T1#open-source#market#regulation#energy
イーサリアム ── プログラムを動かすブロックチェーンと、The DAO、The Merge

メタデータ
- 日付
- 年代
- 2010s
- Tier
- T1
- 参照年表
- インターネットとWebの歴史
- 出典数
- 08
- 関連項目
- 00
- Tags
- #open-source#market#regulation#energy
イーサリアム(Ethereum) は、取引の記録だけでなく、プログラムそのものをブロックチェーンの上で動かせるようにした仕組みである。最初の本番リリース Frontier は 2015年7月30日 に稼働した。構想を示したのはプログラマーの Vitalik Buterin で、ethereum.org の年表はホワイトペーパーの公開を2013年11月27日としている。
ビットコイン が示したのは、計算量で守られた公開の記録で電子現金を動かす方法だった。イーサリアムはその記録の上に、どんな計算でも書けるプログラミング言語を載せた。この記事は投資判断の材料を提供せず、価格の予想もしない。
ホワイトペーパー ── 「チューリング完全」な言語を組み込む
ホワイトペーパーは、ビットコインの実験のより重要な部分は通貨そのものより、分散した合意の道具としてのブロックチェーン技術だと書く。独自の通貨、所有権の記録、そして「スマートコントラクト」 ── コードが定めた規則に従って資産を直接動かすプログラム ── といった応用がすでに語られていたが、ビットコインのスクリプト言語はループを書けないなど、表現できることが限られていた。
そこでホワイトペーパーが掲げたのが、"a blockchain with a built-in Turing-complete programming language" である。チューリング完全とは、原理上どんな計算でも表現できるという意味で、ホワイトペーパーは、これがあれば誰でもスマートコントラクトや分散型アプリケーションを書き、所有権や取引の形式について独自の規則を作れるとした。偶発的な、あるいは悪意ある無限ループを防ぐため、取引ごとに計算の手数の上限を決め、計算の単位(gas)ごとに手数料を払わせる仕組みも組み込まれた。
Wikipedia によれば、Buterin は Bitcoin Magazine の共同創刊者だった。ホワイトペーパーの原典 PDF は2014年版として公開されている。
2014年から2015年 ── 資金集めと Frontier
| 日付 | 出来事(ethereum.org の年表から) |
|---|---|
| 2013年11月27日 | ホワイトペーパー公開 |
| 2014年4月1日 | Gavin Wood によるプロトコルの技術的な定義、Yellow Paper 公開 |
| 2014年7月22日 | 通貨 Ether の販売開始。42日間、ビットコインで購入できた |
| 2015年7月30日 | 最初の本番リリース Frontier が稼働 |
| 2015年9月7日 | Frontier thawing。gas の上限5,000を外し、21,000 gas を要する通常の取引ができるようになる |
ethereum.org は Frontier を、動いてはいるが機能を絞った最初の実装で、主に開発者などの技術者向けだったと説明している。稼働の日、イーサリアム財団のブログで Stephan Tual は、利用者が Genesis ブロックを生成して読み込み、Frontier の始まりを刻んだと書き、誰でもプログラムでき、使った分だけ払う検閲耐性のある「world computer」の構想が現実になったと記した。
2016年 ── The DAO とハードフォーク
スマートコントラクトで作られた最初の大型の試みのひとつが The DAO だった。米国の証券取引委員会(SEC)が2017年7月25日に公表した調査報告によれば、経過は次のとおりである。
| 日付 | 出来事(SEC の調査報告から) |
|---|---|
| 2016年4月30日〜5月28日 | The DAO が約11.5億 DAO トークンを販売し、約1200万 ETH を集める。当時のドル換算で約1億5000万ドル |
| 2016年6月17日 | 何者かがコードの欠陥を突き、約360万 ETH(集めた額の約3分の1)を自分の管理するアドレスに移し始める |
| 2016年7月20日 | イーサリアムのネットワークの多数がソフトウェアを更新し、ハードフォークした新しいブロックチェーンが稼働 |
ハードフォークは、攻撃者のアドレスにある分も含めた The DAO の資金をすべて回収用のアドレスに移し、DAO トークンの保有者が ETH に交換できるようにした。ethereum.org によれば、分岐するかどうかは ETH の保有者による投票にかけられ、85%超が賛成した。
