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GPT-5 とは ── 自動で「考える」モデルを選ぶ OpenAI のシステムと、その公開の混乱

2025年4月の TED の壇上で、グレーのセーターを着てヘッドセットのマイクを付けた OpenAI の Sam Altman
出典Steve Jurvetson (Wikimedia Commons) · CC BY 2.0 · Commons で見る ↗

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GPT-5 は、OpenAI が2025年8月7日に発表したモデルで、同じ日に無料ユーザを含む ChatGPT の全利用者に提供された。「GPT-5 とは何か」に一言で答えるなら、一つのモデルではなく、速く答えるモデルと深く考えるモデルを質問ごとに自動で使い分ける「システム」である。GPT-4 以来の GPT 系列と、2024年に始まった推論の o 系列(OpenAI o1)を一つにまとめるものだった。そして、公開直後の数日間に起きた混乱でもよく知られている。

モデル選択画面をなくす計画

GPT-5 の形は、半年前に予告されていた。2025年2月12日、Sam Altman は X に「We hate the model picker as much as you do and want to return to magic unified intelligence.」(私たちも皆さんと同じくらいモデル選択画面が嫌いで、魔法のような統一された知能に戻りたい)と書いた(PCWorld による)。当時の ChatGPT では、GPT-4o、o1、o3-mini など性格の違うモデルを、利用者が自分で選ぶ必要があった。Altman は、次に GPT-4.5 を「最後の思考の連鎖を使わないモデル」として出し、その後の GPT-5 では o3 を含む技術を統合すると書いた。無料ユーザは標準の知能水準の GPT-5 を無制限に使え、Plus と Pro はより高い水準で使える、という説明だった。

2025年8月7日 ── 「統一されたシステム」

OpenAI の発表によれば、GPT-5 は次の三つからなる。

部品役割(OpenAI の説明による)
速いモデル大半の質問に答える、賢く効率的なモデル
GPT-5 thinking難しい問題のために深く推論するモデル
ルーター会話の種類、複雑さ、道具の必要性、利用者の明示的な意図(「think hard about this」と頼むなど)をもとに、どちらを使うかを即座に決める

ルーターは、利用者がモデルを切り替えた記録、回答への好みの割合、測定した正しさといった実際の信号で継続的に学習するという。利用の上限に達すると、それぞれの小型版(mini)が残りの質問に答える。OpenAI は、近い将来これらを一つのモデルに統合する計画だとも書いた。

システムカードは、中身のモデルを前のモデルの後継として対応づけている。速いモデル(gpt-5-main)は GPT-4o の、考えるモデル(gpt-5-thinking)は o3 の後継にあたる。提供は ChatGPT の全利用者で、Plus はより多い利用枠、Pro は推論をさらに長くした GPT-5 pro を使えた。API でも同じ日に公開されている。

うたわれた成績と安全対策

OpenAI は GPT-5 を「our best AI system yet」(これまでで最高の AI システム)と呼び、数学・コーディング・視覚・医療で最高水準を出したとした。数字はすべて同社の測定である。

評価GPT-5 の成績(OpenAI 発表)
AIME 2025(道具なし)94.6%
SWE-bench Verified(実際の GitHub の課題。同社が検証した477問の部分集合)74.9%
Aider Polyglot(コーディング)88%
MMMU(マルチモーダルの理解)84.2%
HealthBench Hard(医療)46.2%
GPQA(道具なし、GPT-5 pro)88.4%

OpenAI はさらに、GPT-5(思考あり)は o3 より50〜80%少ない出力トークンで、より良い成績を出すと書いた。法律・物流・営業・工学など40を超える職業の知識労働を測る社内の評価では、推論を使った GPT-5 は約半数の場合で専門家と同等以上だったという。ハルシネーションと、利用者に迎合する傾向(sycophancy)を減らしたことも強調している。

安全面では、システムカードは gpt-5-thinking を、自社の Preparedness Framework で生物・化学の分野の「High capability」(高い能力)として扱い、関連する安全対策を有効にしたと書いている。初心者が深刻な生物学的被害を起こすのを実質的に助けうるという、OpenAI の定める閾値を超えた決定的な証拠はないが、予防的な立場を取った、という説明である。3か月前に Anthropic が Claude Opus 4 を予防的に ASL-3 の対策で出したのと、同じ形の判断だった。

グラフの誤りと、GPT-4o を惜しむ声

公開は、計画どおりには進まなかった。

まず、発表の生中継で示した棒グラフに誤りが見つかった。Tech.co によれば、ラベルの誤った棒グラフが、欺瞞を避ける性能を実際より良く見せていた。Altman は X で「mega chart screwup」(とんでもないグラフの失敗)と書き、OpenAI の公式アカウントも「unintentional chart crime」(意図しないグラフの罪)を詫びた。Altman は Reddit で、数値自体は正しかったが生中継の棒グラフを間違えた、別のスライドでは数値も間違えたと説明し、人が夜遅くまで作業して疲れていたための人為的な誤りだとした。ブログのグラフは修正された。

