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EndoBRAIN ── 国内初とされる AI 医療機器の承認

昭和大学横浜市北部病院の外観。曇り空の下、横に長い病棟と渡り廊下が見える(2011年撮影)
出典Waka77 (Wikimedia Commons) · CC0 · Commons で見る ↗

メタデータ

日付
年代
2010s
Tier
T1
出典数
06
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02
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EndoBRAIN(エンドブレイン) は、大腸内視鏡検査の最中に、見つかったポリープが切除の必要な「腫瘍性」か、必要のない「非腫瘍性」かの可能性を AI が数値で示し、医師の診断を補助するソフトウェアである。2018年12月6日、医薬品医療機器等法(薬機法)にもとづき、クラスⅢ(高度管理医療機器)として承認された。製造販売元のサイバネットシステムは、のちの発表でこれを「AI 搭載医療機器として初めて」の承認だと書いている。日本で AI 医療機器の第1号として紹介されることが多いのはこの製品で、販売はオリンパスが担い、2019年3月8日に国内で発売された。

これは日本の薬機法にもとづく承認である。同じ2018年の4月には米国で、糖尿病網膜症を判定する IDx-DR の販売が FDA に認められている。こちらは医師が画像を読まずに判定を出す設計で、医師の判断を補う EndoBRAIN とは役割が異なる。

誰が、何を作ったか

昭和大学・名古屋大学・日本医療研究開発機構(AMED)の2018年12月10日の共同発表によると、開発の中心は昭和大学横浜市北部病院消化器センターの工藤進英教授らのグループである。自動診断エンジンを名古屋大学大学院情報学研究科の森健策研究室が担い、医用画像ソフトウェアを手がけるサイバネットシステムと組んで、2013年から研究・開発を続けてきた。研究費は AMED の医療機器開発推進研究事業「大腸がん抑制を可能とする、人工知能にもとづく内視鏡診断支援ソフトウェア」から出ている。

項目内容
承認日2018年12月6日(発表は12月10日)
区分クラスⅢ・高度管理医療機器(承認番号 23000BZX00372000)
製造販売元サイバネットシステム
販売オリンパス(国内独占販売権)
発売2019年3月8日(日本)
対象の画像オリンパスの超拡大内視鏡 Endocyto(最大520倍)で撮影した大腸の画像
AI の手法サポートベクターマシン(機械学習の一種)
学習に使った画像約6万枚

どう動くか

EndoBRAIN は内視鏡装置に直接つながり、オリンパス製の超拡大内視鏡 Endocyto で撮った画像を解析する。Endocyto は最大520倍の光学拡大で、検査中にリアルタイムで細胞核まで観察できる内視鏡である。AI はその画像から、ポリープが腫瘍か非腫瘍かの可能性を数値として出す。オリンパスの発表によれば、粘膜表面の血管像を強調する NBI 観察と、色素で染める染色観察の2つのモードに対応する。

注目すべきは、使われた AI が 深層学習 ではなかったことである。AMED の発表は、EndoBRAIN の AI を、1963年に発表された手法であるサポートベクターマシンだと説明し、深層学習と違って学習や出力の過程が技術者に理解しやすく調整しやすいという利点を挙げている。画像に「腫瘍」「非腫瘍」の正解を付けて学習させる、教師あり学習 の典型である。発表はさらに、市販後に撮影した画像で自ら学習して性能が変わるものではないと明記している。

精度 ── 2つの数字

精度について、公表された数字は2組ある。

出典試験結果
昭和大学・名古屋大学・AMED(2018年12月)国内5施設の臨床性能試験正診率98%、感度97%。専門医に匹敵し、非専門医の正診率を上回った
オリンパス(2019年2月)国内多施設の後ろ向き性能評価試験(EndoBRAIN STUDY)感度96.9%、正診率98.0%

5施設は、昭和大学横浜市北部病院、国立がん研究センター中央病院・東病院、静岡県立静岡がんセンター、東京医科歯科大学附属病院である。オリンパスの発表は試験を「後ろ向き」と明記しており、検査中のリアルタイム使用で患者の転帰がどう変わるかを示したものではない。

「国内初」の範囲

「日本初の AI 医療機器」という言い方は広く使われているが、表現は出典ごとに少しずつ違う。

  • サイバネットシステム(2021年1月の発表)── 2018年12月に、医薬品医療機器等法にもとづく承認を AI 搭載医療機器として初めて取得
  • オリンパス(2019年2月の発表)── 内視鏡分野において国内で初めて薬事承認を取得した AI 製品
  • 開発者の解説論文(2020年)── 人工知能に基づく診断支援システムとして本邦初の薬事承認

オリンパスの表現は「内視鏡分野」に限っている。この記事では、製造販売元と開発者の主張として扱う。

医療現場と制度に何が変わったか

開発者たちが狙ったのは、大腸がんの予防である。共同発表は、大腸がんが日本人女性のがん死亡数の1位、男性の3位であること、内視鏡で腫瘍性ポリープを切除すると大腸がんによる死亡を53〜68%減らせることが知られていること(海外の研究)を挙げる。そのうえで、ポリープには切除が必要なものと不要なものがあり、医師は検査中に両者を的確に見分ける必要があると書いている。EndoBRAIN はその判断を数字で補うもので、共同発表は、医師の内視鏡診断を支援し、診断精度が向上することが期待されるとしている。

判断の最終責任は医師に残る設計である。共同発表は EndoBRAIN を、医師による病変の診断予測を補助するソフトウェアと位置づけている。2020年1月24日に承認された第2弾 EndoBRAIN-EYE(クラスⅡ)は、ポリープなどの病変の「発見」を補助するもので、サイバネットによれば、あえて病変の位置までは示さず、音と画面の色で警告するにとどめた。医師が診断する余地を残すための設計だと説明されている。こちらは深層学習を使い、約395万枚の画像で学習した。

