T1#research#japan
WABOT-1 ── 早稲田大学が1973年に完成させた人間型ロボット
メタデータ
- 日付
- 年代
- 1970s
- Tier
- T1
- 出典数
- 03
- 関連項目
- 01
- Tags
- #research#japan
WABOT-1(ワボット1号)は、早稲田大学が1973年に完成させた人間型ロボットである。2本の脚で歩き、触覚センサーを備えた手で物をつかんで運び、人工の目と耳で物までの距離と方向を測り、人工の口から日本語で人と会話した。早稲田大学はこれを世界初の本格的な人間型ロボットと説明しており、のちに日本がホンダの ASIMO をはじめとするヒューマノイドロボットの研究で先頭を走る出発点になった。
4つの研究室で始まった計画
WABOT は「WAseda roBOT」の略である。同大学ヒューマノイド研究所の資料によると、理工学部の4つの研究室が生物工学のグループをつくり、1970年に WABOT 計画を始めた。中心にいたのは、早稲田大学が「日本のロボット研究の父」と呼ぶ加藤一郎教授で、加藤研究室は人工の手足とその制御を受け持った。
この共同開発には、音声認識と音声合成を専門とし、のちに総長となる白井克彦教授も加わっていた。早稲田大学の記事によれば、白井教授と加藤教授が意気投合したことがきっかけで、4人の教員が共同で開発して WABOT-1 が生まれた。脚と手、目と耳、口を別々の専門家が担ったことは、人間型ロボットが機械工学だけでなく、感覚と言語の研究の寄せ集めでもあることをはじめから示している。
何ができたのか
ヒューマノイド研究所の資料は、WABOT-1 の能力を次のようにまとめている。
| 部位 | できたこと |
|---|---|
| 脚 | 下肢を使って歩く(脚は WL-5) |
| 手 | 触覚センサーを持つ手で物をつかみ、運ぶ(手は WAM-4) |
| 目と耳 | 外部の受容器、人工の目と耳で、物までの距離と方向を測る |
| 口 | 人工の口を通じて、日本語で人と会話する |
研究者はその知能を1歳半の子どもに相当すると見積もった。今日の基準ではごく限られた能力だが、歩行・把持・視覚・会話を1台の人の形の機械にまとめた点に、この計画の意味がある。1966年に始まった SRI の Shakey が車輪で走る箱型の移動ロボットとして「見て、計画して、動く」ことを示したのに対し、WABOT-1 は人の体の形そのものを再現しようとした。
「世界初」をどう読むか
早稲田大学の英語の記事は、WABOT-1 が世界初の本格的な人間型ロボットと広くみなされていると書き、ヒューマノイド研究所の資料も世界で初めて開発された実物大の人型ロボットとしている。いずれも開発した大学自身の説明であり、「本格的な」「実物大の」という限定がついている。WABOT-1 の位置づけは、歩く脚と、つかむ手と、話す口を1体にそろえた最初期の例という意味で理解するのがよい。
WABOT-2 と、その後の早稲田
加藤教授の計画は、1984年の WABOT-2 に引き継がれた。早稲田大学によると、WABOT-2 は音楽の能力を目指して設計され、楽譜を読み、両手と両足で電子オルガンを弾き、人の歌に合わせて伴奏を調整できた。1985年のつくば科学万博(国際科学技術博覧会)で展示され、ロボットが創造的で対話的な仕事をこなせることを広く見せた。
その後、早稲田大学では1990年代から2000年代にかけて、高西淳夫教授らが WABIAN シリーズで、より人らしい滑らかな二足歩行の研究を進めた。安定した歩行、方向転換、物を運びながらの歩行が主題で、バランス制御と全身の協調の改善に貢献したと同大学は説明している。
今日から見た WABOT-1
ヒューマノイドの研究は、その後、大学の研究室から企業の製品開発へ舞台を移した。ホンダは1986年に二足歩行の研究を始め、2000年に ASIMO を発表する。2010年代には米国防高等研究計画局(DARPA)の競技のために油圧式の Atlas が作られ、2020年代には Tesla の Optimus や Figure が工場での労働を掲げて巨額の資金を集めている。
それでも、WABOT-1 が1970年代に掲げた組み合わせ ── 歩く、つかむ、見る、話す ── は、いまもヒューマノイドの開発目標の骨組みのままである。違うのは、それぞれを人がプログラムで書くのではなく、大量のデータから学習させようとしている点だ。
WABOT-1 は現在、東京・西早稲田キャンパスの63号館のロビーに展示されている。WABOT-2 も通常は隣に並ぶが、早稲田大学によれば、2026年5月の時点ではオーストラリア・メルボルンの博物館に貸し出されている。全体の流れはヒューマノイドと AI ロボットの年表にある。
よくある質問
- WABOT-1 とは何ですか。
- 早稲田大学が1973年に完成させた人間型ロボットです。2本の脚で歩き、触覚センサー付きの手で物をつかんで運び、人工の目と耳で物までの距離と方向を測り、日本語で人と会話しました。早稲田大学は世界初の本格的な人間型ロボットと説明しています。
- WABOT-1 は誰が作ったのですか。
- 早稲田大学理工学部の4つの研究室によるグループで、中心は加藤一郎教授です。音声認識・合成が専門で、のちに総長となる白井克彦教授も加わりました。計画は1970年に始まりました。
- WABOT-1 は今どこで見られますか。
- 早稲田大学西早稲田キャンパスの63号館ロビーに展示されています。
出典
一次資料Humanoid History -WABOT- (WABOT -WAseda roBOT-) — Humanoid Robotics Institute, Waseda University
1970年の計画開始と4研究室の生物工学グループ、歩行・把持・距離と方向の計測・日本語での会話、1歳半の子どもにたとえた知能、WAM-4 と WL-5
一次資料The Robots of Waseda: A 50-Year Journey in Humanoid Innovation — Waseda University, May 8, 2026
1973年の完成、世界初の本格的な人間型ロボットという説明、加藤一郎教授、WABOT-2(1984年・つくば科学万博)、WABIAN、63号館での展示
一次資料人との関係性に重きを置いた、早稲田のロボット研究の系譜 — 早稲田大学
加藤一郎教授が中心となった1973年の発表、白井克彦教授を含む4人の教員による共同開発
最終更新: