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Cruise の運行停止 ── 引きずり事故と伝えられなかった事実

2023年11月、サンフランシスコの Cruise の車庫に並ぶ自動運転の Chevrolet Bolt。リコールのソフトウェア更新を待つ車両
出典Mliu92 (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 3.0 · Commons で見る ↗

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Cruise(クルーズ)は、GM(ゼネラルモーターズ)傘下でサンフランシスコに本拠を置いた自動運転の配車会社である。2023年10月2日、運転者のいない Cruise の車が、別の車にはねられて目の前に倒れ込んだ歩行者をひき、いったん止まった後に路肩へ寄せようとして、女性を約20フィート(約6メートル)引きずった。カリフォルニア州 DMV は10月24日、Cruise の無人運行と無人試験の許可を即時停止し、理由の一つに、同社が安全に関する情報を正しく伝えなかったことを挙げた。Cruise は全米で無人運行を止め、その後 NHTSA に150万ドルの制裁金を払い、米司法省との訴追延期合意で50万ドルの罰金を払った。GM は2024年12月10日、Cruise のロボタクシー開発への資金提供をやめると発表した。

前史 ── 2016年の買収とサンフランシスコの許可

TechCrunch によると、GM は2016年3月に Cruise を約10億ドルで買収し、その後ロボタクシー事業の実用化に100億ドル超を投じた。2023年8月10日、カリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)は Cruise と Waymo に、サンフランシスコで時間を問わず運賃を取る無人の旅客サービスを認めた。この許可の経緯は Waymo の完全無人タクシーのページにある。

2023年10月2日 ── 何が起きたのか

米司法省の発表によると、事故はサンフランシスコで起きた。人間が運転する車にはねられた歩行者が、運転者のいない Cruise の車の進路に投げ出され、Cruise の車は歩行者をひいて止まった。ところが、検知システムが車の下にいる歩行者を認識できなかったため、車はその後、女性を下にしたまま路肩へ寄せようとし、20フィート以上引きずった。

Cruise が11月に NHTSA へ届け出たリコールの報告書は、仕組みを次のように説明している。衝突の後に車が路肩へ寄せるか、その場で止まるかは「衝突検知サブシステム」が決める。この事故では、システムが衝突を側面からのものと誤って判定し、その場で止まらずに路肩への移動を指示した。Cruise が後に公表した Exponent 社の分析は、車がすでに一番外側の車線にいることを認識できなかった地図の誤りも寄与したとしている。

事故の翌日 ── 当局に伝わらなかったこと

問題を大きくしたのは、事故そのものより、その後の説明だった。司法省によると、Cruise は事故の報告で、二次的な移動と引きずりに触れなかった。翌朝の NHTSA とのビデオ会議でも、口頭の説明に引きずりは含まれなかった。Cruise の社員は引きずりの映った映像を見せようとしたが、技術的な問題でその部分は再生されなかった。同じ日の午後に出した1日後の報告書も引きずりを省いており、Cruise は同じ日に映像の写しを NHTSA に渡したものの、報告を訂正しなかった。

日付出来事
2023年10月2日サンフランシスコで歩行者を引きずる事故
2023年10月3日NHTSA、DMV、市長室などへの説明で、引きずりを口頭で伝えず
2023年10月24日カリフォルニア州 DMV が無人運行と無人試験の許可を即時停止
2023年10月26日Cruise が無人の車隊の運行を止める
2023年11月7日NHTSA にリコール 23E-086 を届け出る(950台分のソフトウェア)
2024年1月25日外部の法律事務所 Quinn Emanuel の調査報告を公表
2024年9月30日NHTSA と同意命令。制裁金150万ドル
2024年11月14日司法省と訴追延期合意。罰金50万ドル
2024年12月10日GM がロボタクシー開発への資金提供の終了を発表

10月24日 ── DMV の許可停止

カリフォルニア州 DMV は10月24日、Cruise の無人運行(デプロイメント)と無人試験の許可を即時停止した。DMV は根拠として、車の性能から見て公衆が乗るには安全でないと判断したこと、メーカーが自動運転技術の安全に関する情報を偽って伝えたこと、公道の安全のために即時停止が必要なことなどを挙げた。安全運転者が乗る試験の許可は対象外だった。Cruise は10月26日に無人の車隊の運行を自主的に止め、その後、全米で無人・監視つき・手動のすべての運行を止めた。

調査報告 ── 「私たち対彼ら」

Cruise が依頼した法律事務所 Quinn Emanuel は、88人の社員・契約者への聞き取りと20万点超の社内文書をもとに報告書をまとめた。Cruise の公表によると、報告書は、Cruise の経営陣や社員が規制当局を意図的に欺こうとしたことはこれまでの証拠からは立証されないとした。一方で、映像を流せば分かるはずだという姿勢で、引きずりを口頭で指摘しなかったことを、指導力の欠如、不十分で連携を欠いた社内手続き、判断の誤り、規制当局に対する「私たち対彼ら」という意識、規制上の義務への根本的な誤解に帰した。報告書は、社員が別の社員に送った、指導者たちが私たちを裏切ったという趣旨のメッセージも引いている。

TechCrunch によると、共同創業者で CEO の Kyle Vogt は辞任し、Cruise は従業員の約24%にあたる900人を解雇した。Cruise によると、2023年12月には法務、政府対応、商業運営、安全の幹部を含む9人が会社を去った。

制裁と撤退

2024年9月30日、NHTSA は Cruise との同意命令を発表した。Cruise は事故の報告で事後の詳細を開示しなかったことなどについて150万ドルの制裁金を払い、走行距離や無人で走る台数、交通違反の報告などを2年間(1年延長あり)求められた。11月14日には、司法省が、捜査に影響を与える意図で NHTSA に虚偽の記録を出したとして Cruise を起訴し、Cruise は訴追延期合意のもとで50万ドルの罰金を払うことになった。合意の期間は3年で、捜査への協力や安全遵守プログラムの実施を求められ、守らなければ訴追が再開されうる。

2024年12月10日、GM は Cruise のロボタクシー開発への資金提供をやめると発表した。理由は、事業を拡大するのに必要な時間と資源の大きさと、ロボタクシー市場の競争の激化である。GM は Cruise と自社の技術者を統合して個人向けの車の運転支援と自動運転に集中し、年10億ドル超の支出を減らす見通しを示した。TechCrunch によると、すでに辞めていた Vogt は X で、GM の判断を強い言葉で批判した。

日本への影響も直接的だった。事故から17日後の2023年10月19日、Honda・GM・Cruise の3社は、2026年初めに東京都心で無人の配車サービスを始めるため、合弁会社の設立で基本合意したと発表していた。Honda によると、ハンドルも運転席もない6人乗りの専用車 Cruise Origin を数十台で始め、500台まで増やす計画だった。しかし Cruise は2024年夏に Origin の量産計画を断念し、TechCrunch は2024年12月、日本経済新聞の報道として、Honda がこの合弁への資金提供をやめると伝えた。東京の無人タクシーは、その後 Waymo が GO・日本交通と組んで目指すことになる。

社会への影響

DMV が許可を止めた理由には、車の安全性の判断と並んで、安全に関する情報を偽って伝えたことが挙がっていた。ロボタクシーの許可は、車の性能だけでなく、事業者が当局に事実を伝えるかどうかにもかかっていたことになる。Quinn Emanuel は、規制当局は人の健康と安全を守るために事故の関連事実のすべてを知る必要があり、映像があれば十分だと考えるのは根本的に誤ったやり方だったと書いた。

司法省の担当者は、自動運転車で道路と横断歩道を共有しようとする企業は、規制当局への報告で完全に正直でなければならないと述べている。以後、NHTSA は同意命令で Cruise に運行規模の定期報告を求め、テスラのロボタクシーの衝突報告の黒塗りも批判を受けた。

