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OpenAI 内紛 ── Altman 解任、5日後に復帰

TechCrunch Disrupt SF 2019 で講演する Sam Altman
出典Steve Jennings / TechCrunch (Wikimedia Commons) · CC BY 2.0 · Commons で見る

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2023年11月17日金曜日の午後、OpenAI は短い告知を公開した。"Sam Altman will depart as CEO and leave the board of directors."(Sam Altman は CEO を退き、取締役会からも離れる)── 取締役会の決定だった。

その5日後、Sam Altman は CEO 復帰への道に戻っていた。

11月17日 ── 動議

OpenAI は2015年の設立以来、非営利法人 OpenAI, Inc.(501(c)(3))が「すべての OpenAI の活動を統べる機関("the overall governing body for all OpenAI activities")」として、上限付き営利事業会社 OpenAI Global, LLC の上に立つ、極めて変則的な統治構造を採っていた。取締役会は2023年秋の時点で6名 ── Sam Altman、Greg Brockman、Ilya Sutskever(チーフサイエンティスト)、Adam D'Angelo(Quora CEO)、Tasha McCauley、Helen Toner(ジョージタウン大 CSET)── から構成されていた。

告知が挙げた理由はただ一つ、取締役会の審議が「彼は取締役会との意思疎通において一貫して率直ではなく、取締役会が責務を果たす妨げとなったと結論した("concluded that he was not consistently candid in his communications with the board, hindering its ability to exercise its responsibilities")」というものだった。CTO の Mira Murati が即日で暫定 CEO に指名される。Greg Brockman も同日に会長職を解かれて CEO の下に置かれ、数時間後に抗議の辞任を表明した。

具体的に何が起きていたのかは、その時点でも、その後も明らかにされなかった。後に浮かび上がる断片 ── 安全性への懸念、個々の取締役に対する Altman の説明をめぐる食い違い、商業化の速度 ── は、いずれも輪郭が曖昧で、十分な証拠を伴わなかった。翌18日土曜の朝、COO の Brad Lightcap は社内メモ(CNBC が入手)で「取締役会の決定は不正行為への対応として下されたものではなく、財務・事業・安全性・セキュリティ/プライバシーの実務に関わるものでもない」「これは Sam と取締役会のあいだのコミュニケーションの断絶だった」と伝えている。理由はほとんど何も残らないところまで絞り込まれた。

11月17–22日 ── 反乱

週末を挟んで事態は急展開する。

土曜から日曜にかけて Altman 復帰の交渉が続き、決裂した。19日日曜の夜遅く、取締役会は Murati を解いて元 Twitch CEO の Emmett Shear を暫定 CEO に据える ── 3日で3人目の最高経営責任者である。その数時間後、Microsoft が出口を塞いだ。Satya Nadella は「Sam Altman と Greg Brockman が、同僚たちとともに Microsoft に加わり、新しい先進 AI 研究チームを率いる("will be joining Microsoft to lead a new advanced AI research team")」と書いた。Altman 自身も後に "when i decided to join msft on sun evening"(日曜の夜に msft に移ると決めたとき)と時系列を認めている。

11月20日月曜日、取締役会宛ての公開書簡が社内を回りはじめた。現職取締役全員の辞任と、Altman・Brockman の復帰を要求し、応じなければ署名者は Microsoft の新部門へ移ると警告する内容で、その新部門は OpenAI 全社員分のポストを用意すると伝えていた。署名は日中に500、700と伸び、最終的に従業員約770名のうち745名として記録されている。署名者の中には、Altman 解任を主導したとされる Ilya Sutskever 自身の名前もあった。

11月21日火曜日の夜(米太平洋時間)、OpenAI は取締役会を再編したうえで Altman を CEO に戻す基本合意を発表した。正式決定は11月29日 ── Altman が CEO、Murati が CTO に復帰、Brockman が社長、そして暫定取締役会は Bret Taylor(議長、元 Salesforce 共同 CEO)、Larry Summers(元米財務長官)、留任した Adam D'Angelo の3名。Sutskever、Tasha McCauley、Helen Toner は取締役会を去り、Microsoft は議決権のないオブザーバー席を得た。

律していたのは取締役会ではなかった

5日間の出来事は、技術企業の経営権闘争としてはありふれた構造をしていた。経営陣解任、従業員の反発、復帰。けれど、その対象が AI フロンティアで最も潤沢な資本を持つ研究組織 だったために、業界全体への問いを残した。

  • 誰が AI 開発を律することができるのか: 名目上の取締役会か、それともプロダクトを動かしている従業員と巨額投資家か。今回の結論は明らかに後者だった。
  • AI 安全性派と加速派の対立: 解任を主導したと見られる派閥(Toner、McCauley、Sutskever)はいずれも AI のリスクに慎重な立場で知られていた。彼らの完全敗北は、業界内のパワーバランスを一方の側に傾けた。
  • Microsoft の影響力: わずか数日で OpenAI の中核を引き剥がしうるだけの引力を、 Microsoft はすでに持っていた。 OpenAI の独立性は、 Microsoft の存在を抜きには成立しなくなっていた。

Sutskever は2024年5月に OpenAI 退社を表明し、翌6月に Safe Superintelligence Inc. を共同設立した。 安全性派の主要人物は、その後の数年で OpenAI から次々と離れていく。

クーデターを可能にした統治構造そのものは、事件を生き延びなかった。Bret Taylor の取締役会は2年かけてこれを組み替え、2025年10月28日、OpenAI は資本再編(recapitalization)を完了する。非営利法人は OpenAI Foundation と改称して事業会社 OpenAI Group PBC(公益法人格の営利会社)の支配権を保持し、その持分は約26%・当時の評価額で約1,300億ドル。Microsoft の持分は約27%に固定された。Larry Summers は2025年11月19日、Jeffrey Epstein との書簡が公開された直後に取締役を辞任。Taylor と D'Angelo は残っている。

5日間の人事騒動は、 AI 業界の意思決定構造の本質的な姿を、たまたま白昼に映し出した。

出典

  1. 一次資料OpenAI announces leadership transition — OpenAI, Nov 17, 2023

    取得日: 2026-08-03

  2. 三次資料Removal of Sam Altman from OpenAI — Wikipedia

    取得日: 2026-08-03

最終更新:

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