T1#energy
IEA「Energy and AI」── データセンターの電力は2030年に倍増へ

AI はどれくらい電力を使うのか。 この問いに世界規模の推計で答えたのが、国際エネルギー機関(IEA)が2025年4月10日に公表した特別報告書「Energy and AI」である。報告書によれば、世界のデータセンターの電力消費は2024年に約415TWhで、世界の電力消費の約1.5%だった。基本ケースでは、これが2030年までに倍増以上の約945TWhに達する。今日の日本の総電力消費をわずかに上回る規模である。増加の最大の要因は AI で、AI 向けに最適化したデータセンターの電力需要は2030年までに4倍超になると見込まれた。
IEA の Fatih Birol 事務局長は発表で、2030年までの電力需要の伸びのうちデータセンターが占める割合は、米国で半分近く、日本で半分超、マレーシアでは5分の1に及ぶと述べた。日本は、データセンターが需要の伸びの過半を占めると名指しされた国の一つである。
数字で見る報告書
報告書の要旨(Executive summary)から、主な数字を並べる。いずれも IEA の推計で、実績ではない部分を含む。
| 指標 | 値 |
|---|---|
| データセンターの電力消費(2024年) | 約415TWh(世界の電力消費の約1.5%) |
| 国・地域別の内訳(2024年) | 米国45%、中国25%、欧州15% |
| 2017年以降の伸び | 年約12%(電力消費全体の4倍超の速さ) |
| 2030年の見通し(基本ケース) | 約945TWh |
| 2035年の見通し(基本ケース) | 約1,200TWh |
| 2035年の見通しの幅(各ケース) | 700〜1,700TWh |
| データセンター投資(2024年) | 約5,000億ドル(2022年からほぼ倍増) |
| 典型的な AI データセンター | 10万世帯分の電力。建設中の最大級はその20倍 |
報告書は、データセンターは世界全体では電力消費の小さな一部だが、地域への影響ははるかに大きいと強調する。米国のデータセンター容量の半分近くは5つの地域の集積地にある。2030年までの世界の電力需要の伸びに占めるデータセンターの割合は約10分の1で、産業用モーター、冷房、電気自動車より小さい。しかし、何十年も電力需要が横ばいだった先進国では、需要の伸びの20%超をデータセンターが占める。
電気はどこから来るのか
報告書は、データセンターの需要を満たすのは主に再生可能エネルギーと天然ガスだとする。2035年までのデータセンター需要の伸びの半分は、蓄電池と送電網に支えられた再エネが賄う。天然ガスは特に米国で175TWh 増え、原子力もほぼ同じ量を、特に中国・日本・米国で上乗せする。最初の小型モジュール炉(SMR)は2030年ごろに稼働するとされる。
ここで、IT 企業が電源そのものの確保に乗り出した例として、Microsoft とスリーマイル島1号機の再稼働契約がある。経緯は スリーマイル島原発の再稼働(2024年) のページにある。
一方で報告書は、送電網の制約を警告した。対策を取らなければ、計画中のデータセンターの約20%が遅れる危険がある。先進国では新しい送電線の建設に4〜8年かかり、変圧器やケーブルの納期はこの3年で倍になった。ガス火力のタービンも数年待ちで、運転開始が2030年以降にずれ込むおそれがある。報告書は、電力部門が追いつかなければ、データセンターの需要増を満たすことが電化、製造業の成長、電気料金の手頃さといった他の目標との取引になりかねないと書いている。
不確実性と、気候への影響
IEA は、見通しには大きな不確実性があると繰り返している。AI がどれだけ速く普及するか、どれだけ有能で生産的になるか、効率がどれだけ速く改善するか、エネルギー部門のボトルネックが解消されるかによって、結果は大きく変わる。そのため報告書は、AI の普及が速い Lift-Off ケース、逆風の Headwinds ケース、効率改善が進む High Efficiency ケースを用意した。High Efficiency ケースの2035年の需要は基本ケースより20%少ない。
気候への影響について、報告書の評価ははっきりしている。データセンターの電力由来の排出は今日の1億8,000万トンから、2035年に基本ケースで3億トン、Lift-Off ケースで最大5億トンへ増える。最も速く増える排出源の一つではあるが、エネルギー部門全体の排出の1.5%未満にとどまる。IEA は、AI が気候変動を加速させるという懸念は誇張されているように見え、同時に AI だけで問題に対処できるという期待も誇張されていると書いた。既存の AI 活用を広く進めた場合の排出削減は2035年のエネルギー関連排出の約5%に相当し、データセンターの排出よりはるかに大きいが、気候変動への対処に必要な量よりはるかに小さい。
報告書は、AI がエネルギー安全保障に与える影響にも触れている。エネルギー事業者へのサイバー攻撃はこの4年で3倍になり、AI によって高度化した。半導体に使われるガリウムは精製の約99%を中国が占め、2030年にはデータセンター向けの需要が今日の供給の10%を超えうる。
1年後の見直し
IEA は2026年4月16日、続編の報告書「Key Questions on Energy and AI」を公表した。データセンターの電力消費は2025年に485TWh、2030年に950TWh で、中心的な見通しは2025年の報告書の軌道に近いままだとしている。AI 向けデータセンターの消費はこの期間に3倍になる。巨大な投資と計画の積み上がりは上方修正を示唆するように見えるが、資金面と物理面の摩擦が短期の伸びを抑えているため、基本ケースは妥当なままだ、というのが IEA の判断である。
社会への影響
AI の電力問題は、地球全体の総量より、特定の地域の送電網と電気料金の問題として現れている。 2026年の続編は、この点を前面に出した。
続編によれば、データセンターは2025年に世界の電力消費の1.5%にすぎないが、集積地のある州や都市圏では需要の20〜30%を占める。データセンターは大規模で集中し、急速に建つため、新しい発電や送電への投資を求める。その需要が予想を下回れば、投資の費用が他の利用者の料金に乗る危険がある。報告書は、データセンターの実際のピーク負荷は不確かで、手当てしなければ一部の地域で電気料金を押し上げうると書いている。
対策も動き始めた。続編によれば、米国では24州の規制当局や電力会社が、データセンターに担保の差し入れ、最長20年の最低料金の約束、早期撤退時の違約金などを求める料金設計を承認または提案した。Microsoft などのハイパースケーラーは、自社のデータセンターのための電力インフラの費用を負担すると約束し、ほかの数社も、インフラ費用を米国の家計に転嫁しないという連邦政府主導の誓約に署名した。
地域社会の反発も数字に表れている。続編は、Data Center Watch の集計として、2025年第2四半期だけで米国の20件、推定980億ドル分のデータセンター計画が阻止または延期されたと伝え、環境と電気料金への懸念が理由だとしている。
AI の便益を受けるのは世界中の利用者だが、電力網の増強と料金の負担は、データセンターが建つ特定の地域に集中する。IEA の2つの報告書は、その不均衡を数字で示した。
よくある質問
- AI のデータセンターはどれくらい電力を使うのですか。
- IEA によると、世界のデータセンター全体の電力消費は2024年に約415TWhで、世界の電力消費の約1.5%でした。基本ケースでは2030年に約945TWhへ倍増以上となり、今日の日本の総電力消費をわずかに上回ります。AI 向けに最適化したデータセンターの需要は2030年までに4倍超になると見込まれています。
- 日本への影響はどのくらいですか。
- IEA の Fatih Birol 事務局長は、2030年までの電力需要の伸びのうち、データセンターが米国では半分近く、日本では半分超を占める見込みだと述べました。2030年の世界のデータセンター需要は、今日の日本全体の消費に匹敵する規模です。
- AI は気候変動を悪化させるのですか。
- IEA は、データセンターの電力由来の排出は2035年に基本ケースで3億トンへ増えるものの、エネルギー部門全体の排出の1.5%未満にとどまり、AI が気候変動を加速させるという懸念は誇張されていると評価しました。同時に、AI だけで問題が解決するという期待も誇張だとしています。
- この見通しはその後変わりましたか。
- IEA は2026年4月16日の報告書「Key Questions on Energy and AI」で、2025年の消費を485TWh、2030年を950TWhとし、中心的な見通しは2025年の報告書の軌道に近いままだとしました。AI 向けデータセンターの消費はこの間に3倍になるとしています。
出典
2030年に約945TWh、日本の消費との比較、AI 最適化データセンターの4倍超、米国・日本・マレーシアでの需要増に占める割合、Birol の発言、エネルギー事業者へのサイバー攻撃の3倍増
一次資料Energy and AI: Executive summary — IEA, Apr 10, 2025
2024年の約415TWh・約1.5%、米国45%・中国25%・欧州15%、2017年以降年約12%増、2035年に約1,200TWh、700〜1,700TWh の幅、再エネ・ガス・原子力の寄与、約20%の計画が遅延の危険、排出180Mt→300Mt、ガリウム
一次資料Key Questions on Energy and AI — IEA World Energy Outlook Special Report, Apr 16, 2026
2025年に485TWh、2030年に950TWh、AI 向けデータセンターの3倍増、2025年第2四半期に米国で20件・980億ドルの計画が阻止・延期、24州での料金設計、ハイパースケーラーの費用負担の誓約
最終更新: