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改正道路交通法とレベル4 ── 運転者のいない「特定自動運行」の解禁

福井県永平寺町で運行される自動運転カート「ZEN drive」の車両。屋根にカメラなどのセンサーを載せ、福井ナンバーを付けている。Japan Mobility Show 2023 で撮影
出典SuFlyer (Wikimedia Commons) · CC0 · Commons で見る ↗

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自動運転レベル4(高度運転自動化)とは、決められた条件の中でシステムが運転のすべてを担い、条件を外れそうなときや故障のときも運転者に引き継がず、システム自身が安全に停止する段階である。そのため運転者がいなくてよい。日本では、2022年4月に成立した改正道路交通法(令和4年法律第32号)の自動運転に関する規定が 2023年4月1日 に施行され、レベル4に相当する運転者のいない自動運転を「特定自動運行」として、都道府県公安委員会の許可制で公道で行えるようになった。最初の許可は2023年5月11日、福井県公安委員会が福井県永平寺町の移動サービスに出したもので、5月21日に運行が始まった。国土交通省によると、2026年6月時点で、補助事業などを通じたレベル4のバスなどは全国11か所で実装され、特定自動運行の許可は12件に達している。

レベルの定義は SAE J3016 のページに、その手前のレベル3を可能にした2019年の法改正はホンダ レジェンドのページにある。

特定自動運行の許可制度

警察庁の説明によると、制度の骨格は次のとおりである。

項目内容
許可レベル4に相当する、運転者がいない状態での自動運転(特定自動運行)を行う者は、都道府県公安委員会の許可が必要
申請遵守事項や事故時の措置などの実施方法を書いた特定自動運行計画を提出
地域の意見公安委員会は許可の前に、経路を含む市町村の長などから意見を聴く。走行環境条件などについては国土交通大臣などにも意見を聴く
遠隔監視遠隔監視装置を置き、特定自動運行主任者を配置(主任者が乗車する場合を除く)
事故時消防への通報、現場措置業務実施者の派遣、警察官への報告などを義務づけ
行政処分法令違反には指示や許可の取消し。事故などの際は警察署長が許可の効力を仮停止できる

許可基準の一つは、人または物の運送を目的とし、地域住民の利便性または福祉の向上に資すると認められることである。

車両の側の基準も異なる。国交省によると、レベル3の保安基準は、自動運行が難しい状況(故障や天候の急変など)が生じたら運転者に引き継ぎの警報を出すことを求めるため、運転者が必要になる。レベル4の保安基準は、同じ状況で安全に停止することを求めるので、運転者を必要としない。レベル4の運行には、道路運送車両法の認可、道路交通法の許可に加え、旅客を運ぶ場合は道路運送法の許可や登録も要る。

永平寺町 ── 最初のレベル4

最初の事例は、福井県永平寺町の遊歩道「永平寺参ろーど」の一部を走る小さなカートだった。国交省と経済産業省が進めてきた実証の成果である。

日付手続き
2023年3月30日国交省中部運輸局が、産業技術総合研究所の車両を道路運送車両法に基づくレベル4の自動運転車として全国で初めて認可
2023年4月1日改正道路交通法の自動運転関係規定が施行
2023年5月2日福井運輸支局が、まちづくり株式会社ZENコネクトによる自家用有償旅客運送を登録
2023年5月11日福井県公安委員会が、道路交通法に基づくレベル4の許可を全国で初めて出す
2023年5月21日運転者を置かないレベル4の移動サービスを開始

車両はヤマハ製の電動カートを産総研が改造したもので、道路に敷いた電磁誘導線に沿って時速12kmで約2kmを走る。車内にも遠隔地にも運転者を置かない。

その年の10月29日、この車両は停めてあった無人の自転車に接触した。自動運転ラボが伝えた町の調査結果によると、車両は時速約4kmで走っており、負傷者はいなかった。ミリ波レーダーなどは自転車を検知していたが、対向車による誤検知を避けるためカメラの画像認識が一致したときだけ自動で止まる設定の場所で、カメラが無人の自転車を認識できなかった。無人の自転車の学習データが足りなかったことなどが原因とされ、町は追加学習などの対策をとり、冬季運休明けの2024年3月からの再開を目指すとした。

