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クアルコム

1985年にカリフォルニア州で設立され、1991年にデラウェア州へ本拠を移した米国の半導体・通信技術企業。事業は半導体の QCT(Qualcomm CDMA Technologies)と特許ライセンスの QTL の2本柱で、QCT は Snapdragon などのチップを工場を持たずに設計・販売し、QTL は携帯機器メーカーから端末価格に応じたロイヤルティを受け取る。この二重の構造が各国の競争当局に問われ、韓国では公正取引委員会の決定の大半が制裁金とともに2023年に大法院で確定した一方、欧州委員会の2018年の制裁金は2022年に一般裁判所が全額取り消し、米 FTC の訴訟は2020年に連邦控訴裁が地裁判決を覆した。2025年9月期の売上は443億ドル。

サンディエゴ・ラホヤ地区のクアルコム本社(2015年12月)
出典Coolcaesar (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 4.0 · Commons で見る ↗

組織情報

設立
1985
状態
稼働中
活動期間
1985–
関連事象
02
名称
ENQualcommJAクアルコム

クアルコム(Qualcomm)は、1985年にカリフォルニア州で設立され、1991年にデラウェア州へ本拠を移した米国の企業である。年次報告書(Form 10-K)は、創業以来、無線通信の基盤技術の開発に力を注いできたと書く。本社はサンディエゴ、従業員などの人員は約52,000人(2025年9月末)。Cristiano Amon が2021年6月から社長兼 CEO を務める。

チップと特許の二本立て

クアルコムの形は、2つの事業の組み合わせで決まっている。半導体事業の名前は今も QCT(Qualcomm CDMA Technologies)で、携帯電話の通信方式 CDMA の名を残している。2019年の FTC 訴訟の地裁判決も、クアルコムが CDMA と高性能 LTE のモデムチップ市場で独占力を持つと認定していた(のちに控訴審で破棄)。

事業中身(10-K)2025年9月期の売上税引前利益率
QCTSnapdragon などのチップとシステムソフトウェア。一部の高周波部品を除き、工場を持たない384億ドル30%
QTL4G・5G などの規格に必須の特許を含むライセンス。収入の大半は端末1台ごとのロイヤルティ56億ドル72%

QTL のロイヤルティは、原則として端末メーカーの卸売価格に一定率を掛けて計算される。チップを売る会社が、そのチップを使う端末メーカーから端末全体の価格に応じた特許料も受け取る。この構造こそが、各国の競争当局が問題にしたものだった。

QCT の売上の内訳は、スマートフォン向けが278億ドル、IoT 向けが66億ドル、自動車向けが40億ドル(2025年9月期)。10-K によると、Apple、Samsung、Xiaomi の3社がそれぞれ連結売上の10%以上を占めた。チップは Meta Quest 2 の Snapdragon XR2 や、Copilot+ PC の最初の対応機に載った Snapdragon X Elite / X Plus などにも使われている。Apple が iPhone 5s で64ビット化したときの同社の反応は、その項目に書いてある。

競争当局との争い

結果は国と裁判所ごとに分かれた。いずれもクアルコムの10-K・10-Q と欧州司法裁判所の発表による。

当局・裁判所問われた行為結果
韓国公正取引委員会(KFTC)競合チップメーカーへの特許ライセンス拒否、ライセンス契約をチップ供給の条件にしたこと、端末メーカーへの契約条件の強要2016年12月に違反を認定し、制裁金1.03兆ウォン(約9.27億ドル、2017年3月に納付)。2019年12月にソウル高等法院が是正命令の一部を取り消したうえで残りを支持し、2023年4月12日に大法院が双方の上告を棄却して確定
欧州委員会(Apple への支払い)Apple がクアルコムのベースバンドチップだけを使うことを条件に多額の支払いをしたこと2018年1月に9.97億ユーロの制裁金。2022年6月15日に EU 一般裁判所が決定を全面的に取り消し、委員会は上訴せず終結
欧州委員会(Icera の申し立て)2009〜2011年に2社の顧客へベースバンドチップを原価割れで売った略奪的価格設定2019年7月に約2.42億ユーロの制裁金。2024年9月18日に EU 一般裁判所が違反認定を支持し、制裁金を約2.387億ユーロに改めた
米連邦取引委員会(FTC)チップ供給をライセンスの条件にしたこと、競合へのライセンス拒否、Apple との排他的取引など2019年5月に北カリフォルニア連邦地裁が FTC の主張を認めて差止めを命じたが、2020年8月11日に第9巡回区連邦控訴裁判所が判決を破棄し差止めを取り消した。同年10月28日に大法廷での再審理の申立ても退けられた

