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ホンダ レジェンド ── 型式指定を受けたレベル3の市販車

自動運転レベル3(条件付運転自動化)とは、高速道路の渋滞時など限られた条件の中でシステムが運転を担い、条件を外れるときには運転者がシステムの要請に応じて運転を引き継ぐ段階である。日本で最初にこれを市販車として実現したのが、ホンダが2021年3月5日に発売した 「LEGEND Hybrid EX・Honda SENSING Elite」 だ。発表は前日の3月4日で、販売は日本国内のリースに限られ、計画台数は100台、メーカー希望小売価格は1,100万円(消費税込み)だった。搭載した渋滞運転機能「トラフィックジャムパイロット」は、2020年11月11日に国土交通省から自動運行装置として型式指定を受けており、国交省はこれを、自動運行装置を備えた車両としては世界初の型式指定と発表している。
レベルの定義そのものは SAE J3016 のページにある。ここでは、レベル3が日本の公道で使えるようになるまでの法改正と、レジェンドが実際に何をする車だったのかをまとめる。
レベル3を可能にした2019年の法改正
レベル3を市販するには、車の安全基準と運転者のルールの両方を変える必要があった。2019年5月の国会で、道路運送車両法と道路交通法の改正がそれぞれ成立し、どちらも自動運転に関する部分は2020年4月に施行された。
| 法律 | 主な内容 |
|---|---|
| 改正道路運送車両法(令和元年法律第14号) | 「自動運行装置」を保安基準の対象装置に追加。走行環境条件の外では作動しないこと、条件を外れる前に引き継ぎの警報を出し、引き継がれなければ安全に停止すること、ドライバーモニタリング、サイバーセキュリティ対策、作動状態記録装置(6か月分または2,500回分)などを求める |
| 改正道路交通法(令和元年法律第20号) | 自動運行装置を使って車を走らせることも「運転」に含めると規定。国土交通大臣が付ける使用条件を満たさないときは使用を禁止。条件外になったら直ちに適切に対処できる状態でいるなどの場合に限り、携帯電話の使用等の禁止規定を適用しない。作動状態の記録・保存を義務づけ |
警察庁は、この改正で道路運送車両法の改正と相まって、SAE レベル3の自動運転車が安全に道路を走れるよう規定が整備されたと説明している。国際的にも、国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で2020年6月に自動運行装置の国際基準が成立した。国交省は、日本が専門家会議などで議論を主導したとしている。
レジェンドのトラフィックジャムパイロット
国交省が型式指定の際に示した主な走行環境条件は次のとおりである。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 道路 | 高速自動車国道、都市高速道路と、それに接続する自動車専用道路(一部区間を除く) |
| 除外 | 中央分離帯などで対向車線と構造的に分かれていない区間、急カーブ、サービスエリア・パーキングエリア、料金所など |
| 天候 | 強い雨や降雪、濃霧、強い逆光などで周囲の車両や走路を認識できない状況でないこと |
| 交通 | 自車線が渋滞か渋滞に近い混雑で、前後の車が車線の中央付近を走っていること |
| 速度 | 作動開始前は約30km/h未満、作動開始後は約50km/h以下 |
| その他 | 高精度地図と衛星測位(GNSS)の情報が正しく得られること、運転者が正しい姿勢でシートベルトを着けていること |
ホンダの説明によると、トラフィックジャムパイロットは渋滞に遭遇するとシステムが周辺を監視しながらアクセル・ブレーキ・ステアリングを操作し、先行車に合わせて同じ車線内で走行・停車・再発進する。その間、運転者はナビ画面でテレビや DVD を見たり、目的地を検索したりできる。条件を外れるときは表示灯や音で操作を求め、運転者が応じ続けなければ、ハザードランプとホーンで周囲に知らせながら減速・停車を支援する。路肩がある場合は左側の車線へ寄せる。
ホンダは開発にあたり、約1,000万通りのシミュレーションと、試験車両による高速道路約130万kmの実証走行を重ねたとしている。これはホンダ自身の説明である。車には自動運行装置の搭載車であることを示すブルーのアクセサリーランプが付けられ、国交省は自動運転車であることを示すステッカーを車体後部に貼るようメーカーに要請した。
「世界初」が意味する範囲
国交省の発表は「自動運行装置を備えた車両としては世界初の型式指定」という限定付きの表現である。ドイツでは2017年に道路交通法がレベル3に向けて改められていたが、メルセデス・ベンツが国連の基準 UN-R157 に基づくドイツ当局のシステム認可を得たのは2021年12月で、ドイツで注文を受け付け始めたのは2022年5月だった(DRIVE PILOT のページ)。レジェンドはそれより早いが、日本国内だけでの、100台限定のリース販売だった。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2019年5月 | 改正道路運送車両法・改正道路交通法が成立 |
| 2020年4月1日 | 改正道路運送車両法と自動運行装置の保安基準を施行(改正道路交通法の自動運転関係も同月施行) |
| 2020年11月11日 | 国交省がレジェンドを自動運行装置付きの車両として型式指定 |
| 2021年3月4日 | ホンダが発表 |
| 2021年3月5日 | 日本でリース販売を開始(100台) |
