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Anthropic Claude 公開 ── 安全性主軸の対抗 LLM

出典Anthropic (Wikimedia Commons) · Public domain (below threshold of originality) · Commons で見る ↗

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2023年3月14日、米国カリフォルニア州サンフランシスコの新興 AI 企業 Anthropic が、対話型大規模言語モデル「Claude」の提供を開始した。 公開されたのは2種類 ── 発表文の言葉で「Claude は最先端の高性能モデル、 Claude Instant はより軽く、 安価で、 はるかに高速な選択肢」である。 誰でも使えるコンシューマ向けサービスではなく、 チャット画面と開発者向け API へのアクセスを申請制で開くかたちだった。 発表文によれば、 それ以前の数ヶ月は Notion・Quora・DuckDuckGo との「クローズドアルファ」であり、 この日あわせて Quora の Poe、 Juni Learning、 Robin AI、 AssemblyAI などの導入例が紹介されている。

同じ日に、 OpenAI が GPT-4 を発表していた。

二社が同日に主力モデルを公開するという偶然は、その後の AI 業界の構造をそのまま映していた ── 生成 AI には対抗軸が必要だ、と考える人々と資本が、この二社の周りに集まることになる。

OpenAI からの離脱

Anthropic の主要メンバーは、2021年初頭まで OpenAI の中核にいた。

  • Dario Amodei: OpenAI の研究担当副社長。GPT-3 の論文の主著者の一人。
  • Daniela Amodei: OpenAI の安全性とポリシー担当副社長。Dario の妹。
  • Tom Brown: GPT-3 のチームリード。
  • Sam McCandlish、 Jack Clark、 Jared Kaplan: GPT-3 とスケーリング則の研究者群。

2020年末から2021年初頭にかけて、彼らは集団で OpenAI を離脱した。 離脱の理由について、 当事者が一本の公式声明を出したことはない。 報道で繰り返されてきた説明は、 2019年の Microsoft からの10億ドル出資以降、 OpenAI が商業化と速度に傾き、 安全性研究との重心が合わなくなったという趣旨のものである ── ただしこれは記者の再構成であって、 創業者の言葉ではない。

Anthropic の設立は2021年1月、 元 OpenAI の7名による。 5月に1億2400万ドルを調達した。

Claude が生まれたのは2023年3月ではない。 最初のバージョンの訓練は2022年夏に終わっていたが、 Anthropic は内部の安全性テストが必要であること、 そして競争の口火を切る側になりたくないことを理由に、 公開を見送っていた。 3月14日の提供開始は、 ChatGPT 公開から3ヶ月半後のことである。

Constitutional AI

Anthropic が他社と差別化したのは、技術的アプローチそのものよりも、安全性手法の明示化 だった。

2022年12月15日に arXiv へ投稿された論文「Constitutional AI: Harmlessness from AI Feedback」(Yuntao Bai ほか、 arXiv:2212.08073)で、 Anthropic は新しい訓練手法を示した。 名前の由来は論文の一文にある ── 「唯一の人間による監督は、 規則ないし原則のリストを通じて与えられる。 それゆえこの手法を『Constitutional AI』と呼ぶ」。

手続きは二段構えである。

  1. 教師あり学習の段階。 初期モデルから応答をサンプリングし、 モデル自身に「憲法(一連の原則)」に照らした自己批評と改訂を生成させ、 改訂後の応答で元のモデルを微調整する
  2. 強化学習の段階。 微調整済みモデルから2つの応答をサンプリングし、 どちらが良いかをモデルに評価させて選好モデルを訓練し、 それを報酬信号として強化学習を行う ── 論文が「RL from AI Feedback(RLAIF)」と呼ぶ手法である

人間のラベル付けを人手で大量に用意する RLHF と違い、 有害な出力を人間が一つずつ指摘する必要がない。 論文は結果として「有害な問いに対して、 回避するのではなく反対する理由を説明して応じる」アシスタントが得られたと述べ、 思考の連鎖を用いることで判断の透明性も上がるとしている。

Anthropic は Claude を Constitutional AI で訓練したモデルとして位置づけている。 ただし3月14日の発表文自体は手法の名前を出しておらず、 「役に立ち、 正直で、 無害」という設計目標の説明にとどまっている。

