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MASAI 試験 ── AI を使った乳がん検診を初めてランダム化比較試験で確かめる

スウェーデン西部リセキル病院の駐車場に置かれた移動式マンモグラフィ検診車の後部。「MAMMOGRAFI」の文字と地域医療当局のロゴが見える(2022年撮影。MASAI 試験の施設ではない)
出典W.carter (Wikimedia Commons) · CC BY 4.0 · Commons で見る ↗

メタデータ

日付
年代
2020s
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T1
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MASAI 試験(Mammography Screening with Artificial Intelligence)は、AI を使ったマンモグラフィ(乳房X線)検診を、従来の方法とランダム化比較試験で比べたスウェーデンの研究である。ルンド大学の Kristina Lång らが率い、2023年8月2日、中間の安全性解析が Lancet Oncology に掲載されたと発表した。AI 支援群ではがんの発見が20%多く(統計的に有意ではない)、放射線科医の読影の作業量は44%減った。その後、2025年2月の解析で発見の増加は29%になり、2026年1月の最終解析では、主要評価項目である「中間期がん」の率が従来法に劣らないことが示された。ルンド大学はこれを、AI 支援の検診の効果を評価した最初のランダム化比較試験としている。

AI が画像を読む研究はそれまでにも多かったが、多くは過去の画像を使う後ろ向きの研究だった。Lancet Oncology の論文は冒頭で、後ろ向き研究は有望な結果を示してきたが、ランダム化試験は著者らの知る限りまだ行われていなかったと書いている。

試験の仕組み

スウェーデンでは、毎年約100万人の女性がマンモグラフィ検診に呼ばれ、1件の検査を乳腺専門の放射線科医2人が独立に読む「二重読影」が標準である。ルンド大学によれば、その放射線科医はスウェーデンでも他国でも不足しており、検診の維持が危ぶまれている。

試験は南西スウェーデンの4つの検診施設(マルメ、ルンド、ランスクローナ、トレレボリ)で行われた。検診の案内を受けて参加を拒否しなかった女性を、撮影後に画像保管システムが無作為に二つの群に振り分けた。

AI 支援群従来群
読影AI のリスク点数で振り分け。1〜9点は医師1人、10点は医師2人医師2人の二重読影(AI なし)
AI の役割全検査にリスク点数、8〜10点の検査には疑わしい箇所の印なし
使った AIScreenPoint Medical(オランダ)の Transpara 1.7.0―

参加者と撮影技師は群を知らされなかったが、読影する放射線科医は知っていた。AI が単独で診断するのではなく、医師の数と注意を配分し直す使い方である点が要になる。

3つの解析と結果

公表対象主な結果
2023年8月(Lancet Oncology)8万33人がん発見率は1000人あたり6.1対5.1(比1.2、95%信頼区間1.0〜1.5、p=0.052)。偽陽性率は両群1.5%。読影回数は4万6345回対8万3231回で44.3%減
2025年2月(Lancet Digital Health)10万5934人発見率6.4対5.0(比1.29、p=0.0021)。浸潤がん270対217、上皮内がん68対45。再検査率と偽陽性率は有意差なし。読影回数44.2%減
2026年1月(The Lancet)10万5934人中間期がん1000人あたり1.55対1.76(比0.88、95%信頼区間0.65〜1.18)で非劣性。感度80.5%対73.8%(p=0.031)、特異度は両群98.5%

2023年の時点では、発見の増加(41件多い)は統計的な有意水準に届かなかった。この解析の目的は安全性の確認で、AI 群の発見率が事前に定めた下限(1000人あたり3件)を上回ったため、試験は止められずに続けられた。

2025年の解析では差がはっきりした。増えたのは主に小さくリンパ節転移のない浸潤がんで、上皮内がんの増加分の約半分は悪性度の高い型だった。悪性度の最も低い型は増えていない。陽性的中率(再検査に呼ばれた人のうち実際にがんだった割合)も AI 群で高かった。

最終解析の主要評価項目は 中間期がん、すなわち検診で異常なしとされたあと、次の検診までのあいだに見つかるがんである。Lång は、中間期がんは悪性度が高いことが多く、その頻度は検診の効果を測る中心的な指標だと説明している。AI 群の中間期がんは82件、従来群は93件だった。試験は20%の非劣性マージンで設計されており、AI 支援が従来法に劣らないことは示されたが、0.88という比の信頼区間は1をまたいでおり、減ったこと自体は統計的に確かめられていない。論文は、AI 群の中間期がんに浸潤がん(75対89)、大きさ T2 以上(38対48)、ルミナルA以外の型(43対59)が少なかったことを記述的な結果として示している。

研究者が挙げた限界

Lång は2023年のルンド大学の発表で、試験はスウェーデンの一つの環境で行われたものであり、ほかの放射線科医やほかの AI で同じ結果が出るかを確かめる必要があると述べた。AI の使い方もほかにありうるが、それも前向きの研究で調べるべきだとしている。

時間の節約についても、ルンド大学の数字は推計である。放射線科医が1時間に平均50件読むと仮定し、AI 群の約4万件で約5か月分の時間が浮いたと見積もった。

研究者の利害も論文に開示されている。Lång は Siemens Healthineers の諮問委員を務めたことがあり、共著者の1人が率いるノルウェーのがん登録の検診部門は、Transpara の開発元 ScreenPoint Medical と研究契約を結んでいる。