その後 ── 生産終了とロボタクシー計画
レジェンドの量産は長く続かなかった。Car Watch の2021年6月の報道によると、ホンダは狭山完成車工場の閉鎖に伴い、レジェンドを含む3車種の生産を2021年内に終えると決め、3月末に販売店に通知していた。工場の集約は2017年に公表済みの方針である。
ホンダはその後、自家用車のレベル3ではなく運転者のいない移動サービスに目を向けた。2023年10月19日には GM、GM 傘下の Cruise と、東京都心で2026年初頭に無人のライドヘイルサービスを始めることを目指して合弁会社の設立を検討する覚書を結んだと発表した。運転席もハンドルもない専用車 Cruise Origin を数十台で始め、500台に広げる計画だった。しかし GM は2024年12月10日、Cruise のロボタクシー開発への資金提供をやめると発表した。Cruise の経緯はCruise の運行停止のページにある。東京では現在、別の陣営が2027年中の無人タクシーを目指している(Waymo のページ)。
社会への影響
国交省は型式指定の発表で、自動運転車には交通事故の削減、高齢者などの移動手段の確保、物流の生産性向上といった社会課題の解決への役割が期待されていると書いた。レジェンドが示したのは、その手前の段階である。渋滞の高速道路という限られた場面で、運転者を周囲の監視からはずし、疲労やストレスを減らすことだった。
一方で、レベル3は運転者を運転から完全に解放するわけではない。警察庁は、使用条件を満たさなくなる場合などには運転者が直ちに確実に運転を引き継ぐことが求められるとして、自動運行装置ごとの使用条件や性能を正しく理解するよう注意を呼びかけている。国交省も型式指定の発表で、運転者は過信せず常に運転できる状況を保つ必要があると明記した。事故の際の損害賠償については、国交省の研究会が2018年、レベル4までの過渡期には自賠法の運行供用者責任を維持するのが適当としている(SAE J3016 のページ)。
100台という規模では、交通事故や運転の負担を社会全体で目に見えて変えることはできない。レジェンドの意味は、条件付きとはいえ運転中にテレビを見ることが法的に認められた市販車を、型式指定・保安基準・交通ルールの3つをそろえて公道に出したことにある。制度の次の段階は、運転者のいないレベル4を許可制にした2023年の改正道路交通法である。
よくある質問
- 自動運転レベル3とは何ですか。
- 高速道路の渋滞時など限られた条件の中でシステムが運転を担い、条件を外れるときなどにシステムの要請に応じて運転者が運転を引き継ぐ段階です。SAE J3016 では条件付運転自動化と呼ばれます。運転者は監視から外れられますが、いつでも引き継げる状態でいる必要があります。
- ホンダ レジェンドのレベル3はいつ発売されたのですか。
- 2021年3月4日に発表され、3月5日に日本で発売されました。リース専用で販売計画は100台、メーカー希望小売価格は消費税込み1,100万円でした。国土交通省の型式指定は2020年11月11日です。
- レジェンドのレベル3はどんな条件で使えたのですか。
- 高速自動車国道や都市高速道路などで、自車線が渋滞か渋滞に近い混雑であること、作動開始前は約30km/h未満、作動後は約50km/h以下であること、悪天候でないこと、高精度地図と衛星測位の情報が得られること、運転者がシートベルトを着けていることなどが条件でした。
- レジェンドは本当に世界初のレベル3車ですか。
- 国土交通省の表現は、自動運行装置を備えた車両としては世界初の型式指定、というものです。販売は日本国内の100台のリースに限られました。メルセデス・ベンツは2021年12月にドイツで国連基準 UN-R157 に基づく認可を受け、2022年5月から注文を受け付けています。
出典
一次資料世界初! 自動運転車(レベル3)の型式指定を行いました — 国土交通省, 2020年11月11日
世界初の型式指定という国交省の表現、交通安全環境研究所の審査、社会課題への期待、運転者は過信しないこと
一次資料【別紙3】自動運行装置の概要 — 国土交通省, 2020年11月11日
トラフィックジャムパイロットの走行環境条件(道路・除外区間・天候・渋滞・速度・地図と GNSS・運転者の状態)
一次資料【別紙2】自動運行装置の保安基準の概要 — 国土交通省, 2020年11月11日
法改正の成立(2019年5月)と施行(2020年4月)、保安基準の内容、作動状態記録装置、2020年6月の国際基準成立
一次資料Honda SENSING Elite 搭載 新型「LEGEND」を発売 — Honda, 2021年3月4日
3月5日発売、100台限定・リース専用、1,100万円、トラフィックジャムパイロットの動作、テレビ・DVD の視聴、緊急時停車支援、約1,000万通りのシミュレーションと約130万km の実証走行
一次資料自動運転レベル3 型式指定を国土交通省から取得 — Honda, 2020年11月11日
改正道路運送車両法(令和元年法律第14号)の2020年4月1日施行と保安基準の要点
一次資料自動運転 — 警察庁
令和元年法律第20号の成立(2019年5月)と施行(2020年4月)、SAE レベル3のための規定整備という説明、運転者への注意喚起
一次資料道路交通法の一部を改正する法律(令和元年法律第20号)概要 — 警察庁
自動運行装置の定義、使用条件外での使用禁止、携帯電話使用等禁止の適用除外、作動状態記録装置
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