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iPhone 15 ── USB-C 移行

メタデータ
- 日付
- 年代
- 2020s
- Tier
- T1
- 参照年表
- iPhone の歴史 · 携帯電話・スマートフォンの歴史
- 出典数
- 09
- 関連項目
- 03
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iPhone 15 を、Apple の意思だけで起こった出来事として記述すると、その本当の意味を取り違える。これは、規制が大企業のハードウェア仕様を直接書き換えた、二十一世紀の電子機器史における稀な事例である。
指令は実際に何を義務づけたのか
法源は指令 (EU) 2022/2380、無線機器指令 2014/53/EU を改正する2022年11月23日付の法令である。欧州議会が立場を採択したのが2022年10月4日、理事会の決定が10月24日で、署名された法令自体は11月の日付を持つ。
義務の内容は、「スマートフォンは USB-C にせよ」という要約よりも狭く、かつ具体的である。
| 義務 | 附属書 Ia の文言 |
|---|---|
| 端子 | 「規格 EN IEC 62680-1-3:2021 に記述された USB Type-C レセプタクルを備える」こと。そのレセプタクルは「常時アクセス可能かつ動作可能でなければならない」 |
| ケーブル | 同規格に適合するケーブルで充電できること |
| 急速充電 | 5V・3A・15W のいずれかを超えて充電する機器は EN IEC 62680-1-2:2021 の「USB Power Delivery を実装」し、追加の充電プロトコルは「使用する充電器にかかわらず」USB PD の全機能を許容すること |
| アンバンドル | 充電器付きで販売する事業者は、充電器なしでの購入の選択肢も提供しなければならない |
対象は13区分 ── 携帯電話、タブレット、デジタルカメラ、ヘッドフォン、ヘッドセット、携帯ゲーム機、ポータブルスピーカ、電子書籍リーダ、キーボード、マウス、携帯ナビゲーション装置、イヤバッズ、そして別枠でラップトップ。
日付は第2条にある。加盟国は2023年12月28日までに国内措置を採択し、最初の12区分については2024年12月28日から、ラップトップについては2026年4月28日から適用する。
もう一度義務を読み、何が書かれていないかを見る。指令が定めるのはレセプタクルの形状と充電プロトコルである。データ転送速度については一言もない。この空白が、後に効いてくる。
標的は明白だった。2022年の時点で、EU 市場の主要な携帯機器のうち USB-C を採用していないものは、実質的に iPhone 一機種だった。
Lightning という孤島
Apple が Lightning を導入したのは2012年9月、iPhone 5 と同時である。当時業界標準と目されていた micro-USB を避け、リバーシブルで薄く、自前の認証チップを組み込んだ端子だった。アクセサリ製造業者は MFi(Made for iPhone)ライセンスプログラムを通じてのみこれに接続でき、自社の端子まわりのケーブル・ドックの市場に対して、Apple は発言権と手数料の両方を持ち続けた。
その10年のあいだに、業界の残り全部が USB-C への移行を終えた。USB-C は2014年に規格化され、2016年頃には Android 端末で一般化し、Apple 自身も2015年の12インチ MacBook、2018年の iPad Pro で採用していた。iPhone だけが Lightning に留まった。
Apple は何を、いつ言ったか
Apple は規制を理由として掲げなかったが、否定もしていない ── 少なくとも、それが決まった時点では。
理事会決定の翌日、2022年10月25日の Wall Street Journal 主催 Tech Live で、Apple のワールドワイドマーケティング担当バイスプレジデント Greg Joswiak は、共通充電器を義務づけるという EU の決定を最終的には尊重すると述べたうえで、要点をこう言った ──「我々は従わなければならない(We'll have to comply)」。
その11か月後、iPhone 15 と iPhone 15 Plus を発表した2023年9月12日のプレスリリースには、指令への言及が一切ない。そこでの言い方はこうである。
どちらのモデルも USB‑C コネクタを採用しています。充電とデータ転送のために普遍的に受け入れられた標準であり、同じケーブルで iPhone、Mac、iPad、そして新しい AirPods Pro(第2世代)を充電できます。
最後の大手が受け入れた話を書いた文の中で、「普遍的に受け入れられた」という語はかなりの重量を担っている。どちらも Apple の発言だが、理由について語っているのは一方だけである。
USB-C は形状であって速度ではない
最も取り違えられやすい区別であり、Apple 自身の仕様ページがそれを明示している。
| モデル | 充電と拡張 |
|---|---|
| iPhone 15 / 15 Plus | 充電・DisplayPort・USB 2(最大 480Mb/s)に対応する USB-C コネクタ |
| iPhone 15 Pro / Pro Max | 充電・DisplayPort・USB 3(最大 10Gb/s)に対応する USB-C コネクタ |
10ギガビット対480メガビット ── 同じ物理端子で、約20倍の差である。Apple の Pro 向けプレスリリースは逆向きに「従来比最大20倍高速」と書き、脚注を付けた。「10Gb/s に対応する USB 3 ケーブルが必要です」。同梱されるのは「USB‑C 充電ケーブル(1m)」で、その説明は「急速充電に対応」までである。
指令 (EU) 2022/2380 は、この一切を禁じていない。EU が規制したのはレセプタクルと充電プロトコルであって、その背後を走るデータプロトコルは製造者に委ねられた。Apple はその余地を使った。
一方、全モデルが得たものもある。端子から外へ充電できるようになったことだ ──「USB‑C コネクタを使って、iPhone から直接 AirPods や Apple Watch を充電することもできます」── そして DisplayPort による映像出力である。
Apple は EU 専用モデルを作らなかった
欧州の外で USB-C を採用する義務は Apple になかった。それでもそうした。iPhone 15 は単一の設計で、どの市場でも同じ端子を積んで売られた。2023年9月12日発表、9月15日予約開始、発売は9月22日。米国での出発価格は iPhone 15 が799ドル、iPhone 15 Pro が999ドルである。世界で最も多く生産される消費者向け電子機器を地域別に分岐させるコストは、どこでも従うコストより高くつく。
2024年12月28日 ── 規則が噛む
期限は、新設計のモデルにだけでなく、その日以降に市場に投入される個体に適用される。したがって Lightning の旧機種は販売を止めるほかなかった。実際、2024年12月の最終週に Apple は iPhone 14・iPhone 14 Plus・iPhone SE(第3世代)を EU 各国のオンラインストアから、さらに単一市場に参加するスイスと北アイルランドからも取り下げた。正規リセラーの手元にある在庫は売り切ることが認められた。2020年に EU を離脱した英国は対象外で、販売が続いた。
規制が、現行製品の販売を終わらせたのである。
第二波は2026年4月28日に来た。指令が意図的に16か月遅らせていたラップトップの区分に、同じ義務が及んだ日である。加えて欧州委員会は、充電器のアンバンドルを「選択肢の提供」から「義務」に変えるべきかについて、2026年12月28日までに報告することを求められている。
Brussels Effect の典型例
利用者から見れば、ケーブル1本で iPhone・iPad・Mac・ヘッドフォンを充電できるようになった。家中に転がる Lightning ケーブルは、長い退場を始めた。
業界にとっては、規制がグローバルな製品仕様を決めうるという前例が確立された。デジタル市場法(DMA)と並び、USB-C 義務化は「Brussels Effect」の典型例として引かれることになる ── EU が自らの市場のために規則を定め、世界の残りがそれを受け取る。製品を二つ作るほうが、従うより高くつくからである。
出典
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