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2023年のテック業界人員削減 ── 増え続けた10年が終わった月
メタデータ
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- 2020s
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2023年1月4日から20日までの17日間に、 世界で最も大きなソフトウェア企業のうち4社が、 それぞれ人員削減を発表した。 業界の雇用は2010年代を通じてほぼ一方向にしか動かなかった。 その向きが変わった月として記録される。
以下、 各社が自ら述べた数字だけを並べる。 集計サイトの数字も、 業界全体の統計も後で扱うが、 それらは別の量である。
各社が発表したこと
Salesforce ── 1月4日。 Marc Benioff は従業員宛の書簡で「およそ10パーセント、 その大半は今後数週間のうちに、 人員を削減するという極めて難しい決定を下した」と書いた。 この書簡は SEC への Form 8-K の Exhibit 99.1 として提出されている ── 社内文書であると同時に法定開示文書である。 理由も同じ書簡にある。 「環境は依然として厳しく、 顧客は購買の意思決定により慎重な姿勢を取っている」。 そして自らの責任として、 こう書いた。 「パンデミックを通じて売上が加速するなかで、 我々はいま直面しているこの景気後退へ向かう時期に、 人を採りすぎた。 その責任は私にある」。 米国では対象者に最低でも約5ヶ月分の給与と健康保険が支払われるとした。
Amazon ── 1月4日。 同じ日、 CEO の Andy Jassy が全社宛のメモを公開した。 「11月に行った削減と、 本日お伝えするものを合わせて、 18,000を少し超える職を廃止する計画である」。 この18,000という数は1月単独のものではない ── 2022年11月に Devices・Books 部門で行った削減と、 PXT(People, Experience, and Technology)組織での希望退職を含む累計である。 影響が集中するのは「Amazon Stores と PXT の各組織」だと Jassy は書いている。 メモが1月4日に出たこと自体にも理由があった。 「通常は直接影響を受ける人々と話せる時点まで公表を待つ。 しかし同僚の一人がこの情報を外部に漏らしたため、 私から直接詳細を聞いてもらうほうがよいと判断した」。 対象者への通知開始は1月18日の予定とされた。
Microsoft ── 1月18日。 Satya Nadella のメールが公式ブログに掲載された。 「本日、 FY23 第3四半期末までに全体の人員を 10,000職 減らす結果となる変更を行う。 これは全従業員数の5パーセント未満にあたる」。 理由の記述は、 需要側の変化から始まる。 「顧客がパンデミック期にデジタル支出を加速させたのを我々は見たが、 いまは彼らがより少ないもので多くを成すためにデジタル支出を最適化しているのが見える」("we're now seeing them optimize their digital spend to do more with less")。 同じ段落に、 まったく反対向きの一文がある。 「同時に、 計算機の次の大きな波が AI の進歩とともに生まれつつあり、 我々は世界で最も高度なモデルを新しい計算プラットフォームへと変えつつある」。 メモは Q2 に12億ドルの費用計上を予告した。 1週間後の決算発表がその内訳を出す ── 退職金8億ドル、 ハードウェア製品群の見直しとリース統合を含めて合計11億7,100万ドル、 希薄化後1株あたり0.12ドルの影響である。
Alphabet ── 1月20日。 Sundar Pichai は「およそ12,000職の削減を決定した」と書いた。 冒頭は「難しい知らせがある」で始まり、 「深く申し訳なく思う」「ここに至る決定について全面的に責任を負う」と続く。 理由は一文である。 「この2年間、 我々は劇的な成長の時期を経験した。 その成長に見合い、 かつそれを燃料とするために、 我々はいま直面しているのとは別の経済的現実に向けて採用した」("we hired for a different economic reality than the one we face today")。 メールの後半では「焦点を鋭くし、 コスト基盤を作り直し、 人材と資本を最優先事項へ向ける」ことを、 25年近い会社が経済の循環を通るときにやるべきことだと述べている。 同じ段落で AI への早期投資に触れており、 削減と投資は同じ文書の中に同居していた。
Meta は1月に発表していない
多くの回顧記事が Meta をこの1月の並びに入れる。 入らない。
Meta の大規模削減は 2022年11月9日である。 Mark Zuckerberg は「チームの規模をおよそ13パーセント縮小し、 11,000人を超える才能ある従業員に去ってもらうことを決めた」と書いた。 理由の説明は、 この一連の告知のなかで最も踏み込んでいる。 「Covid の始まりに世界は急速にオンラインへ移り、 電子商取引の急増が並外れた売上成長をもたらした。 多くの人が、 これはパンデミックが終わっても続く恒久的な加速だと予測した。 私もそう思ったので、 投資を大幅に増やす決定を下した」。 そして ── 「残念ながら、 これは私が予期したようには展開しなかった。 (中略)私はこれを間違えた。 その責任は私にある」。
2度目は 2023年3月14日の「Update on Meta's Year of Efficiency」で、 「チームの規模をさらにおよそ10,000人縮小し、 まだ採用していない未充足の職をおよそ5,000件閉じる」ことを予告した。 併せて、 リクルーティング部門の削減を翌日に通知すること、 技術部門の再編を4月下旬、 事業部門を5月下旬に公表することまで日程として示している。
日付を1ヶ月ずらすと、 因果の向きが変わる。 Meta は他社より先に動いた側であって、 1月の連鎖に加わった側ではない。
数え方は3通りあり、 3つとも違う数である
2023年のテック業界の削減規模として、 世の中には少なくとも3種類の数字が流通している。 混ぜてはいけない。
| 量 | 2023年の値 | 出所と性質 |
|---|---|---|
| 企業が自ら述べた個別の数 | Alphabet 約12,000職、 Microsoft 10,000職、 Amazon 18,000超(2022年11月分を含む)、 Salesforce 全社の約10パーセント | 各社の提出書類・公式メモ。 定義は各社ごと |
| 追跡サイトの集計 | 262,735人 | layoffs.fyi の集計として TechCrunch が報じた値。 layoffs.fyi は Roger Lee 個人が2020年から運営する、 報道と自己申告を突き合わせた一覧 |
| 業界統計 | 技術セクターの発表ベース削減 168,032件 | Challenger, Gray & Christmas の2023年年末報告(2024年1月4日)。 米国企業の公表分を集計。 2022年の97,171件から73%増 |
三つの数は矛盾していない。 対象範囲(世界全体か米国か)、 数える単位(人か職か)、 採取方法(提出書類か報道か)がそれぞれ違うだけである。 Challenger は同じ報告で、 2023年の168,032件が「2001年に同セクターで発表された年間記録である168,395件をわずかに下回る」ものだと注記している ── ドットコム崩壊にほぼ並んだが、 届かなかった。 「史上最大」という言い方は、 少なくともこの計測では成り立たない。
何が10年を終わらせたのか
各社の説明は、 表現を変えつつほぼ同じ一点に収束する ── パンデミック期の需要が恒久的なものだという前提で採用した。 Benioff は「採りすぎた」と書き、 Pichai は「別の経済的現実に向けて採用した」と書き、 Zuckerberg は「私はこれを間違えた」と書いた。 Jassy は「不確実な経済と、 ここ数年で急速に採用してきたこと」を挙げた。
これは自己申告であり、 それ以上でも以下でもない。 同じ時期に外側から作用していた力もある。 米連邦公開市場委員会は2022年3月から12月にかけてフェデラルファンド金利の誘導目標を7回引き上げ、 0〜0.25% から 4.25〜4.50% へ動かした。 割引率が上がれば、 遠い将来の利益で評価されている企業ほど株価は縮む。 物言う株主も動いており、 2022年11月には TCI Fund Management が Alphabet に対して従業員数と人件費の削減を公開で要求したと CNBC が報じている。 どの力がどれだけ効いたかを一次資料から配分することはできない。 できるのは、 企業が公に述べた理由と同時期に存在した外的条件を、 別のものとして並べておくことである。
理由の語られ方が変わった2026年
削減はこの1月で終わらなかった。 2024年以降も業界の人員調整は続き、 2026年には理由の語られ方が変わる。 CNBC は2026年4月24日、 Meta が従業員の10%削減を、 Microsoft が創業51年で初となる希望退職の提示を、 いずれも前日に明らかにしたと報じた。 同記事は、 AI インフラに年間数千億ドルを投じている当の企業群が同時に人員を削っていること、 そして layoffs.fyi の集計では2026年の削減がその週までに9万2,000人を超えたことを伝えている。 パンデミック期の過剰採用の是正と、 AI による効率化とが、 同じ発表のなかに同居するようになった。
2023年1月の17日間が歴史的なのは、 削減の規模そのものではない。 業界の雇用が一方向にしか動かないという前提が、 公式文書のなかで否定されたことである。 Jassy のメモにある一文が、 その転換を最も素直に書いている ── 「長く続く企業はさまざまな局面を通る。 毎年、 人を大きく増やす局面にいるわけではない」。
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