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macOS Sequoia と Apple Intelligence ── OS 内蔵 AI

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- 2020s
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- T1
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2024年9月16日、 Apple は macOS 15「Sequoia」を一般公開した。 iOS 18・iPadOS 18 と同時リリースで、 発表の中心にあったのは新機能群のブランド ── Apple Intelligence だった。
ただし、 9月16日に出荷された 15.0 に Apple Intelligence は入っていない。 実際の投入は段階的だった。
| 版 | 日付 | 入ったもの |
|---|---|---|
| macOS 15.0 / iOS 18 | 2024-09-16 | Apple Intelligence なし |
| 15.1 / iOS 18.1 | 2024-10-28 | 文章の校正・要約、 通知とメールの要約、 新デザインの Siri、 写真の Clean Up。 米国英語のみ |
| 15.2 / iOS 18.2 | 2024-12-11 | Image Playground、 Genmoji、 Image Wand、 ChatGPT 連携、 visual intelligence |
| 15.4 / iOS 18.4 | 2025-03-31 | 優先通知、 日本語を含む多言語対応、 EU の iPhone / iPad へ展開 |
処理は、 オンデバイスの基盤モデル(Apple の技術報告で約30億パラメータ)と、 Apple 専用サーバ Private Cloud Compute のハイブリッドで走る。 オンデバイス側の実行を担うのは Apple Neural Engine ── ニューラルネットワークの推論に特化した専用プロセッサ(NPU)で、 GPU より少ない電力で行列演算を回す。 これが世代要件の根拠になった。
M1 以降だけ
Apple Intelligence のハードウェア要件は、 Apple 自身の発表文では次のとおり。
- Mac: M1 以降。 Intel Mac は全て対象外
- iPad: A17 Pro または M1 以降
- iPhone: iPhone 15 Pro / 15 Pro Max、 および iPhone 16 シリーズ(後に iPhone 16e)
iPhone 側の線引きは厳しかった。 当時併売されていた iPhone 15 の 無印モデルは対象外で、 前年に iPhone 15 を買った利用者は新しい Siri を一切使えなかった。 Mac 側では Intel 機が一律に外れた ── ハードウェアとしては動いても、 NPU が要件を満たさない。
Microsoft の Copilot+ PC や Windows 11 の TPM 2.0 議論と同じ構造が、 Apple のエコシステムでも反復された ── AI 機能の世代差が、 ハードウェア世代差として固定される。
Intel Mac の退場はその後さらに進んだ。 2025年6月の WWDC で Apple は、 同年9月の macOS 26 Tahoe が Intel Mac に対応する最後のメジャーリリースであると述べている。
EU ── 遅れたのは iPhone / iPad であって Mac ではない
2024年6月21日、 WWDC の直後に Apple は声明を出した。 Digital Markets Act(DMA)がもたらす規制上の不確実性のため、 iPhone Mirroring、 SharePlay の画面共有の拡張、 そして Apple Intelligence の3機能を、 その年のうちに EU の利用者へ届けられるとは考えていない ── というものだった。
ただし この制約は iOS / iPadOS に掛かったもので、 macOS には掛からなかった。 EU の Mac 利用者は2024年10月の macOS 15.1 の時点で(米国英語設定で)Apple Intelligence を使えた。 EU の iPhone / iPad に届いたのは2025年3月末の iOS 18.4 で、 半年以上の差がついた。
摩擦はその後も続いた。 2025年9月24日、 Apple は公式に「DMA は、 Apple の機能を他社製品やアプリでも動くようにしてから提供することを求めており、 そのための技術的な作業が EU での機能提供を遅らせている」という趣旨の文書を出し、 AirPods のライブ翻訳、 iPhone Mirroring、 マップの Visited Places / Preferred Routes を遅延中の例として挙げた。 iPhone Mirroring については "Our teams still have not found a secure way to bring this feature to non-Apple devices without putting all the data on a user's iPhone at risk."(この機能を、 iPhone 上のすべてのデータを危険に晒さずに他社製デバイスへ持っていく安全な方法を、 我々のチームはまだ見つけられていない)と書いている。
Siri 2.0 ── 2年遅れて、 別物になって出た
WWDC 2024 で見せられた次世代 Siri ── 個人コンテキストを理解し、 画面上の内容を認識し、 アプリ横断でアクションを実行する ── が、 業界の最大の関心事だった。
2025年3月7日、 Apple は延期を認めた。 広報担当 Jacqueline Roy の声明は "It's going to take us longer than we thought to deliver on these features and we anticipate rolling them out in the coming year."(これらの機能の提供には想定より時間がかかる。 来年のうちの提供を見込んでいる)。 「品質基準に達していない」という言い方はしていない。
延期はさらに続いた。 2025年6月の時点で2026年春が目標とされ、 実際に形になったのは2026年6月の WWDC である。 そこで発表された新しい Siri は、 Apple 自前のモデルだけで作られたものではなかった ── Google の Gemini を基盤に据え、 Apple の Private Cloud Compute 上で動かす構成である。 Bloomberg の Mark Gurman は2025年11月、 Apple が Siri 向けにカスタムされた 1.2兆パラメータの Gemini モデルに年間およそ10億ドルを支払う見込みだと報じていた。 自社モデルでの独立を10年主張してきた企業が、 看板機能の中核を競合から買った形になる。
マーケティングと出荷の乖離は法廷にも及んだ。 iPhone 16 および iPhone 15 Pro 系を「Apple Intelligence の新 Siri」目当てで買ったとする集団訴訟(Landsheft v. Apple、 米カリフォルニア北部地区)で、 Apple は 2億5,000万ドルの和解案に合意した。 対象は2024年6月10日から2025年3月29日までの購入者で、 1台あたり約25ドル、 申請数によっては最大95ドル。 Apple は責任を認めていない。 本稿執行時点で最終承認は未了である。
ChatGPT 連携は 2024年12月の 15.2 / iOS 18.2 で予定どおり載った。 ただしこれは Apple の AI ではなく OpenAI の AI を借りる 機能だった ── 2026年の Gemini 採用は、 その構図の延長線上にある。
iPhone Mirroring と Continuity の深化
地味だが評価されたのは iPhone Mirroring だった。 Mac から iPhone の画面・通知・アプリを直接操作できる機能で、 Continuity 思想 ── Mac、 iPhone、 iPad、 Apple Watch が一つのデバイスのように振る舞う ── の到達点のひとつである。 EU では上記のとおり、 2025年9月時点でもまだ提供されていない。
追いつく側に回った最初の OS
macOS Sequoia と Apple Intelligence の世代は、 Apple のプロダクト史において 「追いつく側」に回った最初の OS だった公算が大きい。
Google は2023年から Bard / Gemini、 Pixel に Tensor チップと AI 機能。 Microsoft は2023年に Copilot を Windows と Office に統合。 Samsung は2024年1月に Galaxy AI を Galaxy S24 で launch。 そのなかで Apple の AI は2024年10月にようやく動き始め、 目玉の Siri は2026年まで届かなかった。
ただし、 Apple の戦略の骨格 ── オンデバイス + Private Cloud Compute という、 プライバシーを設計レベルで担保しようとするアーキテクチャ ── は残った。 Gemini を採用した2026年版 Siri も、 モデルは Google 製だが実行は Apple のサーバ上である。 速度で負け、 モデルで折れ、 それでも実行環境の所有だけは手放さなかった ── この世代の記録は、 そう要約できる。
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