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テスラ FSD ── 「完全自動運転」と名乗るレベル2

Tesla 車の助手席側のBピラーに埋め込まれた側方・前方カメラ。FSD はこうしたカメラの映像で周囲を認識する
出典Mliu92 (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 4.0 · Commons で見る ↗

メタデータ

日付
年代
2020s
Tier
T1
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19
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02
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テスラの FSD(Full Self-Driving、フルセルフドライビング)は、Tesla がオプションとして販売している運転支援ソフトウェアである。名前は「完全自動運転」だが、Tesla 自身が NHTSA に提出したリコール報告書で SAE レベル2 の運転支援機能と説明しており、運転者が常に監視し、必要なら操作を引き継ぐことが前提になっている。市街地の道路でハンドルを切り、交差点を曲がる「FSD Beta」は、2020年10月20日の夜(北米時間)に、少数の所有者へ初めて配信された。2024年3月末に名前は「FSD (Supervised)」(監視付き)に変わり、2026年には欧州でも承認が始まった。日本では2026年春の時点でまだ提供されておらず、Tesla 日本法人は2026年中の実装を目指すとしていた。

レベル2の運転支援そのものの始まりは、2015年に配信されたオートパイロットのページにある。このページは、その上に積まれた「FSD」という名前の機能と、それをめぐる規制の動きを扱う。

2016年 ── 「完全自動運転のハードウェア」と先行販売

Tesla は2016年10月19日のブログで、この日から生産するすべての車(Model 3 を含む)に、人間の運転者よりはるかに高い安全水準での完全自動運転に必要なハードウェアを積むと発表した。周囲360度を最大250メートル先まで見る8台のカメラ、12個の超音波センサー、前方レーダー、前世代の40倍超の計算能力を持ち、Tesla が開発したニューラルネットワークで映像・超音波・レーダーを処理する車載コンピューターという構成である。発表は同時に、新しいハードウェアの機能を有効にする前に、数百万マイルの実走行で調整すると書いていた。

Electrek によると、Tesla はこの第2世代ハードウェアを積み始めた2016年から、将来の完全自動運転を約束する「Full Self-Driving Capability」というパッケージを先行販売した。2018年時点では、5,000ドルの Enhanced Autopilot に加えて、注文時に3,000ドルで買える仕組みだった。買った時点では何も動かない機能に代金を払うという売り方が、後の論争の出発点になった。

2020年10月 ── FSD Beta の配信

2020年10月21日付の Drive Tesla の記事によると、Tesla は前夜、早期アクセスプログラムの参加者に「FSD Beta」を配信した。ソフトウェアの版は 2020.40.8.10 で、配信に添えられた注意書きは、常に注意を払い、いつでも操作を引き継げるようにし、油断しないよう求めていた。参加者は通常は秘密保持契約の対象だが、このときは一部の所有者に SNS への投稿が認められた。

その後の広がりは次のとおりである。

時期出来事
2016年10月19日全車に完全自動運転用のハードウェアを搭載すると発表
2020年10月20日早期アクセスの参加者に FSD Beta を配信(北米)
2022年10月第3四半期の資料で、北米の FSD Beta 利用者は約16万人
2023年1月25日第4四半期の資料で、米国とカナダの利用者は約40万人。購入者・契約者のほぼ全員に配信したと説明
2023年2月15日NHTSA にリコール 23V-085 を届け出る(362,758台)
2024年3月末v12.3.3 で名称から「Beta」を外し、「FSD (Supervised)」に
2025年2月25日中国で、米国の FSD に近い運転支援機能の配信を始める(機能は限定的)
2025年8月20日日本で FSD (Supervised) の試験走行を始める
2026年2月14日米国で買い切り(8,000ドル)の販売を終え、以後は月額契約のみに
2026年4月オランダの RDW が欧州で初めて承認

日本は最初の配信に入っておらず、2026年4月の報道の時点でも、日本の一般の利用者には提供されていなかった。

2023年のリコール ── Tesla 自身が書いた「レベル2」

2023年2月15日、Tesla は NHTSA にリコール 23V-085 を届け出た。対象は FSD Beta を入れた、または入れる予定の2016〜2023年型 Model S などの362,758台である。報告書は冒頭で、FSD Beta は SAE レベル2の運転支援機能であり、作動中も運転者が車の操作に責任を負い、常に監視して介入しなければならないと書いている。

不具合とされたのは、作動中に交通法規や慣習に反しうる4つの場面だった。黄色信号が長く続いた交差点の通過、一時停止の標識での停止時間、制限速度が変わる区間での速度調整、右左折専用の車線から直進するための車線変更である。対策は無線のソフトウェア更新で行われた。

その後も NHTSA の調査は続いた。2024年10月17日には、日差しのまぶしさ、霧、舞い上がる砂ぼこりで視界が悪くなった場面での衝突について、約241万台を対象に予備評価を始めた。端緒は4件の衝突で、うち1件では歩行者が死亡している。2025年10月7日には、FSD 作動中の信号無視や対向車線への進入について、約288万台を対象とする予備評価を始めた。NHTSA の文書は、Tesla 自身が FSD を、常に注意を払う運転者を必要とするレベル2の部分自動化と位置づけていると記している。

名前をめぐる攻防

名前は規制当局との争点であり続けた。カリフォルニア州 DMV は2025年12月16日、「Full Self-Driving Capability」と「autopilot」という言葉を使った宣伝は誤解を招き、州法に違反すると判断した。DMV によると、Tesla はこの手続きの間に「Full Self-Driving Capability」をやめ、運転者の監視が必要だと示す「Full Self-Driving (Supervised)」に切り替えている。オートパイロットの名称の扱いはオートパイロットのページにある。

欧州でも同じ論点が繰り返された。electrive によると、オランダの RDW は2026年4月に FSD (Supervised) を承認し、リトアニア、エストニア、デンマーク、ベルギー、スロベニア、チェコ、クロアチア、スロバキアがそれを認めた。欧州以外では、北米に加えてオーストラリア、ニュージーランド、韓国で承認されている。ただしこれは EU の暫定的な型式認可で、EU 全体での承認の採決は延期が続き、12月に持ち越された。ドイツの交通相は FSD という名前を誤解を招くと述べ、Tesla は欧州で名称を「Tesla Assisted Driving」に改めた。同省は、運転のすべてを引き受けるシステムではなく、運転者は常に注意を払わなければならないと説明している。

中国では、Tesla が2025年2月25日に米国の FSD に近い機能の配信を始めたが、CnEVPost は、その後の進展は乏しいと伝えた。Musk CEO は2026年1月に2月の承認を見込むと述べたが、国営の China Daily が政府筋の話としてこれを否定した。Tesla は2026年4月の決算で、中国での導入をできるだけ早く進めると述べるにとどまった。

日本では、Car Watch によると Tesla 日本法人が2025年8月20日に Model 3 で試験走行を始め、提供時期は開発状況と規制当局の許認可に依存するとした。ITmedia は2026年4月、日本経済新聞の報道として、同社の橋本理智社長が2026年中の実装を目指すと述べたと伝えている。

社会への影響 ── 誰が試験をしているのか

FSD の売り方は、自動車の安全の確かめ方を変えた。Waymo のような完全無人の配車は、事業者が自社の車と従業員で試験を重ね、当局の許可を得てから一般の人を乗せる。FSD は、代金を払った一般の所有者が公道で使い、運転者として責任を負う。Tesla はこれを走行データの強みとし、CnEVPost によると FSD の累計走行距離は93.8億マイルを超えたと説明しているが、これは同社の数字である。Car Watch によれば、Tesla は v13 で従来のルールベースのアルゴリズムを廃し、600万台超の車から集めた10億マイル超の走行データで複雑な場面を学ばせていると説明している。

一方で、他の運転者や歩行者は、試験に同意したわけではない。NHTSA の調査が扱うのは、まさに FSD の車の周りにいた人々の安全である。購入者の側にも、約束された機能が届くのかという問題がある。CarNewsChina によれば、中国では FSD パッケージが64,000元の買い切りで売られているが、Drive Tesla Canada は、中国の所有者は北米と同じ v14 の機能をまだ使えないと伝えている。米国では Musk CEO の予告どおり2026年2月14日を最後に買い切りの販売が終わり、月額99ドルの契約だけになった。TFLcar によれば、Tesla の CFO は FSD に代金を払っている顧客を保有台数の約12%と説明している。Tesla の2026年第2四半期の決算資料では、有効な FSD の契約は148万件(買い切りと月額の合計)に増え、北米で納車された新車の55%超が FSD の契約つきだった。

