ドルからでした。日本では税別で 104,800円、134,800円、72,800円からです。
M1 の発表で Intel 版 Mac は終わったのですか。
終わっていません。Apple は2020年6月の移行発表で、開発中の新しい Intel 版 Mac があると書いており、8月には Intel 版の27インチ iMac を出しました。移行の完了を表明したのは、Apple シリコンの Mac Pro を発表した2023年6月です。
CPU 最大3.5倍という数字はどこから来ているのですか。
Apple 自身の測定で、3.5倍は MacBook Air の前モデル比です。GPU 最大6倍と機械学習最大15倍は Mac mini、MacBook Pro の CPU は最大2.8倍で、機種ごとに比較の相手と数字が違います。独立した検証値ではありません。

出典

  1. 一次資料Apple unleashes M1 — Apple Newsroom, Nov 10, 2020

    5nm・160億トランジスタ・8コア CPU・最大8コア GPU・16コアのニューラルエンジン、統合メモリ、性能主張

    取得日: 2026-10-05

  2. 一次資料Introducing the next generation of Mac — Apple Newsroom, Nov 10, 2020

    3機種の米国価格と機種ごとの性能主張、Rosetta 2、iPhone / iPad アプリ、Big Sur

    取得日: 2026-10-05

  3. 一次資料次世代のMacを発表 — Apple Newsroom(日本), 2020年11月11日

    日本の税別価格

    取得日: 2026-10-05

  4. 一次資料Apple announces Mac transition to Apple silicon — Apple Newsroom, Jun 22, 2020

    約2年での移行計画と「has exciting new Intel-based Macs in development」

    取得日: 2026-10-05

  5. 一次資料Apple unveils new Mac Studio and brings Apple silicon to Mac Pro — Apple Newsroom, Jun 5, 2023

    Mac Pro で移行が完了したという Apple の表明、6月13日発売

    取得日: 2026-10-05

  6. 一次資料Apple Unveils New iMac with Intel Core Duo Processor — Apple Press Release, Jan 10, 2006

    最初の Intel 搭載 Mac

    取得日: 2026-10-05

  7. 一次資料Amazon EC2 M6g instances powered by AWS Graviton2 processors are now generally available — AWS, May 11, 2020

    Graviton2 の一般提供と価格性能比の主張

    取得日: 2026-10-05

  8. 一次資料NVIDIA to Acquire Arm for $40 Billion — NVIDIA Newsroom, Sep 13, 2020

    取得日: 2026-10-05

  9. 二次資料Apple updates 27-inch iMac with new 10th-gen Intel CPUs, T2 chip and a 1080p webcam — 9to5Mac, Aug 4, 2020

    2020年8月の Intel 版27インチ iMac

    取得日: 2026-10-05

  10. 二次資料November 2020 Event — MacRumors

    店頭販売は11月17日から

    取得日: 2026-10-05

  11. 二次資料アップル、Mac用SoC「M1」搭載の3機種を11月17日に発売 — デジカメ Watch, 2020年11月

    日本での11月17日発売

    取得日: 2026-10-05

  12. 三次資料Rosetta (software) — Wikipedia

    取得日: 2026-10-05

  13. 三次資料Apple M1 — Wikipedia

    製造は TSMC の N5、2021年の M1 搭載機と M1 Pro / Max

    取得日: 2026-10-05

  14. 三次資料Apple silicon — Wikipedia

    取得日: 2026-08-03

最終更新:

共有