企業・組織 :: ORG

Intel

1968年7月18日に Robert Noyce と Gordon Moore が設立した米国の半導体企業。創業から17年はメモリの会社で、1985年10月10日の DRAM 撤退でマイクロプロセッサ専業へ賭け直した。x86 の系譜は 4004 ではなく 8008・8080 から 8086/8088 へ続き、1981年の IBM PC 採用で業界標準になる。2020年の 7nm 遅延で製造の優位を失い、IDM 2.0 で始めたファウンドリ事業は2025年通年で103億ドルの営業赤字。2024年12月に Pat Gelsinger が退任、2025年3月に Lip-Bu Tan が就任し、同年8月に米政府が9.9%を取得した。

サンタクララの Intel 本社(Robert Noyce Building)、2023年7月
出典Coolcaesar (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 4.0 · Commons で見る

組織情報

設立
1968
状態
稼働中
活動期間
1968–
関連事象
06
名称
ENIntelJAIntel

Intel は、 1968年7月18日に Robert Noyce と Gordon Moore が設立した米国の半導体企業である。 Andy Grove は直後に加わった最初期の社員で、 のちに会社を定義する経営者となるが創業者ではない ── Intel 自身の社史もそう記している。 本社はカリフォルニア州サンタクララ。 先端ロジックの研究開発と量産製造を米国内で同時に行う唯一の企業だと Intel は自称しており、 2025年にはその立場が米国の産業政策そのものに組み込まれた。

沿革 / History

創業から17年間、 Intel はメモリの会社だった。 1971年の Intel 4004 は日本の電卓メーカー向け受託設計から生まれた副産物であり、 今日の x86 はその子孫ではない。 系譜は Computer Terminal Corporation 向けに別設計された 8ビットの 8008(1972年)に始まり、 8080(1974年)を経て、 1981年に IBM が PC へ採用した 8086/8088 に至る。 決定的だったのは個々の設計そのものより、 互換機メーカーが同じ命令セットを買い続けるという構造を手にしたことだった。

1980年代前半、 日本製 DRAM の価格攻勢でメモリの採算は消える。 1985年10月10日、 Intel は DRAM 市場からの撤退を発表した。 Grove の述懐は Intel の社史に残っている ──「It was an emotional decision.」、 そして「In retrospect, getting out of DRAMs when we did was the best business decision we ever made.」 創業事業を自ら畳んでマイクロプロセッサ一本に賭け直したこの転換が、 続く四半世紀の Intel を作った。

強さは二枚看板だった。 PC の命令セットを握る設計の独占と、 誰よりも先の製造プロセスという製造の優位。 先に折れたのは製造である。 2020年7月23日、 Intel は 7nm 製品の投入が約6か月ずれると開示し、 原因を 7nm プロセスの歩留まりが社内目標より「approximately twelve months behind」で推移していることだと説明した。 同じ時期に TSMC は 7nm を量産に乗せApple は Mac を自社設計 SoC へ移す。 2021年3月、 Pat Gelsinger は「IDM 2.0」を掲げ、 アリゾナの新工場2棟に200億ドルを投じ、 米国と欧州で外部顧客向けのファウンドリ能力を提供すると宣言した。 しかしファウンドリ事業は先行投資が先に立ち、 2024年12月2日に Gelsinger は退任。 2025年3月12日に Lip-Bu Tan が CEO に指名され(発効は18日)、 同年8月22日、 米政府が普通株4億3330万株を1株20.47ドル、 総額89億ドルで取得して9.9%の株主となった。 原資は未払いの CHIPS 法補助金57億ドルと Secure Enclave 計画の32億ドルである。

事業構成 / Segments

セグメント内容2025年通年の売上 / 営業損益
Client Computing(CCG)PC 向け CPU・AI PC プラットフォーム322億ドル / +93億ドル
Data Center and AI(DCAI)サーバ CPU、 データセンタ向け169億ドル / +34億ドル
Intel Foundry自社ファブでのウェハ製造・先端パッケージ178億ドル / −103億ドル
その他(Mobileye ほか)自動運転など36億ドル / +2.6億ドル

Foundry の売上178億ドルの大半は社内取引で、 全社のセグメント間消去は年間177億ドルに達する。 つまり外部顧客向けのファウンドリ売上はまだ薄い。 2025年に投入した Core Ultra Series 3 は Intel 18A で作られた最初の製品で、 Intel は 18A の RibbonFET(ゲートオールアラウンド)と PowerVia(裏面電源供給)を量産における二つの業界初だと主張している。 次の Intel 14A は当初から外部顧客向けの提供を前提に設計されている。 FPGA の Altera は51%を売却し、 2025年9月12日付で連結から外れた。

重要事件 / Key Events

  • 1968年7月18日: Noyce と Moore が法人設立。 Grove が直後に参画。
  • 1971年11月: Intel 4004 を市販。 同年 IPO。
  • 1972年 / 1974年: 8008、 続いて 8080。 x86 の系譜はここから始まる。
  • 1981年: IBM PC が 8088 を採用し、 命令セットが業界標準になる。
  • 1985年10月10日: DRAM 市場からの撤退を発表。
  • 2009年: 欧州委員会が11億ユーロの制裁金(同年第3四半期に支払い)。 以後16年におよぶ訴訟へ。
  • 2020年7月23日: 7nm の歩留まりが社内目標より約12か月遅れていると開示。
  • 2021年3月: IDM 2.0 発表。 アリゾナに200億ドル。
  • 2024年12月2日: Pat Gelsinger 退任
  • 2025年3月12日: Lip-Bu Tan を CEO に指名(3月18日発効)。
  • 2025年8月22日: 米政府が89億ドルで9.9%を取得。
  • 2025年9月18日: NVIDIA が1株23.28ドルで50億ドルを出資、 x86 と NVLink の共同開発で合意。

業績指標 / Key Metrics

  • 売上(2025年通年): 528億5300万ドル(前年比ほぼ横ばい)/ 全社営業損益 −22億ドル
  • 純損益(Intel 帰属): 2025年 −3億ドル、 2024年 −188億ドル
  • 従業員: 8万5100人(2025年12月27日時点)。 2023年末の12万4800人から大幅減
  • 2025年の再編費用22億ドル。 中核人員は第2四半期末比で約15%減
  • 米政府の持株比率 9.9%。 議決権行使は取締役会に追随、 取締役の指名権なし

影響と批判 / Influence and Criticism

Intel は、 自社の創業事業を自ら畳んだ企業の代表例として経営学に残った。 だが同じ判断を、 モバイル SoC でも GPU 型の並列計算でも下せなかった。 x86 の利益率が高すぎて本気の賭けが遅れたという読み方は、 NVIDIA の売上構成と並べると分かりやすい。

競争法の面では、 欧州委員会が2009年に11億ユーロの制裁金を科した。 2022年1月に一般裁判所がリベートに関する認定と制裁金を取り消し(同年2月に返還)、 2024年10月に司法裁判所が委員会の上訴を退けた。 一方、 競合製品の投入を妨げる支払いがあったという認定は生き残り、 委員会は2023年9月に改めて3億7600万ユーロを科す。 これも2025年12月に一般裁判所が2億3700万ユーロへ減額した。 16年を要してなお終わっていない。

最大の論点は2025年の米政府出資である。 9.9%の株主は同時に規制当局であり、 補助金の出し手であり、 Secure Enclave を通じた顧客でもある。 Intel の発表では持株は受動的で取締役の指名権はないものの、 政府は株主総会で取締役会に追随して議決すると合意し、 さらに Intel がファウンドリ事業の51%以上を保有しなくなった場合にのみ行使できる5年間のワラント(1株20ドル、 追加5%分)を得た。 分社化を事実上封じる設計であり、 一企業の資本政策が安全保障政策の道具になったことを示している。 人員面でも代償は大きく、 従業員数は2年で12万4800人から8万5100人へ落ちた(この差には Altera の連結除外も含まれる)。

関連する出来事

  1. Intel 4004 ── 市販された最初のマイクロプロセッサ
  2. Ethernet の提案 ── 建物の中を1本のケーブルで結ぶ
  3. IBM Personal Computer 5150 ── 開いた設計が生んだ、失われた市場
  4. Apple Silicon M1 ── Mac の ARM 移行
  5. Intel CEO Pat Gelsinger 退任 ── 半導体覇権の崩落
  6. 米国政府が Intel の株主になる ── CHIPS 法の補助金を株式に換えた日

最終更新:

共有