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イリヤ・サツケバー

深層学習の中核的な研究者。Toronto 大学で Geoffrey Hinton に師事し、2012年に Alex Krizhevsky とともに AlexNet を実装。Google Brain で seq2seq を発表した後、2015年に OpenAI を共同創業して research director、のち chief scientist を務めた。2023年11月には Sam Altman を解任した取締役会の一員で、2024年5月に退社。同年6月に Safe Superintelligence Inc. を共同創業し、2025年7月から同社 CEO。

2014年9月、Stanford 大学の深層学習パネルに登壇する Ilya Sutskever
出典Steve Jurvetson (Wikimedia Commons) · CC BY 2.0 · Commons で見る

プロフィール

生年
1986
存命
存命
在世
1986–
関連事象
02
名称
ENIlya SutskeverJAイリヤ・サツケバー

イリヤ・サツケバー(Ilya Sutskever、 1986年 ── )は、 現代の深層学習を成立させた三つの節目 ── AlexNet(2012年)、 sequence-to-sequence 学習(2014年)、 OpenAI の大規模言語モデル ── のいずれにも中心的に関与した研究者である。 2023年11月に Sam Altman を解任した取締役会の一員でもあり、 その後 OpenAI を去って独立の研究所を立ち上げた。

経歴

ソ連・ゴーリキー(現ロシア、 ニジニ・ノヴゴロド)に生まれ、 5歳で家族とイスラエルへ移住してエルサレムで育つ。 16歳でカナダへ移り、 Toronto 大学に編入。 同大で数学の学士(2005年)、 計算機科学の修士(2007年)、 同博士(2013年)を取得した。 指導教官は Geoffrey Hinton

AlexNet と seq2seq

2012年、 Hinton の研究室で Alex Krizhevsky とともに畳み込みニューラルネットワークを実装し、 ILSVRC 2012 を制した。 この結果が画像認識の主流を手作業の特徴量設計から深層学習へ移す。 直後に設立された DNNresearch は2013年に Google に買収され、 サツケバーは Google Brain の研究員となった。

Google Brain で Oriol Vinyals、 Quoc V. Le と発表した「Sequence to Sequence Learning with Neural Networks」(NIPS 2014)は、 可変長の入力列を LSTM で固定次元のベクトルに写し、 別の LSTM で出力列を復号する枠組みを与えた。 NeurIPS はこの論文を2024年の Test of Time 賞に選び、 「エンコーダ・デコーダ構造を定めた礎石であり、 のちの注意機構による改良、 そして今日の基盤モデル研究へ至る土台となった」と評している。

OpenAI(2015-2024年)

2015年12月11日の設立宣言で、 サツケバーは OpenAI の research director に置かれた(宣言の著者にも名を連ねている)。 のちに chief scientist となり、 GPT 系列の研究を統括する。

2023年7月5日、 OpenAI は Jan Leike との共同統括で Superalignment チームの発足を発表した。 「我々よりはるかに賢い AI システムを操縦し、 制御する」ための科学的・技術的な突破を4年で成し遂げることを目標に掲げ、 その時点で確保済みの計算資源の20%を充てるという内容である。 研究者としての立場と、 のちの行動を結ぶ線がここにある。

2023年11月

解任を発表した時点で OpenAI 取締役会に残ったのは、 chief scientist のサツケバーと、 独立取締役の Adam D'Angelo、 Tasha McCauley、 Helen Toner の4名である(Altman は取締役も退き、 Greg Brockman は議長職を降りた)。 5日間の推移は OpenAI 内紛(2023年)に譲る。 サツケバー自身は11月20日に「取締役会の行動に加わったことを深く後悔している。 OpenAI を害するつもりは決してなかった」と投稿し、 取締役会の総辞職を求める社員書簡にも署名した。 復帰の合意とともに取締役を退いている。

当事者による最も長い記録は、 2025年10月1日に Musk 対 Altman 訴訟で行われた約10時間の証言で、 365ページの筆記録が同年11月に公開された。 Decrypt の報道によれば、 サツケバーは Altman の指導ぶりを批判する52ページの文書を独立取締役たちに送っていたと証言している。 これは一方の当事者の宣誓供述であり、 事件全体の確定した説明ではない。

退社と Safe Superintelligence

2024年5月14日、 OpenAI はサツケバーの退社と、 後任 chief scientist に Jakub Pachocki を充てることを発表した。 Altman が社内に送った文書は「イリヤは間違いなく我々の世代で最も偉大な知性のひとりであり、 この分野の導き手であり、 親しい友人だ」と書いている。

同年6月19日、 サツケバーは Daniel Gross、 Daniel Levy とともに Safe Superintelligence Inc.(SSI) を設立した。 掲げたのは「ひとつの目標とひとつの製品 ── 安全な超知能」だけを追う研究所という構想で、 製品サイクルも管理コストも持たず、 短期の商業的圧力から安全性と進捗を切り離すと宣言している。 拠点はパロアルトとテルアビブ。 9月4日には NFDG・a16z・Sequoia・DST Global・SV Angel から10億ドルを調達した。 2025年7月3日、 Gross の離脱に伴いサツケバーが正式に CEO となり、 Levy が社長に就く。

2026年7月27日、 SSI と NVIDIA は長期の戦略提携を発表した。 NVIDIA の Vera Rubin プラットフォームへのアクセスにより SSI の計算資源を一桁引き上げるという内容で、 NVIDIA は SSI に出資もした ── 金額は両社とも公表していない(TechCrunch は関係者の話として「数十億ドル規模」とし、 Bloomberg が50億ドルと報じたことにも触れている)。 サツケバーのコメントは「規模を拡大するに値する研究が我々にはあり、 大きな NVIDIA の計算機を使えることでそれが可能になる」。 設立から2年、 一度も製品を出していない研究所が、 半導体メーカーの後ろ盾を得た形である。

受賞

  • 2024年 NeurIPS Test of Time 賞(seq2seq 論文、 Vinyals・Le と共同)
  • 2026年 NAS Award for the Industrial Application of Science(米国科学アカデミー、 この年の対象分野は人工知能)

影響

2024年12月13日、 バンクーバーで開かれた NeurIPS の受賞講演でサツケバーは「我々が知っている形の事前学習は、 疑いなく終わる」「我々はデータのピークに達した。 これ以上は増えない」と述べた。 インターネットは一つしかなく、 学習データは化石燃料と同じく有限だという議論である。 次世代のモデルは本当の意味でエージェント的になり、 かつ推論するようになる ── そして推論するほど挙動は予測しづらくなる、 と彼は続けた。 Hinton の系譜に連なりながら、 サツケバーはより明快な立場を取っている ── 能力の向上そのものより、 それを制御可能な形で作れるかどうかが技術的な本題である、 という立場である。 SSI がその主張を製品として実証できるかは、 2026年時点でまだ分かっていない。

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