GM は2025年10月、運転者が前方を見なくてよい「アイズオフ」の運転支援を2028年に Cadillac ESCALADE IQ で導入すると発表し、Cruise の技術と500万マイル超の完全無人走行の経験がその土台になるとしている。TechCrunch は、GM が目指すこうした仕組みは一般にレベル3と呼ばれ、Cruise が開発していたレベル4の無人の車とは違い、必要なときは運転者が操作を引き継ぐ必要があると説明している(段階の定義は SAE の自動運転レベルを参照)。全体の流れは自動運転の年表と AI と社会の年表にある。

よくある質問

Cruise の事故では何が起きたのですか。
2023年10月2日、サンフランシスコで、人間が運転する車にはねられた歩行者が、運転者のいない Cruise の車の前に投げ出されました。Cruise の車は歩行者をひいて止まった後、車の下の歩行者を検知できないまま路肩へ寄せようとし、20フィート以上引きずりました。リコールの報告書によると、システムが衝突を側面からのものと誤って判定したためです。
なぜ Cruise は許可を停止されたのですか。
カリフォルニア州 DMV は2023年10月24日、車の性能から公衆が乗るには安全でないと判断したこと、メーカーが安全に関する情報を偽って伝えたこと、公道の安全のため即時停止が必要なことなどを理由に挙げました。Cruise は事故翌日の当局への説明で、引きずりを口頭で伝えていませんでした。
Cruise はどんな罰を受けたのですか。
2024年9月30日に NHTSA との同意命令で150万ドルの制裁金を払い、運行規模などの報告を求められました。2024年11月14日には、NHTSA に虚偽の記録を出したとして司法省に起訴され、訴追延期合意のもとで50万ドルの罰金を払っています。合意の期間は3年です。
Cruise は今どうなっていますか。
GM は2024年12月10日、Cruise のロボタクシー開発への資金提供をやめ、Cruise と自社の技術者を統合して個人向けの車の運転支援と自動運転に集中すると発表しました。Honda と計画していた東京での無人配車も、Honda が資金提供をやめると報じられました。GM は2025年10月、2028年にアイズオフの運転支援を導入すると発表しています。

出典

  1. 一次資料DMV Statement on Cruise LLC Suspension — California DMV, Oct 24, 2023

    無人運行と無人試験の許可の即時停止、根拠となった規則、安全運転者つきの試験は対象外

    取得日: 2026-10-18

  2. 一次資料Cruise Admits To Submitting A False Report To Influence A Federal Investigation And Agrees To Pay $500,000 — U.S. Attorney's Office, Northern District of California, Nov 14, 2024 (archived)

    justice.gov は自動取得を拒むため保存版。事故の経過、20フィート超の引きずり、報告からの省略、訴追延期合意と3年の期間

    取得日: 2026-10-18

  3. 一次資料Part 573 Safety Recall Report 23E-086 — Cruise LLC, Nov 7, 2023

    衝突検知サブシステムの説明、側面衝突との誤判定、10月26日の運行停止、950台分

    取得日: 2026-10-18

  4. 一次資料Cruise Releases Third-Party Findings Regarding October 2 — Cruise, Jan 25, 2024 (archived)

    Quinn Emanuel の調査(88人・20万点超の文書)、欺く意図は立証されないという結論と失敗の原因、Exponent の技術分析、12月の9人の退社

    取得日: 2026-10-18

  5. 二次資料GM is giving up on Cruise robotaxis, pivots to personal autonomous vehicles — TechCrunch, Dec 11, 2024

    2016年3月の約10億ドルでの買収と100億ドル超の投資、900人の解雇、Vogt の辞任、レベル3とレベル4の違い

    取得日: 2026-10-18

  6. 三次資料Cruise (autonomous vehicle) — Wikipedia

    取得日: 2026-10-18

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