一方、少数派はこの分岐に従わなかった。SEC の報告は、ブロックチェーンは書き換えられないものだという考えに反するとして、彼らが元の記録を使い続け、それが Ethereum Classic になったと書いている。ethereum.org も、プロトコルの欠陥ではないとして分岐を拒んだ採掘者がいたと説明する。
SEC の報告はさらに、DAO トークンは米国の証券にあたり、その募集と販売には登録か有効な免除が必要だったと結論づけた。
2022年9月15日 ── The Merge
イーサリアムは当初、ビットコインと同じく計算量で競う proof-of-work で動いていた。ethereum.org は、最初から proof-of-stake への移行を計画していたが、安全性と分散性を損なわずに実現するのに何年もかかったと説明している。
移行は2段階で行われた。イーサリアム財団の2022年8月24日の告知によれば、まず合意層(Beacon Chain)で Bellatrix が2022年9月6日に有効になり、次に実行層の Paris が、proof-of-work の累積難易度が所定の値に達したときに発動する。ethereum.org の年表では、その値に達したのは 2022年9月15日 で、Paris はブロック15,537,394で有効になり、proof-of-work の採掘を止めて proof-of-stake に切り替えた。これが The Merge である。
proof-of-stake では、電力を使った計算の代わりに、預けた ETH がネットワークの安全を担保する。電力消費の減り方について、イーサリアム財団は移行前から数字を出していた。
| 時点 | 主張・推計 |
|---|---|
| 2021年5月18日 | イーサリアム財団ブログ(Carl Beekhuizen):移行後は少なくとも約99.95%少ない電力になる。Digiconomist の推計では proof-of-work の採掘は年44.49TWh |
| 移行後 | ethereum.org:CCRI の推計で、年間電力消費は99.988%超減少。炭素排出は年1101万6000トンから870トン(CO2換算)へ約99.992%減少 |
| 現在の推計 | ethereum.org:CCRI の調査で、ネットワーク全体の年間電力消費は約0.0026TWh |
いずれもイーサリアムの側が示した数字や、それが引く推計である。ethereum.org 自身も、電力消費の推計は情報源によって大きく異なり、電源の構成によって環境への影響は変わると注記している。
その後
イーサリアムでは The Merge の後も、実行層と合意層を同時に更新する形でアップグレードが続き、ethereum.org の年表で最新のものは2025年12月3日の Fusaka である。
イーサリアムのスマートコントラクトの上では、トークンの規格も生まれた。1点ずつ区別できるトークンの規格 ERC-721 は、2021年の NFT ブーム の土台になった。ネットの上で価値をやり取りする仕組みの流れは インターネットとWebの年表 にある。
よくある質問
- イーサリアムはいつ始まったのですか。
- ethereum.org の年表では、Vitalik Buterin のホワイトペーパーの公開が2013年11月27日、最初の本番リリース Frontier の稼働が2015年7月30日です。Frontier は開発者など技術者向けの、機能を絞った最初の版でした。
- The DAO 事件とは何ですか。
- 2016年4月30日から5月28日に約1200万 ETH を集めた投資の仕組み The DAO から、6月17日に攻撃者がコードの欠陥を突いて約360万 ETH、集めた額の約3分の1を流出させた事件です。7月20日のハードフォークで資金が回収用のアドレスに移されました。
- Ethereum Classic とは何ですか。
- 2016年の The DAO 救済のためのハードフォークに従わず、分岐前の記録を使い続けた側のブロックチェーンです。ブロックチェーンは書き換えられないものだという考えから、少数派が移行を拒みました。
- The Merge で何が変わったのですか。
- 2022年9月15日、取引を確定する仕組みが計算量で競う proof-of-work から、預けた ETH で担保する proof-of-stake に切り替わりました。ethereum.org は CCRI の推計として、年間の電力消費が99.988%超、炭素排出が約99.992%減ったとしています。
出典
一次資料Timeline of all Ethereum forks (2014 to present) — ethereum.org
ホワイトペーパー公開(2013年11月27日)、Yellow Paper(2014年4月1日)、Ether の販売(2014年7月22日から42日間)、Frontier(2015年7月30日)、DAO フォーク(2016年7月20日、ブロック1,920,000)、Paris(2022年9月15日、ブロック15,537,394)
最終更新: