詳述 · 34件の出来事
携帯電話・スマートフォンの歴史
1990年代
1990年代後半、 持ち歩く情報機器は三つの別々の道で形を探っていた。 Palm は大型 PDA の失敗を受け、 スタイラスと手書きで操る小さな端末を、 机の PC と同期させる相棒に仕立てた。 RIM は親指で打つ物理キーボードと、 サーバから押し出されるメールで、 米国のビジネス層を顧客に掴む。 日本では NTT ドコモが、 携帯電話そのものに公式ポータルとパケット課金のネット接続を載せた。 手のひらの計算機と電話は、 まだ別々の箱だった。 それを一台にまとめるのが次の十年である。

Miguel Durán / Museo8bits (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 3.0 · Commons ↗ US Robotics 傘下の Palm Computing 事業部が、 Pilot 1000(128 KB、 299 ドル) と Pilot 5000(512 KB、 369 ドル) を1996年に発売。 Apple Newton のような大型 PDA が市場で失敗した後、 Palm は「シャツのポケットに入るサイズ」「PC との HotSync 同期」「Graffiti と呼ばれる手書き入力体系」の三点で勝負した。 スタイラスで操作する感圧式(抵抗膜方式) タッチ、 専用 OS、 単4電池二本で数週間の駆動。 発売から18か月で累計100万台に達し、 PDA 市場をほぼ独占する(1998年の世界シェアは IDC 調べで68%)。 後のスマートフォン UI、 ホーム画面のグリッド配置、 PC との同期文化の原型を作った。
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Google, Noto Emoji project (Wikimedia Commons) · Apache License 2.0 · Commons ↗ 絵文字は1990年代後半の日本の携帯電話で生まれた。もっとも有名なのは、1999年に i モードとともに登場した NTT ドコモの絵文字で、栗田穣崇が開発を主導した12×12ドットの176種は2016年にニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵された。ただし携帯電話の絵文字としては、J-PHONE が1997年11月に発売したパイオニア製 SkyWalker DP-211SW の90種のほうが早く、栗田自身もそれを認めている。各社の絵文字は互換性が無く、2000年の Unicode への提案も見送られたが、2006年に Google が変換に着手し、2009年に Google と Apple の技術者が共同提案、2010年10月の Unicode 6.0 で日本の3社の絵文字の和集合が標準になった。iPhone の世界的な普及とともに広まり、2015年には Oxford Dictionaries がその年の言葉に「うれし泣きの顔」の絵文字を選んだ。ドコモは2025年に独自絵文字の新機種への搭載を終えた。
2000年代
2000年代、 手のひらの計算機と電話が一台になり、 主導権が年代半ばに動いた。 Nokia は Symbian 端末でカメラとデータ通信付きの電話を量産し、 2006年にはスマホ OS のおよそ7割を握る。 2007年の iPhone は入力をマルチタッチの画面へ移し、 翌年 App Store と同時に出た 3G 機で他社のソフトが走る機械になった。 同じ年の Android は、 オープンソースの OS を各社に配る別の道を取る。 3GS で一年ごとに磨く周期が固まり、 次の十年は両陣営の競り合いになる。

Blake Patterson (Flickr, via Wikimedia Commons) · CC BY 2.0 · Commons ↗ Apple は2001年10月23日に iPod を発表し、米国では11月10日(土)に399ドルで発売した。5GB のハードディスクに約1,000曲を収め、重さ6.5オンス、電池は最長10時間、FireWire で CD 1枚を10秒未満で転送できた。日本では当初、米国と同じ11月10日に47,800円で発売するとされたが、1週間延期されて11月17日の発売となった。初代は Mac 専用で、iTunes 2 と組み合わせて使う。Windows 対応は2002年7月発表の第2世代から、iTunes Music Store は2003年4月から始まる。Apple は2007年4月に累計1億台を発表し、iPod の名を持つ製品は2022年5月の iPod touch 販売終了まで続いた。

Miguel Durán / Museo8bits (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 2.5 · Commons ↗ Nokia が2002年6月26日に Nokia 7650 を発売。 Symbian OS と Series 60(後の S60) プラットフォームを搭載した最初の量産機で、 Nokia 初のカメラ付き携帯でもあった。 縦スライド式の本体、 176×208 ピクセルのカラー液晶、 GPRS データ通信、 オープン Symbian アプリの実行 ── 「PDA と電話を統合した本格スマホ」 のテンプレートを Nokia は確立する。 Symbian のシェアは2006年に世界スマホ OS の7割前後(約67〜73%) でピークを打ち、 累計出荷1億台も同年11月に到達(2億5000万台は2009年7月)。 しかし iPhone と Android に押されて Nokia は崩壊、 2014年4月に端末事業を Microsoft へ売却、 2016年5月に Microsoft がフィーチャーフォン事業を FIH Mobile と HMD Global へ売却し終焉。
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2010年代
2010年代、 端末の形は落ち着き、 焦点は何を外すか、 どう持ち主を見分けるかへ移った。 Samsung は Galaxy S をほぼ毎年続く Android の看板にし、 Apple は Galaxy Note に3年遅れて大画面へ。 iPhone は30ピン端子、 イヤホン端子、 ホームボタンを順に手放し、 本人確認は指紋から顔へ移った。 感圧式の 3D Touch のように、 現れて消えた試みもある。 末には背面に複数のレンズが並ぶ。 ノッチ、 Lightning、 Siri は次の十年に姿を変える。

Evan-Amos (Wikimedia Commons) · Public domain · Commons ↗ Apple は2010年1月27日に iPad を発表し、Wi-Fi モデルを4月3日に米国で発売した。Wi-Fi + 3G モデルの米国発売は4月30日。日本は当初の計画では3月下旬(のち4月下旬に変更)の発売国に入っていたが、米国の需要が供給を上回ったため国際発売は1か月延期され、オーストラリア・カナダ・フランス・ドイツ・イタリア・日本・スペイン・スイス・英国の9カ国で5月28日に発売された。9.7インチ IPS 液晶、Apple 設計の A4 チップ、厚さ0.5インチ・重さ1.5ポンド、電池は最長10時間。米国価格は Wi-Fi モデル499〜699ドル、3G モデル629〜829ドル。Apple は発売28日で100万台、60日足らずで200万台を発表した。
Rafael Fernandez / TheGoldenBox (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 3.0 · Commons ↗ サムスン電子が2010年6月4日に Galaxy S(GT-I9000) を発売(シンガポールを皮切りに欧州へ、 米国市場へは同年夏以降)。 4 インチ Super AMOLED、 1 GHz Cortex-A8(Hummingbird) SoC、 Android 2.1 Eclair(後に 2.3 まで更新)。 サムスン初の本格 Android ハイエンド機で、 発売から約7か月でグローバル累計1000万台販売。 以後、 S シリーズは2026年の Galaxy S26 までほぼ毎年継続し、 累計で数億台を売る Android の代表機種となる。 同時に Apple との特許訴訟(2011年〜2018年和解)、 Galaxy Note 7 発火事故(2016年) などの紆余曲折を経て、 サムスンは世界スマホ出荷台数の年間首位をおおむね守り続けることになる(2023年と2025年は Apple が首位)。
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2020年代
この年表の2020年代は iPhone だけだが、 大きな転換は端末の外からも来た。 5G、 EU の共通充電器指令、 生成 AI である。 ノッチは13で縮み、 14 Pro では OS が大きさを変える表示領域になった。 MagSafe は MacBook で消えた名のまま磁石の充電と装着を担い、 端子は EU の法に従い USB-C へ移る。 16 は端末内 AI を掲げたが発売時には無く、 日本語化は翌年、 新しい Siri はこの世代に間に合わなかった。 発表と出荷の溝が、 この十年の宿題として残る。




