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セグウェイ ── 「Ginger」の熱狂から生産終了まで

メタデータ
- 日付
- 年代
- 2000s
- Tier
- T1
- 参照年表
- 半導体・ハードウェアの歴史
- 出典数
- 10
- 関連項目
- 00
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セグウェイは、2つの車輪の間に人が立ち、体重のかけ方だけで進み・止まり・曲がる乗り物である。発明家ディーン・ケーメンが 2001年12月3日、ABC の朝の番組『Good Morning America』でニューヨークのブライアント・パークを走ってみせ、Segway Human Transporter(のちの Segway PT)として公開した。それまでの1年近く、この機械は「Ginger」「IT」という開発名だけで語られ、何なのかも分からないまま大げさな期待を集めていた。期待に見合う数は売れず、米国での生産は 2020年7月15日 に終わった。
| 年月 | 出来事 |
|---|---|
| 1999年 | ケーメンが、のちの Segway となる会社を設立 |
| 2001年1月 | 開発を扱う本の企画書が Inside.com に流出し、「Ginger」「IT」への憶測が広がる |
| 2001年2月 | ニューハンプシャー州ベッドフォードで工場と本社に着工 |
| 2001年12月3日 | 『Good Morning America』で公開 |
| 2002年11月 | Amazon.com で一般向けの販売を開始 |
| 2006年8月 | 第2世代の i2・x2 を発表 |
| 2009年12月 | 英国の実業家 James Heselden が買収 |
| 2013年2月 | Summit Strategic Investments が買収 |
| 2015年4月 | 中国の Ninebot と統合 |
| 2020年7月15日 | ベッドフォードでの Segway PT の生産を終了 |
「Ginger」── 正体の分からない熱狂
TIME 誌(2001年12月2日付)によると、発端は2001年1月、ケーメンの発明を扱う本の企画書がニュースサイト Inside.com に流出したことだった。企画書は機械の正体を明かさないまま、シリコンバレーの大物たちの評価を並べていた。TIME はそれを、Steve Jobs はパソコン並みの大事だと言い、投資家の John Doerr はインターネットより大きいかもしれないと言った、とまとめている。水素で動くホバークラフトだ、反重力装置だ、という推測が報道にあふれた。
「Ginger」の名には由来がある。ケーメンの研究開発会社 DEKA は、階段を上る車椅子 IBOT を作っていた。TIME によると、軽やかに階段を上るその姿から IBOT を Fred Astaire にちなんで Fred Upstairs と呼び、その小さな相方として Ginger と名付けたのだという。セグウェイは、IBOT で培った「機械がバランスを取る」技術を、誰もが使う乗り物へ広げる構想から生まれた。
公開 ── 2001年12月3日、ブライアント・パーク
AP 通信によると、12月3日の月曜日の朝、ケーメンと番組の司会者たちはマンハッタンのブライアント・パークでこの機械に乗り、坂を上り下りしてみせた。広報担当者によれば最高速度は時速12マイル、平地なら1回の充電で15マイル走れる。最初の購入者は米郵便公社とアトランタ市で、業務用の重い型を1台8,000ドルで買う。一般向けの65ポンドの型は3,000ドルで、少なくとも1年は買えないとされた。
TIME はケーメンへの3か月の密着をもとに、仕組みと野心を書いた。ジャイロと加速度計、10個のマイクロプロセッサが乗り手の重心の移動を読み取り、ブレーキもエンジンもスロットルもハンドルもない。開発費は1億ドルを超え、マンチェスターの本社近くに建てた7万7,000平方フィートの工場は、翌年末までに月4万台を作れるようにするという。Doerr は、売上10億ドルに史上最速で届く会社になると予測した。ケーメン自身の言葉はこうである ── セグウェイは "will be to the car what the car was to the horse and buggy."(TIME)。都市の中心から自動車を締め出し、歩行者がセグウェイで動く街を、ケーメンは思い描いていた。
売れなかった理由として挙げられたもの
一般向けの販売は2002年11月、Amazon.com で始まった(Segway の社史)。しかし数は伸びなかった。英語版 Wikipedia は、公開時の目標が年4万台、最初の13か月で5万〜10万台の見込みだったのに対し、2003年までの販売は6,000台、2006年9月までに約2万3,500台だったとしている(この数字は Wikipedia による)。2006年8月の TIME の取材に CEO の James Norrod は、販売は「数万台」で年50%伸びているとだけ答えた。24/7 Wall St. の2009年の集計(TIME 掲載)は、2001年から2007年末までの販売を 3万台 としている。
同じ集計は、主な理由を2つ挙げた。価格は多くの型で3,000ドルを大きく超え、7,000ドルに達するものもあり、大衆の買い物にならなかった。そして国によっては道路を走る車両として免許が要り、別の国では公道を走れなかった。2006年の TIME によれば、米国では44州が歩道での走行を認めていたが、消費者には広がらず、売り先は警備や警察に移っていった。会社は2006年8月、4,995ドルの第2世代 i2 と不整地用の x2 を出して立て直しを図った。
持ち主が変わり、中国の Ninebot へ
