2022年10月27日T1

Elon Musk が Twitter を440億ドルで買収

4月に買収提案、 7月に Musk 側が撤回を試み、 訴訟へ。 結局10月27日に取引が完了。 取得額440億ドル。 完了直後、 Musk は CEO・CFO・法務トップを即日解任、 1週間で従業員の約半数(約3700名)をレイオフ、 認証バッジを月額課金制(Twitter Blue)に転換、 コンテンツモデレーション部門を縮小。 表現の自由を掲げる Musk の方針で、 永久凍結されていた Donald Trump 等のアカウントを復活。 2023年7月にはサービス名を「X」に改名。 ソーシャルメディアの最大手の一つが、 大富豪個人の所有物として運営される異例の構造に。

Twitter を買収した Elon Musk
出典Gage Skidmore (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 4.0 · Commons で見る

メタデータ

日付
2022年10月27日
年代
2020s
Tier
T1
出典数
06
関連項目
00

Elon Musk が Twitter を440億ドルで買収 ── ソーシャルメディアが個人所有物になった日

2022年10月27日、 Elon Musk は Twitter Inc. の買収を 440億ドル(1株54.20ドル) で完了させた。 サンフランシスコ本社に入った Musk は、 同日夜のうちに CEO の Parag Agrawal、 CFO の Ned Segal、 法務責任者 Vijaya Gadde、 ゼネラルカウンセル Sean Edgett を即時解任した。 この4人には、 買収完了に伴う未行使ストックオプションを含めて総額約2億ドルの報酬支払い義務があり、 Musk は支払い拒否のために「正当事由解雇(for cause)」を主張した ── 後に解雇された側は訴訟を提起した。

4月から10月までの混乱した買収プロセス

2022年4月14日、 Musk は1株54.20ドル(時価から38%プレミアム) での全額買収提案を公開。 4月25日に Twitter 取締役会が受諾。 ところが7月8日、 Musk 側が「ボット口座の比率が公表値と異なる」として一方的に契約破棄を通告した。 Twitter はデラウェア州衡平法裁判所に 特定履行(specific performance) を求めて提訴。 公判直前の10月初旬、 Musk は撤回を撤回し、 当初条件のまま取引完了に応じた。 半年に及ぶこの茶番劇で、 株価操作疑惑と SEC 調査が後に続いた。

1週間で半数解雇 ── 11月4日のレイオフ

完了から1週間後の 2022年11月4日、 Twitter は全社員約7500人のうち 約3700人(およそ半数) をレイオフ通知した。 通知はメール一通、 当日朝にオフィス入館証が無効化されるという手順だった。 倫理 AI、 マーケティング、 検索品質、 パブリックポリシー、 ウェルネス、 キュレーション部門は事実上全滅。 信頼・安全(Trust & Safety) 部門の15%が削減され、 残った頭の Yoel Roth も11月10日に辞任した。 数十人が「業務に必要だった」として数日後に呼び戻された。 WARN 法(大量解雇60日前通知義務)違反で集団訴訟が複数州で進行した。

コンテンツモデレーションの解体と Trump 復活

Musk は「言論の自由絶対主義者」を自称した。 永久凍結されていた Donald Trump のアカウントを11月19日に Twitter 投票(賛成51.8%) を根拠に復元。 続いて Jordan Peterson、 Kanye West、 Babylon Bee 等の凍結も解除。 2023年に入ると COVID-19 関連の誤情報ポリシーを廃止し、 ロシア政府系メディアの「state-affiliated media」ラベルも一時撤去した。 NPR と BBC には逆に「state-affiliated」ラベルを貼って国営放送と並列に扱った(後者は批判を受けて修正)。

認証バッジは大改造された。 従来は無料の本人確認制度だったが、 2022年11月から月8ドル(Twitter Blue) の有料化。 開始直後にイーライリリーやネスレを装った認証アカウントが偽情報を投稿、 イーライリリーは「インスリン無料化」の偽ツイートを受けて時価総額を一時数十億ドル失った。 一時停止と再設計を経て2023年に本格再開した。

広告主の離脱と収益崩壊

Musk の方針転換と発言は広告主を直撃した。 GM、 Volkswagen、 Pfizer、 United Airlines、 IPG、 Omnicom などが2022年末までに出稿停止または見直しを発表。 2023年11月、 Musk 自身が反ユダヤ陰謀論的な投稿に「You have said the actual truth」と返信したことで Disney、 Apple、 IBM、 Comcast、 Warner Bros. Discovery が一斉に撤退。 同月29日、 DealBook Summit のステージで Musk は離脱した広告主に向けて「Go fuck yourself」と発言し、 関係修復は事実上不可能になった。

旧 Twitter の2021年広告収入は約45億ドル。 X の2024年広告収入は推定で 約20〜25億ドル と、 ほぼ半減した。

「X」への改名と xAI 統合

2023年7月23日、 Musk はサンフランシスコ本社の屋上にあった青い鳥のロゴを撤去させ、 サービス名を「X」に変更した。 17年使われたブランド資産は一夜で消えた。 ドメイン x.com(Musk が1999年に立ち上げ PayPal の前身となった会社の名残) に統合された。

2025年3月28日、 Musk の AI 企業 xAI が X を 株式交換で買収 すると発表。 X の評価額は330億ドル(負債120億ドル控除後、 グロス450億ドル)、 xAI は800億ドル、 統合体は1130億ドルとされた。 440億ドルで買った会社が2年半で帳簿上330億ドルになった ── 数字上は約25%の毀損だが、 銀行団が抱える買収融資130億ドルの最終損失処理を兼ねた取引でもあった。 X 上の投稿は xAI のチャットボット Grok の学習データとなり、 タイムラインには Grok 統合が組み込まれた。

何が起きたか

Musk の Twitter 買収は、 単一個人の意思決定が 2.5億人規模の公共発話インフラ を即時に書き換えられることを示した。 規制も上場企業ガバナンスも、 ボードと株主への報告義務もない非公開会社の所有者は、 数日でモデレーションを解体し、 数日で従業員を解雇し、 数日でブランドを廃棄できる。

同時にこの買収は、 ソーシャルメディアという業態の経済構造の脆さも露呈させた。 広告依存の収益モデルは、 経営者個人への信頼が崩れた瞬間に半減する。 サブスクリプション転換(X Premium) は穴を埋めきれず、 Musk の支援する Trump 政権発足(2025年1月) 後でようやく一部広告主が戻り始めたものの、 旧 Twitter 水準には回復していない。

そしてもう一つ ── Twitter は2006年以来「マイクロブログ」という形式の発明者であり、 ジャーナリズム・革命運動(アラブの春) ・選挙キャンペーン・スポーツ実況といった、 ある種の公共圏的役割を果たしてきた。 その公共圏が一個人の資産となった瞬間として、 2022年10月27日は記録される。

出典

  1. 二次資料Acquisition of Twitter by Elon Musk — Wikipedia

    取得日: 2026-05-24

  2. 二次資料X Corp. — Wikipedia

    取得日: 2026-05-24

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