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New York Times 対 OpenAI ── 新聞社が生成 AI を著作権侵害で訴える

マンハッタン8番街620番地の The New York Times ビルの入口付近。ガラス越しに The New York Times のロゴが見える
出典Epicgenius (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 4.0 · Commons で見る ↗

メタデータ

日付
年代
2020s
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T1
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12
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04
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2023年12月27日、米紙 The New York Times(以下 Times)は、ニューヨーク州南部地区連邦地裁に OpenAI と Microsoft を著作権侵害で提訴した。訴状の主張は、両社が Times の数百万件の記事を許可なく複製して大規模言語モデルを作り、ChatGPT や Bing Chat(のちの Copilot)が記事をほぼそのまま出力し、要約し、文体をまねることで、Times の読者を奪っているというものである。米国の大手報道機関が生成 AI の開発企業を訴えたこの事件では、2026年10月の時点でも、学習が fair use(公正な利用)にあたるかどうかの判断は出ていない。

訴状は何を主張したか

訴状によれば、Times は2023年4月に Microsoft と OpenAI に知的財産の懸念を伝え、商業的な条件と技術的な歯止めを含む解決を探ったが、交渉はまとまらなかった。訴状は、被告側が公には自分たちの行為を「変形的」な目的による fair use だと主張しているとしたうえで、Times の記事を対価なしに使って Times の代わりになる製品を作ることに変形的なところはない、と反論している。

項目訴状の内容
被告Microsoft と OpenAI の関連各社
主な請求原因著作権侵害、代位責任・寄与侵害、DMCA(著作権管理情報の除去)、不正競争(不正利用)、商標の希釈化
証拠の目玉GPT-4 が Times の記事をほぼ逐語で出力した例を集めた Exhibit J
求める救済数十億ドル規模の法定損害賠償と実損害、差し止め、Times の記事を含むモデルと学習データの廃棄
その他陪審による審理を請求

訴状はまた、Bing を使った検索機能が有料の記事や Wirecutter(商品レビュー)の推奨をほぼそのまま表示し、Wirecutter のアフィリエイト収入を損なうと主張した。さらに、ChatGPT が Times の記事として事実と異なる内容を示すハルシネーションが、Times の信用を傷つけるとも訴えている。

OpenAI と Microsoft の反論

OpenAI は2024年1月8日、「OpenAI and journalism」と題する文章で反論した。要点は4つで、報道機関と協力していること、学習は fair use だが権利者には拒否(オプトアウト)の手段を用意していること、記事の「吐き出し(regurgitation)」はなくすべきまれな不具合であること、Times は全体像を語っていないこと、である。OpenAI によれば、Times との交渉は12月19日の最後のやり取りまで建設的に進んでいるように見えた。同じ文章は、欧州連合・日本・シンガポール・イスラエルにも著作物での学習を認める法律があると述べている。

2024年2月26日の却下申立てで、OpenAI はさらに踏み込み、Times は人に金を払って OpenAI の製品をハックさせ、Exhibit J の異常な出力を得るのに何万回も試行したと主張した。Times 側がこの主張を受け入れているわけではない。どちらの言い分が正しいかは、裁判の中で決まることになる。

2025年4月の判断と、訴訟の集約

Sidney H. Stein 判事は2025年4月4日付の意見で、却下申立ての大半を退けた。2019年から2020年の学習は3年の時効を過ぎているという OpenAI の主張は認められず、寄与侵害の請求も残った。一方で、不正競争(不正利用)の請求は棄却され、Times の事件で OpenAI に対して出された DMCA 1202条(b)(1)の請求は、出し直しを認めたうえで棄却された。この意見は、Daily News 紙などの事件と Center for Investigative Reporting の事件についても同時に判断している。

2025年4月、OpenAI と Microsoft を相手取る著作権訴訟は、作家の集団訴訟も含めて In re: OpenAI, Inc. Copyright Infringement Litigation(MDL 第3143号)として Stein 判事のもとに集められた。Times の事件はその中の「報道機関原告」の1つとして進んでいる。2026年には、連邦最高裁の Cox 対 Sony 判決を受けて、報道機関原告が寄与侵害の一部の理論と商標の希釈化の請求を取り下げたと、訴訟を追うブログ ChatGPT Is Eating the World が伝えている。

利用者のログという新しい争点

この訴訟は、ChatGPT を使う一般の人々にも影響した。原告の求めに応じて、Ona Wang 治安判事は2025年、OpenAI に出力データの保存を命じた。OpenAI によれば対象は無料版・Plus・Pro・Team と、ゼロデータ保持契約のない API の利用者で、Enterprise と Edu は含まれない(Enterprise の除外は5月27日の審問で明確にされた)。OpenAI は、削除されたはずの会話まで保存させるのはプライバシーへの行き過ぎだと反発し、この保存義務は2025年9月26日に終わったとしている。

