詳述 · 9件の出来事
ヒューマノイドとAIロボットの歴史
1960年代
1970年代
早稲田大学が1973年に完成させた人間型ロボット。理工学部の4つの研究室が生物工学のグループをつくり、1970年に WABOT(WAseda roBOT)計画を始めた。中心は「日本のロボット研究の父」と同大学が呼ぶ加藤一郎教授で、音声認識・合成の白井克彦教授らが加わった。2本の脚で歩き、触覚センサーを持つ手で物をつかんで運び、人工の目と耳で物までの距離と方向を測り、人工の口から日本語で人と会話した。研究者はその知能を1歳半の子どもにたとえた。早稲田大学はこれを世界初の本格的な人間型ロボットと説明している。1984年には楽譜を読んで電子オルガンを弾く WABOT-2 が続き、1985年のつくば科学万博で展示された。WABOT-1 は西早稲田キャンパス63号館のロビーに展示されている。
2000年代

Syced (Wikimedia Commons) · CC0 · Commons ↗ 本田技研工業が2000年11月20日に発表し、東京の本社で実演した人間型ロボット。身長120cm・重量43kgで、前身の P3(160cm・130kg)から大きく小型軽量化し、次の動きを予測して重心を移す新しい歩行制御で、人に近い歩き方を実現した。自由度は合計26、歩行速度は時速0〜1.6km。名前は Advanced Step in Innovative Mobility の略。ホンダの二足歩行の研究は1986年の E0 に始まり、1996年12月に公開した P2 は胴体に計算機と電池を収めて無線で動いた。ASIMO は2001年にレンタル事業に投入され、のちに顔の認識、走行、複数台での作業分担を加え、2011年の型は時速9kmで走った。日本科学未来館では2002年1月から実演を重ね、20年間に約200万人が見たとされ、2022年3月31日に実演を終えた。
2010年代
2010年代、 人型ロボットは二つの方向から試された。 米国では、 原発事故を受けて始まった DARPA の競技が災害現場で働ける機体を求め、 当初は電源とケーブルでつながれ人の指令で動いた油圧の Atlas が、 決勝では電池と無線で動いた。 日本では携帯電話会社が、 二本の脚ではなく車輪で進み、 表情と声から感情を推し量るとうたう Pepper を店頭に立たせ、 月額の契約と組み合わせて一般に売った。 Atlas の作り手はのちにソフトバンクの傘下に入ったが、 Pepper の生産は発売から数年で止まった。

DARPA (Wikimedia Commons) · Public domain · Commons ↗ 米国防高等研究計画局(DARPA)が2013年7月11日に公開した人間型ロボット。Boston Dynamics が DARPA ロボティクス・チャレンジ(DRC)のために製作した。身長6フィート2インチ(約188cm)、重量330ポンド(約150kg)で、28の関節を油圧で動かし、頭部に LIDAR とステレオカメラを積んだ。当初は外部の電源と計算機にケーブルでつながれ、人が指令を出した。DRC は2011年の福島第一原発事故を受けて、災害現場で人を助けるロボットを促すために始められた競技で、仮想空間の予選を勝ち抜いた7チームに Atlas が渡された。2015年6月の決勝では Atlas はバッテリーと無線通信で動き、Atlas を使ったフロリダの IHMC が2位に入った(優勝は韓国 KAIST の DRC-HUBO)。Boston Dynamics は2013年に Google に買収され、2017年に SoftBank、2021年に現代自動車グループの傘下に移った。油圧式の Atlas は2024年4月に引退した。

Tokumeigakarinoaoshima (Wikimedia Commons) · CC0 · Commons ↗ ソフトバンクモバイルは2014年6月5日、フランスの Aldebaran と共同開発した人型ロボット Pepper を発表し、「世界初の感情認識パーソナルロボット」とうたった。身長1,210mm・重量28kg、脚の代わりに車輪で動き、胸に10.1インチのタッチディスプレイを持ち、表情や声から人の感情を推し量るとした。翌日からソフトバンクの店頭で接客に立ち、2015年2月27日に開発者向けの300台、6月20日に一般向けの販売を始めた。本体は198,000円(税抜)だったが、ウェブ購入では月額の基本プランと保険パックへの36か月の加入が必要で、6月分の1,000台は1分で売り切れた。同月には Alibaba と Foxconn がロボット事業に各145億円を出資すると発表された。2021年6月、Reuters は生産が前年に止まり、製造は約2万7,000台だったと関係者の話として報じ、Bloomberg は在庫の積み上がりで組み立てが止まったと伝え、ソフトバンクは再開はありうるとした。
2020年代
2020年代、 ヒューマノイドは研究室の実演から、 工場の生産計画と投資の対象へ移った。 Tesla は着ぐるみの登場から始まり、 来場者の前に出した試作機では遠隔操作が報じられ、 約束した台数にもまだ届かない。 Figure は言語モデルの会社と組んだのち自前のモデルへ切り替え、 Boston Dynamics は油圧の研究機を電動の製品に作り替えた。 中国では国の指針のもとで安価な機体が出荷され、 上場が巨額の資金を集める。 人が書いていた動きは実演のデータから学ばせるものになったが、 広く普及する時期はなお見通せない。

Benjamin Ceci (Wikimedia Commons) · Public domain · Commons ↗ Tesla が2021年8月19日の AI Day で発表した人型ロボットの計画。当初の名は Tesla Bot で、身長5フィート8インチ(約173cm)、重量125ポンド(約57kg)、時速5マイルで歩く構想が示されたが、舞台に現れたのはロボットの着ぐるみを着た人だった。2022年9月30日の AI Day では試作機 Optimus が初めてケーブルなしで舞台を歩き、Musk CEO は量産すれば価格はおそらく2万ドル未満と述べた。2024年10月10日のイベント「We, Robot」では来場者に飲み物を出したが、Bloomberg などは人が遠隔で操作していたと報じた。Musk CEO は2025年に約1万台を作ると予測したが実現せず、2026年1月には工場で役に立つ仕事をしている Optimus はまだないと認めた。Tesla は2026年7月、フリーモント工場の Model S・X の生産ラインを廃し、Optimus の第1世代の生産ラインを設置中で、2026年中の生産を見込むと発表した。
Figure は、2022年に Brett Adcock が創業した米カリフォルニア州の人型ロボットの新興企業。2024年1月に BMW と初の商用契約を結び、サウスカロライナ州スパータンバーグ工場に人型ロボット Figure 01 を段階的に導入するとした。2024年2月29日には、Microsoft、OpenAI Startup Fund、NVIDIA、Jeff Bezos らから評価額26億ドルで6億7500万ドルを調達し、OpenAI と人型ロボット向けの次世代 AI モデルを共同開発する契約を発表した。しかし2025年2月に OpenAI との契約を打ち切り、自社開発の視覚・言語・行動モデル Helix を公開する。2025年4月には Fortune が、BMW での稼働について CEO の発言が誇張だと報じた。同年9月に評価額390億ドルで10億ドル超を調達し、10月に家庭向けを掲げた Figure 03 を発表した。Figure によれば、Figure 02 は BMW で11か月稼働し、3万台超の X3 の生産に関わった。同年11月には元製品安全責任者が、安全上の懸念を訴えた後に解雇されたとして同社を提訴している。

