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SAE J3016 ── 自動運転レベル0〜5の定義

自動運転レベルとは、米国の技術者団体 SAE International が定めた推奨基準 SAE J3016 による、運転の自動化の6段階(レベル0〜5)のことである。J3016 の初版は2014年1月16日に発行された。レベル0は自動化なし、レベル5はどんな条件でもシステムが運転する完全な自動化で、レベル2までは人間が運転し周囲を監視する「運転支援」、レベル3以上は条件の範囲内でシステムが運転そのものを担う「自動運転」と区切られる。日本政府は2017年5月の「官民ITS構想・ロードマップ2017」でこの定義を採用し、国土交通省や警察庁の制度もこのレベルを前提に組み立てられている。
レベル0〜5の一覧
日本語の名称と概要は、内閣府の『平成30年版交通安全白書』が J3016 の定義として示した表による。「監視・対応の主体」は、安全運転に係る監視と対応を誰が担うかを示す。右端は国土交通省が定めた車両の呼称で、レベル1・2の「運転支援車」は2018年度、レベル3〜5は2020年12月に発表された。
| レベル | SAE の名称 | 日本語の名称 | 概要 | 監視・対応の主体 | 車両の呼称(国交省) |
|---|---|---|---|---|---|
| 0 | No Driving Automation | 運転自動化なし | 運転者が全ての運転タスクを実施 | 運転者 | ― |
| 1 | Driver Assistance | 運転支援 | システムが前後・左右のいずれかの車両制御に係る運転タスクのサブタスクを実施 | 運転者 | 運転支援車 |
| 2 | Partial Driving Automation | 部分運転自動化 | システムが前後・左右の両方の車両制御に係る運転タスクのサブタスクを実施 | 運転者 | 運転支援車 |
| 3 | Conditional Driving Automation | 条件付運転自動化 | システムが全ての運転タスクを実施(限定領域内) | システム(作動継続が困難な場合は運転者) | 条件付自動運転車(限定領域) |
| 4 | High Driving Automation | 高度運転自動化 | システムが全ての運転タスクを実施(限定領域内) | システム | 自動運転車(限定領域) |
| 5 | Full Driving Automation | 完全運転自動化 | システムが全ての運転タスクを実施(限定領域内ではない) | システム | 完全自動運転車 |
白書は、ここでいう「領域」は必ずしも地理的な範囲ではなく、環境・交通状況・速度・時間なども含むと注記している。J3016 ではこれを ODD(Operational Design Domain、運行設計領域)と呼ぶ。レベル3と4の違いは、条件を外れそうなときに誰が対処するかにある。レベル3ではシステムの要請に応じて運転者が運転を引き継がなければならず、レベル4ではシステム自身が安全に止まるところまで受け持つ。
2014年の J3016 ── 何を定めたのか
自動化の段階を区切る試みは J3016 が最初ではない。米運輸省道路交通安全局(NHTSA)は2013年5月の「自動運転車に関する予備的政策声明」で、自動化なし(レベル0)から完全な自動運転(レベル4)までの5段階を示していた。
SAE の路上自動運転(ORAD)委員会がまとめた J3016 の初版(2014年1月16日発行、12ページ)は、「Information Report(情報報告書)」という位置づけで、自動化なしから完全な自動化までの区分を示した。ただし詳しい定義を与えたのは上位3段階(条件付き・高度・完全)だけで、下位の段階は全体の範囲を示す参照点として説明するにとどめている。
J3016 はその後3回改訂されている。
| 版 | 発行日 | 主な点 |
|---|---|---|
| J3016_201401 | 2014年1月16日 | 初版(12ページ) |
| J3016_201609 | 2016年9月30日 | 改訂 |
| J3016_201806 | 2018年6月15日 | 改訂 |
