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Anthropic Claude 公開 ── 安全性主軸の対抗 LLM
メタデータ
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- 年代
- 2020s
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- IT全史 ── 計算機が世界を編み変える · AIの歴史
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- 39
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2023年3月14日、米国カリフォルニア州サンフランシスコの新興 AI 企業 Anthropic が、対話型大規模言語モデル「Claude」の提供を開始した。 公開されたのは2種類 ── 発表文の言葉で「Claude は最先端の高性能モデル、 Claude Instant はより軽く、 安価で、 はるかに高速な選択肢」である。 誰でも使えるコンシューマ向けサービスではなく、 チャット画面と開発者向け API へのアクセスを申請制で開くかたちだった。 発表文によれば、 それ以前の数ヶ月は Notion・Quora・DuckDuckGo との「クローズドアルファ」であり、 この日あわせて Quora の Poe、 Juni Learning、 Robin AI、 AssemblyAI などの導入例が紹介されている。
同じ日に、 OpenAI が GPT-4 を発表していた。
二社が同日に主力モデルを公開するという偶然は、その後の AI 業界の構造をそのまま映していた ── 生成 AI には対抗軸が必要だ、と考える人々と資本が、この二社の周りに集まることになる。
OpenAI からの離脱
Anthropic の主要メンバーは、2021年初頭まで OpenAI の中核にいた。
- Dario Amodei: OpenAI の研究担当副社長。GPT-3 の論文の主著者の一人。
- Daniela Amodei: OpenAI の安全性とポリシー担当副社長。Dario の妹。
- Tom Brown: GPT-3 のチームリード。
- Sam McCandlish、 Jack Clark、 Jared Kaplan: GPT-3 とスケーリング則の研究者群。
2020年末から2021年初頭にかけて、彼らは集団で OpenAI を離脱した。 離脱の理由について、 当事者が一本の公式声明を出したことはない。 報道で繰り返されてきた説明は、 2019年の Microsoft からの10億ドル出資以降、 OpenAI が商業化と速度に傾き、 安全性研究との重心が合わなくなったという趣旨のものである ── ただしこれは記者の再構成であって、 創業者の言葉ではない。
Anthropic の設立は2021年1月、 元 OpenAI の7名による。 5月に1億2400万ドルを調達した。
Claude が生まれたのは2023年3月ではない。 最初のバージョンの訓練は2022年夏に終わっていたが、 Anthropic は内部の安全性テストが必要であること、 そして競争の口火を切る側になりたくないことを理由に、 公開を見送っていた。 3月14日の提供開始は、 ChatGPT 公開から3ヶ月半後のことである。
Constitutional AI
Anthropic が他社と差別化したのは、技術的アプローチそのものよりも、安全性手法の明示化 だった。
2022年12月15日に arXiv へ投稿された論文「Constitutional AI: Harmlessness from AI Feedback」(Yuntao Bai ほか、 arXiv:2212.08073)で、 Anthropic は新しい訓練手法を示した。 名前の由来は論文の一文にある ── 「唯一の人間による監督は、 規則ないし原則のリストを通じて与えられる。 それゆえこの手法を『Constitutional AI』と呼ぶ」。
手続きは二段構えである。
- 教師あり学習の段階。 初期モデルから応答をサンプリングし、 モデル自身に「憲法(一連の原則)」に照らした自己批評と改訂を生成させ、 改訂後の応答で元のモデルを微調整する
- 強化学習の段階。 微調整済みモデルから2つの応答をサンプリングし、 どちらが良いかをモデルに評価させて選好モデルを訓練し、 それを報酬信号として強化学習を行う ── 論文が「RL from AI Feedback(RLAIF)」と呼ぶ手法である
人間のラベル付けを人手で大量に用意する RLHF と違い、 有害な出力を人間が一つずつ指摘する必要がない。 論文は結果として「有害な問いに対して、 回避するのではなく反対する理由を説明して応じる」アシスタントが得られたと述べ、 思考の連鎖を用いることで判断の透明性も上がるとしている。
Anthropic は Claude を Constitutional AI で訓練したモデルとして位置づけている。 ただし3月14日の発表文自体は手法の名前を出しておらず、 「役に立ち、 正直で、 無害」という設計目標の説明にとどまっている。
投資の連鎖と「Anthropic 軸」
Anthropic の特異点は、 安全性主軸の研究機関を名乗りながら、 OpenAI と同じ桁の資本を集めた ことにあった。
- 2022年4月: 5億8000万ドルを調達。 うち5億ドルは Sam Bankman-Fried 率いる FTX からのものだった
- 2023年2月: Google が約3億ドルを出資し、 約10%の株式を取得したと報じられる
- 2023年5月: Spark Capital 主導のシリーズ C で4億5000万ドル。 Google も参加した
- 2023年9月: Amazon が最大40億ドルの投資を発表(初回は12.5億ドル)
- 2023年10月: Google が最大20億ドルを追加でコミット
- 2024年3月: Amazon が残る27億5000万ドルを投入。 同年11月にさらに40億ドルを追加し、 総額80億ドルに
- 2025年3月: シリーズ E で35億ドル、 ポストマネー評価額615億ドル
- 2025年9月: シリーズ F で130億ドル、 評価額1830億ドル
- 2025年11月: NVIDIA が最大100億ドル、 Microsoft が最大50億ドルの出資を約束し、 Anthropic 側は Azure の計算資源を300億ドル分購入すると表明
- 2026年2月: シリーズ G で300億ドル、 評価額3800億ドル
- 2026年4月24日: Google が現金100億ドル(評価額3500億ドル)を投じ、 業績目標の達成を条件にさらに300億ドル ── 最大400億ドルの追加投資を発表
- 2026年5月: 650億ドルを調達、 評価額は9650億ドルに達したと報じられる
Amazon と Google の動機は、 Microsoft + OpenAI 連合に対抗するなら Anthropic が支援先の本命だった、 と説明されることが多い。 もっとも2025年11月には、 その Microsoft と NVIDIA までもが出資側に回っている。 会社そのものについては Anthropic のページで扱う。
Claude のモデル世代(2023〜2026年)
2023年3月の2モデルは、 長い系譜の最初だった。 日付は Anthropic 自身の発表による。
| 日付 | モデル・節目(Anthropic の発表による) |
|---|---|
| 2023年3月14日 | Claude と Claude Instant(申請制) |
| 2023年7月11日 | Claude 2。 1回の入力が最大10万トークンに。 claude.ai の公開ベータを米英で開始 |
| 2023年11月21日 | Claude 2.1。 20万トークンのコンテキストウィンドウ |
| 2024年3月4日 | Claude 3 ファミリー(Haiku・Sonnet・Opus) |
| 2024年6月 | Claude 3.5 Sonnet |
| 2024年10月22日 | 改良版 Claude 3.5 Sonnet とコンピュータ操作(computer use、 ベータ)、 Claude 3.5 Haiku |
| 2025年2月24日 | 即答と段階的な思考を切り替えられる Claude 3.7 Sonnet。 Claude Code をリサーチプレビューで公開 |
| 2025年5月22日 | Claude 4(Opus 4・Sonnet 4) |
| 2025年8〜11月 | Opus 4.1(8月5日)、 Sonnet 4.5(9月29日)、 Haiku 4.5(10月15日)、 Opus 4.5(11月24日) |
| 2026年2月 | Opus 4.6(2月5日。 Opus 系で初めて100万トークンのコンテキスト、 ベータ)、 Sonnet 4.6(2月17日) |
| 2026年4月7日 | Claude Mythos Preview。 一般公開を見送り |
| 2026年4〜5月 | Opus 4.7(4月16日)、 Opus 4.8(5月28日) |
| 2026年6月9日 | 第5世代の Claude Fable 5 と Claude Mythos 5 |
| 2026年6月30日 | Claude Sonnet 5。 Free・Pro プランの既定モデルに |
| 2026年7月24日 | Claude Opus 5 |
| 2026年9月1日 | Claude Fable 5.1 と Claude Mythos 5.1 |
| 2026年9月22日 | Claude 5.5 ファミリー最初のモデル Claude Opus 5.5 |
この間に変わったことが2つある。 1つは、 最上位の層が二つに分かれたこと。 Anthropic は Fable 5.1 と Mythos 5.1 を、 安全対策の強さが違うだけの同じモデルだと説明している。 Fable は一般に提供され、 Mythos はサイバー防御などのための信頼済みアクセスの枠組みでしか使えない。 もう1つは、 公開が政府と絡むようになったこと。 公開3日後の2026年6月12日、 米国の輸出管理の指示により、 Anthropic は Fable 5 と Mythos 5 を7月1日まで全顧客向けに止めざるを得なかった(輸出管理の経緯)。
Claude 3.7 Sonnet と同時に登場したコマンドラインのコーディングツールについては、 Claude Code のページがある。
発表のたびに、 新モデルはコーディングやエージェント用途のベンチマークで首位だと説明される。 いずれもベンダーが自社の条件で測った数値である。
「もう一極」の意味
2023年3月14日の同日公開は、 偶然ではあったが象徴的だった。 OpenAI と Anthropic という二極構造が、 その後の AI 業界の地形を決めることになる ──
- OpenAI: 速度と規模、 Microsoft との緊密提携、 商業最大化
- Anthropic: 安全性と説明可能性、 Google・Amazon との分散提携、 政府・防衛向け契約への展開(2024年11月7日、 Palantir・AWS と組み、 Palantir の IL6 認定環境で Claude 3 / 3.5 系を米国の情報・防衛機関に提供すると発表)。 この関係は2026年2月に壊れる。 Anthropic が求めた2つの例外 ── 米国民の大規模な国内監視と完全自律型兵器 ── をめぐる数ヶ月の交渉が行き詰まり、 2月27日に Hegseth 国防長官が Anthropic をサプライチェーン・リスクに指定するよう省に指示したと表明した(AI の軍事利用)
両者は競合でありながら、 業界全体としては「単一プレイヤーの独占」を避ける役割を分担する関係でもあった。 規制論議が活発化した2023年秋以降、 政府や研究者が「対比可能な複数の前線」を持てたのは、 Anthropic の存在が大きい。
そして両社の創業者たちは ── かつて同じ OpenAI のオフィスで GPT-3 を作っていた ── 今やそれぞれ別の会社で、 互いに競合する大規模モデルを作り続けている。
よくある質問
- Anthropic を設立したのは誰か
- OpenAI の元社員7名が2021年1月に設立しました。その中に Dario Amodei と Daniela Amodei の兄妹がいます。7名が OpenAI を離れたのは2020年末から2021年初頭にかけてです。
- Claude が最初に公開されたのはいつか
- 2023年3月14日です。誰でも使える公開ではなく、Notion・Quora・DuckDuckGo との closed alpha を経た申請制のアクセスでした。同じ日に OpenAI が GPT-4 を発表しています。
- Claude のモデルはどう変わってきたのか
- Anthropic の発表では、Claude 2(2023年7月)、Claude 3(2024年3月)、Claude 3.5 Sonnet(2024年6月)、Claude 3.7 Sonnet(2025年2月)、Claude 4(2025年5月)と続き、2026年6月9日に第5世代の Fable 5 と Mythos 5、9月22日に Claude 5.5 ファミリー最初の Opus 5.5 が出ました。
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