2024〜2026年の広がり

国交省が2026年6月8日に示した資料は、レベル4が実装された11か所として、福井県永平寺町、北海道上士幌町、宮城県気仙沼市、大阪府大阪市(大阪・関西万博)、愛媛県松山市、茨城県日立市、東京都大田区(羽田)、長野県塩尻市、三重県多気町、千葉県柏市、茨城県常陸太田市を挙げている。塩尻市では2回目の許可が出たため、許可件数は12件とされる。

茨城交通は2024年12月18日、ひたちBRT(茨城県日立市)で特定自動運行を行う許可を茨城県公安委員会から受けた。営業車両としては国内初の許可だと同社は発表している。2025年2月3日から、専用道区間約6.1kmでレベル4の営業運行を始め、発表時点で国内最長距離であり、一般的な中型バスでのレベル4の営業運行も国内初だとしている。

千葉県柏市の柏の葉地区では、東武バスセントラルが2025年11月12日に千葉県公安委員会から許可を受け、2026年1月13日から、柏の葉キャンパス駅と東京大学柏キャンパスを結ぶシャトルバスの一部の便で特定自動運行を始めた。一般車や歩行者、自転車が混在する公道で中型バスを使う例で、東京大学などのコンソーシアムは、東京都市圏の公道で初めてのレベル4の運行開始だとしている。

東京でのタクシーについては、Waymo・GO・日本交通が2027年中の完全無人運行を目指すと発表している。経緯は Waymo のページにある。

誰のための制度か ── 運転手不足と採算

政府はデジタル田園都市国家構想総合戦略(2022年12月閣議決定)で、自動運転移動サービスを2025年度目途に50か所程度、2027年度に100か所以上で実現するという目標を掲げ、国交省は2023年を「自動運転実装化元年」と位置づけた。この目標は「自動運転移動サービス」の数として書かれており、国交省が2026年6月に示したレベル4の実装11か所と同じ指標とは限らない。SOMPOインスティチュート・プラスの分析によれば、2024年度の補助事業の多くは、保安要員が乗るレベル2での運行だった。

背景には地域交通の担い手不足がある。日本バス協会が2023年10月に国の審議会へ出した試算では、2022年の輸送規模を維持し、時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)に対応するのに必要なバス運転者は2030年に約12.9万人だが、運転者数は約9.3万人に減り、約3.6万人(28%)が不足する。協会は、運転者を確保できなければ路線バスの減便・廃止につながるとしている。運転者のいないレベル4は、まずこの不足を補う手段として期待されている。

一方で、採算の見通しは厳しい。SOMPOインスティチュート・プラスの新添麻衣氏は2025年4月の分析で、自動運転車を1台導入するコストは数千万円から1億円超とも言われるとし、国の補助率が100%から80%に下がることを指摘した。運賃収入で自動運転サービスを支えるのは極めて難しいとも書いている。リスクの低い限定空間から段階的に進める日本のやり方が、都市部で無人タクシーが走る米国との差になっているという見方も示している。

観点期待懸念
地域の足運転者不足の中で路線を維持する(日本バス協会の試算が背景)1台数千万円から1億円超とされる費用と、補助の縮小(SOMPOインスティチュート・プラス)
安全システムが停止まで担い、遠隔監視と事故時の義務が法定された永平寺町の接触のように、想定外の物体の認識が課題になる
広がり時速12kmのカートから、一般道を走る中型バスまで広がったレベル4の実装は2026年6月時点で11か所にとどまる

日本の議論では、レベル4は運転手の職を奪う技術というより、足りなくなる担い手を補う手段として位置づけられてきた。その位置づけが実を結ぶかどうかは、無人運行が採算に乗るかどうかにかかっている。AI と社会の関わりは AI と社会の年表 にある。