| J3016_202104 | 2021年4月30日 | ISO と共同で改訂(41ページ)。レベル3と4の違いの明確化、遠隔支援と遠隔運転の定義、レベル1・2を「運転者支援システム」と呼ぶことなど |
2021年版の改訂理由によると、SAE の委員会と ISO の TC204/WG14 が2018年に共同作業部会をつくり、SAE の発表では9か国の代表が加わった。
決定的だったのは規制当局の採用である。米運輸省は2016年9月の「連邦自動運転車政策」で SAE の定義を採用し、SAE の定義は「who does what, when(誰が、いつ、何をするか)」で車両を分けると説明した。そのうえで、周囲の監視を主に担うのが人間かシステムかによって、レベル0〜2と3〜5を区別している。
責任はどこにあるのか
J3016 が分けているのは、運転という作業の「役割」である。2021年版は、各レベルを、人間の利用者・運転自動化システム・それ以外の車両装置の3者が運転タスクと、その代わりの対応(フォールバック)でそれぞれ何を担うかで定義すると書く。役割は設計上期待されるものであって、実際の振る舞いではない。たとえばレベル1のアダプティブクルーズコントロールを使いながら前を見ていない運転者も、役割の上では運転者のままである。自動ブレーキ(AEB)や横滑り防止装置(ESC)、車線逸脱を防ぐ一時的な操舵補助のような安全装置は、運転を継続的に担わないため区分の外に置かれる。
SAE は2021年版で、この文書は運転自動化システムに仕様や要件を課すものではないとも明記している。レベルは「どれだけ安全か」の格付けではなく、誰が運転しているかの記述である。
一方、事故の損害を誰が償うかは各国の法律が決める。国土交通省の「自動運転における損害賠償責任に関する研究会」は2018年3月20日の報告書で、レベル0〜4の車が混在する当面の「過渡期」には、自動車損害賠償保障法(自賠法)の運行供用者責任を維持し、保険会社などが自動車メーカーに求償しやすくする仕組みを検討するのが適当だとした。ハッキングによる事故は、保有者が必要なセキュリティ対策を怠った場合などを除き、盗難車と同じく政府保障事業で対応するとしている。
運転者の義務は道路交通法が定める。レベル3を公道で使えるようにした2019年の法改正はホンダ レジェンドのページに、運転者のいないレベル4を許可制にした2023年の改正はレベル4解禁のページにある。
日本はどう取り入れたか
日本政府の自動運転の工程表「官民ITS構想・ロードマップ」は2014年に初めて策定され、毎年改訂されてきた。国土交通省の2017年の資料によると、2016年5月版のロードマップは独自のレベル1〜4を使っており、レベル4は「完全自動走行」だった。米運輸省が2016年9月に SAE の区分に合わせたことを受け、日本でも同じ用語と分け方にする改正案が示され、2017年5月の「官民ITS構想・ロードマップ2017」で J3016 の定義が採用された。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 2013年5月 | NHTSA がレベル0〜4の5段階を示す |
| 2014年1月16日 | SAE J3016 初版 |
| 2016年9月 | 米運輸省が SAE の定義を採用 |
| 2017年5月 | 官民ITS構想・ロードマップ2017 で日本も採用 |
| 2020年11月11日 | 国交省がホンダ レジェンドをレベル3として型式指定 |
| 2020年12月 | 国交省がレベル3〜5の車両の呼称を発表 |
| 2023年4月1日 | レベル4の許可制度を定めた改正道路交通法が施行 |
政府目標はこの区分で書かれた。ロードマップ2017は、高速道路での「自動パイロット」(レベル3)の市場化を2020年目途、限定地域での無人自動運転移動サービスを2020年まで、高速道路での完全自動運転(レベル4)を2025年目途とした。
レベル分けへの批判と社会への影響
共通の言葉ができたことの効果は大きい。SAE は2021年版で、レベルを標準化する目的として、運転者の役割を明確にすること、法律・政策・規制・規格の対象範囲を決めること、仕様の枠組みになることなどを挙げている。
ただし、数字の段階は一般の利用者には伝わりにくい。運転者の監視が前提のレベル2の機能に自動運転を思わせる名前を付けた例として、Tesla のオートパイロットをめぐる事故調査や規制当局の判断がある。
業界の側からの異論もある。運転支援システムを手がける Mobileye の Amnon Shashua らは2023年2月、SAE の区分は製品を説明する言葉として適していないとして、目と手を離せるかどうかと運転者の有無で分ける4分類(目は離さず手も添える、目は離さず手は離せる、目も手も離せる、運転者なし)を提案した。彼らは、手放しで走れる監視型の運転支援が SAE の区分に収まる場所を持たず、誤ってレベル3〜4に分類されがちだと指摘し、レベル3と4の区別は不要だとも主張している。Mobileye は運転支援システムを自動車メーカーに供給する企業であり、これは同社の立場からの提案である。
それでも、どこまでを人が担い、どこからを機械が担うかという J3016 の問いは、自動運転をめぐる社会の議論の出発点になり続けている。各レベルの具体例は、Waymo の完全無人タクシーやメルセデス・ベンツの DRIVE PILOT のページにある。
よくある質問
- 自動運転レベルとは何ですか。
- 米国の技術者団体 SAE International の推奨基準 J3016 が定める、運転の自動化の6段階です。レベル0は自動化なし、1は運転支援、2は部分運転自動化、3は条件付運転自動化、4は高度運転自動化、5は完全運転自動化です。初版は2014年1月16日に発行されました。
- レベル2とレベル3の違いは何ですか。
- レベル2では運転者が常に周囲を監視し、運転の主体であり続けます。レベル3では限定された条件の中でシステムが全ての運転タスクを担い、条件を外れるときなどにシステムの要請に応じて運転者が運転を引き継ぎます。
- レベル3とレベル4の違いは何ですか。
- どちらも限定された条件の中でシステムが運転しますが、レベル3は作動の継続が難しくなると運転者に引き継ぎ、レベル4は運転者に頼らずシステム自身が安全に停止させます。そのためレベル4では運転者が要りません。
- 日本はいつから SAE のレベルを使っているのですか。
- 2017年5月の官民ITS構想・ロードマップ2017で SAE J3016 の定義を採用しました。それまでの2016年版のロードマップは独自のレベル1〜4を使っていました。米運輸省が2016年9月に SAE の定義を採用したことを受けた見直しです。
出典
sae.org は JavaScript 必須で本文が取得できないため保存版。初版の発行日2014年1月16日、12ページ、ORAD 委員会、上位3段階のみを詳しく定義した範囲、改訂履歴
6段階の名称、3者の役割による定義、安全装置の除外、要件を課さないこと、ISO TC204/WG14 との共同作業部会、標準化の目的
2014年の初版以来の位置づけ、9か国の代表、2021年版の主な変更点
一次資料特集 先端技術を活用した交通安全の取組(平成30年版交通安全白書)— 内閣府
J3016 の定義を採用したこと、レベル0〜5の日本語名称・概要・監視主体の表、「領域」の注記、ロードマップの策定経緯と市場化期待時期
一次資料自動運転レベル分けの改正案について(第2回 自動運転における損害賠償責任に関する研究会 資料1-1)— 国土交通省自動車局
2016年5月版ロードマップの独自レベル1〜4と、SAE(2016年9月)に合わせる改正案
一次資料「自動運転における損害賠償責任に関する研究会」の報告書を公表します!— 国土交通省, 2018年3月20日
報告書(概要): 過渡期の運行供用者責任の維持、求償の仕組み、ハッキング時の政府保障事業
一次資料Federal Automated Vehicles Policy — U.S. Department of Transportation, September 2016 (archived)
SAE の定義の採用、「who does what, when」、レベル0〜2と3〜5の区別
二次資料国交省、自動運転車両の呼称を策定 レベル3は「条件付自動運転車(限定領域)」に — Car Watch, 2020年12月11日
レベル3〜5の呼称と、レベル1・2の「運転支援車」(2018年度策定)
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