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Getty Images 対 Stability AI ── 学習済みモデルは「侵害複製物」か

ロンドン、フェッター・レーンのロールズ・ビルディングの入口。看板に The Business and Property Courts of England & Wales とある
出典Roger Green (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 4.0 · Commons で見る ↗

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日付
年代
2020s
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T1
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10
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写真エージェンシーの Getty Images は2023年1月17日、画像生成 AI Stable Diffusion を開発した Stability AI に対し、その週にロンドンの高等法院で訴訟手続きを始めたと発表した。Getty の主張は、Stability AI が Getty の所有・代理する数百万点の画像とその説明文を、ライセンスを受けずに複製・処理したというものである。英国の第一審判決は2025年11月4日に出て、Getty の主張の大半は退けられた。判決は、学習を終えた AI モデルの重みは学習に使った作品を保存も複製もしておらず、著作権法上の「侵害複製物」にはあたらないと判断した。

何が訴えられたのか

Getty は1995年に始まった写真ビジネスで、判決の言葉では、報道・スポーツ・著名人・建築・自然などの高品質な写真を何百万点も抱え、それらは何十万人もの写真家が長年かけて撮ったものである。Getty は声明で、AI 企業には学習用に自社のコンテンツをライセンスしてきたが、Stability AI はライセンスを求めなかったと述べた。判決によれば、Getty は2023年1月16日に請求の通知書を送り、その中で約1,200万件のリンクがウェブから集められて学習に使われたと主張していた。

米国でも、Getty は2023年2月3日にデラウェア州連邦地裁で Stability AI を提訴した。訴訟を追うブログ ChatGPT Is Eating the World によれば、この事件は大きな動きのないまま推移し、2025年8月14日にカリフォルニア州北部地区連邦地裁で訴え直されている。

縮んでいった英国の裁判

英国の審理は2025年6月に開かれた。ところが、最終弁論の直前に Getty は請求の多くを取り下げた。判決は、取り下げの理由を次のように整理している。

請求結果理由
学習・開発による侵害取り下げ学習と開発が英国内で行われた証拠がない
出力による侵害取り下げ問題の出力を生んだプロンプトを Stability がすでに遮断し、求める救済が実質的に得られた
データベース権の侵害維持できず上の2つと一体だったため
二次侵害(侵害複製物の輸入など)棄却モデルは作品を保存も複製もしていない
商標侵害一部認容旧版モデルが生成した透かしの一部の例に限る
パッシングオフ判断せず──

英国の著作権法は英国内の行為を対象とする。学習が米国など英国の外で行われた以上、「無断で学習に使ったこと」そのものは英国の裁判所では争えなかった。生成 AI の学習が国境を越えて行われるという事情が、訴訟の形を決めたことになる。

判決の核心 ── 重みは「侵害複製物」ではない

残った著作権の争点は、Stable Diffusion というモデルそのものが「侵害複製物(infringing copy)」かどうかだった。英国の著作権法には、侵害複製物である「物品(article)」を英国に輸入したり、業として所持・頒布したりすることを禁じる二次侵害の規定がある。Getty は、モデルの重みは作品の複製を通じて作られたのだから、英国で作られていれば侵害になったはずであり、侵害複製物にあたると主張した。Getty 自身も、モデルが作品の複製を内部に持っているとは主張していない。

Joanna Smith 判事は、物品は無形のものでもありうるという点では Getty の主張を認めた。しかし結論は Stability AI の側に立った。重みは学習中に作品にさらされて変化するが、学習が終わった時点でモデルは作品を保存しておらず、重みは学習の過程で覚えたパターンと特徴の産物にすぎない ── したがって侵害複製物ではない、という判断である。判事は「作られた瞬間に AI モデルは侵害複製物になる」という Getty の中心的な主張を、まったくの誤りだと退けた。

商標については、Stable Diffusion の旧版(v1.x と v2.x)が、Getty Images や iStock の透かしに似たものを含む画像を生成した例があったことを認めた。ただし、どれほどの規模で起きたかは分からず、SD XL と v1.6 については英国で透かしを生成した利用者の証拠が1件もなかった。判事は自らの認定を「歴史的で、範囲がきわめて限られる」と要約している。

誰が得をし、誰が損をしたのか

判決は冒頭で、双方がこの事件の意味を強調していることを記した。Getty の側は、創作者の努力と知的財産を顧みずに創作産業が利用されれば、それは何世代にもわたって創作産業にとって存亡の脅威になると訴え、Stability の側は AI 産業と革新の担い手を代表していた。判事は、両者の利益の線をどこに引くかは社会にとってきわめて重要だとしつつ、裁判所が判断できるのは縮んだ請求の範囲だけだと断っている。

結果として、少なくとも英国の第一審では、海外で学習したモデルを英国で提供すること自体は著作権侵害にならないという判断が残った。Getty は二次侵害の判断について控訴の許可を得ており、第一審の判事は、これは理性的な法律家の間でも意見が分かれうる、純粋な法解釈の問題だとした。一方、Stability AI の商標部分の控訴の申請は第一審では認められなかった。

法廷の外で

英国政府は2024年12月に AI と著作権に関する協議を始め、権利者が拒否(オプトアウト)できる形で AI の学習に著作物の利用を広く認める例外を優先案としていた。法律事務所 Stephenson Harwood の解説によれば、協議への回答の多くは創作産業を中心にこの案に反対し、政府は2026年3月18日に公表した報告書と影響評価でこの優先案から後退したが、具体的な代替案は示さなかった。

Getty 自身も AI と手を結ぶ方向に動いた。2026年6月21日、Getty は OpenAI と複数年の表示契約を結び、ChatGPT の検索で Getty のライセンス済みコンテンツを表示すると発表した。発表は学習への利用には触れていない。米国の訴訟では、カリフォルニア州北部地区連邦地裁が2026年4月23日に Stability AI の却下申立てを一部認め一部退け、審理が続いている。

文章の学習をめぐる米国の判断は Bartz 対 Anthropic、報道機関の訴訟は New York Times 対 OpenAI にある。

よくある質問

Getty Images はいつ Stability AI を訴えたのですか。
2023年1月17日の声明で、その週にロンドンの高等法院で手続きを始めたと発表しました。判決によれば請求の通知書は1月16日に送られています。米国では2023年2月3日にデラウェア州連邦地裁に提訴し、2025年8月14日にカリフォルニア州北部地区連邦地裁で訴え直しました。
英国の判決で Getty は負けたのですか。
大筋ではそうです。二次侵害の請求は棄却され、商標侵害は iStock と Getty Images の透かしが旧版のモデルで生成された一部の例についてのみ認められました。判事はこの認定を、歴史的で範囲がきわめて限られると書いています。学習と出力に関する請求は Getty が審理中に取り下げていました。
なぜ学習そのものは争われなかったのですか。
Stable Diffusion の学習と開発が英国内で行われたという証拠がなかったためです。英国の著作権法は英国内での行為を対象とするので、Getty はこの請求を取り下げました。判決は、学習が米国など英国の外で行われたため、英国の裁判所は学習を侵害と結論できないと述べています。
その後どうなっていますか。
Getty は二次侵害の判断について控訴の許可を得ており、控訴院で審理されます。Stability AI の商標部分の控訴の申請は第一審では認められませんでした。米国の訴訟ではカリフォルニア州北部地区連邦地裁が2026年4月23日に被告の却下申立てを一部認め一部退けています。

出典

  1. 一次資料Getty Images and others v Stability AI, [2025] EWHC 2863 (Ch) — judgment of Mrs Justice Joanna Smith, Nov 4, 2025 (PDF)

    取り下げられた請求(学習・出力・データベース権)、二次侵害の棄却(第600段落・第758段落)、商標侵害の限定的な認容、パッシングオフは判断せず、1月16日の請求通知書

    取得日: 2026-10-17

  2. 一次資料Getty Images -v- Stability AI — Courts and Tribunals Judiciary

    取得日: 2026-10-17

  3. 一次資料Getty Images Statement — Getty Images, Jan 17, 2023

    ロンドンの高等法院で手続きを開始。他の AI 企業には学習用にライセンスしてきたが、Stability AI はライセンスを求めなかったとの主張

    取得日: 2026-10-17

  4. 一次資料Getty Images (US), Inc. v. Stability AI, Inc., No. 1:23-cv-00135 (D. Del.) — CourtListener docket

    2023年2月3日提訴、2025年8月18日終結

    取得日: 2026-10-17

  5. 一次資料Getty Images (US), Inc. v. Stability AI, Ltd., No. 3:25-cv-06891 (N.D. Cal.) — CourtListener docket

    2025年8月14日提訴、Trina L. Thompson 判事。2026年4月23日に却下申立てを一部認容・一部棄却

    取得日: 2026-10-17

  6. 二次資料Permission to appeal granted in Getty Images v Stability copyright claim — The IPKat, Jan 7, 2026

    Getty に二次侵害について控訴許可、Stability の商標部分は不許可。[2025] EWHC 3343 (Ch)

    取得日: 2026-10-17

  7. 二次資料UK government publishes report and impact assessment on Copyright and Artificial Intelligence: the debate continues — Stephenson Harwood

    オプトアウト付きの TDM 例外という当初の優先案から後退し、具体的な代替案は示さず

    取得日: 2026-10-17

  8. 一次資料Getty Images Announces Display Partnership with OpenAI — Getty Images, Jun 21, 2026

    取得日: 2026-10-17

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