よくある質問

自動運転レベル4とは何ですか。
決められた条件の中でシステムが運転のすべてを担い、条件を外れそうなときや故障のときも運転者に引き継がず、システム自身が安全に停止する段階です。そのため運転者がいなくても走れます。日本の法律では特定自動運行と呼ばれます。
日本ではいつからレベル4が解禁されたのですか。
2022年4月に成立した改正道路交通法の自動運転に関する規定が2023年4月1日に施行され、都道府県公安委員会の許可を受ければ運転者のいない自動運転ができるようになりました。
日本で最初のレベル4はどこですか。
福井県永平寺町です。2023年3月30日に車両がレベル4として認可され、5月11日に福井県公安委員会が全国で初めて許可を出し、5月21日から運転者を置かない移動サービスが始まりました。電磁誘導線に沿って時速12kmで約2kmを走る電動カートです。
日本のレベル4は今どこで走っているのですか。
国土交通省の2026年6月8日の資料によると、永平寺町、北海道上士幌町、宮城県気仙沼市、大阪市(万博)、松山市、茨城県日立市、東京都大田区(羽田)、長野県塩尻市、三重県多気町、千葉県柏市、茨城県常陸太田市の11か所で実装され、許可は12件です。

出典

  1. 一次資料自動運転 — 警察庁

    令和4年法律第32号の成立(2022年4月)と自動運転関係規定の施行(2023年4月)、特定自動運行の許可制度の創設

    取得日: 2026-10-18

  2. 一次資料特定自動運行に係る許可制度の創設について — 警察庁

    許可、特定自動運行計画、市町村長と国土交通大臣への意見聴取、特定自動運行主任者、事故時の措置、許可基準、行政処分

    取得日: 2026-10-18

  3. 一次資料国内初!運転者を必要としない自動運転車(レベル4)の認可について — 国土交通省, 2023年3月31日

    2023年3月30日の中部運輸局による認可、車両と運行区間、レベル3とレベル4の保安基準の違い、自動運転実装化元年

    取得日: 2026-10-18

  4. 一次資料国内初!運転者を配置しないレベル4での自動運転移動サービスの開始について — 国土交通省, 2023年5月12日

    5月2日の登録、5月11日の福井県公安委員会の許可、5月21日の運行開始、時速12km・約2km・運行日時・運賃

    取得日: 2026-10-18

  5. 一次資料自動運転の普及に伴う社会変容への対応について(参考資料)— 国土交通省, 2026年6月8日

    レベル4が実装された11か所の一覧と、塩尻市の2回目の許可を含む許可12件

    取得日: 2026-10-18

  6. 一次資料今後の取り組み方針(資料3)— 国土交通省

    2025年度目途50か所程度・2027年度100か所以上の政府目標(デジタル田園都市国家構想総合戦略、2022年12月閣議決定)

    取得日: 2026-10-18

  7. 一次資料国内最長距離&国内初の中型バスでのレベル4自動運転の営業運行 — 茨城交通ほか(日本総合研究所), 2025年1月24日

    2024年12月18日の茨城県公安委員会の許可、2025年2月3日の営業運行開始、専用道約6.1km

    取得日: 2026-10-18

  8. 一次資料東京都市圏の公道で初!柏の葉地区で特定自動運行(自動運転レベル4)の運行開始 — 東京大学ほか, 2026年1月13日

    2025年11月12日の千葉県公安委員会の許可、2026年1月13日の運行開始、東京都市圏の公道で初という説明

    取得日: 2026-10-18

  9. 一次資料国土幹線道路部会 ヒアリング資料 — 公益社団法人日本バス協会, 2023年10月5日

    2030年のバス運転者の試算(必要12.9万人・運転者9.3万人・不足3.6万人、28%)と減便・廃止の見通し

    取得日: 2026-10-18

  10. 二次資料日本の自動運転レベル4は、どこまで進んだか(1)~マイルストーンの2025年、国交省は補助金の減額で自治体の自立を促す~ — SOMPOインスティチュート・プラス, 2025年4月18日

    1台数千万円から1億円超とされる費用、補助率の100%から80%への引き下げ、運賃収入での維持の難しさ、2024年度の補助事業の多くがレベル2

    取得日: 2026-10-18

  11. 二次資料日本初レベル4の自動運転事故、「追加学習」で来年3月再開へ — 自動運転ラボ, 2023年11月15日

    2023年10月29日の接触の状況、町の調査による原因と対策、2024年3月の再開目標

    取得日: 2026-10-18

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