Musk CEO は2026年4月、運転者の監視が要らない FSD を2026年第4四半期から段階的に顧客の車に配ると述べた(CnEVPost)。過去の期限が何度も守られなかったことは、テスラのロボタクシーのページにまとめている。名前が約束するものと、規制当局が認める実態の差は、2016年から10年たっても埋まっていない。

自動運転の流れは自動運転の年表に、自動化の段階の定義は SAE の自動運転レベルのページにある。Elon Musk の人物ページも参照。

よくある質問

テスラの FSD は自動運転ですか。
いいえ。Tesla 自身が2023年2月のリコール報告書で、FSD Beta を SAE レベル2の運転支援機能と書いており、作動中も運転者が責任を負い、常に監視して介入しなければなりません。2024年3月末に名称は FSD (Supervised)(監視付き)に変わり、欧州ではドイツの求めで Tesla Assisted Driving に改められました。
FSD はいつから使えるようになったのですか。
市街地で操舵する FSD Beta は、2020年10月20日の夜(北米時間)に早期アクセスプログラムの参加者へ初めて配信されました。2023年1月の時点で、米国とカナダの約40万人に広がっています。オプション自体は、2016年から将来の完全自動運転を約束するパッケージとして先行販売されていました。
FSD は日本で使えますか。
2026年春の時点では、日本の一般の利用者には提供されていませんでした。Tesla 日本法人は2025年8月20日に Model 3 で試験走行を始め、提供時期は開発状況と規制当局の許認可に依存するとしています。報道によると、同社の社長は2026年中の実装を目指すと述べました。
FSD のリコールとは何ですか。
Tesla が2023年2月15日に NHTSA に届け出たリコール 23V-085 で、FSD Beta を入れた362,758台が対象です。黄色信号での交差点の通過、一時停止での停止時間、速度制限の変わる区間、右左折専用車線からの直進といった場面で、交通法規に反するおそれがあるとして、無線のソフトウェア更新で対策しました。

出典

  1. 一次資料Part 573 Safety Recall Report 23V-085 — Tesla, Feb 15, 2023

    対象362,758台、FSD Beta は SAE レベル2の運転支援機能という Tesla 自身の記述、4つの場面、無線更新による対策

    取得日: 2026-10-18

  2. 一次資料Tesla Q2 2026 Update (Exhibit 99.1 to Form 8-K, Jul 22, 2026) — Tesla, Inc., SEC EDGAR

    有効な FSD の契約148万件、北米の新車の55%超が FSD 契約つき、オランダ・リトアニア・エストニア・デンマーク・ベルギーでの承認

    取得日: 2026-10-18

  3. 一次資料All Tesla Cars Being Produced Now Have Full Self-Driving Hardware — Tesla, Oct 19, 2016 (archived)

    8台のカメラ・12個の超音波センサー・前方レーダー・40倍超の計算能力、数百万マイルで調整してから機能を有効にするという説明

    取得日: 2026-10-18

  4. 一次資料ODI Resume PE24031 (opened Oct 17, 2024) — NHTSA

    視界不良(日差し・霧・砂ぼこり)での衝突4件、うち歩行者死亡1件、対象約241万台

    取得日: 2026-10-18

  5. 一次資料ODI Resume PE25012 (opened Oct 7, 2025) — NHTSA

    信号無視と対向車線への進入、対象約288万台、Tesla 自身がレベル2と位置づけていること

    取得日: 2026-10-18

  6. 二次資料First look at Tesla's new Full Self-Driving Beta [Release Notes and Video] — Drive Tesla, Oct 21, 2020

    前夜の配信、早期アクセスプログラム、版 2020.40.8.10、注意書き

    取得日: 2026-10-18

  7. 二次資料From "FSD (Supervised)" to "Tesla Assisted Driving" – a new name aims to secure EU approval — electrive, Oct 12, 2026

    承認国の一覧、EU の暫定型式認可、12月への採決延期、ドイツ交通省の名称についての発言

    取得日: 2026-10-18

  8. 三次資料Tesla Autopilot — Wikipedia

    取得日: 2026-10-18

最終更新:

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