上皮内がんの発見が増えることには、治療の必要が乏しい病変まで見つける過剰診断の懸念がつきまとう。2025年の論文は、増加分の約半分が悪性度の高い型で、最も低い型は増えなかったことを示した。過剰診断の程度そのものは、この試験の評価項目ではない。

誰に何が変わるか

最も直接に影響を受けるのは放射線科医である。MASAI の方式では、多くの検査が2人ではなく1人で読まれる。ルンド大学はこれを、不足する専門医の負担を減らす手段と位置づけた。受診者の側では、ルンド大学によれば検査そのものは何も変わらず、AI が使われるのは撮影後の読影の段階である。

Lång は2026年1月、スウェーデンの多くの地域がすでに AI 支援の検診を導入し始めており、さらに増える見込みだと述べ、方法が簡単なので国際的にも影響があるだろうと語った。英国の保健社会福祉省は2025年2月4日、国の研究機関 NIHR の1100万ポンドの支援で、約70万人の女性が参加する AI 検診の試験 EDITH を30の施設で始めると発表した。同省は、現在はマンモグラフィ1件に専門家2人が必要だが、この技術で1人が安全かつ効率的に同じ作業をこなせるとし、試験が成功すれば数百人の放射線科医などが別の患者を診られるようになるとしている。この見通しは同省の主張である。

2018年の IDx-DR に寄せられた論説は、精度の研究だけでは患者が利益を得るかが分からないと指摘していた。MASAI は AI を実際の検診の流れに組み込んだうえで無作為に比べ、中間期がんという検診の効果の指標を主要評価項目に置いた。広く使われた後に外部検証で期待を下回った Epic の敗血症予測モデル とは、順序が逆である。同じ時代の流れは AI の年表 と AI と社会の年表 を参照のこと。

よくある質問

MASAI 試験とは何ですか。
スウェーデンのルンド大学が率いた、AI を使ったマンモグラフィ検診のランダム化比較試験です。約10万6000人の女性を、AI が検査を振り分けて医師の読影を支援する群と、放射線科医2人が読む従来の群に無作為に分けて比べました。ルンド大学は、AI 支援の検診を評価した最初のランダム化比較試験だとしています。
AI でがんの発見は増えたのですか。
2023年の中間解析では20%多かったものの、統計的に有意ではありませんでした(比1.2、p=0.052)。約10万6000人での2025年の解析では29%多く(比1.29、p=0.0021)、偽陽性は有意には増えませんでした。
放射線科医の仕事はどれだけ減ったのですか。
読影の回数は2023年の解析で44.3%、2025年の解析で44.2%減りました。ルンド大学は、AI 群の約4万件の読影で放射線科医の時間が約5か月分少なくて済んだと見積もっています。これは1時間50件という仮定にもとづく推計です。
見逃しは減ったのですか。
主要評価項目の中間期がんの率は、AI 群が1000人あたり1.55、従来群が1.76で、比0.88(95%信頼区間0.65〜1.18)でした。試験は非劣性を確かめる設計で、従来法に劣らないことは示されましたが、差は統計的に有意ではありません。感度は80.5%対73.8%で AI 群が有意に高くなりました。

出典

  1. 一次資料Artificial intelligence-supported screen reading versus standard double reading in the MASAI trial: a clinical safety analysis — Lång et al., Lancet Oncology 24(8):936–944, Aug 2023 (PubMed 37541274)

    中間の安全性解析。8万33人、AI の振り分け方式、発見率6.1対5.1(比1.2、p=0.052)、再検査率、偽陽性率、陽性的中率、作業量44.3%減

    取得日: 2026-10-18

  2. 一次資料AI-supported mammography screening is found to be safe — Lund University, Aug 2, 2023

    大学の発表。放射線科医不足、20%(41件)多い発見、約5か月分の時間の推計、Lång による単一施設という限界の指摘

    取得日: 2026-10-18

  3. 一次資料Screening performance and characteristics of breast cancer detected in the MASAI trial — Hernström et al., Lancet Digital Health 7(3):e175–e183, published Feb 3, 2025 (PubMed 39904652)

    10万5934人、発見率6.4対5.0(比1.29)、浸潤がんと上皮内がんの内訳、偽陽性は有意差なし、作業量44.2%減

    取得日: 2026-10-18

  4. 一次資料Interval cancer, sensitivity, and specificity comparing AI-supported mammography screening with standard double reading without AI in the MASAI study — Gommers et al., The Lancet 407(10527):505–514, Jan 31, 2026 (PubMed 41620232)

    最終解析。中間期がん1.55対1.76(比0.88、非劣性)、感度80.5%対73.8%、特異度98.5%、利益相反の開示

    取得日: 2026-10-18

  5. 一次資料AI support in breast cancer screening: Fewer missed cancer cases — Lund University, Jan 30, 2026

    中間期がん82対93、スウェーデンの多くの地域で導入が始まっているという Lång の発言

    取得日: 2026-10-18

  6. 一次資料World-leading AI trial to tackle breast cancer launched — UK Department of Health and Social Care, Feb 4, 2025

    英国の EDITH 試験。約70万人、30施設、1100万ポンド

    取得日: 2026-10-18

最終更新:

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