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米国 vs Microsoft ── 反トラスト訴訟

訴訟が審理されたワシントン DC の E. バレット・プレティマン連邦裁判所庁舎
出典AgnosticPreachersKid (Wikimedia Commons) · Public domain · Commons で見る ↗

メタデータ

日付
年代
1990s
Tier
T1
参照年表
Microsoftの歴史
出典数
14
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02
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米国対 Microsoft の反トラスト訴訟は、1998年5月18日に米国司法省がワシントン DC の連邦地裁へ起こした。同じ日に20州とコロンビア特別区も同様の訴えを起こし、2件は民事第98-1232号・第98-1233号として併せて審理された。司法省の言い分は、Microsoft が PC 用 OS の独占を守り、その独占をインターネットのブラウザへ広げるために排他的な行為を重ねた、というものだった。

裁判は4年半続いた。地裁は2000年に会社の二分割を命じたが、2001年の控訴審がこれを取り消し、2002年11月に行動制限型の和解で決着した。分割は一度も実行されていない。

年表で見る訴訟の流れ

日付出来事
1998年5月18日司法省が提訴。20州とコロンビア特別区も同日に提訴
1999年11月5日Thomas Penfield Jackson 判事の事実認定(Findings of Fact)
2000年4月3日法的結論(Conclusions of Law)でシャーマン法違反を認定
2000年6月7日最終判決。OS 事業とアプリケーション事業への分割を命令
2001年6月28日コロンビア特別区巡回控訴裁判所の大法廷判決。救済判決を取り消し
2001年9月6日司法省が分割と抱き合わせの訴えを追わないと表明
2001年11月2日司法省と Microsoft が和解。のちに9州が加わる
2002年11月1日Colleen Kollar-Kotelly 判事が和解を承認(判決の登録は11月12日)
2011年5月延長を重ねた最終判決が失効

何が訴えられたのか

司法省の1998年5月18日のプレスリリースは、訴えの中身を具体的に並べている。1995年5月、Microsoft の幹部がブラウザの競合相手だった Netscape に対し、競争せず市場を分け合うよう持ちかけたこと。Windows 95 のライセンスを得る条件として、PC メーカーに Internet Explorer(IE)の搭載を求めたこと。開発中の Windows 98 に IE を抱き合わせようとしていること。さらに、PC メーカーが起動画面やブラウザの置き場所を変えるのを制限した契約や、インターネット接続業者・コンテンツ業者と結んだ、競合ブラウザの宣伝を抑える契約も問題にされた。

焦点はブラウザそのものより、その背後にあった。控訴審判決の言葉を借りれば、Netscape Navigator と Java はどちらも複数の OS 向けに書かれた「ミドルウェア」だった。その上で動くアプリケーションが増えれば、どの OS を使っていても同じソフトが動くようになり、Windows の独占を支える壁が低くなる。訴えの核心は、Microsoft がこの芽を摘んだという点にあった。

事実認定 ── 独占力はあった

Jackson 判事は1999年11月5日に事実認定を出した。第33段落は、Microsoft が Intel 互換 PC 用 OS の市場で、競争的な市場よりかなり高い価格を Windows に付けられるほどの力を持つと認めている。第35段落によれば、その市場での Microsoft のシェアは過去10年にわたり毎年90%を超え、直近の2年ほどは少なくとも95%だった。

2000年4月3日の法的結論は、これを受けて違法性を認定した。地裁は3つの違反を認めている。OS 市場の独占を違法に維持したこと(シャーマン法2条)、ブラウザ市場の独占を企てたこと(同2条)、IE を Windows に違法に抱き合わせたこと(同1条)である。

分割命令

2000年6月7日、地裁は救済として会社の分割を命じた。Microsoft に分割計画を提出させ、OS 事業とアプリケーション事業の2社に分けるという内容である。Microsoft は控訴した。

控訴審 ── 違法は残し、分割は消した

2001年6月28日、コロンビア特別区巡回控訴裁判所は大法廷で審理し、署名のない per curiam の判決を出した。結論は3つに分かれる。

地裁の認定控訴審の判断
OS 市場の独占の違法な維持(2条)支持
ブラウザ市場の独占の企図(2条)破棄
IE の抱き合わせ(1条)差し戻し。当然違法の基準ではなく、合理の原則で審理し直す
分割を含む救済判決全体を取り消し

救済判決を取り消した理由の一つは判事自身の振る舞いだった。判決は、Jackson 判事が審理中に報道関係者と秘密の取材を重ね、法廷の外で Microsoft の幹部について侮辱的な発言を繰り返したと認定し、事件を別の判事に移すよう命じた。

違法の中心部分は残った。Microsoft が PC 用 OS の独占を違法に維持したという判断は、控訴審でも覆らなかった。司法省は同日、裁判所がその点を認めたことを歓迎する短い声明を出している。

和解 ── 解体ではなく行動制限

2001年9月6日、司法省は方針を変えた。地裁が命じたような OS 事業とアプリケーション事業への分割は求めず、抱き合わせの訴えもこれ以上追わない、と Microsoft に伝えたのである。理由として挙げたのは、消費者のために迅速で確実な救済を得ることだった。

11月2日、司法省と Microsoft は和解に達した。記者会見で司法省が説明した骨子は次のとおりである。

  • PC メーカーは、報復を恐れずに競合のミドルウェア(ブラウザ、メッセンジャー、メディアプレーヤーなど)を搭載できる
  • Microsoft は、他社が競合製品を作れるよう、OS の内部インターフェイス(API)や通信プロトコルを開示する
  • 独立した技術者による委員会が順守を監視する。司法省と Microsoft が1人ずつ選び、その2人が3人目を選ぶ

Microsoft の発表によれば、制限の期間は5年だった。会長の Bill Gates は、和解は公正かつ妥当で、消費者と経済の利益にかなうと述べた。

和解には当初の原告州のうち9州が加わったが、9州とコロンビア特別区は不十分だとして、より厳しい救済を求めて争いを続けた。後任の Colleen Kollar-Kotelly 判事は2つの手続きを並行して審理し、2002年11月1日に和解を承認した。和解に加わらなかった州側の主張は、その大半が退けられている。

延長と失効

最終判決は5年後の2007年11月に満了する予定だったが、通信プロトコルの技術文書をめぐる部分は延長が重ねられた。2009年4月にも18か月の延長が決まり、最終判決は2011年5月に失効した。1998年の提訴から数えて13年である。

この訴訟が残したもの

訴訟が続いた間に、ブラウザをめぐる争いの形は変わっていた。Netscape は提訴の半年後の1998年11月に America Online(AOL)との合併契約を結び、独立した会社ではなくなった(Netscape の記事を参照)。訴訟は、失われた競争相手を元に戻す仕組みではなかった。

残ったのは、違法の認定と、和解が課した義務である。PC 用 OS の独占を違法に維持したという判断は控訴審でも確定し、API と通信プロトコルの開示、PC メーカーが他社製ミドルウェアを載せる自由は、延長を含めて2011年まで最終判決として効力を持った。裁判所の監視が外れた3年後の2014年、Satya Nadella が CEO に就き、Microsoft はクラウドとオープンソースへ軸足を移していく。2018年の GitHub 買収 はその延長にある。

会社の歩みは Microsoft と Microsoft の年表 に、ブラウザの時代背景は インターネットと Web の年表 にある。

よくある質問

米国対 Microsoft の反トラスト訴訟はいつ起こされましたか。
1998年5月18日です。司法省が Microsoft を提訴し、同じ日に20州とコロンビア特別区も同様の訴えを起こしました。2つの訴訟は民事第98-1232号と第98-1233号として、ワシントン DC の連邦地裁で併せて審理されました。
Microsoft は本当に分割を命じられたのですか。
はい。2000年6月7日、Jackson 判事は OS 事業とアプリケーション事業への分割を命じました。しかし2001年6月28日の控訴審判決がこの救済判決を取り消し、司法省も同年9月に分割を求めないと表明したため、分割は実行されていません。
控訴裁判所は何を認め、何を覆しましたか。
PC 用 OS の独占を違法に維持したという認定は支持しました。ブラウザ市場の独占を企てたという認定は破棄し、Internet Explorer の抱き合わせは別の基準で審理し直すよう差し戻しました。分割を含む救済判決は全体が取り消され、事件は別の判事に移されました。
訴訟はどのように終わりましたか。
2001年11月2日に司法省と Microsoft が和解し、9州が加わりました。Kollar-Kotelly 判事が2002年11月1日に和解を承認し、ミドルウェアの差し替えを PC メーカーに認めることや API の開示などを定めた最終判決が出ました。和解に加わらなかった9州とコロンビア特別区が求めたより厳しい救済は、大半が退けられました。最終判決は延長を経て2011年5月に失効しました。

出典

  1. 一次資料Justice Department Files Antitrust Suit Against Microsoft for Unlawfully Monopolizing Computer Software Markets — US Department of Justice press release, May 18, 1998

    提訴日、20州とコロンビア特別区の同日提訴、Netscape との1995年5月の会合、Windows 95 / 98 への IE の抱き合わせという訴えの中身

    取得日: 2026-10-05

  2. 一次資料U.S. v. Microsoft: Court's Findings of Fact (Nov 5, 1999) — US Department of Justice

    Intel 互換 PC 用 OS 市場での独占力(第33段落)と、10年にわたり90%超、近年は95%以上というシェア(第35段落)

    取得日: 2026-10-05

  3. 一次資料United States v. Microsoft Corp., 253 F.3d 34 (D.C. Cir. 2001) (en banc, per curiam) — Public.Resource.Org

    2001年6月28日の大法廷判決。独占維持の支持、独占企図の破棄、抱き合わせの差し戻し、救済判決の取り消しと判事の交代、地裁の分割命令の内容

    取得日: 2026-10-05

  4. 一次資料Justice Department Informs Microsoft of Plans for Further Proceedings in the District Court — US Department of Justice, Sep 6, 2001

    分割を求めず、抱き合わせの訴えも追わないという司法省の方針転換

    取得日: 2026-10-05

  5. 一次資料Order approving the Third Revised Proposed Final Judgment, U.S. v. Microsoft (Civil Action No. 98-1232) — US District Court for DC, Nov 12, 2002

    和解に署名した9州と、2002年11月8日提出の第3次修正最終判決案の採択

    取得日: 2026-10-05

  6. 三次資料United States v. Microsoft Corp. — Wikipedia

    取得日: 2026-08-03

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