Segway の社史によると、会社は2009年12月に英国の実業家 James Heselden、2013年2月に Summit Strategic Investments へ売られた。2014年、Segway とケーメンの DEKA は、Ninebot を含む中国企業が特許を侵害していると米国際貿易委員会に申し立てた。ところが2015年4月15日、北京の Ninebot は Segway の買収を発表する(買収額は非公表)。Ninebot は Xiaomi、Sequoia Capital、Shunwei から8,000万ドルを調達したと述べ、TechCrunch は買収の完了後も2つのブランドは別々に残ると伝えた。争っていた相手に、会社ごと引き取られたことになる。
生産終了 ── 2020年7月15日
2020年6月、Fast Company は Segway PT の生産終了を報じた。New Atlas の紹介によると、最後の PT は7月15日にラインを離れ、21人が職を失い、12人が保証と修理のために残る。累計の販売はおよそ 14万台 で、末期の PT は親会社の売上の約1.5%にすぎなかったという。Segway のニュージーランドの販売代理店によると、終わったのはベッドフォードでの米国生産で、2002年から約14万台を作り、警備用の三輪 SE-3 と、PT を土台にしたロボット用プラットフォーム RMP も同時に終わった。同代理店は、アジア太平洋向けの PT は2018年から親会社 Segway-Ninebot の中国の生産ラインから仕入れており、それは続くとしている。
位置づけ
セグウェイは、技術としては公開時の評価どおり精巧だった。しかし街の設計を変えるという構想は、価格と法律と、乗っている人の見え方の前で止まった。発明の中身よりも、正体を伏せたまま期待だけが膨らんだ経緯のほうが、後から振り返られることが多い。名前は Ninebot の下で電動キックボードなどのブランドとして残っている。同じ時代の機器の流れは 半導体・ハードウェアの年表 を参照。
よくある質問
- セグウェイはいつ発表されたのですか。
- 2001年12月3日(月曜日)です。発明者のディーン・ケーメンが ABC の『Good Morning America』で、ニューヨークのブライアント・パークを番組の司会者と走ってみせました。一般向けの販売は2002年11月に Amazon.com で始まりました。
- 「Ginger」「IT」とは何のことですか。
- 公開前のセグウェイの開発名です。2001年1月に開発を扱う本の企画書が Inside.com に流出し、正体を伏せたまま大げさな評価だけが広まりました。TIME によると Ginger の名は、ケーメンの階段を上る車椅子 IBOT を Fred Astaire にちなんで Fred Upstairs と呼び、その小さな相方として Ginger と名付けたことから来ています。
- セグウェイはどれくらい売れたのですか。
- 24/7 Wall St. は2001年から2007年末までの販売を3万台としています。2020年に生産終了が報じられた時点で、累計はおよそ14万台でした。公開時には工場が月4万台を作れるようにすると TIME は伝えており、期待との差は大きいものでした。
- セグウェイの生産はいつ終わったのですか。
- 米国ニューハンプシャー州ベッドフォードでの Segway PT の生産は2020年7月15日に終わりました。ニュージーランドの販売代理店は、アジア太平洋向けには親会社 Segway-Ninebot の中国の生産ラインからの供給が続くとしています。
出典
二次資料Reinventing the Wheel — John Heilemann, TIME, Dec 2, 2001
1月の企画書流出と憶測、開発名 Ginger の由来、開発費1億ドル超、法人向け約8,000ドルと一般向け約3,000ドルの見込み、7万7,000平方フィートの工場と月4万台、Doerr の売上予測、ケーメンの発言
二次資料Much-hyped invention's a scooter — The Associated Press via HeraldNet, Dec 3, 2001
月曜朝の Good Morning America でのブライアント・パークでの公開、Segway Human Transporter の名、時速12マイル、1回の充電で15マイル、郵便公社とアトランタ市が1台8,000ドルで最初の購入者に
一次資料About Us — Segway (company history)
1999年の創業、2001年2月のベッドフォード工場着工、12月の公開、2002年11月の Amazon.com での一般販売、2006年8月の第2世代、2009年12月と2013年2月の売却、2015年4月の Ninebot との統合
二次資料The Segway Riddle — TIME, Aug 14, 2006
CEO が販売を「数万台」とだけ述べたこと、警備用途の広がり、4,995ドルの新型、ケーメンの修正された見通し
二次資料Segway — The 10 Biggest Tech Failures of the Last Decade — TIME (from 24/7 Wall St.), May 14, 2009
2001年から2007年末までの販売3万台、価格と各国での法的な扱いの問題
買収額は非公表、8,000万ドルの資金調達、前年の米国際貿易委員会への特許侵害の申し立て
二次資料The classic Segway personal transporter will cease production in July — New Atlas, Jun 24, 2020
Fast Company の報道の紹介。7月15日の生産終了、21人の雇用喪失と12人の保守要員、累計約14万台、親会社の売上の約1.5%
二次資料US Production of PT Ending — Segway New Zealand
販売代理店による告知。米国生産は2020年7月15日に終了、2002年から約14万台、SE-3 と RMP も終了、アジア太平洋向けは中国の生産ラインから供給継続
公開時の販売目標と、2003年・2006年時点の販売台数
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