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絵文字 ── 日本の携帯電話から Unicode、そして世界へ
メタデータ
- 日付
- 年代
- 1990s
- Tier
- T1
- 出典数
- 11
- 関連項目
- 02
- Tags
- #japan#ntt-docomo#emoji#unicode#mobile-internet
絵文字(emoji)は、1990年代後半の日本の携帯電話で生まれた。よく知られているのは、1999年に i モード とともに登場した NTT ドコモの絵文字で、栗田穣崇が開発を主導した12×12ドットの176種は、2016年にニューヨーク近代美術館(MoMA)のコレクションに入った。ただし、携帯電話で最初の絵文字はドコモのものではない。J-PHONE が1997年11月に出したパイオニア製の SkyWalker DP-211SW が、すでに90種の絵文字を持っていた。
その後、各社ばらばらだった絵文字は、2010年10月の Unicode 6.0 で国際的な文字コードに収録され、iPhone と Android を通じて世界の言葉になった。英語の「emoji」は日本語の「絵文字」そのものである。
年表:ポケベルのハートから Unicode まで
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1995年 | ドコモのポケットベルにハートの記号が加わる(Emojipedia が引く2013年の記事による) |
| 1997年11月1日 | J-PHONE の SkyWalker DP-211SW。90種の絵文字を持つ、知られている限り最初の携帯電話 |
| 1999年 | NTT ドコモの i モード端末に絵文字。初期の176種は12×12ドット |
| 2000年 | ドコモの絵文字を Unicode に加える提案。採用されず |
| 2006年 | Google が日本の絵文字を Unicode の私用領域に変換する作業を始める |
| 2007年 | Unicode の対象を絵文字まで広げる提案が承認され、8月に技術委員会が符号化の支持で合意 |
| 2008年11月 | Apple が iPhone OS 2.2 で絵文字を搭載。当初は日本の iPhone 向け |
| 2009年 | Google と Apple の技術者が共同で絵文字の符号化を提案 |
| 2010年10月11日 | Unicode 6.0 公開。日本の携帯電話会社の絵文字が標準に |
| 2011年 | iOS 5 で、日本以外の利用者も絵文字キーボードを使えるようになる |
| 2015年11月 | Oxford Dictionaries が「うれし泣きの顔」の絵文字をその年の言葉に選ぶ |
| 2016年10月26日 | MoMA がドコモの初期絵文字176種の収蔵を発表 |
| 2025年6月下旬 | ドコモが新機種への独自絵文字の搭載を終える |
ドコモより先にあった J-PHONE の90種
長いあいだ、絵文字の起源はドコモの1999年の絵文字だと語られてきた。それを正したのが、絵文字の事典サイト Emojipedia の2019年3月8日の記事である。記事は、J-PHONE(のちの Vodafone 日本法人、現在のソフトバンク)の SkyWalker DP-211SW が1997年11月に90種の絵文字を搭載して発売されていたことを、プレスリリースと取扱説明書から示した。いまの Unicode の U+1F4A9(うんち)の絵文字も、この1997年のセットに由来するという。
ただし Emojipedia によれば、DP-211SW は売れ行きが振るわず、絵文字も J-PHONE の他の機種では使えなかった。同じ機種を持つ相手がいなければ、送っても意味がなかったのである。
ドコモの絵文字の開発を主導した栗田穣崇本人も、2019年1月3日の投稿でこう書いている ──「日本のモバイル端末における絵文字はポケベルが最初ですが、ケータイに関しては私が開発したドコモの絵文字が最初ではなく、J-PHONEのパイオニアDP-211SWが最初だったと思います。」
一方で、Unicode Consortium の技術標準 UTS #51 は今も、絵文字が日本の携帯電話で使えるようになったのは1999年だと書いている。「最初」をめぐる記述は、出典によって揃っていない。
ドコモの絵文字はどう作られたか
ドコモの絵文字が広く使われたのは、対応する端末が多く、しかもどのメーカーの端末も同じ絵を載せていたからだと Emojipedia は指摘する。
2016年12月の ケータイ Watch の記事によれば、栗田がポケベルで流行したハートの記号をヒントに絵文字を思いついたのは1998年3月だった。i モードは当初1998年12月に始まる予定で、開発に使えるのは1か月ほどしかなかった。端末メーカーに絵の作成を任せるつもりだったが、メーカー側も困り、結局は栗田自身が方眼紙に12×12ドットで描いていった。銀行、コンビニ、天気など i モードのサービスで使う記号と、メールで使うハートや顔の記号を合わせ、200種程度を用意したという。
2025年の ITmedia の記事では、栗田は構想に数か月、開発に1か月弱かかったと振り返り、色は6色の中から自分で選んだと述べている。
| 項目 | ドコモの初期絵文字 |
|---|---|
| 登場 | 1999年、i モード対応端末に搭載 |
