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Windows NT ── DOS から離れた32ビットの Windows、いまの Windows の土台
メタデータ
- 日付
- 年代
- 1990s
- Tier
- T1
- 参照年表
- OSの歴史 · Microsoftの歴史
- 出典数
- 09
- 関連項目
- 03
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Windows NT は、Microsoft が MS-DOS に頼らずに一から書いた32ビットの OS である。最初の版 Windows NT 3.1 と、サーバー版の Windows NT Advanced Server は、1993年7月27日に製造工程向けにリリース(RTM)された。同日付の Microsoft のプレスリリースは、両製品が3週間以内に販売店・システムインテグレーター・PC メーカー・Microsoft 直販から手に入るとしている。つまり7月27日は「完成して出荷に回った日」で、店頭に並んだのはその後である。
NT は「New Technology」の略とされる。名前に Windows を冠し、番号を当時の Windows 3.1 に合わせて3.1から始めたのは、見た目と使い勝手が既存の Windows と同じだと示すためだった。中身はまったく別物で、この NT の系譜がのちの Windows 2000、Windows XP を経て、いまの Windows 10・11 にまで続いている。
発売までの日付
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 1988年10月31日 | DEC を離れた Dave Cutler が Microsoft に入社 |
| 1989年4月 | 本格的なコーディングを開始 |
| 1990年8月 | OS/2 向けだった設計を、Windows の32ビット版 API(Win32)中心に切り替える |
| 1991年10月 | COMDEX で初めて公開デモ |
| 1992年10月 | 最初の公開ベータ版 |
| 1993年7月27日 | Windows NT 3.1 と Advanced Server を RTM。3週間以内の出荷を予告 |
| 1993年9月 | DEC Alpha 版が続く |
| 1994年9月21日 | Windows NT 3.5 |
| 1996年8月24日 | Windows NT 4.0。Windows 95 と同じ画面に |
| 2000年12月31日 | Windows NT 3.1 のサポート終了 |
1988〜1989年の日付は Microsoft 自身の記事、1991年以降の日付と NT 3.5・4.0 の日付は Wikipedia による。最後の段階には日付の揺れがある。The Register は G. Pascal Zachary の『Showstopper!』を引いて、メーカー向けのリリースを7月26日としている。マイナビニュースの連載も、7月26日に開発チームの手を離れ、27日のリリースに至ったと書く。本稿は Microsoft のプレスリリースの日付をとる。
DEC の VMS から来た設計者
開発を率いた Dave Cutler は、DEC(Digital Equipment Corporation)で1970年代後半にミニコンピュータ VAX 用の OS、VMS の開発を率いた人物である。Microsoft が2016年に載せた記事によれば、Cutler は1988年、自分のチームの Prism プロジェクトと新 OS の Mica が打ち切られたのを機に DEC を離れた。Bill Gates からの電話をきっかけに Gates、Ballmer、Myhrvold と会い、1988年10月31日に Microsoft に移った。DEC 西海岸拠点の同僚(ソフトウェア5人、ハードウェア6人)も後を追った。
同じ記事によれば、1988年に約20人で始まったチームは、5年後の出荷時には約150人に増えていた。Wikipedia は Zachary の本を引いて、250人のプログラマーが560万行のコードを書き、開発費は1億5,000万ドルだったとする。Wikipedia はまた、NT 3.1 には Cutler の前作 VMS から多くの考え方が持ち込まれたと書く。DEC は Mica のコードが使われたとして Microsoft を訴え、和解の条件として NT は DEC の Alpha プロセッサに対応することになった(これも Wikipedia による)。
OS/2 として始まり、Windows になった
NT は最初から Windows だったわけではない。Wikipedia によれば、開発は当初、IBM と共同で作っていた OS/2 の新版「NT OS/2」として進んだ。1990年5月に出た Windows 3.0 が売れたことで方針が変わり、同年8月、チームは Windows の API を32ビットに広げた Win32 を中心に据え直した。The Register の記事も、Zachary の記述として、1990年8月に NT が Windows の画面を載せると決まった経緯を紹介している。IBM は1991年1月にこの計画を知り、OS/2 での協業は終わった。
何が新しかったのか
当時の Windows 3.1 は MS-DOS の上で動く「操作環境」だった。NT は OS そのものを書き直した。Wikipedia は、Cutler が掲げた目標を三つにまとめている。
| 目標 | 中身 |
|---|---|
| 移植性 | 一つの CPU に縛られない。大半を C で書き、機械に依存する部分を薄い層(HAL)に閉じ込める |
| 信頼性 | 一つのアプリや故障したハードウェアで OS ごと落ちない。OS の中核をアプリから隔離する |
| 「パーソナリティ」 | Windows、MS-DOS、OS/2、POSIX のアプリを、それぞれのサブシステムで動かす |
実際の NT 3.1 は x86 と MIPS で出荷され、Alpha 版が続いた。複数プロセッサに対応し、利用者ごとにアカウントと権限を持ち、Ctrl+Alt+Del で始まるログオン、障害に強いファイルシステム NTFS、Unicode による文字処理を備えた。Advanced Server はドメインコントローラーとして利用者を一元管理でき、Microsoft の LAN Manager の後継とされた。
RTM のプレスリリースで、システム部門の上級副社長 Paul Maritz は「Windows NT is one of the largest software projects ever undertaken」と述べた。リリースは、7万人超の開発者と1万超の企業がリリース前に試したこと、Microsoft 自身が2年以上社内で使ってきたことを挙げている。
重すぎた最初の版
最初の版は売れたとは言いにくい。Wikipedia によれば、x86 での最低要件は 386/25MHz とメモリ12MB で、推奨は 486 とメモリ16MB だった。当時の平均的な PC を大きく上回る。雑誌 COMPUTE! の1993年8月号も、NT が Windows 3.1 の次の版ではなく新しい OS であることを説明しつつ、プロセッサ・メモリ・ディスクへの重い要求という代償を指摘している。32ビットのアプリも少なかった。
販売本数の数字は資料で割れる。Wikipedia は初年度に約30万本、The Register は Zachary を引いて「初年度50万本未満、見込みの100万本の半分」とする。価格は Wikipedia によれば Workstation 版が495ドル、Advanced Server が1,495ドルだった。
NT の系譜は今も続く
NT の名前は1996年の NT 4.0 を最後に製品名から消えた。それでも、その後の Windows はすべて NT の上に建っている。Microsoft の開発者向け文書は、各 Windows に内部のバージョン番号を割り当てている。
| 製品 | 内部バージョン |
|---|---|
| Windows 2000 | 5.0 |
| Windows XP | 5.1 |
| Windows Vista | 6.0 |
| Windows 7 | 6.1 |
| Windows 8 / 8.1 | 6.2 / 6.3 |
| Windows 10 / Windows 11 | 10.0 |
転機は2001年の Windows XP である。家庭向けの Windows 95 から Windows Me までの系統は MS-DOS 由来のコードを抱えたまま終わり、XP で家庭向けも NT の上に移った。Cutler が2008年に米国家技術・イノベーション賞を受けた際、推薦を支える文書で Bill Gates も、2001年の XP の登場で NT が Microsoft のあらゆる PC 用 OS の土台になったと書いている(Microsoft の記事による)。
Cutler 自身はその後も NT にかかわった。Microsoft の記事によれば、NT 全体の指揮から退いたのは1996年だが、カーネル開発は2006年まで率い、AMD と組んで64ビット版 Windows を出した。その後はクラウドの Azure と、Xbox One のハイパーバイザーの開発にも携わった。
Windows の系譜全体は Microsoft の年表と OS の年表、企業については Microsoft を参照。
よくある質問
- Windows NT はいつリリースされましたか。
- 最初の版 Windows NT 3.1 と Windows NT Advanced Server は1993年7月27日に製造工程向けにリリース(RTM)され、Microsoft は3週間以内に販売店などから手に入ると発表しました。7月26日とする資料もあります。
- Windows NT と Windows 3.1 は何が違うのですか。
- Windows 3.1 は MS-DOS の上で動く操作環境でしたが、NT は OS 自体を新しく書いた32ビットの OS です。複数の CPU や複数プロセッサで動き、利用者ごとのアカウントと権限、ファイルシステム NTFS を備えていました。画面は Windows 3.1 とほぼ同じでした。
- Windows NT を開発したのは誰ですか。
- 開発を率いたのは Dave Cutler です。DEC で VMS の開発を率い、1988年10月31日に Microsoft に移りました。約20人で始まったチームは、出荷時には約150人になっていたと Microsoft は伝えています。
- いまの Windows は NT なのですか。
- はい。NT の名は1996年の NT 4.0 を最後に製品名から消えましたが、Windows 2000、XP 以降はすべて NT の系譜です。Microsoft の文書では Windows 10 と Windows 11 の内部バージョンはともに10.0 です。
出典
7月27日の RTM、3週間以内の出荷予定、x86 と MIPS R4400、Alpha 版は60日以内、Paul Maritz の発言、7万人超の開発者と1万超の企業による事前テスト
Cutler の VMS、Prism と Mica の中止、1988年10月31日の入社、1989年4月のコーディング開始、20人から150人、1993年7月27日の出荷、1996年と2006年の役割、Gates の推薦文
一次資料Operating System Version — Microsoft Learn
Windows 2000 から Windows 11 までの内部バージョン番号
二次資料David Cutler — Computer History Museum Fellow Awards
DEC での RSX-11M と VMS、1988年の Microsoft 入社
二次資料Happy 20th birthday, Windows NT 3.1: Microsoft's server outrider — The Register, August 1, 2013
Zachary『Showstopper!』による7月26日のメーカー向けリリースと初年度50万本未満、1990年8月の Windows 化、Cutler と VMS
二次資料Windows NT — COMPUTE! Issue 155, August 1993
発売当時の評価。Windows 3.1 の次版ではなく新しい OS であることと、重いハードウェア要求
二次資料世界のOSたち - Windows OSの未来を作った「Windows NT 3.x」後編 — マイナビニュース、2013年8月14日
ベータ版と RC 版の日付、7月26日に開発チームの手を離れ27日にリリース
三次資料Windows NT 3.1 — Wikipedia
NT OS/2 からの経緯、COMDEX 1991、設計目標、VMS 由来の考え方、DEC との和解、価格、システム要件、初年度約30万本、サポート終了
NT 3.5・3.51・4.0 の日付、NT の名が NT 4.0 を最後に使われなくなったこと
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