2003年8月T1#social-media#sns#web2#music-platform

MySpace 開設 ── 「友達と繋がる Web」の最初の覇権

Tom Anderson と Chris DeWolfe らが、 eUniverse 社の内部プロジェクトとして MySpace を立ち上げる。 プロフィール画面を自由にカスタマイズできる「個人化された Web」と、 インディーズ音楽の流通ハブという二本柱で十代・若年層を捕捉。 2005年に Rupert Murdoch の News Corporation が約5.8億ドルで買収、 2006-2008年は世界最大のソーシャルネットワークとして Google を抜く時期もあったが、 Facebook の急成長と独自プラットフォームの硬直で2008年以降に急速失墜。 2011年に Specific Media へ約3500万ドルで売却され、 ソーシャル覇権の遷移を象徴する事例となる。

Myspace のロゴ
出典Myspace (Wikimedia Commons) · Public domain (released by copyright holder) · Commons で見る

メタデータ

日付
2003年8月
年代
2000s
Tier
T1
出典数
04
関連項目
00
Tags
#social-media#sns#web2#music-platform#news-corp

MySpace 開設 ── 「友達と繋がる Web」の最初の覇権

2003年8月、 Los Angeles の eUniverse 社の社内で、 Tom Anderson と Chris DeWolfe らが MySpace を立ち上げた。 ハーバードの寮で thefacebook.com が動き出すちょうど半年前のことである。

これは、 後に「ソーシャルネットワーク」と呼ばれるカテゴリの最初の覇権プラットフォームになる。 2005年から2008年の3年間、 MySpace は世界最大の SNS であり、 米国トラフィックでは一時 Google を抜いた。 そして2008年以降、 Facebook によって完膚なきまでに駆逐される。 ソーシャルメディアの歴史は、 この昇り降りから始まる。

創業 ── マーケティング会社の副業から

MySpace は純粋なスタートアップではなかった。 母体の eUniverse は、 インターネット広告とメール配信を手がける上場マーケティング企業で、 Friendster の急成長を見て「同じものを社内で作ろう」と判断した。 開発期間は10日程度と言われる。

共同創業者は次の三人 ──

  • Tom Anderson: バンドマン上がりのプログラマ。 MySpace 上の全ユーザの初期「友達」になる仕様で、 「Tom from Myspace」として一時代の象徴的存在となる
  • Chris DeWolfe: eUniverse 出身のマーケター。 ビジネス側を統括し、 後の CEO
  • eUniverse 社員チーム: バックエンドと運用を担う

設計思想は明快だった ── 「Friendster より自由に、 ライブジャーナルより派手に」。 プロフィールページに HTML / CSS を自由に書き込めるという仕様が、 結果的に十代ユーザの自己表現欲求と完全に噛み合った。

二本柱 ── 個人化と音楽

MySpace の優位は、 二つの柱で説明できる。

個人化された Web: ユーザは自分のプロフィールページを、 CSS の貼り付けで完全に改造できた。 真っ黒な背景、 自動再生の音楽、 流れる装飾文字 ── これは Web デザイナーから見れば悪夢だが、 「自分の部屋を飾る」感覚としては正しかった。 Web2.0 が掲げた「ユーザが作る Web」を、 最も極端な形で実現した。

インディーズ音楽の流通ハブ: 個人プロフィールに音楽プレーヤーを埋め込める仕様は、 デモテープを配るバンドにとって革命だった。 Arctic Monkeys、 Lily Allen、 Kate Nash ── 2000年代中盤に MySpace 発でブレイクしたアーティストは多数。 「レコード会社を経由せずファンと直接つながる」という、 後の SoundCloud や Bandcamp の原型がここにある。

この二点で MySpace は、 2004年に約100万人、 2005年に2200万人、 2006年5500万人へと爆発成長する。

News Corp の5.8億ドル買収

2005年7月、 Rupert Murdoch の News Corporation が MySpace の親会社 Intermix Media を 約5.8億ドル で買収した。 当時のメディア・テック M&A としては大型案件で、 「伝統メディア帝国がインターネット時代の入場券を買った」と評された。

Murdoch の戦略は、 News Corp が抱える Fox、 The Sun、 Wall Street Journal などのコンテンツを MySpace で流通させ、 広告ネットワーク化することだった。 2006年から2008年にかけて Google との3年間の検索広告契約(9億ドル規模)を結び、 ピーク時の MySpace は約7600万 UU/月、 米国 Web トラフィック1位を一時占めた。

失墜 ── Facebook と内部硬直

しかし2008年、 Facebook が MySpace を米国 UU で抜く。 そこから先は転落の連続だった。

技術的硬直: News Corp の支配下で、 MySpace はプラットフォームの根本的なリファクタリングを実行できなかった。 派手な改造プロフィールはモバイル時代に致命的に重く、 サイトはバグと広告にまみれていった。

戦略的迷走: News Corp は MySpace を「メディアポータル」として運営しようとし、 動画・音楽・ゲーム機能を雑然と追加した。 一方 Facebook は「友達のニュースフィード」という一点に集中し、 ニュースフィード(2006年)、 開発者プラットフォーム(2007年)、 Like ボタン(2009年)を磨き続けた。

人材流出: 2009年に Anderson と DeWolfe が退任。 中核を失った後の MySpace は方向性を失い、 リストラと買収交渉の対象となる。

2011年6月、 News Corp は MySpace を Specific Media に 約3500万ドル で売却。 6年で価値の94%が消えた計算となる。 後に Justin Timberlake が出資し「音楽 SNS」として再生を試みるが、 もう誰も戻ってこなかった。

何を残したか

MySpace は失敗例として語られることが多いが、 残したものは多い。

SNS 形式の発明: プロフィール画面と友達リストの組み合わせ ── これ以後のソーシャルネットワークは、 すべて MySpace の構造を踏襲している。 Facebook も Instagram も TikTok も、 ユーザの「自分のページ」を持つ。

プラットフォームから音楽が出る経路: バンドが直接ファンと繋がる流通ルートは、 SoundCloud(2007)、 Bandcamp(2008)、 Spotify のアーティストページへと継承された。

「Web 覇権は永続しない」という前例: News Corp が5.8億ドルで買い、 6年で3500万ドルになった ── これはその後 Yahoo の Tumblr 買収(11億ドル → 3百万ドル)、 Microsoft の aQuantive(63億ドル → ほぼ全額減損)と同じ系譜にある「メディア大手のネット買収失敗」の祖型である。

そして、 Anderson が MySpace 売却で得た数千万ドルを元手にプロの写真家として悠々自適の人生を選んだという余話は、 SNS 創業者の「燃え尽きた後の物語」としても象徴的に語られている。

ソーシャルメディア年表は、 ここから本格的に始まる。

出典

  1. 二次資料Myspace — Wikipedia

    取得日: 2026-05-25

  2. 一次資料News Corp. sells MySpace for $35 million — Reuters, Jun 30, 2011

    取得日: 2026-05-25

  3. 二次資料Tom Anderson — Wikipedia

    取得日: 2026-05-25

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