第9巡回区控訴裁は、競合のチップメーカーにライセンスする反トラスト法上の義務はないとし、端末メーカーの段階でだけライセンスする慣行は反トラスト法に違反しないと判断した、とクアルコムは10-K で説明している。

重要事件

  • 1985年: カリフォルニア州で設立。
  • 1991年: デラウェア州へ移る。
  • 2016年12月: 韓国公正取引委員会が違反を認定(2023年4月に大法院で確定)。
  • 2017年1月: 米 FTC が北カリフォルニア連邦地裁に提訴。
  • 2018年1月: 欧州委員会が9.97億ユーロの制裁金(2022年6月に取り消し)。
  • 2019年4月: Apple と和解。6年間の特許ライセンスと複数年のチップ供給契約。
  • 2020年8月11日: 第9巡回区控訴裁が FTC 訴訟の地裁判決を破棄。
  • 2021年6月: Cristiano Amon が CEO に就任。
  • 2022年8月31日: Arm がクアルコムと Nuvia をデラウェア連邦地裁に提訴。
  • 2024年5月: 米商務省が Huawei 向けの輸出許可を取り消す。
  • 2024年12月20日: Arm の訴訟で陪審がクアルコム有利の評決。

業績指標

2025年9月期(2025年9月28日まで)。10-K による。

  • 売上: 443億ドル(前年比14%増。うち製品・サービス379億ドル、ライセンス64億ドル)
  • 粗利益率: 55%
  • 純利益: 55億ドル。米国の税制改正に伴う繰延税金資産の評価性引当金57億ドルの費用を含む(前年は101億ドル)

Apple、Huawei、そして Arm

チップと特許の二本立ては、最大の顧客との関係を複雑にする。Apple とは特許料の支払いをめぐって争い、2019年4月に全訴訟を取り下げて和解した。6年間のグローバル特許ライセンス(2019年4月1日発効、2年延長の選択権付き)と複数年のチップ供給契約を結び、クアルコムは同年度に和解に伴うライセンス収入47億ドルを計上した。2025年の10-K は、Apple が最近の iPhone で自社製モデムを使い始め、今後もその比率を高めると見込んでいる。中国では、2024年5月に米商務省が Huawei 向けの輸出許可を取り消し、クアルコムは Huawei からの製品売上を見込まなくなった。

もう一つの争いは、命令セットの供給元である Arm との訴訟である。Arm は2022年8月、クアルコムが買収した Nuvia のライセンス契約の終了義務を守っていないとして提訴し、Nuvia 由来の技術を使った CPU コアの使用停止と廃棄を求めた。2024年12月20日、デラウェア連邦地裁の陪審は、クアルコムは Nuvia の契約に違反しておらず、Nuvia 由来の設計を含む CPU はクアルコム自身の契約でライセンスされていると評決し、Nuvia の違反については評決に至らなかった。2025年9月30日に裁判所はクアルコム勝訴の最終判決を出し、Arm は第3巡回区控訴裁判所に控訴した。クアルコムが Arm の契約違反を訴えた別の裁判は2026年10月に審理され、クアルコム側の代理人によれば、10月13日に陪審は Arm が契約に違反し、Meta との取引関係に介入したと認定する一方、技術ライセンス契約の違反の主張では Arm 側を支持した。誠実交渉の義務などの争点は裁判官の判断に残っている。Arm の側から見たこの関係は Arm の項目にある。

