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AI 検索の浸食 ── Google AI Overviews と Perplexity の台頭

Google AI Overviews による検索結果の例
出典Google AI Overviews / uploaded by Alza08 (Wikimedia Commons) · CC BY-SA 4.0 · Commons で見る

メタデータ

日付
年代
2020s
Tier
T1
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2024年5月14日、 Google I/O 開発者会議で Sundar Pichai が AI Overviews の米国全展開を発表した。 検索結果の最上部に、 Gemini が生成した数段落の要約が表示され、 ユーザは元のリンクをクリックせずに「答え」 を得られる ── 2023年に「Search Generative Experience(SGE)」 として実験中だった機能の本番昇格である。 1998年以来「10本の青いリンク」 を提供してきた Google の検索ページが、 26年目に根本的にレイアウト変更された瞬間だった。

「ピザに接着剤」 ── 公開直後の暴走

公開からわずか数日で、 AI Overviews は不名誉な歴史を作った。

  • ピザにチーズが乗らない」 と検索した利用者に対し、 「無毒の接着剤 1/8カップを混ぜる」 と回答(出典は11年前の Reddit のジョーク投稿)
  • 毎日小石を食べるべきか」 への回答として「地質学者は1日1個以上を推奨」 と提示(出典は風刺サイト The Onion)
  • 「うつ病なら何をすべきか」 への提案として「ゴールデンゲートブリッジから飛び降りる」 を含む
  • 米大統領のリストにバラク・オバマを「最初のムスリム大統領」 として含める(同名陰謀論の Reddit スレッドが情報源)

スクリーンショットがソーシャルメディアで拡散し、 「LLM ハルシネーション」 という業界用語が一般語になった。 Google は5月末に対応を発表し、 ユーザ生成コンテンツ(Reddit、 フォーラム) 由来の回答抑制、 風刺メディアの除外、 ヘルス・金融・選挙トピックでの AI Overviews 抑制を実装した。

SGE から AI Overviews への改名 ── そして「公開」 の意味

2023年5月の Google I/O で SGE として登場した時点では「Labs 実験機能」 だった。 1年後の AI Overviews 改名と全展開は、 単なる名称変更ではなく デフォルト ON への切り替え を意味する。 ユーザ側にオプトアウト UI は当初提供されず(後に「Web」 フィルタとして部分的に追加) 、 米国の Google.com で検索する全員に強制的に提示される設定だった。

2024年8月、 英国・インド・ブラジル・日本・インドネシア・メキシコの6カ国に拡大。 2024年10月には100カ国超、 30言語に到達した。

出版社直撃 ── ゼロクリック検索の急増

AI Overviews の最大の影響は、 検索結果ページから外部リンクへのクリックが消えたことだった。

  • Pew Research(2025年7月) ── AI Overviews 内の引用元リンクがクリックされたのは、 わずか1%。 その下の通常検索結果へのクリックも、 AI Overviews がある場合は8%、 ない場合は15%だった(米成人900人・約6万9000件の検索を追跡)
  • Similarweb(2025年) ── ニュース関連検索のゼロクリック率(リンクをクリックせず Google 内で完結する検索) は、 2024年5月の56%から1年後の2025年5月に69%へ上昇
  • Authoritas(2025年) ── AI Overviews が表示されると、 出版社のクリック率はデスクトップで 約47.5%減、 モバイルで 約37.7%減
  • Digital Content Next(2025年8月) ── 主要出版社19社の実データで、 Google 検索からの参照トラフィックが前年同期比で 中央値10%減(2025年5〜6月の8週間)

象徴的事例として、 旅行ブログ The Planet D は AI Overviews 公開後の数ヶ月で訪問者数が半減し、 スタッフを解雇、 その後さらに90%減少して 2025年に更新を停止 した。 同種の中小独立出版者の倒産・縮小が世界中で報告された。

SEO 産業の構造変化

検索エンジン最適化(SEO) は、 1998年の Google 創業以降の25年間、 「Google で1位を取る」 ことを目標とした産業だった。 AI Overviews は競争のルールそのものを変えた。

新しい用語が定着した ── AEO(Answer Engine Optimization)GEO(Generative Engine Optimization)LLMO(LLM Optimization) 。 「クリックされる」 ではなく「LLM の引用元として選ばれる」 を最適化の目標とする方向への移行が始まった。 構造化データ(Schema.org) 、 著者プロフィール、 サイト権威性、 ファクト密度といったシグナルが再評価された。

同時に独占禁止当局も動いた。 米司法省の Google 検索独禁訴訟(2024年8月、 Google が独占者と認定) 、 出版社グループによる訴訟、 EU の DMA 調査 ── AI Overviews は単なる UI 変更を超えて、 規制側の関心対象になった。

Perplexity と ChatGPT Search ── 「回答エンジン」 競争

AI Overviews と並行して、 別系統の「回答エンジン」 が成長した。

Perplexity AI(2022年8月設立、 Aravind Srinivas が CEO) は2024年から急成長。 2025年中盤の評価額 180億ドル月間アクティブユーザ約4500万、 月間クエリ7.8億件、 ARR は2025年9月時点で 年間2億ドル相当 と報告された。 引用付き回答、 リアルタイム Web 検索、 学術モードなどで支持を集めた。 一方で出版社(New York Times、 Forbes、 Wired 等) からは「無断スクレイピングと不正確な引用」 で訴訟・批判を受けた。

OpenAI ChatGPT Search は2024年10月にプレビュー、 2025年初頭に全 ChatGPT ユーザに展開。 OpenAI 単独では検索インデックスを構築できないため、 Bing を含む検索 API と直接スクレイピングを併用。 ChatGPT 自体の週次ユーザは2025年10月に 8億人 に達し、 検索機能の利用層は Perplexity を桁違いに上回った。

ただし市場シェアで見れば、 検索クエリ全体に占める LLM ベース検索の割合は2026年初頭時点でなお1桁台。 「Google を倒す」 段階ではなく、 「Google の利益率と出版エコシステムを浸食する」 段階にある。

補完財から採取関係へ

AI Overviews は、 ウェブの基本的経済構造を書き換えた。

これまでの構造は ── 出版社がコンテンツを作る → Google がクロールしてインデックスする → ユーザが検索する → Google がリンクを返す → クリックされた出版社が広告収入を得る → そのお金で次のコンテンツを作る。 この循環で、 Google も出版社も同時に儲かる「補完財」 関係が25年成立していた。

AI Overviews は最後の「クリック」 を消した。 出版社のコンテンツは依然として AI Overviews の生成材料として消費されるが、 リンクは表示されてもクリックされない。 補完財関係が 採取関係(extractive) に変質した。

これは Google だけの問題ではない。 LLM 全般が、 学習データとしての Web、 検索引用元としての Web に依存しつつ、 その Web を支える経済循環を断ち切る。 ジャーナリズム、 専門家ブログ、 趣味コミュニティ、 ニッチ情報サイト ── 「LLM の知識の元になっているもの」 が経済的に成立しなくなる、 という構造的問題が、 2024年5月14日に顕在化した。

問いは ── では LLM 時代の Web は誰が書くのか。 答えはまだない。

出典

  1. 三次資料AI Overviews — Wikipedia

    取得日: 2026-08-03

  2. 二次資料Perplexity AI Statistics 2026: Users, Valuation & Growth — AI Business Weekly

    取得日: 2026-08-03

最終更新:

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