2024年3月13日(採択)T1

EU AI Act 採択 ── 世界初の包括的 AI 規制

欧州議会が AI Act を 523対46 で採択。AI システムを「許容できないリスク」「高リスク」「限定リスク」「最小リスク」の4段階に分類し、社会信用スコアリングや無差別な顔認証など一部を全面禁止、医療・採用・司法などの高リスク AI には厳格な義務を課す。汎用AI(GPAI)モデルにも透明性と著作権遵守を要求。5月21日に EU 理事会が正式承認、8月1日に発効。世界初の包括的 AI 規制として「Brussels Effect」の典型例となり、各国の AI 法整備の参照点になった。

メタデータ

日付
2024年3月13日(採択)
年代
2020s
Tier
T1
出典数
02
関連項目
00

EU AI Act 採択 ── 世界初の包括的 AI 規制

2024年3月13日、欧州議会の本会議で「人工知能法(Artificial Intelligence Act、 略称 AI Act)」が採択された。 賛成523、 反対46、 棄権49。

世界で最初の、 AI に対する包括的な法律 ── 罰金規定を伴う、 実効性のある規制 ── がここで成立した。

リスク階層

AI Act の骨格は、 AI システムを4段階のリスクに分類することにある。

1. 許容できないリスク(unacceptable risk) ── 全面禁止

  • 公的機関による「社会信用スコアリング」
  • リアルタイムの遠隔生体認証(公共空間での無差別な顔認証)
  • 人間の脆弱性(年齢・障害等)を悪用するシステム
  • サブリミナル操作
  • 感情認識(職場・教育機関での)

2. 高リスク(high risk) ── 厳格な義務

  • 雇用採用、 信用評価、 司法判断、 法執行、 教育、 移民、 重要インフラ運用、 医療機器など

これらの AI システムは、 リスク管理体制・データガバナンス・透明性・人間による監督・正確性とロバスト性の証明を義務づけられる。

3. 限定リスク(limited risk) ── 透明性義務

  • チャットボット、 生成系(ディープフェイク等)の AI

ユーザに「AI が生成したものである」と明示することが必要。

4. 最小リスク ── 自由

  • 上記以外(スパムフィルタ、 ゲームの AI 等)

汎用 AI(GPAI)への特例

ChatGPT・Claude・Gemini のような汎用大規模言語モデルは、 既存のリスク階層には収まりにくい。 AI Act は別カテゴリ「汎用 AI モデル(General-Purpose AI Model)」を設け、 計算量による二段階の規制を導入した。

  • すべての GPAI: 訓練データの著作権遵守記録、 モデルカードの公開、 透明性報告書の作成
  • システミックリスクのある GPAI(10²⁵ FLOPs 超): 追加で、 モデル評価・敵対的テスト・サイバーセキュリティ強化・重大インシデント報告

GPT-4、 Claude 3.5、 Gemini Ultra などはこの上位区分に該当する。

罰金

違反に対する制裁金は、 GDPR を上回る規模となった。

  • 禁止項目への違反: 最大3500万ユーロ、 または全世界年間売上の7%
  • 高リスク義務の違反: 最大1500万ユーロ、 または全世界年間売上の3%
  • 不正確な情報提供: 最大750万ユーロ、 または1%

「全世界年間売上の何%」という形式は、 大企業に対しても十分な抑止力となる設計。

段階的施行

2024年5月21日、 EU 理事会が正式承認。 8月1日、 EU 官報に掲載され発効。 ただし全条項が同時に施行されるわけではない。

  • 2025年2月2日: 禁止項目(許容できないリスク)の条項が施行
  • 2025年8月2日: 汎用 AI(GPAI)条項が施行(既存モデルへの遡及適用は段階的)
  • 2026年8月2日: 高リスク AI 条項が全面施行
  • 2027年8月2日: 製品安全規制との統合部分が完全施行

Brussels Effect

EU AI Act は、 EU 域外の企業にも事実上の影響を持つ。 米国企業が EU 市場向けに作る AI システムは AI Act に従わなければならず、 結果として 全世界向けの製品も同じ基準で作る方が経済的 になる(モデルを別々に維持するコストの方が高い)。

これは、 GDPR(2018年)以降の「Brussels Effect」と呼ばれる現象 ── 欧州の規制が、 立法権を持たない国の企業にも事実上の標準となっていく ── の最新の事例である。

米国・日本・英国などの各国 AI 政策は、 AI Act を明示的ないし暗黙的に参照点として展開している。 2024年3月13日の本会議採決は、 ブリュッセルから世界へ向けて、 AI 規制の最初の標準が発信された日として記録される。

出典

  1. 二次資料Artificial Intelligence Act — Wikipedia

    取得日: 2026-05-24