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Amazon S3 公開 ── AWS のクラウドはストレージから始まった
メタデータ
- 日付
- 年代
- 2000s
- Tier
- T1
- 出典数
- 08
- 関連項目
- 02
AWS のパブリッククラウドとしての歴史は、2006年3月14日 に始まる。この日 Amazon Web Services は、Web 経由で誰でも借りられるストレージ Amazon S3(Simple Storage Service)を公開した。前払いも最低料金もなく、保管料は 1GB あたり月 0.15 ドル。計算資源の貸し出しは5か月後の 2006年8月25日、EC2 の限定ベータで続いた。「Amazon Web Services」という名前自体は2002年7月からあり、メッセージキューの SQS も2004年11月からベータ提供されていた。それでも、Amazon が自社のインフラそのものを従量課金で外部に売ったのは S3 が最初である。
発表のプレスリリースは短い。Amazon は S3 を "storage for the Internet" と呼び、どれだけの量のデータでも、いつでも、Web 上のどこからでも出し入れできる単純なインターフェースだと説明した。
S3 の前と後の AWS
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2002年7月 | Amazon が「Amazon Web Services」を開始。外部サイトが Amazon の商品カタログを使える無償 API |
| 2004年11月3日 | メッセージキュー Amazon SQS のベータテスト開始 |
| 2006年3月14日 | Amazon S3 公開。従量課金で売る最初のインフラサービス |
| 2006年8月25日 | Amazon EC2 の限定ベータ開始 |
| 2007年11月6日 | S3 で欧州にデータを置けるようになる |
| 2011年3月2日 | アジアパシフィック(東京)リージョン開設 |
2002年の API も2004年のキューも AWS の名を冠しており、S3 のプレスリリース自身も、AWS の始まりを2002年7月とし、それ以来15万人以上の開発者が登録したと書いている。2006年に変わったのは事業の中身である。Amazon 自身のデータに触れる API ではなく、容量そのものを貸すようになった。名前の由来と会社としての Amazon については Amazon のページにある。
初日の S3 にあったもの
S3 が保管するのは「オブジェクト」── 種類を問わないファイル ── で、それを「バケット」に入れ、キーで指し示す。公開時の仕様は意図して小さかった。
| 項目 | 公開時(2006年3月) |
|---|---|
| オブジェクトの大きさ | 1バイト〜5GB |
| オブジェクト数 | 無制限 |
| インターフェース | REST と SOAP。ダウンロードには BitTorrent も可 |
| アクセス制御 | 非公開、または読み書きの共有 |
| 可用性 | 99.99% を目標に設計 |
| 保管料 | 1GB あたり月 0.15 ドル |
| 転送料 | 1GB あたり 0.20 ドル |
| 契約条件 | 前払いなし、最低料金なし |
プレスリリースはこの設計方針をそのまま書いている ──「Amazon S3 is intentionally built with a minimal feature set.」。機能の多さではなく、単純さと堅牢さを重んじたという説明である。当時 AWS の副社長だった Andy Jassy は同じリリースで、品質の高いインターネット上のストレージはあって当然のものとして扱われるべきだ、という考えが S3 の出発点だと述べた。
Amazon は S3 を、自社の Web サイト群を動かしているのと同じストレージ基盤を使えるサービスだとも売り込んだ。これは同社の主張であり、外部から確かめられたのは料金表のほうだった。
データはどこに置かれたか
公開時の S3 には保管場所を選ぶ機能が無かった。2007年11月6日に欧州での保管を追加したときのプレスリリースは、S3 の「U.S. launch」以来、欧州の開発者からデータを欧州に置きたいという要望が続いていたと書いている。欧州の保管料は少し高い 1GB あたり月 0.18 ドルだった。
日本はさらに待った。AWS が アジアパシフィック(東京)リージョン を開いたのは2011年3月2日で、世界で5番目、アジア太平洋ではシンガポールに次ぐ2番目のリージョンだった。Amazon のリリースは初日から使えるサービスに S3 と EC2 を挙げ、日本語のプレミアムサポートも用意した。日本の企業が S3 のデータを国内に置けるようになったのは、この日からである。
規模はどれほどだったか
20年後の2026年3月13日、AWS は当初のシステムの数字を公表した。S3 は約1ペタバイトの容量、約400台のストレージノード、3つのデータセンターにまたがる15ラック、総帯域 15Gbps で始まった。同じ記事は2026年の規模として、5百兆を超えるオブジェクト、毎秒2億を超えるリクエスト、数百エクサバイト、39リージョンを挙げている。オブジェクトの上限は 5GB から 50TB になり、1GB 15セントだった保管料は2セント強になった。いずれも AWS 自身の数字である。
5か月後の EC2
S3 はストレージだけだった。今日「クラウド」と呼ばれるもののもう半分は、2006年8月25日に Jeff Barr が AWS ブログで告げた Amazon EC2 である。1インスタンスは 1.7GHz の Xeon 相当、メモリ 1.75GB、ローカルディスク 160GB、ネットワーク帯域 250Mb/秒で、料金は1時間10セント。限定ベータの間、1アカウントで動かせるのは20台までだった。
EC2 は S3 の上に組まれていた。Barr の記事によれば、マシンイメージ(AMI)はパッケージ化した OS を S3 のオブジェクトとして保管したものである。2つがそろったことで、借りた機械と借りたストレージだけで Web サービスを動かせるようになった。
なぜこの日付が重要か
S3 が料金表に載せたのは、まとまった契約ではなく単位だった。1か月保管した 1GB と、転送した 1GB。前払いも最低額もない。他社は別の形で後に続いた。Google はアプリケーションごと預かる App Engine を2008年に、Microsoft は Windows Azure の一般提供を2010年に 始めている。
AWS の内側でも、従量課金の対象は広がり続けた。データウェアハウスの Redshift(2012年)、サーバを意識せずにコードを動かす Lambda(2014年)、基盤モデルを貸す Bedrock(2023年) である。
S3 と EC2 が属するサービスモデルについては用語集の IaaS / PaaS / SaaS を、前後の流れは クラウドコンピューティングの年表 を参照。
よくある質問
- AWS はいつ始まったのですか。
- パブリッククラウドとしては2006年3月14日の Amazon S3 公開が始まりです。ただし「Amazon Web Services」の名は2002年7月、商品カタログを外部サイトに開放する無償 API に先に付いており、メッセージキュー SQS のベータも2004年11月3日に始まっていました。計算資源を貸す EC2 は2006年8月25日に限定ベータで続きました。
- S3 と EC2 はどちらが先ですか。
- S3 が先です。S3 の公開は2006年3月14日、EC2 の限定ベータは同年8月25日でした。EC2 のマシンイメージ(AMI)は S3 のオブジェクトとして保管される仕組みで、EC2 は S3 の上に組まれていました。
- 公開当時の S3 の料金はいくらでしたか。
- 保管が 1GB あたり月 0.15 ドル、転送が 1GB あたり 0.20 ドルで、前払いも最低料金もありませんでした。AWS によれば、2026年の保管料は 1GB あたり2セント強です。
- 日本で S3 のデータを国内に置けるようになったのはいつですか。
- 2011年3月2日、AWS がアジアパシフィック(東京)リージョンを開設してからです。世界で5番目のリージョンで、初日から S3 と EC2 が使えました。それ以前、欧州での保管が2007年11月6日に加わるまで、S3 の保管先は米国でした。
出典
一次資料Amazon Web Services Launches — Amazon Press Release, March 14, 2006
公開日、料金、オブジェクトの大きさ、REST/SOAP、minimal feature set の文、Jassy の発言、AWS の開始を2002年7月とする記述
一次資料Amazon S3 — Jeff Barr, AWS News Blog, March 14, 2006
可用性99.99%、5GB の上限、BitTorrent 対応
一次資料Amazon EC2 Beta — Jeff Barr, AWS Blog, August 25, 2006
EC2 限定ベータの日付、1時間10セント、インスタンスの仕様、AMI を S3 に保管する仕組み
東京リージョンの開設日、5番目のリージョン、提供サービス
公開時の容量・ノード数・ラック数と2026年の規模・料金(AWS 自身の数字)
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