続いて Wang 判事は2025年11月7日、匿名化した ChatGPT の会話ログ2,000万件の標本を報道機関原告に提出するよう命じた。Stein 判事は2026年1月5日、OpenAI の異議を退けてこの命令を支持した。決定は、利用者が OpenAI に自発的に開示し、OpenAI が通常業務で保持している会話のプライバシーの利益は、盗聴された電話の会話ほど強くないと述べている。AI との対話がいつ裁判の証拠になりうるかという問いを、この訴訟は利用者の前に突きつけた。

誰が何を賭けているのか

Times が守ろうとしているのは、取材に投じた費用を購読料と広告で回収するという報道の事業モデルである。AI の回答が記事を読みに行く必要をなくせば、その回収の道が細る、というのが Times の論理だ。OpenAI の側は、学習が fair use として認められなければ AI の開発そのものが成り立たないと主張し、2026年9月には米司法省もこの訴訟に意見書を出して、著作物での学習はそれ自体で著作権侵害になるわけではなく、Times の立場は技術の進歩を大きく妨げうると述べたと Reason が報じた。

並行して、報道機関と AI 企業の間ではライセンス契約が広がった。OpenAI は AP 通信や Axel Springer との提携を早くから挙げており、Times 自身も2025年5月29日、記事を Amazon の AI 製品で表示し、Amazon のモデルの学習にも使わせる初の生成 AI ライセンス契約を発表した。訴訟と契約は対立するものではなく、どちらも「記事を使う AI は対価を払うべきか、いくら払うべきか」という同じ問いへの答え方である。

2026年9月、fair use をめぐる略式判決の申立てが双方から出そろった。書籍の学習を fair use とした Bartz 対 Anthropic とは異なり、この事件では出力が記事の代わりになるかどうかが正面から問われている。画像の分野の同種の争いは Getty Images 対 Stability AI にある。

よくある質問

New York Times はいつ OpenAI を訴えたのですか。
2023年12月27日です。ニューヨーク州南部地区連邦地裁に、OpenAI と Microsoft を被告として提訴しました(事件番号 1:23-cv-11195)。訴状によれば、Times は2023年4月から両社と交渉していましたが、合意に至りませんでした。
Times は何を求めているのですか。
訴状は、数十億ドル規模の法定損害賠償と実損害の責任を問うとし、侵害行為の差し止めと、Times の記事を含む GPT などのモデルと学習データの廃棄を求めています。陪審による審理も請求しています。
OpenAI はどう反論しているのですか。
2024年1月8日の声明で、公開されたインターネット上の素材で学習することは fair use であり、記事の吐き出しはまれな不具合だと主張しました。2月26日の却下申立てでは、Times が人に金を払って製品をハックさせ、何万回も試して異常な出力を得たと述べています。
判決は出ましたか。
2026年10月時点で出ていません。2025年4月4日に Stein 判事が主要な請求の審理継続を認め、2026年9月に fair use をめぐる略式判決の申立てが双方から出されました。審理を続けるか、どの部分を陪審に回すかの判断が待たれています。

出典

  1. 一次資料The New York Times Company v. Microsoft Corporation et al., Complaint, No. 1:23-cv-11195 (S.D.N.Y.), filed Dec 27, 2023 (PDF, via CourtListener)

    数百万件の記事の複製、Exhibit J の出力例、2023年4月からの交渉、数十億ドル規模の損害、モデルと学習データの廃棄請求、7つの請求原因

    取得日: 2026-10-17

  2. 一次資料OpenAI and journalism — OpenAI, Jan 8, 2024

    4つの主張(報道機関との協力、学習は fair use だがオプトアウトを提供、吐き出しはまれな不具合、Times は全体像を語っていない)

    取得日: 2026-10-17

  3. 一次資料Opinion on the motions to dismiss, Judge Sidney H. Stein — Dkt. 514, filed Apr 4, 2025 (PDF, via ChatGPT Is Eating the World)

    時効による却下の否定、寄与侵害の請求の継続、不正競争(不正利用)の請求の棄却、Times に対する DMCA 1202(b)(1) の請求の棄却(再提出可)

    取得日: 2026-10-17

  4. 一次資料How we're responding to The New York Times' data demands in order to protect user privacy — OpenAI, Jun 5, 2025 (updated Oct 22, 2025)

    保存命令の範囲(Enterprise・Edu は対象外)と、2025年9月26日の義務終了

    取得日: 2026-10-17

  5. 三次資料New York Times v. OpenAI & Microsoft — AI Lawsuit Tracker

    取得日: 2026-10-17

最終更新:

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