制度の面では、二つの課題が浮かんだ。一つは保険である。開発者の森悠一らは2020年の解説で、保険承認を承認後の普及に不可欠なものと位置づけたうえで、AI 医療機器についてはまだ実現していないと書いた。もう一つは更新の扱いである。サイバネットは EndoBRAIN-EYE について、市販後に自律的に学習して性能が上がることはなく、改良する場合は PMDA に申請して承認を得たうえで版を上げる方針だと説明している。市販後に学習しないソフトウェアとして審査を受ける点は、試験の前にソフトウェアを固定した米国の IDx-DR と共通する。

また、初代の EndoBRAIN は特定の超拡大内視鏡 Endocyto の画像を前提にしていた。EndoBRAIN-EYE はオリンパス製の汎用大腸内視鏡(ハイビジョン画質以上)で使えるとされ、対象は広がった。

シリーズのその後

承認・発売製品役割
2018年12月承認、2019年3月発売EndoBRAIN腫瘍・非腫瘍の鑑別(超拡大内視鏡)
2020年1月承認EndoBRAIN-EYE病変の検出の補助
2021年2月5日発売EndoBRAIN-Plus非腫瘍・腺腫・浸潤がんの病理予測
2021年2月5日発売EndoBRAIN-UC潰瘍性大腸炎の炎症の有無

サイバネットは2021年の発表で、これらがそろったことで、大腸内視鏡検査における病変の検出・鑑別から治療方法の選択までを AI で支援できるようになったとしている。EndoBRAIN-Plus の性能評価試験は後ろ向き試験だったと注記されている。

日本の AI 政策全体の流れは AI 推進法 のページに、医療 AI の別の側面 ── 市販の予測モデルが外部検証で期待を大きく下回った例 ── は Epic の敗血症予測モデル にある。同じ時代の出来事は AI の年表 と AI と社会の年表 を参照のこと。

よくある質問

EndoBRAIN とは何ですか。
大腸内視鏡検査中に、見つかったポリープが切除の必要な腫瘍性か、そうでない非腫瘍性かの可能性を AI が数値で示し、医師の診断を補助するソフトウェアです。昭和大学・名古屋大学・サイバネットシステムが共同開発し、オリンパスが販売しました。
いつ承認され、いつ発売されたのですか。
2018年12月6日に医薬品医療機器等法のクラスⅢ(高度管理医療機器)として承認されました。発表は12月10日です。オリンパスが2019年2月25日に発売を発表し、2019年3月8日に国内で発売しました。
本当に日本初の AI 医療機器なのですか。
製造販売元のサイバネットシステムは、AI 搭載医療機器として初めて薬機法の承認を取得したとしています。オリンパスは内視鏡分野で国内初の薬事承認を得た AI 製品と表現しており、開発者の論文も人工知能に基づく診断支援システムとして本邦初の承認だとしています。
どんな AI が使われているのですか。
深層学習ではなく、サポートベクターマシンという機械学習の手法です。約6万枚の内視鏡画像で学習しており、市販後に撮影した画像で自ら学習して性能が変わることはありません。2020年に承認された EndoBRAIN-EYE は深層学習を使っています。

出典

  1. 一次資料AIを搭載した内視鏡診断支援プログラムが承認―医師の診断補助に活用へ― — 昭和大学・名古屋大学・日本医療研究開発機構(AMED), 2018年12月10日

    12月6日の承認、クラスⅢ、承認番号、国内5施設の臨床性能試験、サポートベクターマシン、約6万枚、正診率98%・感度97%、市販後に学習しないこと、2013年からの開発

    取得日: 2026-10-18

  2. 一次資料EndoBRAIN — Artificial intelligence system that supports optical diagnosis of colorectal polyps — was approved by PMDA — Cybernet Systems, Dec 10, 2018

    英語版の発表。承認日、クラスⅢ、Endocyto(520倍)、オリンパス経由の販売予定

    取得日: 2026-10-18

  3. 一次資料AIを搭載した内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN」を発売 — オリンパス, 2019年2月25日

    2019年3月8日の国内発売、国内独占販売権、内視鏡分野で国内初の薬事承認 AI 製品という表現、後ろ向き試験で感度96.9%・正診率98.0%

    取得日: 2026-10-18

  4. 一次資料AIを搭載した大腸内視鏡診断支援ソフトウェア第二弾 医薬品医療機器等法(薬機法)承認取得 — サイバネットシステム, 2020年1月29日

    EndoBRAIN-EYE の2020年1月24日承認(クラスⅡ)、深層学習、約395万枚、感度95%・特異度89%

    取得日: 2026-10-18

  5. 一次資料AIを搭載した内視鏡画像診断支援ソフトウェア『EndoBRAIN』シリーズに、2製品が新登場 — サイバネットシステム, 2021年1月27日

    EndoBRAIN-Plus と EndoBRAIN-UC の2021年2月5日発売、2018年12月に AI 搭載医療機器として初めて承認を取得したという記述

    取得日: 2026-10-18

  6. 一次資料人工知能に基づく医療機器EndoBRAINの臨床導入 ―薬事承認取得・保険算定への挑戦― — 森悠一ほか, Medical Imaging Technology 38(5), 2020

    開発者による解説。本邦初の薬事承認、医工産官連携、AI 医療機器の保険承認が当時まだ実現していなかったこと

    取得日: 2026-10-18

最終更新:

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