より大きかったのは、旧モデルの扱いである。GPT-5 が ChatGPT の既定になると同時に、GPT-4o や o3 などの旧モデルは消費者向けの ChatGPT で選べなくなった。Simon Willison は、移行期間がまったくなかったと指摘している(API では旧モデルは引き続き使えた)。Tom's Guide によれば、Reddit では5,000人近くが加わったスレッドで GPT-5 を「downgrade」(格下げ)と呼ぶ声が出た。不満は、応答が短くなった、口調が事務的になった、利用回数の上限が厳しい、という点に集まった。The Verge は、GPT-4o を友人や伴侶のように感じていた利用者の嘆きも伝えている。

OpenAI の反応は速かった。The Verge によれば、GPT-5 への置き換えの翌日、Altman は X で「We will let Plus users choose to continue to use 4o」(Plus ユーザが 4o を使い続けられるようにする)と書き、旧モデルをどれだけ提供し続けるかは利用状況を見て考えると述べた。Plus の GPT-5 の推論の利用上限も引き上げられた。その後 Altman は Reddit で、4o をすべての有料ユーザのモデル選択画面に既定で戻し、もし廃止するときは十分前に知らせると書いた(Willison による)。

GPT-4o の退役と、その後の GPT

この騒動は、後のモデルの方向を変えた。2025年11月12日の GPT-5.1 で、OpenAI は ChatGPT で最も使われるモデルを「より温かく」したと発表し、賢いだけでなく話していて楽しい AI であるべきだという利用者の声をはっきり聞いたと書いた。

2026年1月29日、OpenAI は2月13日に GPT-4o を ChatGPT から退役させると発表した。発表文は、GPT-5 の公開時に一度廃止して戻した経緯に触れ、GPT-4o の会話のスタイルと「warmth」(温かさ)を好むという一部の Plus・Pro ユーザの声が GPT-5.1 と GPT-5.2 の改善を形づくったと書いている。退役の理由は、利用の大半が GPT-5.2 に移り、毎日 GPT-4o を選ぶのは利用者の0.1%だけになったことだった。API では当面変更なしとされた。

GPT-5 の系列はその後も続き、2026年4月23日に GPT-5.5 が出た。同年9月には最初の GPT-6 のモデルが有料ユーザに、10月7日には新しい GPT-6 のモデルが ChatGPT の全利用者に提供されている。各モデルの時期は ChatGPT の記事の表にまとめてある。

何が残ったか

GPT-5 の要点は、性能の数字よりも、利用者が「どのモデルか」を意識しなくてよくするという設計の転換にあった。同時にその公開は、性能の向上だけでは利用者が満足しないこと ── 慣れた口調や、自分で選べることも製品の一部であること ── を示した。OpenAI 自身が GPT-4o の退役の発表で、その声が次のモデルを形づくったと認めている。生成 AI の流れは AI の年表 で辿れる。

よくある質問

GPT-5 はいつ公開されたのですか。
2025年8月7日です。無料ユーザを含む ChatGPT の全利用者に提供され、Plus はより多い利用枠、Pro は推論を長くした GPT-5 pro を使えました。API でも同時に公開されています。
GPT-5 のルーターとは何ですか。
質問ごとに、速いモデルで答えるか、深く考えるモデル(GPT-5 thinking)を使うかを即座に決める仕組みです。OpenAI によれば、会話の種類、複雑さ、道具の必要性、「よく考えて」といった利用者の明示的な意図をもとに判断し、利用者がモデルを切り替えた記録や回答の正しさなどで継続的に学習します。
GPT-5 の公開後、なぜ GPT-4o が復活したのですか。
GPT-5 が既定になると同時に、ChatGPT で GPT-4o などの旧モデルが選べなくなり、応答が短く事務的になったという不満や、GPT-4o の話し方を惜しむ声が広がったためです。翌日、Altman は Plus ユーザが GPT-4o を使い続けられるようにすると発表しました。GPT-4o は最終的に2026年2月13日に ChatGPT から退役しています。

出典

  1. 一次資料Introducing GPT-5 — OpenAI, August 7, 2025

    統一されたシステムとルーター、提供範囲、発表された成績(AIME 2025・SWE-bench Verified・MMMU・HealthBench Hard・GPQA)

    取得日: 2026-10-20

  2. 一次資料GPT-5 System Card — OpenAI, August 7, 2025

    gpt-5-main・gpt-5-thinking などの名前と前モデルとの対応、生物・化学で高い能力の扱い

    取得日: 2026-10-20

  3. 一次資料Introducing GPT-5 for developers — OpenAI, August 7, 2025

    取得日: 2026-10-20

  4. 一次資料Introducing GPT-5.5 — OpenAI, April 23, 2026

    取得日: 2026-10-20

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