1979年6月T1

Oracle V2 出荷 ── 史上初の商用 SQL リレーショナル DB

Larry Ellison・Bob Miner・Ed Oates が 1977 年に設立した Software Development Laboratories(後の Relational Software, Inc.、 さらに Oracle Corporation) が、 1979 年 6 月に Oracle V2 を出荷。 史上初めて市場に出た SQL ベースのリレーショナル DBMS となった。 Codd の関係モデル論文(1970) を商業製品化したのは、 論文を発表した IBM 自身ではなく、 PDP-11 上で動くこの小さなスタートアップだった。 米国 CIA を初期顧客に成長し、 2024 年現在 Oracle の売上は 500 億ドル超、 Ellison は世界富豪トップ 10 の常連となる。

Oracle 創業者 Larry Ellison の写真
出典Oracle PR / Hartmann Studios (Wikimedia Commons) · CC BY 2.0 · Commons で見る

メタデータ

日付
1979年6月
年代
1970s
Tier
T1
出典数
04
関連項目
00

Oracle V2 出荷 ── 史上初の商用 SQL リレーショナル DB

1979年6月、 カリフォルニア州サンタクララの小さなスタートアップ Software Development Laboratories(SDL) が、 リレーショナル DBMS「Oracle」のバージョン 2 を出荷した。 SQL を実装した商用製品としては、 これが世界最初のリリースである。

そして奇妙な事実として ── 関係モデルを発明した IBM が SQL/DS を出すのは、 2 年後の 1981 年だった。

3 人の創業者と CIA のプロジェクト

1977 年、 Larry Ellison(当時 32 歳)、 Bob Miner、 Ed Oates の 3 人は、 Ampex Corporation での共同経験を経て SDL を設立する。 Ellison は CEO、 Miner は技術リード、 Oates はサポートに回った。 当時の同社の目標は、 軍・諜報系向けの受託開発だった。

転機は CIA から受注したコードネーム「Oracle」のデータベース構築プロジェクト である。 ベースとなるアーキテクチャを探していた 3 人は、 1970 年の Codd の論文と、 IBM 内部で進行していた System R プロジェクトの公開資料を読んでいた ── そして IBM 自身がリレーショナル DB を商品化していないという事実に気づく。

「IBM が出す前に作って売ろう」 ── Ellison のこの判断が、 のちのソフトウェア史を一つ動かした。

Oracle V1 と V2 ── 顧客に出したのは V2 から

1978 年に完成した内部版が Oracle V1 と呼ばれるが、 これは社内検証用のみで顧客には出荷していない。 「最初のバージョンにはバグがあるという評判を避けたかった」 ── Ellison は後年そう語っている。

1979 年 6 月にリリースされた Oracle V2 が、 実質的に商用市場に出た最初の SQL ベース RDBMS となる。 動作環境は DEC PDP-11(ミニコンピュータ)、 言語は Fortran と Assembler で実装、 SQL の前身である SEQUEL に近い構文を採用した。 1983 年の V3 ではアセンブラから C 言語に書き直し、 これが現在まで続く Oracle のクロスプラットフォーム戦略の土台となる。

最初の顧客は CIA、 続いて NSA、 海軍など米国政府系の機関群。 軍が ACID トランザクションと SQL を必要とした ── これが Oracle 初期の成長エンジンだった。

1980 年代の急成長と IPO

社名は 1982 年に「Oracle Corporation」へ変更(製品名が会社名に昇格)。 1986 年 NASDAQ に IPO、 同年 IBM が DB2 を出した直後だったが、 Oracle はすでにメインフレーム外(DEC・Sun・HP の UNIX 機) で大きなインストールベースを築いていた。

1992 年、 Oracle 7 で ストアドプロシージャ、 トリガ、 参照整合性、 PL/SQL が完成形で揃う。 ここで Oracle はエンタープライズ RDBMS の事実上の業界標準となった。 2000 年の Oracle 9i では Real Application Clusters(RAC) によるクラスタ構成、 2007 年の 11g では PL/SQL の進化と Exadata 連携、 2013 年の 12c で マルチテナント(プラガブル DB)、 2018 年の 18c/19c で自律型データベース(Autonomous Database) へと進む。

Sun の買収、 そしてクラウド

2010 年、 Oracle は Sun Microsystems を 74 億ドルで買収 する。 これにより MySQL、 Java、 Solaris、 SPARC を一気に獲得 ── オープンソース RDB の競合だった MySQL を内側に取り込み、 サーバ・ストレージ・OS まで垂直統合した「フルスタック ベンダー」となった。

2010 年代以降は AWS・Google・Microsoft とのクラウド競争に苦戦するが、 Oracle Cloud Infrastructure(OCI) で巻き返しを図り、 2024 年には OpenAI・SoftBank と Stargate Project(5000 億ドル AI インフラ投資) に参画。 2025 年 1 月時点で Oracle の年間売上は約 530 億ドル、 Ellison の個人資産は約 2000 億ドルで世界富豪トップ 5 に入る。

1979 年 6 月が意味するもの

Oracle V2 の出荷は、 単なる「最初の商用 SQL DB」というマイルストーン以上の意味を持つ。 それは、 学術論文 ── Codd の 1970 年の 11 ページ ── が、 たった 9 年で 50 億ドル産業へと結晶する経路の起点だった。

そして商業化の主役は、 論文を生んだ研究所ではなく、 PDP-11 の上で SQL コンパイラを書いた小さなスタートアップだった ── というのが、 シリコンバレー型ソフトウェア産業の原型の一つを刻んだ事件でもある。 IBM が描いた理論を、 IBM の外側のベンチャーが市場化する。 この構図は、 のちの MySQL、 PostgreSQL、 そして Snowflake・MongoDB に至るまで、 データベース史で繰り返されることになる。

出典

  1. 二次資料Oracle Corporation — Wikipedia

    取得日: 2026-05-25

  2. 二次資料Oracle Database — Wikipedia

    取得日: 2026-05-25

  3. 二次資料Larry Ellison — Forbes Profile

    取得日: 2026-05-25

  4. 一次資料Oracle Annual Report FY2024

    取得日: 2026-05-25

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