T1
TSMC 7nm プロセス量産開始

メタデータ
- 日付
- 年代
- 2010s
- Tier
- T1
- 参照年表
- 半導体・ハードウェアの歴史
- 出典数
- 10
- 関連項目
- 04
TSMC の 7nm(N7)は、台湾積体電路製造(TSMC)が2018年に量産を始めた半導体の製造工程(プロセスノード)である。TSMC は自社サイトで、同社が2018年に 7nm FinFET の量産を始めた最初のファウンドリ(受託製造会社)だとしている。2018年の 20-F 年次報告書によれば、同年の 7nm の売上は TSMC のウェハ売上全体の9%に達した。最初期の量産採用例が、2018年9月21日に日本を含む第一陣の国で発売された iPhone XS の Apple A12 Bionic である。
ここで最初に押さえておくべきことがある。「7nm」はノードの呼び名であって、チップ上のどこかを測ると7ナノメートルになるわけではない。IEEE Spectrum の2020年の記事は、7nm のトランジスタの重要な寸法の大半は7nm よりかなり大きく、名前と物理的な実態のずれは約20年続いていると指摘している。
2018年に何が起きたか
TSMC の 2018年 20-F は、この年の進展を3つにまとめている。7nm の量産開始、その改良版である 7nm Plus(N7+)の研究開発から製造への移管、そして2019年のリスク生産に向けた 5nm の開発継続である。
| 項目 | 内容(2018年) |
|---|---|
| 7nm の量産 | 2018年に開始(TSMC は最初のファウンドリと説明) |
| 7nm の売上比率 | ウェハ売上全体の9% |
| 10nm の売上比率 | 11% |
| 16/20nm の売上比率 | 23% |
| 28nm 以下の合計 | 63%(2017年は58%) |
| 年間出荷 | 12インチ換算で約1,080万枚 |
| 7nm を最先端とする工場 | Fab 12(新竹)と Fab 15(台中) |
N7+ は、2019年10月の TSMC の発表によれば、極端紫外線(EUV)露光を使う工程として初めて顧客の製品を大量に市場へ届けた。量産開始は2019年第2四半期で、N7 に比べ15〜20%高い密度と改善された消費電力をうたう。つまり2018年の N7 自体は EUV を使わない工程であり、EUV が量産に入ったのは翌年の N7+ からである。
2018年の TSMC の顧客 ── 本社所在地別の売上
20-F は、顧客の本社がある国・地域で分けた売上高も示している。7nm に限らない会社全体の数字だが、2018年は北米が61.8%と過半を占め、中国が17.0%、日本は5.6%だった。
| 地域 | 2016年 | 2017年 | 2018年 |
|---|---|---|---|
| 北米 | 66.3% | 65.3% | 61.8% |
| 中国 | 8.7% | 11.3% | 17.0% |
| アジア太平洋(中国・日本を除く) | 14.2% | 10.1% | 8.7% |
| 欧州・中東・アフリカ | 6.1% | 7.1% | 6.9% |
| 日本 | 4.7% | 6.2% | 5.6% |
同じ報告書によれば、2018年の設備投資は主に 7nm と 5nm の生産能力の導入・拡張に向けられ、中部科学園区の Fab 15 の建屋拡張と、南部科学園区での Fab 18 の新設が並んでいた。7nm は売上の9%にすぎない新しい工程だったが、投資の中心はすでにそこへ移っていた。
Apple A12 Bionic ── スマートフォンの 7nm
2018年9月12日、Apple は iPhone XS と XS Max を発表し、A12 Bionic を「the first 7-nanometer chip ever in a smartphone」と紹介した。予約は9月14日、発売は9月21日で、日本は発売初日の国に含まれている。
Apple は製造元を公表していない。TSMC が A12 を製造したことを示すのは、分解解析会社 TechInsights の報告である。同社は A12 を TSMC の 7nm FinFET で製造されたチップとし、続く報告でダイ面積を 83.27mm² とした。Motley Fool の記事は、69億トランジスタを載せた A12 が、43億トランジスタだった前年の A11(87.66mm²)より小さいと指摘している。
| A11 Bionic(2017年) | A12 Bionic(2018年) | |
|---|---|---|
| ダイ面積 | 87.66mm² | 83.27mm² |
| トランジスタ数 | 43億 | 69億 |
| Neural Engine | 毎秒6000億回 | 毎秒5兆回(Apple の公称) |
Apple は A12 の高性能コアが最大15%速く、高効率コアは最大50%効率的、GPU は最大50%速いとも述べているが、いずれも Apple 自身の比較である。
競合の脱落と遅れ
2018年は、最先端のロジック製造を担える会社の数が減った年でもある。
GlobalFoundries の撤退。 2018年8月、GlobalFoundries は 7nm FinFET の開発計画を無期限に保留すると発表した。bit-tech の報道によれば、同社の主要顧客だった AMD は、7nm の製品群を TSMC の 7nm に集中させると表明した。
Intel の 10nm の遅れ。 2018年7月の決算説明で、暫定 CEO を務めていた Bob Swan は、10nm を載せたシステムが店頭に並ぶのは2019年のホリデーシーズンになると述べた。bit-tech は、Intel の 10nm が当初2015年に予定されていたと書いている。Intel の 10nm と TSMC の 7nm は名前の数字が違うが、上で見たとおりノード名どうしを数字で比べることに意味は乏しい。
TSMC の顧客名簿には、20-F の時点で AMD、NVIDIA、Qualcomm、MediaTek、さらに Intel までが並んでいる。
その後のノード
TSMC は 7nm の次に N7+、N6、N5 と工程を進めた。2019年10月の発表は、N6 を2020年第1四半期にリスク生産へ入れ、同年末までに量産へ移すと予告している。2022年に NVIDIA が発表したデータセンター GPU H100 は、TSMC の 4N で作られている。Apple の Mac が自社設計のチップに移った2020年の M1 も参照。
iPhone 側の物語は iPhone XS / XR に、製造の背景となる経験則は ムーアの法則 にある。同時代の部品は ハードウェアの年表 を参照。
よくある質問
- TSMC の 7nm はいつ量産が始まったのですか。
- 2018年です。TSMC は、2018年に 7nm FinFET(N7)の量産を始めた最初のファウンドリだと説明しています。同年の 20-F によれば、7nm は2018年のウェハ売上の9%を占めました。
- 「7nm」はダイ上の実際の寸法ですか。
- いいえ。ノードの呼び名です。IEEE Spectrum の2020年の記事は、7nm のトランジスタの重要な寸法の大半は7nm よりかなり大きく、名前と実態のずれは約20年続いていると指摘しています。
- TSMC の 7nm で作られた最初期のチップは何ですか。
- Apple A12 Bionic です。2018年9月21日に発売された iPhone XS に載り、Apple はスマートフォンで初めての 7nm チップと紹介しました。Apple は製造元を公表しておらず、TSMC 製であることは分解解析の TechInsights が報告しています。
- TSMC の 7nm は EUV を使っていたのですか。
- 2018年の N7 は使っていません。EUV 露光を使ったのは改良版の N7+ で、TSMC によれば2019年第2四半期に量産に入り、EUV で顧客製品を大量に届けた業界初の工程になりました。
出典
一次資料TSMC Annual Report on Form 20-F for 2018 — U.S. Securities and Exchange Commission
2018年の 7nm 量産開始と N7+ の製造移管、7nm がウェハ売上の9%、ノード別の売上比率、出荷枚数、Fab 12 と Fab 15、顧客名
N7+ の EUV、2019年第2四半期の量産、N7 比15〜20%の密度向上、N6 の予定
二次資料Apple iPhone Xs Max Teardown — TechInsights
A12 を TSMC の 7nm FinFET 製と特定
三次資料TSMC — Wikipedia
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