関連する出来事

  1. Meta Quest とは ── PC のいらない Oculus Quest から始まった VR ヘッドセット
  2. Copilot+ PC と Recall ── オンデバイス AI と即時撤退

よくある質問

クアルコムはどうやって稼いでいるのですか。
Snapdragon などのチップを売る QCT と、特許をライセンスする QTL の2本柱です。2025年9月期の QCT の売上は384億ドル、QTL は56億ドルでしたが、税引前利益率は QCT の30%に対し QTL は72%でした。QTL の収入は主に、端末メーカーが支払う端末の卸売価格に応じたロイヤルティです。
FTC v. Qualcomm はどう決着しましたか。
2019年5月に北カリフォルニア連邦地裁がクアルコムの反競争的行為を認定して差止めを命じましたが、2020年8月11日に第9巡回区連邦控訴裁判所がこの判決を覆し、差止めを取り消しました。FTC の大法廷での再審理の申立ても同年10月28日に退けられました。
Apple とクアルコムの争いはどう終わりましたか。
2019年4月に和解し、すべての訴訟を取り下げました。同時に、2019年4月1日発効の6年間のグローバル特許ライセンス契約(2年延長の選択権付き)と複数年のチップ供給契約を結び、クアルコムは2019年9月期に和解に伴うライセンス収入47億ドルを計上しました。
Arm とクアルコムの裁判はどうなっていますか。
Arm が2022年に起こした訴訟では、2024年12月20日にデラウェア連邦地裁の陪審がクアルコムは Nuvia の契約に違反していないと評決し、2025年9月30日に裁判所がクアルコム勝訴の最終判決を出しました。Arm は第3巡回区控訴裁判所に控訴しています。クアルコムが Arm を訴えた別の裁判は2026年10月に陪審審理が行われました。

出典

  1. 一次資料QUALCOMM Incorporated, Annual Report on Form 10-K for the fiscal year ended September 28, 2025 — SEC, filed November 5, 2025

    1985年の設立と1991年のデラウェア移転、QCT・QTL の事業内容と業績、純利益、従業員数、主要顧客、Apple の自社モデム、Huawei 向け輸出許可の取り消し、Arm との訴訟

    取得日: 2026-10-25

  2. 一次資料QUALCOMM Incorporated, Quarterly Report on Form 10-Q for the quarter ended June 28, 2026 — SEC

    Arm との2件の訴訟の状況(Arm の控訴、クアルコムの訴訟の審理日程)

    取得日: 2026-10-25

  3. 一次資料QUALCOMM Incorporated, Annual Report on Form 10-K for the fiscal year ended September 27, 2020 — SEC

    KFTC の2016年の決定と制裁金、ソウル高等法院の判決、欧州委員会の2件の決定、FTC 訴訟の地裁判決と第9巡回区控訴裁の破棄

    取得日: 2026-10-25

  4. 一次資料QUALCOMM Incorporated, Annual Report on Form 10-K for the fiscal year ended September 29, 2019 — SEC

    2019年4月の Apple との和解、特許ライセンス契約とチップ供給契約、47億ドルの収入計上

    取得日: 2026-10-25

  5. 一次資料QUALCOMM Incorporated, Annual Report on Form 10-K for the fiscal year ended September 25, 2022 — SEC

    2022年6月15日に一般裁判所が欧州委員会の2018年の決定を全面的に取り消し、委員会が上訴しなかったこと

    取得日: 2026-10-25

  6. 一次資料QUALCOMM Incorporated, Quarterly Report on Form 10-Q for the quarter ended March 26, 2023 — SEC

    2023年4月12日に韓国大法院がクアルコムと KFTC の双方の上告を棄却したこと

    取得日: 2026-10-25

  7. 一次資料Abuse of a dominant position: the General Court largely upholds the fine imposed on Qualcomm — Court of Justice of the European Union, Press Release No 142/24, September 18, 2024

    略奪的価格設定の事件(T-671/19)で一般裁判所が制裁金を約2億3,870万ユーロに改めたこと

    取得日: 2026-10-25

  8. 二次資料Qualcomm Wins Jury Verdict in Breach of Contract and Interference Trial Against Arm — Paul, Weiss, October 13, 2026

    クアルコム側代理人による、2026年10月13日の陪審評決の内容と、裁判官の判断に残る争点

    取得日: 2026-10-25

最終更新:

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