投資の連鎖と「Anthropic 軸」

Anthropic の特異点は、 安全性主軸の研究機関を名乗りながら、 OpenAI と同じ桁の資本を集めた ことにあった。

  • 2022年4月: 5億8000万ドルを調達。 うち5億ドルは Sam Bankman-Fried 率いる FTX からのものだった
  • 2023年2月: Google が約3億ドルを出資し、 約10%の株式を取得したと報じられる
  • 2023年5月: Spark Capital 主導のシリーズ C で4億5000万ドル。 Google も参加した
  • 2023年9月: Amazon が最大40億ドルの投資を発表(初回は12.5億ドル)
  • 2023年10月: Google が最大20億ドルを追加でコミット
  • 2024年3月: Amazon が残る27億5000万ドルを投入。 同年11月にさらに40億ドルを追加し、 総額80億ドルに
  • 2025年3月: シリーズ E で35億ドル、 ポストマネー評価額615億ドル
  • 2025年9月: シリーズ F で130億ドル、 評価額1830億ドル
  • 2025年11月: NVIDIA が最大100億ドル、 Microsoft が最大50億ドルの出資を約束し、 Anthropic 側は Azure の計算資源を300億ドル分購入すると表明
  • 2026年2月: シリーズ G で300億ドル、 評価額3800億ドル
  • 2026年4月24日: Google が現金100億ドル(評価額3500億ドル)を投じ、 業績目標の達成を条件にさらに300億ドル ── 最大400億ドルの追加投資を発表
  • 2026年5月: 650億ドルを調達、 評価額は9650億ドルに達したと報じられる

Amazon と Google の動機は、 Microsoft + OpenAI 連合に対抗するなら Anthropic が支援先の本命だった、 と説明されることが多い。 もっとも2025年11月には、 その Microsoft と NVIDIA までもが出資側に回っている。 会社そのものについては Anthropic のページで扱う。

Claude のモデル世代(2023〜2026年)

2023年3月の2モデルは、 長い系譜の最初だった。 日付は Anthropic 自身の発表による。

日付モデル・節目(Anthropic の発表による)
2023年3月14日Claude と Claude Instant(申請制)
2023年7月11日Claude 2。 1回の入力が最大10万トークンに。 claude.ai の公開ベータを米英で開始
2023年11月21日Claude 2.1。 20万トークンのコンテキストウィンドウ
2024年3月4日Claude 3 ファミリー(Haiku・Sonnet・Opus)
2024年6月Claude 3.5 Sonnet
2024年10月22日改良版 Claude 3.5 Sonnet とコンピュータ操作(computer use、 ベータ)、 Claude 3.5 Haiku
2025年2月24日即答と段階的な思考を切り替えられる Claude 3.7 Sonnet。 Claude Code をリサーチプレビューで公開
2025年5月22日Claude 4(Opus 4・Sonnet 4)
2025年8〜11月Opus 4.1(8月5日)、 Sonnet 4.5(9月29日)、 Haiku 4.5(10月15日)、 Opus 4.5(11月24日)
2026年2月Opus 4.6(2月5日。 Opus 系で初めて100万トークンのコンテキスト、 ベータ)、 Sonnet 4.6(2月17日)
2026年4月7日Claude Mythos Preview。 一般公開を見送り
2026年4〜5月Opus 4.7(4月16日)、 Opus 4.8(5月28日)
2026年6月9日第5世代の Claude Fable 5 と Claude Mythos 5
2026年6月30日Claude Sonnet 5。 Free・Pro プランの既定モデルに
2026年7月24日Claude Opus 5
2026年9月1日Claude Fable 5.1 と Claude Mythos 5.1
2026年9月22日Claude 5.5 ファミリー最初のモデル Claude Opus 5.5

この間に変わったことが2つある。 1つは、 最上位の層が二つに分かれたこと。 Anthropic は Fable 5.1 と Mythos 5.1 を、 安全対策の強さが違うだけの同じモデルだと説明している。 Fable は一般に提供され、 Mythos はサイバー防御などのための信頼済みアクセスの枠組みでしか使えない。 もう1つは、 公開が政府と絡むようになったこと。 公開3日後の2026年6月12日、 米国の輸出管理の指示により、 Anthropic は Fable 5 と Mythos 5 を7月1日まで全顧客向けに止めざるを得なかった(輸出管理の経緯)。

Claude 3.7 Sonnet と同時に登場したコマンドラインのコーディングツールについては、 Claude Code のページがある。

発表のたびに、 新モデルはコーディングやエージェント用途のベンチマークで首位だと説明される。 いずれもベンダーが自社の条件で測った数値である。

「もう一極」の意味

2023年3月14日の同日公開は、 偶然ではあったが象徴的だった。 OpenAI と Anthropic という二極構造が、 その後の AI 業界の地形を決めることになる ──

  • OpenAI: 速度と規模、 Microsoft との緊密提携、 商業最大化
  • Anthropic: 安全性と説明可能性、 Google・Amazon との分散提携、 政府・防衛向け契約への展開(2024年11月7日、 Palantir・AWS と組み、 Palantir の IL6 認定環境で Claude 3 / 3.5 系を米国の情報・防衛機関に提供すると発表)。 この関係は2026年2月に壊れる。 Anthropic が求めた2つの例外 ── 米国民の大規模な国内監視と完全自律型兵器 ── をめぐる数ヶ月の交渉が行き詰まり、 2月27日に Hegseth 国防長官が Anthropic をサプライチェーン・リスクに指定するよう省に指示したと表明した(AI の軍事利用)

両者は競合でありながら、 業界全体としては「単一プレイヤーの独占」を避ける役割を分担する関係でもあった。 規制論議が活発化した2023年秋以降、 政府や研究者が「対比可能な複数の前線」を持てたのは、 Anthropic の存在が大きい。

そして両社の創業者たちは ── かつて同じ OpenAI のオフィスで GPT-3 を作っていた ── 今やそれぞれ別の会社で、 互いに競合する大規模モデルを作り続けている。

よくある質問

Anthropic を設立したのは誰か
OpenAI の元社員7名が2021年1月に設立しました。その中に Dario Amodei と Daniela Amodei の兄妹がいます。7名が OpenAI を離れたのは2020年末から2021年初頭にかけてです。
Claude が最初に公開されたのはいつか
2023年3月14日です。誰でも使える公開ではなく、Notion・Quora・DuckDuckGo との closed alpha を経た申請制のアクセスでした。同じ日に OpenAI が GPT-4 を発表しています。
Claude のモデルはどう変わってきたのか
Anthropic の発表では、Claude 2(2023年7月)、Claude 3(2024年3月)、Claude 3.5 Sonnet(2024年6月)、Claude 3.7 Sonnet(2025年2月)、Claude 4(2025年5月)と続き、2026年6月9日に第5世代の Fable 5 と Mythos 5、9月22日に Claude 5.5 ファミリー最初の Opus 5.5 が出ました。

出典

  1. 一次資料Introducing Claude — Anthropic, Mar 14, 2023

    取得日: 2026-10-18

  2. 一次資料Claude 2 — Anthropic, Jul 11, 2023

    取得日: 2026-10-18

  3. 一次資料Introducing Claude 2.1 — Anthropic, Nov 21, 2023

    取得日: 2026-10-18

  4. 一次資料Claude 3.5 Sonnet — Anthropic, Jun 2024

    取得日: 2026-10-18

  5. 一次資料Claude 3.7 Sonnet and Claude Code — Anthropic, Feb 24, 2025

    取得日: 2026-10-18

  6. 一次資料Introducing Claude 4 — Anthropic, May 22, 2025

    取得日: 2026-10-18

  7. 一次資料Claude Opus 4.1 — Anthropic, Aug 5, 2025

    取得日: 2026-10-18

  8. 一次資料Introducing Claude Sonnet 4.5 — Anthropic, Sep 29, 2025

    取得日: 2026-10-18

  9. 一次資料Introducing Claude Haiku 4.5 — Anthropic, Oct 15, 2025

    取得日: 2026-10-18

  10. 一次資料Introducing Claude Opus 4.5 — Anthropic, Nov 24, 2025

    取得日: 2026-10-18

  11. 一次資料Claude Opus 4.6 — Anthropic, Feb 5, 2026

    取得日: 2026-10-18

  12. 一次資料Introducing Sonnet 4.6 — Anthropic, Feb 17, 2026

    取得日: 2026-10-18

  13. 一次資料Introducing Claude Opus 4.7 — Anthropic, Apr 16, 2026

    取得日: 2026-10-18

  14. 一次資料Introducing Claude Opus 4.8 — Anthropic, May 28, 2026

    取得日: 2026-10-18

  15. 一次資料Claude Fable 5 and Claude Mythos 5 — Anthropic, Jun 9, 2026

    取得日: 2026-10-18

  16. 一次資料Redeploying Fable 5 — Anthropic, Jun 30, 2026

    取得日: 2026-10-18

  17. 一次資料Introducing Claude Sonnet 5 — Anthropic, Jun 30, 2026

    取得日: 2026-10-18

  18. 一次資料Introducing Claude Opus 5 — Anthropic, Jul 24, 2026

    取得日: 2026-10-18

  19. 一次資料Claude Fable 5.1 and Mythos 5.1 — Anthropic, Sep 2026

    取得日: 2026-10-18

  20. 一次資料Introducing Claude Opus 5.5 — Anthropic, Sep 22, 2026

    取得日: 2026-10-18

  21. 一次資料Expanding access to safer AI with Amazon — Anthropic, Sep 25, 2023

    取得日: 2026-10-18

  22. 三次資料Anthropic — Wikipedia

    取得日: 2026-10-18

  23. 三次資料Claude (language model) — Wikipedia

    取得日: 2026-10-18

  24. 三次資料Daniela Amodei — Wikipedia

    取得日: 2026-10-18

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