| 大きさ | 12×12ドット |
| 種類 | MoMA が収蔵した初期セットは176種 |
| 開発の中心 | 栗田穣崇(当時 NTT ドコモ) |
| 主な用途 | i モードのコンテンツの記号と、メールでの感情表現 |
ばらばらの絵文字を一つの文字コードへ
UTS #51 は、標準化までの経緯をこう説明している。絵文字は日本で人気を集めたが、携帯電話会社ごとに少しずつ違う絵文字を持ち、文字コードの拡張も互いに互換性が無かった。他社の端末で表示できない絵文字は 〓(ゲタ記号)に化け、簡単に壊れたり消えたりした。2000年にはドコモの絵文字を Unicode に加える提案が出たが、普及するか分からず、携帯電話会社の支持も無かったため見送られた。
状況を変えたのは、日本の携帯電話とメールをやり取りしようとした海外の事業者である。2006年に Google が日本の絵文字を Unicode の私用領域に変換する作業を始め、2007年にはそのための変換表を社内で作った。同年、記号の対象を絵文字まで広げる提案が承認され、2009年1月には Google と Apple の技術者が連名で符号化を提案している。
2010年10月11日公開の Unicode 6.0 は2,088文字を追加した。Unicode Consortium は、そのうち1,000を超える記号の中心を絵文字だとしている。日本の携帯電話会社が使っていた絵文字の和集合722字のうち、114字はすでに Unicode 5.2 にあり、残る608字が6.0で加わった。同時に公開された変換表 EmojiSources.txt は、Unicode の各文字をドコモ・KDDI・ソフトバンクそれぞれの Shift_JIS の符号と対応づけている。
世界の「emoji」へ
Apple は2008年11月の iPhone OS 2.2 で、471個の絵文字を持つフォントを搭載した。当初は日本の iPhone 向けで、日本の iPhone を扱っていたソフトバンクの絵文字に似せたデザインもあったとされる。2011年の iOS 5 からは、世界中の利用者がキーボードで絵文字を選べるようになった。
2015年11月、Oxford Dictionaries は「うれし泣きの顔(Face with Tears of Joy)」の絵文字をその年の言葉に選んだ。絵文字が選ばれたのは初めてだった。
2016年10月26日、MoMA はドコモの初期絵文字176種の収蔵を発表した。NTT ドコモからの寄贈で、同年12月から館内のロビーで展示された。
ドコモ絵文字の終わり
2025年5月21日、NTT ドコモは、端末での絵文字の利用状況を踏まえ、2025年6月下旬以降に発売する機種から独自の「ドコモ絵文字」の提供を終えると発表した(Samsung Galaxy は7月以降の機種から)。以後は Google の Noto Color Emoji などが使われ、過去のドコモ絵文字も変換して表示される。お知らせはのちに、Android 17 へ更新した既存機種でもドコモ絵文字が使えなくなると追記している。
i モード自体は2026年3月31日に終了した。経緯は i モードのページ にある。ドコモの絵文字は端末から消えていくが、そこから始まった「emoji」は Unicode の中で生き続けている。
携帯電話の流れは モバイルの年表、ウェブ全体は インターネットとウェブの年表、企業は Google と Apple を参照。
よくある質問
- 絵文字を最初に作ったのはドコモですか。
- 携帯電話の絵文字としては、ドコモより早いものがあります。J-PHONE が1997年11月に発売した SkyWalker DP-211SW は90種の絵文字を持っていました。ドコモの絵文字は1999年に i モードとともに登場し、対応端末がはるかに多く、MoMA にも収蔵されましたが、最初ではありません。開発を主導した栗田穣崇も2019年1月にそう述べています。
- 絵文字はいつ Unicode に入りましたか。
- 2010年10月11日公開の Unicode 6.0 です。日本の携帯電話会社が使っていた絵文字の和集合722字のうち、114字はすでに Unicode 5.2 にあり、残る608字が6.0で加わりました。
- MoMA に収蔵された絵文字とは何ですか。
- 1999年に NTT ドコモが出した初期の絵文字176種です。12×12ドットで描かれ、栗田穣崇が開発を主導しました。MoMA は2016年10月26日に収蔵を発表し、同年12月からロビーで展示しました。
- ドコモの絵文字は今も使えますか。
- ドコモは2025年5月21日、2025年6月下旬以降に発売する機種から独自の「ドコモ絵文字」の提供を終えると発表しました。以後は Google の Noto Color Emoji などに置き換わります。
出典
二次資料Burge, J. (Mar 8, 2019). Correcting the Record on the First Emoji Set — Emojipedia
1997年11月1日の SkyWalker DP-211SW の90種、ドコモのポケベルのハート(1995年)、栗田の2019年のツイート
一次資料Unicode Technical Standard #51: Unicode Emoji — Unicode Consortium
2000年の提案、2006年の Google の変換作業、2007年の承認、722字の和集合と Unicode 6.0 の608字
最終更新: