人物 :: PERSON

ダリオ・アモデイ

Anthropic の共同創業者で CEO。スタンフォード大学を経てプリンストン大学で博士号(神経回路の電気生理学)を取得し、スタンフォード大学医学部のポスドク、Baidu、Google Brain を経て OpenAI の研究担当副社長として GPT-2・GPT-3 の開発を率いた。2020年末に OpenAI を離れ、2021年に Anthropic を共同創業した。

ダリオ・アモデイ(2023年5月、ロンドンの首相官邸)
出典Simon Walker / No 10 Downing Street (Wikimedia Commons) · CC BY 2.0 · Commons で見る ↗

プロフィール

生年
1983
存命
存命
在世
1983–
関連事象
01
名称
ENDario AmodeiJAダリオ・アモデイ

ダリオ・アモデイ(Dario Amodei、 1983年生)は、 Anthropic の共同創業者で最高経営責任者(CEO)である。 大規模言語モデルの開発を率いた研究者が、 安全性を看板に掲げる企業の経営者になった。 経歴の前半は物理学と神経科学である。

物理学から神経回路へ

本人のサイトと Hertz 財団の経歴によれば、 学部はスタンフォード大学、 大学院はプリンストン大学で、 Hertz Fellow として博士号を取得した。 学位の分野は、 Hertz 財団が物理学(PhD in physics)、 本人のサイトが生物物理学と書いている。 博士論文の題は "Network-Scale Electrophysiology: Measuring and Understanding the Collective Behavior of Neural Circuits"。 神経回路の統計力学的なモデルに加え、 細胞内・細胞外の電位を記録する新しい装置の開発にも取り組んだと財団は説明している。 この論文で Hertz Thesis Prize を受けた。

博士課程の後はスタンフォード大学医学部のポスドクとして、 質量分析を細胞のプロテオームのネットワークモデルやがんのバイオマーカー探索に応用する研究に携わった。

Baidu、 Google Brain、 そして安全性の論文

機械学習への転身を示す最初の公刊物は、 2015年12月に arXiv に出た Baidu Research(シリコンバレー AI 研究所)の音声認識論文 "Deep Speech 2" である。 英語と中国語の両方を単一のエンドツーエンドのニューラルネットで認識するという内容で、 著者34人はアルファベット順に並び、 アモデイの名が先頭にある。

次の職場は Google Brain で、 本人のサイトは肩書を Senior Research Scientist としている。 2016年6月、 Google Brain の所属で、 Chris Olah と並ぶ筆頭著者(同等の貢献と注記)として "Concrete Problems in AI Safety" を発表した。 機械学習システムの「事故」 ── 設計の不備から生じる意図しない有害なふるまい ── を、 副作用の回避、 報酬ハッキングの回避など5つの研究課題に整理した論文である。

OpenAI の研究担当副社長

2016年に OpenAI に移った(OpenAI は2020年末の発表で在籍を「5年近く」と書いている)。 2017年6月の "Deep reinforcement learning from human preferences" は、 OpenAI と DeepMind の共同研究で、 人間が2つの行動の断片を見比べて選んだ好みから報酬を学習させる手法を示した。 本人のサイトは、 自身を人間のフィードバックによる強化学習(RLHF)の共同発明者と紹介している。

研究担当副社長(VP of Research)として、 GPT-2 と GPT-3 の開発を率いた。 2020年5月の GPT-3 論文 "Language Models are Few-Shot Learners" では、 31人の著者の最後に名がある。 OpenAI は2020年12月29日、 彼が GPT-2・GPT-3 をチームとともに築き、 Ilya Sutskever と並んで研究の方向を決めてきたと述べたうえで、 退社を発表した。 同じ発表は、 彼と数人の同僚が製品開発より研究に重きを置く新しいプロジェクトを計画しているとも伝えている。

Anthropic の CEO として

そのプロジェクトが2021年に設立された Anthropic である。 設立の経緯、 資金調達、 Claude の世代交代は組織の項と Claude の公開(2023年)にまとめてある。 ここでは経営者としての本人に固有の点だけを挙げる。

Anthropic は公益法人(Public Benefit Corporation)で、 取締役は株主と長期利益信託(Long-Term Benefit Trust)が選ぶ。 アモデイは創業以来 CEO を務め、 取締役会にも名を連ねる。 2023年には、 AI による絶滅のリスクの低減をパンデミックや核戦争と並ぶ世界的な優先課題とすべきだとする Center for AI Safety の声明に、 OpenAI の Sam Altman、 Google DeepMind の Demis Hassabis らとともに署名した(公開書簡の項)。

論考で示した立場

アモデイの考えは、 本人のサイトに置かれた長文の論考で追える。 いずれも Anthropic の CEO という立場で書かれたものであり、 予測や主張として読む必要がある。

時期題要点
2024年10月Machines of Loving Grace強力な AI の便益の側を論じる。 生物学と医学の21世紀分の進歩を数年で達成する "compressed 21st century" や、 "country of geniuses in a datacenter" という表現を用いた
2025年1月On DeepSeek and Export ControlsDeepSeek の登場は対中半導体輸出規制の根拠を弱めず、 むしろ強めると論じた
2025年4月The Urgency of Interpretability技術の進歩は止められないが、 その順序や展開のしかたは変えられるとし、 "We can’t stop the bus, but we can steer it." と書いた
2026年1月The Adolescence of Technology強力な AI のリスクにどう向き合うかを論じた

最初の論考の冒頭で、 本人は自分が悲観論者だと受け取られがちなことに触れ、 リスクに注力するのは良い未来との間に立ちはだかるのがリスクだけだからだと説明している。 安全性を事業の中心に置きながら最前線のモデルを開発するという Anthropic の方針は、 この立場の延長にある。

AI が雇用に与える影響についての発言は新卒採用の項(2025年)、 2026年の輸出規制をめぐる米政府との対立はAI モデルの輸出規制(2026年)で扱っている。

位置づけ

アモデイの経歴は、 安全性の研究者と能力の開発者を一人で兼ねている点に特徴がある。 "Concrete Problems in AI Safety" の筆頭著者であり、 同時に GPT-3 の開発を率いた人物でもある。 その二面性は Anthropic という会社の性格にそのまま引き継がれている。 安全性を掲げる企業が最前線の能力競争に加わることへの批判と、 防衛分野への提供をめぐる議論は組織の項にある。

関連する出来事

  1. Anthropic Claude 公開 ── 安全性主軸の対抗 LLM

よくある質問

Anthropic の CEO は誰か
共同創業者の Dario Amodei(ダリオ・アモデイ)です。2021年の創業以来 CEO を務め、取締役会にも名を連ねています。
ダリオ・アモデイは OpenAI で何をしていたのか
研究担当副社長(VP of Research)として、GPT-2 と GPT-3 の開発に携わり、Ilya Sutskever と並んで研究の方向を決める立場にありました。OpenAI は2020年12月29日、在籍5年近くでの退社を発表しています。
ダリオ・アモデイの学歴は
スタンフォード大学で学部を終え、プリンストン大学で博士号を取得しました。博士論文は神経回路の集団的なふるまいを電気生理学で測る研究です。その後スタンフォード大学医学部でポスドクを務めました。
Machines of Loving Grace とは何か
2024年10月に本人のサイトで公開した長文の論考です。強力な AI が実現すれば、生物学と医学で21世紀全体分の進歩を数年に圧縮できるという構想を示しました。

出典

  1. 一次資料Dario Amodei

    本人のサイトの経歴と論考一覧

    取得日: 2026-10-26

  2. 二次資料Dario Amodei — Hertz Foundation

    学歴・博士論文名・ポスドク・Hertz Fellow

    取得日: 2026-10-26

  3. 一次資料Organizational update from OpenAI — OpenAI, December 29, 2020

    取得日: 2026-10-26

  4. 一次資料Deep Speech 2: End-to-End Speech Recognition in English and Mandarin (arXiv:1512.02595)

    Baidu Research 在籍時の論文

    取得日: 2026-10-26

  5. 一次資料Concrete Problems in AI Safety (arXiv:1606.06565)

    取得日: 2026-10-26

  6. 一次資料Language Models are Few-Shot Learners (arXiv:2005.14165)

    取得日: 2026-10-26

  7. 一次資料Machines of Loving Grace — Dario Amodei, October 2024

    取得日: 2026-10-26

  8. 一次資料On DeepSeek and Export Controls — Dario Amodei, January 2025

    取得日: 2026-10-26

  9. 一次資料The Urgency of Interpretability — Dario Amodei, April 2025

    取得日: 2026-10-26

  10. 一次資料The Adolescence of Technology — Dario Amodei, January 2026

    取得日: 2026-10-26

  11. 一次資料Company — Anthropic

    公益法人(PBC)としての統治と取締役会

    取得日: 2026-10-26

  12. 一次資料Statement on AI Risk — Center for AI Safety

    取得日: 2026-10-26

  13. 三次資料Dario Amodei — Wikipedia

    生年

    取得日: 2026-10-26

最終更新:

共有